TRACE / MENNONO 公演情報 TRACE / MENNONO」の観てきた!クチコミ一覧

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  • 水棲人現る
    パル・フレナックという1957年ブダペスト生まれのダンス振付家によるソロ作品集。東京での公演は初めてらしく、もちろん私も初めて見る。
    チラシの紹介文に、両親が聴覚障害者だったと書いてあり、そういう環境が作品にも神秘的なオーラというか、something specialなものを付与しているのではないかと期待してしまうのは、もちろん単なる妄想だと重々承知はしているが、この公演を見てみようと思うきっかけになったこともまた確か。
    似たようなケースで思い出すのは、ジャック・ニコルソンが主演した「カッコーの巣の上で」という映画で、精神病院の看護婦長を演じて、ニコルソンとともにアカデミー賞を獲得したルイーズ・フレッチャーという女優。彼女も両親が聴覚障害者だったそうだ。病院内で悪ふざけをやめないニコルソンをガラスの窓越しににらみつける彼女の憤怒の表情が今も記憶に残っている。

    ネタバレBOX

    演目はまず、「MENNONO」という15分ほどのソロ作品をクリシュトーフ・ヴァルナージュとパル・フレナックという親子ほど歳の違う二人が順番に演じる。段取りなどはほぼ同じだが、動きが違っているということはつまり即興が入っているということだろうか。いでたちはキャップ、ゴーグル、海パンという競泳選手のスタイル。前半は奥の壁に照射される三角形の照明の中で、手足が胴体にからみつくような独特の動きを見せる。本人の意志で動かしているときもあれば、手足が別の生き物のように体を這い回ることもある。後半は舞台中央に進み出て、床一面に広がっている布の中央部分に立ち、そこに体を通す穴が開いていて、その縁を腰に巻きつけるとまるで床全体に裾が広がる巨大なスカートを穿いたようになる。そして前半と同様の体にまとわりつくような手と腕の動きを見せる。
    若いヴァルナージュは体の柔軟さを生かして、ちょっとアクロバティックな感じもあった。一方、体形的にはそれほど変わらないフレナックは、マイムを思わせる手の細かい動きに特徴があった。

    休憩なしで次に上演されたのが「TRACE」という30分ほどの作品。最初に登場したヴァルナージュが演じた。前半でフレナックが同じ作品を演じたのは、後半にも出演するヴァルナージュの休憩時間を作るためでもあったのだろうと思う。この作品でも水着はそのまま。ゴーグルとキャップの替わりに水掻きのフィンを足にはめて登場。床には四角を描いて細い光があたっている。前半と大きく違うのは、床に転がる場面が多いこと。飛び込んだり泳いだりという動きもあったから、照明で区切られた四角い部分はプールなのかもしれない。途中でキャップをかぶったりパンツを脱いだりまた穿いたりの大熱演だった。

    作り手はいろいろと深い意味を作品にこめているのだろうと思うが、見る側からすると、水着の男の異様な動きをひたすら眺めていたということになる。深い海から現われた謎の水棲人。そんなSF的な状況を想像してみるのもいいかもしれない。

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