湿度15% 公演情報 湿度15%」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 0.0
1-1件 / 1件中
  • 淡々としていた。
    ホームページの海底からぶくぶくと上昇していく水泡のフラッシュが目に留まったので観てきました。
    極限環境下に置かれた者たちの心理から万人に共通する飢えと渇きを導き出そうとしているように思えたのですが、彼らの生存に関する記述が、物質面の確保に傾倒していたために、淡々とした暮らしぶり、飄々とした佇まいの内側/深層部へとストンと落ちるきっかけを見つけられないまま、終わりまで過ぎ去ってしまったような印象を受けました。
    作品の主題を誘導する、なんてことない一言が会話のなかから引き出されていれば、突き抜けた異世界に吸い込まれそうになっていたかもしれません。

    ネタバレBOX

    灼熱の太陽が照りつける地平線の彼方までつづいていくような砂漠のどこかに井戸があるとの噂をききつけて、探しにやってきた4人の若者たち。

    お目当ての井戸は、水を食べて暮らしている部族の集落にほど近い場所にあった。他の仲間にそれを知らせるために、自分らの住む集落へ伝えにいくタツオ。その間、他の者たちは無断で水を汲んで飲み、飢えをしのぐ。

    ある日、砂を食べる奇妙な男が彼らのもとに現れる。
    最初は気味悪がる若者たちであったが男が無害であることがわかると、徐々に打ち解けて行き、仲間のひとりとして、共に暮らしている風になった。

    そんな光景を目の当たりにしたタツオは、今すぐ男をここから追い出すようリーダーに詰め寄るが、リーダーや他のメンバーも、男は無害であることをタツオに説得。そして自分の居場所を他の人間で穴埋めされたと錯覚したタツオは、水を黙って持ち出して彼らのもとを去っていく。

    井戸の水が底をつき、食料の水があと残りわずかであるということへの危機感や、その貴重な水を黙って持ち出した仲間の裏切りやらで、疲れ果てたサイは、そもそもリーダーがタツオと口論にならなければこんなことにはならなかった、とリーダーを責める。逆上したリーダーは管理するとの名目でサイから水を取り上げる。

    ふと姿を現した、砂を食べる奇妙な男。
    彼の身体が水でできていることを知っていたサイは水を確保するために、いよいよナイフを振り上げる。

    『地平線のかなたまでつづいていくような砂漠』が具現化された舞台美術と長い道のりを歩いてきたという時間の経過が見てとれる衣装とメイク、そこにやってきた若者が生きるために水をやってきたものの、ほんとうに生きていないような、あるいは生きる気力を奪われたような、空疎な感じが役者の表情によくあらわれていて、生きることの厳しさをまざまざと見せつけられながらもどことなく浮世離れしている異世界が構築されていた、空気感がよかったです。
    笑いどころのほとんどない、緊迫感に満ちた作品であったということにも好感を持ちました。
    また、井戸が見つかった喜びもつかの間、井戸の水が少なくなっていくごとに疲労も争いも生まれしまいには信頼関係も消え失せる。その間の心理的な駆け引きも含め、巧いとおもいました。

    ただ、井戸の水が無くなるだろうということは、観る者が誰にでも想像がつくことであるので、作中で行われた心理的な駆け引きも、当然生まれるだろうことが予想ができてしまうので、次のシーンは一体どうなってしまうのだろう、という関心があまり生まれませんでした。

    おそらく、ハラハラするスリルやサスペンスフルな展開はまったく意図していないとおもうのですが、だとすればそれに匹敵する、観客を作品に惹きつける要素は必要だとおもうのです。
    個人的には、水が無いあるいは、水を奪われたという観点から物語に切りこみを入れて、争いごとへと拡大させていく方がより一層、物語の設定も生きてくるようにおもいましたし、シリアスさが伝わるような気がしました。

    物語の重要なファクターである奇妙な砂男の身体に刻印されていた証をみたサキが彼の本性を知って少しうろたえるシーンがあったのですが、彼は一体何者だったのでしょうか。彼らと敵対する集落の者?不幸を呼び寄せる魔物??どちらとも判然とせず、モヤモヤ感が募りました。

    それから、このドラマに登場する若者たちは、水を食べる集落のひとたちが用いる井戸を無断で利用しているのですから当然、集落のひとたちの声というのは何かしら耳に入ってくるものだとおもうのですが。そういった村人の声が会話のなかから引き出されたりしていれば、もっとドラマに厚みが生まれたようにおもいます。

    『はるかむかし、地上には砂を食べるひとがいて、空には星をたべる人が住んでいた。』という内容の台詞は詩的ですきでした。

このページのQRコードです。

拡大