beside U : わたしいましたわ 公演情報 beside U : わたしいましたわ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     タイゼツベシミル 華5つ☆ 新たな才能、発見! 暫くしたら拝見した演技・演出について追記予定
     「甘い蜜の部屋」というタイトルを聞いて直ぐ何かが分かる人がどれだけ居るだろうか?

    ネタバレBOX

     ある女流作家の作品名である。作家の名は、森茉莉、森鴎外の溺愛した愛娘である。今作の作者は若い。その若い作家がまさか森茉莉を読んで居ようとは、正直驚かされた。相当の読書家であることは間違いない。あの鰻の寝床のような新宿眼科画廊で賢い舞台の使い方をしているのもさることながら、舞台美術というか装置もシンプルでありながら、それ故にこそ如何様にも見せることが出来ることを利用して各場面をキチンと見事に変換して見せる。小屋の使い方は一般的で入口のある側の短辺の反対側をホリゾントとしホリゾント手前下手に脚立が1つ、脚立スペースの手前が演技用板の載った舞台だ。各コーナーから柱となるスチールパイプを立ち上げ天井部分もスチールパイプで連結した矩形。下部の各コーナーには対角線上の柱2本の下にストッパー付き滑車、他の2カ所は滑車のみが付けられ4人の登場人物の内、板上に居ない2人がこの矩形を動かして各場面に対応するよう調整する仕組みだ。壁面に当たる4面は総て左右に開くレース状のカーテンが付けられ開閉することで様々なシチュエーションに対応する。尚、今作の劇作家は谷崎潤一郎の「痴人の愛」を2度目に読んだ時に今作を書くことを決めたという。劇作家の視座は主人公“なおみ”を中心に展開するが、台詞は実にシャープで而も自然である。ずっと年上のパパさんとして譲治が登場するが、「痴人の愛」との関係で2人の関係は類推できよう。譲治がなおみの成長日記と称して撮る写真や、彼女の住いが変わるなどの状況変化がある度にその名と年齢がカーテンに映し出されるのも頗る効果的だ。また、孤独な少女の魂が運命的な出逢いを遂げ、仲良しになるが、互いにベタベタせず、まるでムルソーのような異界を抱えた人間同士である点も素晴らしい。それだけ、2人の悩みの深さも孤立感も、また非情緒的だが極めて知的な者のみが体験する迷い方の持つ深刻性も際立って表現されているからである。因みに仲良くなった女友達の名は‟ノラ”でありイプセンの「人形の家」の主人公であるのは、劇作家のイプセンへのオマージュでもあろう。

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