侏儒の言葉 公演情報 侏儒の言葉」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    「愉快な芥川」
    「こんな芥川もありだよね!」をコンセプトに、芥川が描いた短編をもとに軽快なオムニバス芝居に仕立て上げた公演。
    若者の古典離れが進むなか、とても良い発想だと思った。当初は1時間30分くらいの予定だったが、稽古をしているうちに1時間にまとまったという。
    短いが、とても適度な上演時間で、観客は、大人も学生たちも楽しんでいた様子。構成・演出(丸山港都)の手腕が感じられた。
    「きせかえできるねこちゃん」は明治大学の演劇専攻の学生たちによる劇団。劇団名からくるイメージは何かPOPないまふうの軽い芝居をやっていそうだけれど、ミヒャエル・エンデやイヨネスコ原作の本格的な芝居を手がけてきた。と、いっても、この劇団の存在を私が知ったのは昨年の秋だったので、これらの作品は観ておらず、非常に悔しい。というのも、全員が4年生なので、今年はあともうひと公演できるかどうか、という状態だそうだ。
    卒業後は劇団活動の継続はなく、それぞれが演劇の世界をめざすことになるそうだ。学生劇団のメンバーがそのまま持ち上がりで劇団をつくるケースが少なくないので、期待していたのだが・・・・。
    私はこの劇団の主宰・丸山港都さんのセンスがとても好きなので、彼が中心の劇団がなくなるのは寂しい限りです。
    この劇団が使用している明治大学の和泉校舎の教室は週末に急遽大学側の行事で使用予定が入ることが多く、今回の公演も金曜日と日曜日の公演が行えなくなり、土曜日2ステージのみとなってしまった。
    特に金曜日の中止は急だったらしい。せっかく稽古しても公演が半減するなんてまったく気の毒だ。しかし、「演劇が好きでたまらない!
    」という全員の情熱が伝わってくる舞台でした。最後まで見届けたい劇団です。

    ネタバレBOX

    本日はご来場いただき、ありがとうございます」と言いながら、とて感じのよいお嬢さんがにこやかに客席にお菓子を配って歩く。そして、このお嬢さん(山田志穂)は紙芝居屋に変身して「桃太郎」の紙芝居を始める。
    「まさか、桃太郎の項は紙芝居で見せるんじゃあるまいね」と思っていると、桃太郎の鬼退治のところで鬼たちのわーわー騒ぐ声が外から聞こえてきた・・・。突如、ピストルを持ったアロハシャツの金髪男(草野峻平)が乱入。
    アロハシャツを脱ぎ捨てて半裸になり、紙芝居屋に襲い掛かり、「服を脱げ!!」と命令。スカートまで剥ぎ取ってしまう。2人の洋服とりかえっこである。草野は凄い迫力だった。そこにケータイが鳴って犬から「急用で行けない」という電話。この金髪男が桃太郎らしい。どう見ても鬼だけどね(笑)。紙芝居の中で桃太郎は大食漢で怠け者のためデブという設定(笑)。
    次に桃太郎を捜す2人の謎の中国人がやってくる。赤の男(丸山港都)がちょっと藤井隆風のはちゃめちゃで可笑しい。中国人は、赤鬼、青鬼(青い男=乗富由衣)らしく、桃太郎の侵略がいかに理不尽だったかを説き、「絶対許せないあるね」と言う。このあたり、戦時中の日本軍を批判する現代中国人の言い分のようである。
    「きび団子半個で雇った」というきじ(中村優作)や犬(中島綾香)が駆けつけてきて桃太郎に身の危険を知らせる。猿(寺田遥)は蟹と戦って負傷中とか(笑 サルカニ合戦?)。
    中国人にお土産にもらった箱をあけると、中にはきび団子が。きび団子を食べた桃太郎の腹の中で時計が鳴り出し、きび団子時限爆弾が爆発する。
    「二人小町」。美女の小野小町(中島綾香)のもとに黄泉の使いの黒兎(山田志穂)がやってきて「地獄へ行きましょう」と誘うが、まだ死にたくない小野小町は相思相愛の深草の少将の子を身ごもっているからまだ死ねない、連れて行くなら、自分よりブスで独身で黄泉の国に行きたいと言っている玉造小町(乗富由衣)にしろと言って、使いを追い帰す。深草の少将は小野小町に百夜通いを命じられ、「百夜私の家に通ったら、思いを叶えてあげましょう」と言ったが、とうとう少将は小町に会うこともなく死んだ伝説がある。つまり、小野小町は黄泉の使いにも嘘をついたわけだ。玉造小町は使いの口上に激怒して追い帰す。再び、小野小町のところに行った使いを小町は色仕掛けでまるめこみ、命を永らえる。使いは小町との思いを遂げようと屋敷に行くが、陰陽師の命を受けた三十番神(草野峻平)が屋敷を守っていて入れなかった。
    そして月日がたち、小野小町と玉造小町は年老いた乞食(丸山港都と中村優作)となって都大路に座っている。2人とも「長生きしてこんなになるなら、あのとき黄泉の使いと地獄へ行ったほうがましだった」と後悔している。通りかかった黄泉の使いに「地獄に連れて行ってくれ」と頼むが、使いは冷淡に拒絶して立ち去る。話の中ではこれが一番面白く、山田志穂の黒兎がチャーミングだった(兎飛びで移動する 笑)。
    「羅生門」。生活に困窮し、懊悩する下人(丸山港都)が、羅生門の下で死体の山を漁る老婆を目撃するが、やがて生きる意欲を取り戻して、羅生門の下から去る話。
    下人の心の中の声を4人の俳優(草野峻平、山田志穂、中島綾香、乗富由衣)が演じるが、配役を見なかったので、この4人も困窮者たちなのかと思ってしまった。下人が立ち去ろうとする瞬間、「あ!」と4人がストップモーションで見送るラストが印象的。
    3話の間に文学者の名言を読み上げる「侏儒の言葉」Ⅰ(丸山港都)とⅡ(草野峻平)が挟まるが、個人的にはⅠの「恋愛、結婚についての名言」がなかなか興味深かった。
    最後に再び中国人が登場し、きび団子爆弾が爆発した後、島で優雅に暮らす鬼たちの様子が紙芝居に登場する。ブラックユーモアの結末だ。
    前回の「DAILY」のときより、山田志穂の印象が強く残った。若いときの宮崎美子みたいで可愛い。明大のいろんな芝居に出てお馴染みの草野峻平が
    ここでも存在感を発揮。痩せる前のパパイヤ鈴木に似ている。
  • 満足度★★★★

    美味しい芝居!
    芥川の作品は魂を盗られない程度に好きだ。だから、今回の公演は芥川の短編を繋ぎ合せたもので、それだけに何粒ものキャンディを一度に口に放り込んだような楽しい味だった。

    以下はネタばれBOXにて。。


    ネタバレBOX


    ワタクシ的には「楽しい芥川」もありだ。はちゃめちゃだけれど、「不思議な国のアリス」に登場するようなうさぎのキャラクターも立ち上げちゃって、とことん突き抜ける。

    「桃太郎」は実は侵入者だったとした芥川の短編をコミカルに描く。放つセリフはひじょうにセンスがいい。コメディ仕立てだった。

    「二人小町」では二人の女人にしてやられたうさぎは、「男は常に女人に騙される。理性ではナンジ女人を近づくなかれ。と囁き、しかし本能ではナンジ女人を避けるべからずと囁く。女人は男にとって諸悪の根源だ。」と結論付ける。
    確かに女は世間ではか弱い者、優しい者なんて言われているが虎よりも強い夜叉のようだ。男の心も身体も自由にすることが出来るのは女だ。しかしそんな女を心から憎む事は出来ないという男心の心理をついた作品(笑)

    「羅生門」でも音楽といい、演出といい、勢いがあった。全体的におとぎ話のような芥川作品に仕上げてあって、おどろおどろしくない。コミカルでお茶目な舞台だった。お勧め!(^0^)

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