HAMLET 公演情報 HAMLET」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

    学生とプロのコラボ~とても素晴らしい舞台でした!
    「社会に開かれた大学としての文化発信」の一環として行っている企画だそうだが、想像していた以上に素晴らしい公演でした。しかも入場無料。
    少子化を見据え、学生集めの宣伝も兼ねてるんでしょうけれど、
    無料カンパ制にしたら、みなさんそれなりにお金を払うのでは、と思いました。
    こんな大きな劇場でプロのスタッフに支えられ、公演できるなんて学生たちにとっても素晴らしい想い出になるでしょう。今年で6回目だそうで、校友会報にもお知らせがなく、家族に明大OBがいるのに、全然知らなかった。
    知ってたら全部観たかったので悔しい。
    シェイクスピアファンのこりっち読者にはぜひおススメします。
    来年は「夏の夜の夢」だそうです。

    嬉しかったのは、まず、会場に入ると、中世のステキな舞台衣装を着た人たちがいる。ロビーパフォーマンスですって。もう芝居は始まっているのだ。彼らは劇中で旅役者を演じている学生たちのパントマイムグループ(nani-sole氏の指導を受けている)。
    上階へ行く長いエスカレーターに乗っていると、階下へ行くエレベーターに乗った彼らが人形のように微動だにせず、すべるようにすれ違っていく。
    夢のような光景。まさにシェイクスピアの世界にタイムスリップしたような。
    途中階にも別の役者が貴族の扮装で乾杯の場面を演じていたり、街灯を手にした道化がロビーの椅子にすわり、あたりを伺っていたりする。特にすばらしかったのは、「鏡の間の決闘場面」と題して、黒と白の騎士がパントマイムでフェンシングを行っている場面でした。
    これらのパフォーマンスは劇中で演じられるものとは別の内容なので
    す。劇場に入ると、客席の間も、パントマイムの俳優が優雅に動き回っていました。
    いやがうえにも期待感が高まっていく・・・・。

    ネタバレBOX

    学生たちの公演ですがプロスタッフと一緒に作り上げているのです。
    衣装デザインは「エリザベート」などでお馴染みの朝月真次郎氏。生地のパタンナーには文化女子大の学生が協力。音楽はピアノ、ヴィオラをプロの演奏家が生演奏し、心理の微妙な揺れも表現。行軍などを表わす録音音楽は明大吹奏楽部が担当。フェンシング部や歌舞伎研究会も協力しており、プロだけでなく、大学も枠も越え、学生が学生を指導するという方式も好ましい。
    そして、この劇は、既成台本を使うのでなく、学生たちが「コラプターズ」という翻訳班を作って、原語から翻訳して一から台本を作り上げていく。シェイクスピアの言葉だけでなく、「タメ」だの「マジ」「シカト」「自主休講」などの学生言葉も交え、学生俳優が考えた意訳やギャグも取り入れられている。
    コラプターズの訳は松岡和子や小田島雄志も高く評価しているそうで
    会場にはその台本の制作過程も展示されています。

    男女混合のトリプル、Wキャストで、私が観た回は女ハムレットと男オフィーリア版でした。女性が男役というと宝塚を連想するが、これは違った。
    鈴木由里は小柄で、いわゆる男役としての見た目のカッコよさはない。
    しかし巧い!口跡が良く、膨大なセリフを暗記するだけでも大変なのに、心に響くようなセリフを言う。ハムレットという青年の存在が心に染みてくるようだ。
    これまで私が観たプロの俳優は苦悩する複雑な青年で役にあまり共感できなかったが、鈴木ハムレットは身近に感じた。暗いだけでなく、小生意気で
    小粋で、近年の社会的事件にもあった母の再婚相手を殺してしまう
    中学生にも共通する危うさがある。
    「悪いハートはポロリと捨てちゃって清い心でお生きなさい」とガートルードを突き放したときの表情に浮かんだ虚無が印象的。クローディアス(薄平広樹)は声もよく、プロ並みの演技で学生とは思えない。父の亡霊(正木拓也)の威圧感、ポローニアス(米澤望は1年生!)の軽妙洒脱さも忘れがたい。端役では墓掘りの草野峻平が光る(ご贔屓劇団「声きも」所属)。ガートルード(加藤舞)は美しいが滑舌が悪く、演技はイマイチ。王妃というより港町のスナックのママみたいだ。ハムレットが詰問し、衣装の黒のフリルスカート部分が脱げ、赤のミニドレス状態になることで娼婦の面が強調されるのが面白い。ガートルードと義弟の結婚発表のシーンはハンドマイクを使ってコンサート風で若者らしい演出。男オフィーリア(川名幸宏)は思ったより平凡で印象が薄かった。シェイクスピア時代の女形として演じたのかもしれないが、性の反転の妙味を出してもよかったのでは。オフィーリアが摘むハーブの花々に風船を使ったのもアイディア(花の色と同じ)。ハムレットが仕組んだ劇中劇がパントマイムの役者によって「人形ぶり」で演じられる。操り人形だが、義太夫調の語りに載せ、歌舞伎の「き」=拍子木を使い、よく言われるところの近松とシェイクスピアの共通点を思わせた。
    なるべくノーカット上演が監修の原田大二郎特別招聘教授のモットーだそうだが、「ハムレット」は長すぎてイギリス使節のくだりがカットされた。
    そのため、王冠を宅配便のお兄さんが届けるのだが、周囲の学生からは
    「何で宅配便なの?意味わかんない」の声が。短いセリフを入れたほうが親切だったかもしれない。
    舞台美術はプロの林いずみ(夢工房)。舞台下手奥のファイバー状の吊り物が操り人形の糸のようでもあり、オフィーリアが掴まえようとした柳の枝のようにも見え、印象に残った。
    舞台美術と言えば、日大芸術学部の卒業公演では学生案がコンペにより決められている。プロ一任でなく、学生のプランをプロがアドバイスする形で作ってもよいのでは。
    カットしたとは言え、休憩15分を挟み、3時間30分。見応えがありました。
    私はシェイクスピアものは「シェイクスピアって面白い」と思わせたら成功だと
    思っているので、その意味ではこの公演は大成功だと思う。長く続けてほしい企画です。

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