実演鑑賞
満足度★★★★★
北九州市時代からの4名の団員と、主宰ゲスナー氏の「次が読めない」ユニークな演劇製作。20数年も続けばこの独自さも持ち味という事だろうか。うずめとしては「演劇」らしい舞台(会場がスズナリだし)の二本立て企画「砂女↔砂男」から、既に7年も経ったとは・・(時の速さよ)。この時自分は「砂男」(ホフマン作/天野天街演出)のみ観劇し、天街作品にハマりかけの私は大満足だったが、並んで評判だった「砂女」を今回観て衝撃を受けた。
驚くべき舞台だ。なぜ「砂の女」か?・・の問いを殆ど無化する(舞台が全てを語っている)。原作小説を遥か昔に読み(高校か大学か)、勅使河原監督の映画もたぶん同じころ見たが、芝居を観ながら小説を思い出した。「思い出した」と言っても大昔の記憶だが断片的に附合するものを感じた。そして、この作品に流れる人間存在の根拠の危うさ、定住や婚姻、家族、共同体、人生の目的や意義、といった概念の揺らぎを措定範囲にしながら具体的な一つ一つのエピソードを時系列に刻んで行く。実在するモノを数えた方が早そうな砂丘の村の簡素な生活のなかで男と女は具体的行動により場面を作る「演劇」を体現し、「砂の女」の世界が見事に結実していた。