百日紅、午後四時 公演情報 百日紅、午後四時」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    鑑賞日2022/10/27 (木) 14:00

    座席1階

    見ていてホッとできるホームコメディ。だが、そのさわやかさの中に物足りなさがあるのはなぜだろう。それは、少しばかりお行儀がよすぎるという物語だからだと思う。

    同じ家族物を描いた舞台で、最近見たのは劇団道学先生、中島淳彦作品だ。次々と家族内の問題が明らかになり、さらに母親の家を売ってそのお金を分け合って、などという皮算用が出てくるのもよく似ていた。中島作品はよく言えばインパクトが強く、悪く言えば少々お行儀が悪いエピソードが主流だ。ラッパ屋鈴木聡のホンは、舞台を流れる空気が落ち着いているし、「これは大ごとにはなりそうにない」という安心感みたいなものが流れている。それが、私にとっての物足りない理由だと思った。

    とはいえ、そのお行儀の良さを、市毛良枝がエレガントに演じたのには目を見張った。エレガントでありながら付け入るスキのない磨かれた演技とでも言おうか。他の俳優さんの中で抜きんでていた。

    舞台は東京郊外の一軒家という設定で、庭の百日紅が美しい夏だ。四人兄弟の長女役が市毛。彼女は事故で夫を亡くしているが、亡くなった場所が若い女性に人気のある裏原宿で、彼女の家に突然若い女の子が「お父さまにはお世話になりました。お線香を上げさせてください」と飛び込んでくるところから波乱が始まる。
    確かに不倫をうかがわせる設定だが、主人公の市毛の落ち着いた態度や若い女性役(文学座の平体まひろ)の過剰なまでの泣きっぷりから、これは男と女の関係ではないな、と何となくだが感じてしまう。これが強く不貞を匂わせる空気だったら、まだ舞台に緊張感が走ったのかもしれない。そういうところが物足りなかったのかなとは思う。
    でも、それは市毛のエレガントなたたずまいと裏表だから、飲み込んでいかねばならないのかもしれない。

    あと、舞台上のせりふで「人生100年時代だから、60歳からは第二の人生」と出てくるが、同年代の自分としては人生100年時代だから60を超えて何かをしましょうと勧められるような空気には抵抗感がある。そもそも健康寿命は男女とも70代前半に過ぎないのだから、66歳の主人公が自分の人生を午後4時に例えるのもちょっと現実感を欠く。「豊かな人生、100年時代」なんてそもそも幻想だと思っている観客には、この物語は響かない。ちょっと厳しいけどあえて星三つ。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    #市毛良枝 #陰山泰
    #福本伸一 #朝倉伸二
    #岩橋道子 #弘中麻紀
    #瓜生和成 #平体まひろ
    (敬称略)
    2回目。
    長年、共に作り上げてきた空気感というものは、確かにあると実感する。
    ラッパ屋の皆さんが生み出す兄妹の阿吽の呼吸の安心感たるや。その流れるような柔らかく滑らかな空気がなんとも心地よい。それは勿論、市毛良枝さんや朝倉伸二さんといった、気心の知れた客演さんたちがより効果を高めていることは言うまでもない。そこに更に瓜生和成さんや平体まひろさんといった新しい力が彩を与える。素晴らしい演劇が確かにそこにあった。
    往年の日活大スターのような瓜生さんに吹き出してしまったことは、もう隠せない。それでも、3枚の団扇の点と線を見つめる彼の葛藤は居間にあり続ける。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    #市毛良枝 #陰山泰
    #福本伸一 #朝倉伸二
    #岩橋道子 #弘中麻紀
    #瓜生和成 #平体まひろ
    (敬称略)
    物語には一石を投じる事件が必要。今作には同じ色のある二石が投じられる。少し風変わりな石と、破壊力抜群の石。
    風変わりな石は場にそぐわず混乱させるけれど、少しずつ馴染んでいく。悪気のない個性というのは受け入れられていくという、なんだか社会に対する安心感みたいなものを感じた。
    破壊力抜群の石は台風のようで、木をなぎ倒し、トタン屋根を引き剥がし、ポリバケツを吹き飛ばす威力。そして、台風一過には例に漏れず透き通るような晴天と清々しい空気が充ちる。
    古き良きあの時代と言いたくなる昭和が、あの居間と縁側と庭に匂い立つ。
    風速54m/s以上の台風を担った平体まひろさんが素晴らしかった。仏壇に気づいた時の表情でいきなりKO。二度目の上陸で全てを打ち明ける姿にみんな痺れるはず。スポットの中、瞳を潤ませ無言で佇む姿で見事に苦悩を滲ませた。
    大好きな瓜生和成さんは、ラッパ屋客演に続いて若さを纏う。上司や父を演じることが多くなった中で、この立ち位置がなんだかくすぐったい。ツルツルの腕や脛で周囲との年齢の違いも可視化していた。乾杯で風変わりな石が缶ビールを飲み干す時、彼だけは口をつけず、新しい生活が始まった報告にも彼だけは表情を曇らせた。それらは彼の言葉や行動と裏腹で、苛立つ本心と思いやりが心の内でせめぎ合う葛藤を感じさせ、切なくなる。
    終演の挨拶に瓜生さんと平体さんが並ぶ姿が感慨深く、拍手に自然と力がこもった。

    追記
    ラッパ屋を観るきっかけになったのは、G2作品で見つけた美女、岩橋道子さんを観るためだった。あれから何本拝見しただろう。相変わらずの美しさにウットリ。
    もちろん今作は可児市プロデュースで、ラッパ屋ではありません。

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