満足度★★★★
戦争が終わって,もう半世紀も過ぎてしまった。
私は,演劇の中に「政治性」を持ち込むのは好きではない。たまたま社会派のドラマがあっても,気がついたらその意識もなく観ていることが多い。さらに,社会の風俗などにドロドロとふれるようなミュージカルも好きではない。だから,意外と,子ども向けのミュージカルとか,チェーホフのようなものを選んでしまう。
戦争が終わって,もう半世紀も過ぎてしまった。われわれは,まさに,戦争を知らない子どもたちである。だから,BC戦争犯罪人などという物語を見ても,意識が明確にならない。そもそも軍人というのは,「お国のために」を送り出された立派な人たちだったはずだ。しかし,戦争に負けてしまったら,あの人たちは何をやっていたのか,と糾弾された。
軍人にも,格付けがあった。とりわけ偉いのは,海軍だった。しかし,米内光正やら,井上成美などの話をたくさん読んでも,よくわからない。家庭人としては,失格な人も多い。結局,国を守ることは尊いけれど,実戦になると,その本能は常に殺人未遂罪なのだ。「南十字星」の輝く南方で,一体日本軍人はどう思われていたのだろうか。
オランダという国は,日本には,なじみがある。日本人が,最初に西洋かぶれになり,西洋演劇などに夢中になっていく最初のきっかけは,オランダ語というものだった。そのオランダは,インドネシアで日本軍とぶつかった。オランダをけちらす。オランダ統制は,なんだか,映画『ゾロ』に出て来るスペイン本国なみだ。
この国に日本は,ポーズとして,オランダからの開放を支援する友好国を演じた。しかし,現地にいてなじむと,そこを完全に植民地化しようとする気運と,遠からず,自力で建国させようという同化との股裂き状態になった。「南十字星」の主人公の兄は,珍しい例だが,武器をアメリカ軍に渡さず,インドネシア独立に加担する。
主人公は,間の悪いことに,この裏切り行為の責任を一手に引き受け,絞首台に登ることになる。かつて,愛しあった恋人は,インドネシア人でもあったほど,彼は,インドネシアに友好的な人間だったのに。ミュージカルの前半は,民族音楽一色の世界。そして,後半は,子どもには何のことか良くわからない戦争裁判の顚末記だ。
満足度★★★
ミュージカル『南十字星』を観た。
ミュージカル『南十字星』を観た。これは,劇団四季によるもので,歴史に題材をとっている。
主人公は,留学生として来ていた友人の母国に,戦争になって赴任することになった。そこには,オランダからの支配を逃れたいという民衆がいた。なんと,オランダ時代には,民衆に一番大事な主要産業を弱体化させ,オランダに利益のあるものばかり栽培させ,食糧も不自由になっていた。だからといって,日本がそこを支配し,多少は良いこともあったかもしれないが,戦争終結し,アメリカ軍政下にはいると,民衆はどのような時代にあっても自分たちには,自由も,平和もなかったことに気がつく。
インドネシアという国は,いったことはない。しかし,このミュージカルでは,インドネシアの舞踊がたっぷりとおりこまれているので,いったような気分になる。今回,二階席だったので,少し見にくいのではないかと心配したが,表情までは十分確認できないけれども,台詞もわかり易く,幻想的な場面に魅せられた。
戦争によって,起きたことを検証することは,確かに大切なことにちがいない。ところが,忘れてはならないことは,現代日本に生きて,ごく普通に,家族でレジャーランドなどに遊びいけるような時間が,戦争中の子どもたちには許されなかったということもある。つまり,ある時期に子ども時代を送ったひとたちは,ただただ戦争という異常な時代に,子どもらしい時期を失って大人になってしまったのだ。