公演情報
「ペリクリーズ」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★★
シェイクスピアのセリフのきらめき、嵐や女郎屋をイマジネーションで現出する野田秀樹的見立て表現、ギリシア劇にもとづく波乱万丈と壮大なハッピーエンド。これらが結合した出色の舞台だった。
特に船が嵐に翻弄される、演劇ワークショップ的ダイナミックな動きは抜群。またペリクリーズ(石原由宇)が娘(古賀ありさ)と再会した時の、信じられないけど信じたい、信じたいけど信じられないという行きつ戻りつを誇張しつつ、最後の歓喜の涙に至るシークエンスは見事だった。
話は荒唐無稽だが、それを神々しいまでのドラマにして、見ていて目頭が熱くなった。若い中屋敷法仁の大胆な上演台本・演出の成功である。2時間20分(休憩15分)。語り手(藤田宗久)もよかった。
実演鑑賞
満足度★★★★
もともと吟遊詩人の作品が元ネタになっていると言うから、日本で言えば、平家物語みたいなもの、歌舞伎で言えば義経千本桜のようなものか。
これだけご都合主義を並べられると、呆れてみているしかないが、いままでは安西徹雄先生に習って、とにかく、ロマンス劇なりに筋道をつけようとしていたが、先生ご逝去で、今回は若い中屋敷法仁の演出。これがなかなか良い。
本音を言えば、かつて彼の劇団柿食う虫で、女体シェイクスピア(だったか?)というシリーズをやっていて、一つ二つ見て、あまりのことにその後はこの劇団も演出作品も気をつけて見てはいなかった。ほぼ十年ぶりに見たわけだが、この間にものの見方も演出技術も老練のうるさ型もいそうな円の役者の手なずけ方もすっかりうまくなって、快調である。
学者の方に聞いてみないとよくわからないが(聞けばたちどころに教えてくれると思うが)この作品のシェイクスピア作品の中では異質の吟遊詩人的街頭演劇の特質をよく捕まえている。つまり、つまらないところは全部語りに任せて、その場が面白ければ良いのである。
例えば、舞台はモノカラーの机二つと椅子十脚(少し数は違うかもしれない)だけで、出演者が振り付けで自在に動かして場を作る。ここが、ダンスとも、コンテンポラリーとも、ただの説明ともつかぬ形でさまざまな音楽に乗って場を作るのがうまい。特筆したいのは、そのテンポが演劇をしっかりベースにしていることで、今までのこう言う舞台にありがちのドラマの全体の中身やテンポをダンスや音楽で崩すと言うことがない。振り付けも、さして難しいものはないが、俳優が一糸乱れず演じられるレベルでまとめている。海上(波と難破)も町もよく出来ている。
ほとんど安西演出は踏襲していないが、安西演出で覚えているところが一つだけあった。芝公園の中にあった朝日放送のホールでの初演。死んだはずの妻が生き返るところ、
安西演出はずっと、舞台に何気なく放り出してあったズタ袋が突然動いて、中から生き返った妻が現れる。観客はぎょっとするし、受けもした。五十年も前の話だから他のところは忘れてしまったが、ここだけは鮮やかだったので覚えている、安西先生もキワモノであることは知っていたのだ。
実演鑑賞
満足度★★★★★
CoRichにもあるあらすじを読むと「そんなアホな!」という感想の連続でシェイクスピアの金看板が頼りの作品という気がしてしまう。しかし、舞台が始まってみると物語の振れ幅と同じくらい躍動的な振付けと斬新な舞台演出に圧倒されてしまう。とくに嵐に翻弄される船を椅子と机で表す手法は舞台上に甲板を見事に現出させる。感情をすべて舞台に持って行かれた結果、終盤のあまりにあからさまな父と娘の再開シーンでは不覚にも場内の湿度の調整に貢献してしまった。振り返ってみて、荒唐無稽なストーリーを円熟期に入った天才が周到に配置してこの演劇を構成したのだと納得した。
売春宿の古顔を演じる杉浦慶子さんのぶっとんだメイクと演技にぶっとばされた。
古典+斬新な演出+確かな演技で言うことなしの星5つ。…と勢いで書いたけど、冷静になってみると演技のレベルには結構ばらつきがあった。
実演鑑賞
満足度★★★★
『ペリクリーズ』はシェイクスピア晩年の作風、「ロマンス劇」と分類されている作品。登場人物が荒唐無稽に織り成す長大な時間を掛けて紡がれる大団円はホメーロスやギリシア三大悲劇詩人の作風を彷彿。とにかく話が壮大。一体何の話なのかさっぱり分からないがメチャクチャに面白い。シェイクスピア✕シアターΧ(カイ)✕演劇集団円(えん)✕中屋敷法仁(柿喰う客)=才能の大爆発。
14世紀のイングランドの詩人、ジョン・ガワー(藤田宗久〈そうきゅう〉氏)が横の通路から現れて古の物語を語り出す。藤本義一みたいな雰囲気。自らを灰から甦った存在だと称す。
舞台上に立つのは後ろ向きの死人達。何百年何千年も昔に死んでいった死者達がガワーに呼び出され静かに動き出す。全員うっすらと死人メイク。時には人形のように踊り、時には長机や椅子を手に大海原を駆ける帆船を集団マイム。
舞台は紀元前の東地中海、ツロ(現レバノンのスール)の王(領主)ペリクリーズは大国アンティオケ(≒アンティオキア〈現トルコ〉)の王女に求婚。結婚の条件として王女からの謎掛けを解かなければならない。「私が得た男は、父で息子で夫である。そして私は母で娘で妻である。さて如何にしてこの六人が二人であり得るのか?」
王と王女の近親相姦の関係に気付いてしまったペリクリーズはゾッとして逃げ出す。送られる殺し屋(片手だけ赤い手袋)。祖国が戦争に巻き込まれることを恐れたペリクリーズは忠臣ヘリケイナスに政治を託し船に乗って身をくらます。
王女役の大橋繭子さんが魅惑的、やたら踊る。この不思議な物語の開幕に相応しいヴァンプ(妖婦)。
主演のペリクリーズ役石原由宇氏が魅力的。全身汗だくでぜえぜえはあはあ必死に舞台の海を泳ぎ続ける。運命の不条理の嵐、またしても海に残酷に投げ出され息絶え絶えになりながらも何とかギリギリ生き延びる。生きてさえあれば話は続く。何度も波に飲まれ頭がおかしくなろうとも。
面白い舞台に飢えていたら足を運ぶべき演目。