AIRSWIMMING  -エアスイミング- 公演情報 AIRSWIMMING -エアスイミング-」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-5件 / 5件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

     板上は下手客席寄りに斜めに置かれた椅子Ⅰ脚、板中央に円周上を囲むように置かれた椅子5脚、下手の椅子とシンメトリックに置かれた椅子1脚。上手ホリゾントと側壁に面してスタンドピアノと椅子。

    ネタバレBOX


     ドリス・デイの活躍が終始横糸となり、精神薄弱と診断された患者たちの施設での暮らしが縦糸となって収容以降数十年の生活が描かれるが如何にリーディング公演とはいえ、演劇でドラマツルギーが成立し対立が先鋭化してエスカレートしなければ本質は露わにならないし、焦点が呆ける。原作を原文で当たっていないから何とも言えないが脚本の選択ミスを先ず疑った。縦糸と横板が行き交うだけでは不十分である。そもそも現代アメリカ文明で語られるような愛は、ギリシャ文明を継いで汎神論的であったローマでキリスト教が国教とされて後、ローマの為政者達の中で知恵ある貴族らが、本来弁証法的であったキリスト教を二元論に置き換えて後、神と子の話として広めて以降であろう。現代アメリカのキリスト教もこれに近いのではないか? そのようなキリスト教が中世二元論を中心に構築され聖書に書かれたことを絶対とし唯一神としてヤハウェを称え反するもの総てを悪魔と関連づけてヨーロッパを覆った。為に科学は遅れイスラム世界に遅れをとったのである。ルネサンスが当時地球上で最も進んだ文明を誇った中東を介してのみ、ヨーロッパに再流入したからこそ、re-naissanceなのである。
     まあ、余り詳しい世界史の講釈は無しにしておこう。中世ヨーロッパで魔女裁判が頻りに行われ、猫が魔女と絡めて大量に虐殺されたことも読者の多くがご存じだろう。このように歴史的宗教が絡んだ問題は奥が深い。そのような問題を扱うにドリス・デイが活躍した僅かな時間軸で少なくとも二元論を根底とした長期に亘るジェンダーギャップをキチンと表象し得ると考えること自体、如何かとは思う。
     精神障碍者とされ、社会から排除された人々は何も女性だけではないし、精神障害とされること自体、要は一般的な考えとはかけ離れて居る為多くの者は理解できず、不安になって排除するという構造が在るハズであり、そういったことの中でジェンダーギャップがあるならば、それをキチンと抉り本質を深く掘り下げたうえで被差別者たちの呻き声が伝わってくるように描かなければ、演劇公演としては極めて弱いのではないか?
     結果、全体として緊張感を欠く、また焦点のハッキリしない泡のような作品になってしまった。良かったシーンはラスト。椅子に乗った精神薄弱の「患者」たちが、自分達を縛ってきたテキスト(演劇を演じるという意味でもテキストに縛られ社会規範との二重の意味を持ち得る)を真ん中の窪み(イマジネーションを膨らませれば例えば魔法陣でも良い)に投げ込んでエアスイミングを試み空を翔けてゆくシーンである。彼女らは自由(つまり世間が魔とみたもの)の方へ翔けてゆく。それが『ワルプスギスの夜』と呼ばれるものであったとしてもだ!
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    理不尽な理由で幽閉された2人の女性を5人の女優で演じる会話劇。話の展開にちょっとついていけなくて、とどまいましたが、終盤になってようやく全貌が分かって納得。ユニークな演出も相まって、印象的な作品でした。ピアノ演奏と歌も良かった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ピアノと歌の生演奏付きとは
    なかなかに豪勢でした

    シンプルに椅子が中央に5つなべられ
    周囲に3つの椅子が配され
    演者5人で紡がれるリーディング+αな舞台は説明通りで
    単に椅子に座しての朗読劇とは
    趣が異なるなぁと感心できた
    1時間35分の作品

    ネタバレBOX

    幅の狭いパイプ椅子=客席は
    コロナで隙間の空いた椅子の感覚からは
    久々の小劇場感が半端無く伝わったし
    やはり題材が興味を惹いたのか
    場内満席でした

    説明では二人の話なのに
    なぜに5人もーとか思ってたら
    時間経過とかを曖昧にしての
    2重での表現で
    話的には二人の世界の表現で合ってました

    ピアノの生演奏を付けての
    ミュージカル風な歌とかも入れて
    演者さんも椅子を用いたりの動きも加わり
    面白い朗読劇となっていましたが
    話的にはヤヤ理解が遅れたりする感じがあったデス
  • 実演鑑賞

    良い舞台だったと思います。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、少し観念的で理解、解釈が難しい面もあるが…。
    1920年代から70年代迄の約50年間、精神病院に収容された女性2人の不撓不屈の物語。
    説明では、上流階級育ちのペルセポネー・ベイカーは、妻帯者の男性と恋に落ち 妊娠して婚外子を産み、父親に精神病院に入れられてしまう。そして社会の性規範に囚われず、「女らしい」ふるまいをしないことを理由に2年前に収容されたドーラ・キットソンに出会う。この2人が 空想・想像力を交え、励まし合い、笑わせ合いながら 権力の象徴とも言える精神病院内で紡ぐ会話劇。

    精神異常者として身体の管理と拘束をする、その理不尽な対象を女性に絞って描いている。それは外国(イギリス)の しかも過去のことではなく、現代日本に通じる問題・課題でもあろう。それが「100年後の今… 私たちは彼女たちの声が聞こえているのか?」という問いかけに繋がる。
    当時における触法精神障碍者の実話を基に、現代を生きる女性の「痛み」「苦しみ」「患う」の声をすくい上げるアウトリーチの公演になっている。それゆえ 理不尽・不平等が生じている状況を打開、端的に言えば ジェンダー格差による不利益の克服といった意も込められている。しかし、無条件(表面)に受け止めることが出来ない難しさがある。

    同年代、フーコーの「監獄の誕生─監視と処罰」といった 権力を主題にした学術的な書もある。しかし、本作は 実話を基に しかも女性に対象を絞っているため、一層 問題を具体的に捉えることが出来る。ただし、演劇的には ベイカーやキットソンが精神病院に収監された事情・理由は後から描かれるため、その背景を知らないと理解が追い付かないかも…。それでも 2人の女性が励まし助け合いながら<生きようとする>その姿に心魂が揺さぶられる。公演は 主にリーディング、そして 彼女たちの思いを 色々な工夫を凝らした演出…歌やピアノ演奏等で観(魅)せ印象付ける。

    閉じられた世界の2人を キャスト5人が組み合わせや役柄を入れ替えて語る。そうすることで状況の変化や時間の経過を表す。その演劇的手法を すんなりと受け入れて楽しめるか否かによって評価が異なるかも知れない。
    (上演時間1時間35分 途中休憩なし) 9.29追記

    ネタバレBOX

    舞台セットは、上手奥にピアノ、中央に外側を向くよう(背中合わせ)に五角形のように椅子を配置し、ピアノが置かれている隅以外に椅子が1つづ置かれている。物語の登場人物は2人だが、それを5人の女優が赤い台本を持ってのリーディング。中央に集まったり、隅に座ったりすることで人物の組み合わせや役柄を変える。そうすることで約50年間という時の流れと情況の変化を表す。

    ベイカーとキットソンの2人の女性は、100年前のイギリスでは社会不適合者ー性規範や道徳を逸脱ーとして収容施設に収監された。社会から孤絶した彼女たちの空想の世界が中央のサークル状(五角形)で紡がれる。女優のドリス・デイを引き合いに出しながら、夢と希望を語り<生きよう>とする姿は、どんな状況においても諦めないことを訴える。これは女性だけではなく、男性や最近ではLGBTQにおいても生きづらい世を少しずつでも変える運動へ、を連想させる。

    公演で興味を惹いたのは、社会的な観点と人間的な観点とでも言うのだろうか。ベイカーは妻帯者の男性と恋に落ち婚外子を産んだ。現代の日本においても、かつて<不倫は文化(言葉狩り)>と言った俳優がいたが、今でも不倫は世間から非難を浴びるし、興味本位で騒ぎ立てられる。社会的な観点からみれば精神病院へ収監するという問題、一方 不倫された妻の人としての感情(憤り)はどうか。端的な構図はベイカーの行為は同性への裏切りのようで…。この公演は、あくまで社会体制(規範)からの自由 解放という<声>のようだ。

    もう1つ。女性が貞操であらねばならない時代。今でも女らしさ男らしさ、そして<あらねばならない>という曖昧な固定観念に囚われる。しかし現代においても その不自由な観念を払拭したと言い切れるだろうか。ラスト、中央の椅子に5人が上がり泳ぐように手を横に広げる。演劇的に見れば、奈落の底から抜け出すように泳ぐーまさに空を目指したエアスイミングだ。

    舞台技術が見事。ピアノの生演奏や歌は勿論、照明効果によって状況が浮かび上がる。例えば 5人が場内には入ってくる時は格子状の照明だが、これは施設の格子であり台詞にある風呂(タイル)の磨きを、また水滴の音と水玉模様の照明によって孤絶やスイミングを夫々 連想させる。そして 地味(グレー系)な色彩の衣裳で統一し、照明の角度によって人影、それは2人だけではなく多くの女性の姿・声を表す。そして赤い台本を赤子を抱くような愛しさをもって…。
    次回公演も楽しみにしております。

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