実演鑑賞
満足度★★★★★
観劇後だいぶ日が経ったので記憶も朧気であるが、舞台の光景は比較的鮮明に刻まれている。面白い戯曲であるが、秋元作品中あまり話題にならず、データも少ない。
以前新国立劇場の上演を観たがもう八年前の事、栗山演出だったか・・彼っぽい舞台の使い方で、装置に目が行って役者の話が耳に入らなかった(話の筋が追えなかった)記憶がある。今回は文学座アトリエにて松本祐子演出という「マニラ」再観劇の有難い機会であった。
こういう話だったのか、と・・全く覚えていなかったが、女衒の秋岡伝次郎と女郎たち、領事と職員、軍人、植民地からの解放運動に協力する日本人らが見事に絡んで、日本人の「外地」との関わりを先行的に描いた作品は批評性に富んでいる。舞台は前半が領事館、後半は解放運動の拠点として伝次郎が出資した建造物(の残骸跡)、そして再び領事館に。「私」的事情と「公」の事情が糸で衣を織りなす如く絡み合い、刻々と世界の変化をもたらす。三好十郎を師とする作者の面目躍如たる戯曲であるが、まだ咀嚼し切れていない。舞台は面白く興味深く観たが、芝居がスポットを当てたこの時代の本質、対外関係における日本のあり方を、もっと汲み取らねばならぬ気がする。(これは個人的な感覚であるが。)
実演鑑賞
満足度★★★★
高崎領事役の浅野雅博はじめ、いい俳優がそろっている。明治末期のマニラという特殊な場面を、そこに確かに生きた人の存在感と歴史の厚みを持って現出させた。昨年、新国立劇場演劇研修所の修了公演で見て、それはそれでよかったが、文学座はやはり格が違う(いまさらな感想を失礼!)。
それぞれの人物がしっかりしていた。特に女たちは同じような境遇でいて、全然違って5人5様。もん(鈴木結里)は無邪気な恋心が可愛く切ない。はま(鬼頭典子)は姉御肌。いち(下地沙知)は酒におぼれて、自暴自棄から平穏を引っ掻き回す厄介者。タキ(鹿野真央)は男にもてるのに、男に持たれず凛としている。くに(増岡裕子)はおせっかいもの。最初の顔中すすだらけの海賊のようなぼろ姿から、着替えた後のきれいどころへの変身が鮮やかだった。
「南洋の海をコップでくむような、キリもないことを人間は繰り返している。」
「あの人は若い。理想がある…わたしもむかしはそうだった」
「日本人は夢が好きだ。理想が好きだ。しかしわれわれ日本人には、理想とか主義とかを、本気で最後までやり通す能力があるんだろうか」「日本人は夢を持つのが好きだ、その夢に熱狂して酔うのが好きだ」
などなど、いいセリフがちりばめられている。
実演鑑賞
満足度★★★★★
2回目。どうやったって #下池沙知 さんしか観られない。洋酒の海に溺れる、神経をヤラレたヨレヨレ金魚をモナカや薄紙のポイででもいいから、なんとかして、文字通り掬ってあげたかった。イイ客が付かなかったイチを救い出したくて切なかった。
激動の彼の地で、揺らぎ逆転する信頼や主従関係。裏切りの畝りは個人の領域を越え民族全体の空気に。それはまるで現代のネット世論に左右される世界のよう。
そして戦争を誘導する政治家や資本家たちに振り回される国民、民衆の憐れさが、誰からも疎まれ蔑ろにされ忘れられるシズの姿に映る。
今こそ、観ておくべき作品。
実演鑑賞
満足度★★★★★
9月11日(日)に観ました。戯曲もいいし、演出もいいし、役者さんたちもいい、大いに満足できるお芝居でした。しかし19世紀末のマニラが舞台の作品ですから、私は、この作品の歴史的背景を自分がどれだけ理解できていたか心もとなく思い、観た後からではあっても、この作品の理解を深められればと、アフタートークを聞きました。しかしアフタートークは、役者さんの紹介や、役者さんの初舞台の思い出話などが主で、私が作品の理解を深めることにつながるような話はありませんでした。ここは、がっかりでした。
実演鑑賞
満足度★★★★★
【初日】とにかく #下池沙知 さんを観てほしい。演劇好きなら観なきゃダメだ。登場したその瞬間から"いち"が"いち"だった。終演まで1ミリの隙もなく"いち"が生き抜いた。俳優とはそういうものだと理解してはいるけれど、それを本当に目の前で観られる奇跡に、誇張ではなく目が離せなくてずっと追いかけながら感謝した。
正直に言ってしまえば、彼女の"もん"を観たいと思っていた。ちょっと弱い面を見せる役がフィットすると思えたから。と同時に"いち"を観る予感もしていた。登場する女性の中で最も振り幅の大きい人物で、壊れていく人間の弱さが滲み、クルクルと表情を変える。下池沙知さんの雰囲気とはかけ離れた人物に思えるけれど、だからこそそのキャスティングは面白く魅力的であり、極上の演劇体験ができる。自分の存在価値や意義を見失っていき、人を羨み、他者を信じることもできなくなっていく"いち"。グラスを煽る度に、少しずつ、そして確実に落ちていく。人の心の奥底を見透かしてやろうとするような鋭い上目遣いを観ながら、恐れをなす我が心の穢れを実感する。
それでも、他者の秘密を暴きながら絶望の縁でジタバタする"いち"を救い出したくて、身請けする覚悟で、20日までにもう一度アトリエに行かなければならない気がしている。
何度か観てきた大好きな作品。美術も演出も真新しさや特別なことはないけれど、丁寧に創られていた。
その中で違いを一つ挙げるなら、シズの存在の意味や意義の深まりだろう。寺田路恵さん演じるシズの鋭い眼光がとらえた世界や人間の愚かさについて考えさせられる。とても印象的だった。
感染症に対する恐怖を乗り越えて観ていただきたいホンモノの演劇がココにある。観逃さないで。
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見たもの② 文学座アトリエ公演『マニラ瑞穂記』 ほんっ………とーーにすみませんでした🙇何年ぶりだよっていう🥲 (別の趣味と仕事での制限を考えると難しかった) 久しぶりにがっつり芝居を見られて本当に嬉しかった。ラストシーンで、行間っ… https://t.co/mvxe5RK3rj
約2年前
文学座公演『マニラ瑞穂記』全公演が終了いたしました。 お越しいただいた方、気にかけてくださった方、 誠にありがとうございました。 実に…幸運で濃密な時間でした。 活力にしていきます。 まずは秋らしいことをしようと思います。 またお会いいたしましょう。
約2年前
先日事務所の先輩と一緒に文学座公演「マニラ瑞穂記」を観劇いたしました! 歴史を勉強してこなかった僕でも、その頃生きていた人達の過酷さが感じられ、特に女性陣のエネルギーがギラギラしていて圧倒されました 個人的に高崎さんと秋岡さんのや… https://t.co/FIupvHycLA
約2年前
文学座公演 「マニラ瑞穂記」 昨日無事に全公演終了いたしました。なんとか完走できました😭 本当にありがとうございました! 足を運んでくださったお客様への感謝と毎日公演ができたことへの感謝。 とても愛おしい作品でした。… https://t.co/t1R1XPSwWB
約2年前
文学座公演『マニラ瑞穂記』終演しました。ご観劇くださったお客様ありがとうございます。あぁ、全公演中止することなく開演を迎えられたことはすごいなぁ。スタッフのみんなに支えられて舞台に挑めたと思います。
約2年前
結里さん@yuri_nene にお誘いいただき 1年半ぶりに文学座アトリエ マニラ瑞穂記観に行きました 加速するエネルギーにぐっと心掴まれました 細やかな表情や仕草の変化もよく見えるからアトリエの公演って面白いなぁ 本科の卒業… https://t.co/0LqlErWpEt
約2年前
文学座公演『マニラ瑞穂記』 https://t.co/W18eIYHO8u とっても面白かったです。(*^_^*)ノ あの時代の人たちの生きている鼓動を感じました。 たくましい女性たち、独立運動家、日本帝国軍人、そして人間味… https://t.co/UpWiBQpktp
約2年前
昨日観た、文学座のアトリエ公演 「マニラ瑞穂記」 手前味噌な感想ですみませんが、素晴らしかったです。 各役者の役の説得力が骨太で 特に女性陣、からゆきさんの力強さは見ていて痛快。 中でも鬼頭さんの言葉の端々から滲み出る、凄みが… https://t.co/G698AY9Etp
約2年前
最近、シスターズも大きくなって🍀ママの相手をしてくれなくなったので(笑)やっと芝居好きなおばちゃん本領発揮して😊このTwitterも観劇の備忘録になるかもだわ(笑) この間、文学座アトリエ公演『マニラ瑞穂記』を観てきた!! 〇十年… https://t.co/IlGAej2Jzx
約2年前
因幡屋ぶろぐ更新。文学座公演『マニラ瑞穂記』 初日を観劇して1週間近く経過してしまったが、日にちが経つごとにいっそう重く深く、痛みさえ感じさせます。https://t.co/SaeZY0CSWN
約2年前
文学座『ガラスの動物園』10/11.12@練馬文化センターをきっかけに「ねり演」の会員になりませんかー? 入会金1000円、月会費2700円です♪ アトリエ公演『マニラ瑞穂記』の入口ラックにもこのチラシ置かせて貰ってます😊… https://t.co/MTl419RGHQ
約2年前
「それでも生きていくという力が湧いてくる」秋元松代の戯曲をもとにした公演の感想 「文学座公演『マニラ瑞穂記』感想まとめ」https://t.co/5OdJK9Nw4D @bungakuzaさんから #編集部イチオシ
約2年前
出演中の文学座公演『マニラ瑞穂記』、ステージナタリーに取り上げていただきました。舞台写真たくさんです。 気になった方は是非是非文学座アトリエへお越し下さい! 明日は13:30と18:30です。 https://t.co/3dnne29sRm
約2年前
出演しております 文学座公演『マニラ瑞穂記』 初日と2日目が終わりました。 9月20日(火)まで 信濃町の文学座アトリエでお待ちしております ぜひお越しください! https://t.co/HIHbgshqqD
約2年前
文学座公演『マニラ瑞穂記』初日の幕が開きました。観に来ていただいたお客様に感謝です。今日も誰かの為に、舞台に向かいたいと思います。公演のパンフレットが素敵です。是非手に取ってみてください。
約2年前
文学座創立85周年を迎えました。 そして9月本公演『マニラ瑞穂記』初日です。 (9/6~9/20上演) 今後とも文学座を宜しくお願いいたします。 ①3月アトリエの会『コーヒーと恋愛』 ②6月本公演『田園1968』 ➂地方公演… https://t.co/eL2HdFgsOD
約2年前
【文学座研修科】 文学座公演 『マニラ瑞穂記』 作:秋元松代 演出:松本祐子 日程:2022年9月6日(火)~20日(火) 場所:文学座アトリエ 研修科演出部から ✨宮城円香(研修科2年)✨ がスタッフとして参加しております… https://t.co/NRGtFM0SzN
約2年前
舞台『マニラ瑞穂記』のプロモーション映像を同期の川合君が作ってくれました。本番まであと少しです。2022年9月6日〜20日 於 文学座アトリエ(信濃町)🇵🇭 https://t.co/YS2y4jN7vA
約2年前
<文学座公演『マニラ瑞穂記』アフタートーク登壇者変更のお知らせ> 9月9日(金)の回のアフタートークに登壇予定でした長塚圭史氏は都合によりご登壇頂けなくなりました。 楽しみにされていたお客様には大変申し訳ございません。 朝日新聞記者の藤谷浩二氏と演出の松本祐子との対談になります。
約2年前
『マニラ瑞穂記』のプロモーションビデオが完成しました!登場人物をわかりやすく説明しています! https://t.co/dtlmFCw7eq 文学座公演『マニラ瑞穂記』 作:秋元松代 演出:松本祐子 2022年9月6日(火)~20日(火)@文学座アトリエ 動画作成:川合耀祐
約2年前
文学座公演『マニラ瑞穂記』絶賛稽古中です🌿 夜割の日(9/6・8・10)と、9/11(日)は残席かなり少なくなってきました🙇🏻♀️💦 早目のご予約をお勧め致します‼️ https://t.co/J0WZHHiXsD #文学座 #マニラ瑞穂記
約2年前