ワレワレのモロモロ 公演情報 ワレワレのモロモロ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 満足度★★★

    実体験を語る勇気。
    ENBUゼミナールの演劇コースに2009年秋期より一年通学された生徒さんたちのこれまでの成果を発表する卒業公演。
    劇場の折り込みチラシでハイバイの岩井秀人さんが携わっていることを偶然知って、観てきました。
    どの作品も実体験を元に創作され、それを考案した人が出演するというスタイルのものだったのですが、そうすることによって、自身の作品に責任を持つことや作品に対してより理解を深めることを目的としていたそうです。上演時間は2時間で作品数は11本。
    誰かにこの気持ちを伝えたいというパワーがみなぎる熱い公演でした。

    ネタバレBOX

    11作品観た中で特に印象に残ったのは4本。

    『穴があったらはいりたい』は、一人暮らしのアパートを引き払って実家で暮らしはじめようとするハンパ者の娘と両親との距離感が絶妙なニュアンスで描かれていました。
    たとえば、今までお金が必要な時にだけしか親に連絡しなかった娘の薄情さに母親が怒りを露わにする場面では、娘を生んだことを心底悔やむ母の毒々しい言葉が、娘には母がこれまで秘密にしてきた本心であるかのように思われ、その残酷さに耐えきれず、躍起になって家を飛び出し付きあってる男の家に転がりこむが、煮え切らないおもいでいる。そんな風にして世界で最も遠い存在であるかのような娘と両親の距離感を埋めるのもまたお金、という皮肉。それでも決して切り離せない家族の輪で繋がっている娘と両親は根底で信頼していることに背を向けるけれども、家族の絆を確認し合うためには時折無駄な駆け引きをする意地っ張りな三人に笑みがこぼれました。

    『半熟たまごのオムライス』は、物心がついた頃に両親が離婚して姉は母、弟たちは父に引き取られ、大きくなるまで会うことのなかった3人の共同生活。
    そこには小さな規範が根付き、弟たちを養うために働いている姉が絶対的な権限を持つ。
    高校中退後ニートをしている弟は姉に従順で、もうひとりの弟は、反抗する若者である。定時制高校に在籍してはいるものの、不登校の弟は毎日テレビゲーム三昧で、夕飯をみんなで食べようと姉が声掛けしても言うことを聞こうともしない。
    そしてはじまる姉と弟の喧嘩。姉に従順な弟は中立的な立場を守り、反抗的な弟に、どちらかが譲らなければ争いは解決しないことを教えるためにも姉に謝るよう促す。
    いざ仲直りするとなると、照れくさくなってうつむき加減でぼそぼそと詫びを言う弟とそんな弟に背を向ける姉。ふたりのぎこちない態度がとても愛らしかったです。
    姉や兄の二の舞になるのはいやだ、なんてジョークを飛ばしつつ学校を辞めない決意をする弟、バイトが決まった兄、とグッドニュースが舞い込んで終わるラストも清々しかった。
    願わくは、オムライスが両親を繋ぐ接点であり、たまごが割れる=幸せが壊れた、というようなイメージの具象化があったらもっと引き込まれていたかもしれません。

    体験を話す、というとどうしてもスピーチ形式だったり状況、心情、背景を
    説明するモノローグが中心になっているような作品が多数見受けられるなか、本音と建前とが綱渡りをするようなギリギリのバランス感で会話がなされていた、という意味で上記二作品が圧倒的によかったです。

    この他印象に残った二作品はまた趣きが違っていて、1アイデアの傾向が強いようにおもわれました。
    まずは『幼き日々』。
    これは、自身の性への成長&関心の経過を、その当時の家族のエピソードを交えた朗読形式の作品だったのですが、実体験という意識を頭に描いた空想の世界から掘り下げて、それを更にWant to beのリアリティと織り交ぜて私のエピソードとしてでっちあげた点が、非常に異質で今回みた作品群のなかでずば抜けて独創的だと感じました。真っ白なふわふわのドレスを纏った美女の人差し指には青い鳥。というビジュアルもメルヘンチックで世界観にマッチしていて、おとぎの国でおとぎ話を聞いているような不思議な感覚に陥りました。
    『いぬのおまわりさん』の替え歌とお絵描きもおもしろかったです。
    ピンク色の長い磁石を巷でみたらいろいろと思い出してしまいそうです。

    『ザ・シャワー』はまさに1アイデアの作品でした。
    とある女子がシャワーを浴びながらシェーバーで脱毛をしている最中にあろうことか某所を刈り取ってしまったことから、何某を探すためあくせくする様、その苦悩と葛藤が凄まじかったです。大爆笑しました。ちなみにそれが何某だったかは・・・ここでは教えてあげません!笑

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