公演情報
「物語なき、この世界。【7月31日(土)13:30、18:30、8月1日(日)13:30の回は公演中止】」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★★
なかなか一言では言いにくいほろ苦い面白さがあった。身に覚えのある感情がいくつもある。三浦大輔の芝居は2008年に本多劇場で「顔よ」を見て以来。かつては舞台上で男女の行為を赤裸々に演じるので賛否両論を起こしたが、今作ではそこはおとなしめ。でも岡田将生とヘルス嬢・日高ボブ美の濃厚なシーンはしっかりある。
「おっぱいパブ」で偶然であった高校時代の知り合い(岡田と峯田和伸)。居酒屋に行くが、全く話は弾まない。絡んできた酔っぱらい(星田英利=はまり役)を張り倒したら、頭を打って動かなくなってしまった。「殺したか」とあせるが、自分たち二人がドラマの主役になったような高揚感を覚える。一緒にいた友人、恋人は脇役扱い。この、変な主役気取りが面白い。
岡田の(ダメ男を演じても)美しい立ち姿とと、峯田の見るからにダメ男のうらぶれ感の組み合わせがよかった。奥にゴジラビルも配した歌舞伎町(ゴジラロード)のセットが良くできていた。それぞれの店のセットが回転して、裏側になると、店内になる。それが、ヘルスだったり、スナックだったりと、内装を変えて店を違える。表側も、右から見せるか、左から見せるかで、全く別の店になるところも良くできていた。シンプルな通行人の映像で雑踏を示し、深夜になるといなくなるという時間の示し方もわかりやすかった。
実演鑑賞
満足度★★★★
歌舞伎町を思わせる街を舞台にした一夜の物語、という三浦大輔らしいフレームだが、食傷を起こす場面は一つもなかった。台詞を追えば、自分たちの現実と、自分たちが感動を求めて見るドラマとの「重ならなさ」がモチーフになっている。だが「これってドラマじゃね?」と期待させる展開が訪れる点では、以前の「裏切りの街」の無味乾燥なオチ「やりたいだけ」の方が殺伐としていた。
夜の街では「物語なき」人生の主人公らが行き交い、人生模様を垣間見せるが、主観的にはドラマ性を否定される現実の中でも、他者のドラマを見ていたりする。現実の中で、「ドラマのように」行きたいという願望に直面した時、例えば端的に男女の関係なら不成立か成立のいずれかとは言え大半が「ドラマ始動せず」で終る。それでも限界に見えるものを何らかの形で超越する瞬間が全くないかと言えばそうではなく、きっと何処かにある、という「可能性」をこの舞台は言葉では否定しながらも漂わせており、この程よさ加減が(三浦作品に通低する)心地よさに思える。元よりニヒリズムを声高に嘆く時代でもなく。
ドラマの主人公になり得ない己の現実、つまり「ドラマを見てそれに自分を重ねることで満足している」己自身を見よ、とは出てくる台詞の意訳だ。「何処にでもいる」冴えない(かどうかは問題にしてはいないが)男らだが、この言葉はさりげなく観客を刺した事だろう。東急bunkamuraで芝居を観る私たちは「映画館に向かう人波」の一粒に違いない。
峯田和伸の歌が舞台の中で浮いてなく、程よく「ドラマティック」に彩る。人間模様あるある集・・芝居ってそういうもの。