おうもの 公演情報 おうもの」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.5
1-4件 / 4件中
  • 201002261400
    観劇

  • 満足度★★

    青木さんの力量が優越しているために
    ゴジゲンの舞台でお馴染みの青木さんの旗揚げ公演。
    まず、会場に入った瞬間から、既に劇世界の澱んだ空気感が構築されたセットに感服しました。
    どこの村とも、いつの時代とも特に明かされないけれど、日本のどこかに必ずありそうなストーリー設定が、何ともおどろおどろしい空気で、胸に迫りました。
    ただ、残念なのは、作演の青木さんご自身が、主要な役の演じ手でもあるために、青木さんの演技は、作演の期待通りの表現である反面、他の役者さんへの目配りが手薄な感じがして、舞台全体のトータルイメージを損ねたのは、痛し痒しだった気がします。
    いずれにしても、青木さんの新たなる力量を再認識する公演でした。次回の更なる進化に期待したいと思います。

    ネタバレBOX

    三保野の歌う子守唄のメロデイが何度聴いても違っているように感じ、大変気になってしまいました。
    青木さんの脚本は、できるだけ説明台詞を廃して、情況を表現しようと苦慮されたご様子で、終盤まで、東升、東世、満知の関係がよくわからなかったのが、内容の把握に支障をきたした点がありました。
    また、初めの内は、登場人物の出はけを客席から見えない場所まで、入らせておきながら、途中から、退場した人物が、舞台袖で屈んで出を待つようにしたのにも、違和感を覚えました。途中までは、登場していない人物は見えなかったので、隠れて立ち聞きしているかのように誤解を与える気がしました。
    キャストは、やはり青木さんご自身の演技が一番光って見えました。特に、目を刺された時の嗚咽の声は本当にリアルで、ぞっとする程。改めて、巧い役者さんだなあと感心しました。
    役者さんの演技のタイプがマチマチなのも、ちょっと残念に思いました。
    台詞のない間の感情表出がほとんどなされない方もいらしたので…。
  • 満足度★★★★★

    世にも美しく恐ろしい寓話
    どこだかよくわからないその陰鬱で閉鎖的な村社会にはそこだけにしか流通していない独特の声のトーンや、這いつくばってでも逃げ出したくなるどろっとした不気味な重苦しい空気感、血の匂いが渦巻くような気配がある。
    理性が音を立てて崩れ去るその一歩手前、いつ何時誰が死んでもおかしくない綱渡りの危うい世界で疑心暗鬼になりながらも生きることを選択しつづける人間の執念を見た。

    ネタバレBOX

    ※ラストシーンに関する記述があります。未見の方はご留意ください。


    秋の終わり。鈴虫が鳴き、弱々しい光が差し込み、木枯らしが吹きすさぶ、どこかの村。
    藁に覆われた簡素な居間に赤子を孕んだ女(三保野)が子守唄をうたっている。
    夫妻(振根、三保野)は閉鎖的なこの村を出て暮らすことを切望していて、そのためには金が要る。たくさんの金が。しかし今日は鼠の皮しか獲れなかった。これではいくらの金にもならない。

    ある日、振根の弟・東世が犬を拾ってきた。
    どこかで死んでいたらしい。米を持ってくるとあれほど三保野と約束したというのに。

    その頃、満知は東世にある疑いを持っていた。
    それは行方不明になった自分の息子を殺したのは東世ではないか?ということ。
    なぜって、一昨日死んだ村のばあさんの犬を東世が殺しているところを見たと噂で聞いたのだ。

    疑惑を胸に夫妻の家へあがりこみ、犬はどこにいるのか問う満知に振根は気持ち悪くて捨てたと答える。そこに東世が現れて憎悪が沸点に達した満知は鋭利なナイフで東世の目玉をぶっ刺す。

    断末魔の叫び声をあげる東世などお構いなしに満知は夫妻の家を乗っ取ることを宣言。更に夫妻の有り金すべてをふんだくる。

    この村で生きるためにはこれ位の代償は仕方がない。それがルールで大人の責任なんだろうか。ふたりの兄である東升はお願いだ、わかってくれと振根に懇願する。

    家も金も失って希望を遮断された夫妻の気持ちを繋ぎとめるものはいよいよ絶望しかなくなった。盲目になることで罪をペイした東世は何事もなかったかのように大好きな三保野のために米を持ってくるよ、と無邪気に出かけ、物質的に満たされても子どもを亡くした喪失感を拭い去れない満知はもうなんだっていいよ。と自暴自棄に陥り、そんな満知を気が狂いそうになりながらも支えていく東升がこれから背負っていく十字架は重く苦しい。

    そんなラストを象徴する”おうもの”とは血縁関係を考慮した運命論や原罪を守ること、罰を克服する機会を奪われないために追いかけることで、ゆるやかにすべり落ちる疑惑が解決されなくとも信じる心を失えないのはきっと、良心の呵責のせい。問題は霧につつまれて、そのまま遠い空に消えていくような、刹那。
    「光がないんだ 風がないんだ 靄があるんだ さんにんいるだけなんだ」
    ひとりごとのようにそうつぶやく三保野が儚く美しい。
  • 子守唄の威力
    劇中に出てきた子守唄でどぎつさが増してました。
    神経が研ぎ澄まされる芝居でしたね。

    これからもがんばってくださいね。
    楽しみにしています。

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