実演鑑賞
満足度★★★
「お前も沈むのね。そして夜が来る。」
太陽に向かってそう語り掛けた女は毒を呷る。
チケットにワンドリンク付いていて、BARトワイライトのマスターはアダムスファミリー調の甲津拓平氏。前説も担当。
登場するのはピロウ・ヴェルヴェッティ(ヴェルベット〈光沢のある柔らかな肌触りの生地〉の枕)を名乗る女優。どうやらここは警察署の取調室。彼女は事情聴取をする刑事のことを大好きな俳優から取って、ジョルジオと呼ぶことにする。語り出すのは母親が好きだった歌。昔の映画のワンシーンで印象的だったハミング。そしてシャルル・ペローの童話『青髭』について。次々と娶った妻が行方不明になってしまう恐怖の権力者の言い伝え。彼女は天才演出家、サイモンこそが現代の青髭だと告げる。そして自分が彼を殺したことを。
伊藤弘子さんデビュー37年、出演作155本目の記念公演は初の一人芝居。客席後方でキーボードとエレキ・ギターのa_kira氏、コントラバスの伊藤啓太氏が生演奏。何曲も歌い上げる。『When a Man Loves a Woman』の間奏のギター・ソロが布袋っぽかった。a_kira氏は小室哲哉っぽい。
電気スタンド(デスクライト)をハンドマイクのように握り締めて歌い、自らの顔を下から照らす。上から垂れ下がる7本の首吊りロープのダンス。流山児事務所名物の背景への投影。線描画のアニメみたいな奴が凄かった。退屈させない工夫に充ちている。デイヴィッド・リンチ作品を連想させる世界観。
伊藤弘子さんのファンならずとも、是非観に行って頂きたい。