満足度★★★★
民藝への書き下ろし第2弾となる中津留章仁戯曲。悲壮感目一杯であった前作とはガラッと雰囲気を変え、地方都市の日常の変化をゆったり流れる時間の中に描き出していた。劇団銅鑼に合いそうな(イメージ狭すぎか)最後にはほのぼのとした大団円を迎える芝居は中津留作品では希少、確かにパンチが弱いと感じる。ただ「心温まるいきさつ」には、テーマである所の外国人(本作ではベトナム人)と、現在の日本社会と人が出会う接点のリアルな風景があった。
今作では外国人労働者(技能実習生)の搾取や人権無視の「被害」状況よりは、ベトナム人労働者と日本人との関係が一定程度形づくられた「その先」の段階が描かれている。取材先がそうだったのか、主役樫山文枝が生きるコメディ調に合う設定を選んだのか判らないが、舞台となる洋食屋をはじめ老齢で農家を営む男、外国人を雇い入れる地元企業の上司や管理職も、外国人との共存は大前提と考えている、事実接点がある、その状況での悲喜劇となっていた。
(中津留にしては)物足りないと感じるポイントは、地元企業で働くベトナム青年が職場に嫌気をさして仕事を休み、一方「ベトナム人従業員に手を焼いている」と主任が上司に相談している案件で、幾許か仄めかされた人権侵害や搾取の顕著な実態はなく、拍子抜けするあたり。
相談役になる団体職員が、件のベトナム青年と主任を引き合わせる事2回。やがて見えて来るのは文化の違いによる認識・感情のギャップであった。
ヘイトに通じるネグレクト、つまり互いをヘイト出来る距離が保たれたケースではなく、逆に関わりが生じたからこその問題。仲の良い者同士が比較的小さなこと(新婚夫婦が味付けの好みでぶつかる的な)で反目してしまうケース。これは歩み寄ろうとするが故にこじれ、離れてしまう、ある意味で一歩進んだ望ましい関係の提示とも言える。ファンタジー要素はあるが、舞台が地方都市である所に現実味がある。
程よい距離を持ちながらの共生という事では、外国人の居住する大半の地域でそれは実現されている事を考える。外国人が「知人」となる職場の風景を思い起こすと、相手が片言だろうと一旦認知してしまうと「○○国人」という属性は後退し「○○さん」になってしまう。だから問題化せず意識もされない(集団になればまた違うのだろうが)。パンフに曰く作者が「この問題を取り上げている作品を見ない」のも、そのあたりが理由かと推量した。
日本人にとっての「外国人」を意識させる、印象的なシーンがオーラスにある。・・それはただ、今や常連となったベトナム人たちがいつもの風景のように洋食屋に入って来る、というだけの描写なのだが。俳優のラインナップを見ると、店を訪れるだけのベトナム人役として5名ばかりが配されている。これが見事に「東南アジア人」となっている。髪型、会話の調子や風情は、私にはベトナム人かインドネシア人かフィリピン人かペルー人かの違いまでは判別できないが、ある共通性、開放的で直接的で、己に対する自然体の誇りがあり、人に対する愛着を表わす笑顔を持ち・・といった印象を体現している。
息子に店を譲ろうとしている一代目とその夫人が、彼らを迎える光景の中に、お題目でない共存を示唆する種を見る思いがした。言葉を連ねる作家だが、時にこういう場面を作る。そこが不思議な魅力でもあり、やはり捨てがたい作り手である。
満足度★★
はっきり言って現実とは程遠いい物語だ 我が国の労働問題の闇はこんなもんじゃない 留学生や技能実習生がおかれている状況は、はっきり言って見るも無残な悲惨な世界だ この甘い仲良し物語とはワケが違う 演劇の限界はこんなものだったのだと落胆しつつも演劇はジャーナリズムとは違うなだからと思うコトにした
満足度★★★
長い歴史のある新劇団が、小劇場の作家演出家に本公演を任せるのはここ数年の流れで、中津留章仁は民芸二度目のお勤めである。中津留とくれば社会問題劇だ。
地方都市の外国人労働者と地元に生きる日本人との葛藤をドラマにしている。基本的に外国人労働者を一時的な単純労働者として使い捨てていかざるを得ない現状はしばしばメディアで取り上げられている。対外的にはそうは言わないで、実質的には移民排除という方針は、国内的には無言の支持を得てきているから、政府行政もそのねじれに七転八倒しながら、制度運用をやっている。突っ込みどころはいくらもある。農家と中小企業、味付けに郷土食と柱を立てて、ほとんどキャンペーンのようなわかりやすい展開である。第二幕で芝居が詰まってくると、もう時代劇のような責め場になる。役者はそうでもするしかない、のである。
しかし、解ればいい芝居と言う事でもない。筋立ては先が読める。結局はみな仲良く認め合って、明日につなごうよ、となるが、現実はそうならないから問題山積している。自劇団ならどこかポイントを決めて攻めるのもうまい中津留だが、大劇団相手では、座主の樫山文枝が出てきて大岡裁きで全員を立てて、納めるしかない。
新劇団の小劇場起用がほとんど表向きは勘定があったように見えて中身が空疎なのは、それぞれの生活が懸かっているからだろう。新劇団側もうっかり発注して「背水の孤島」のような本を書かれたら大変とビビッているのかもしれないが、最近の若い小劇場の連中は、空気を読むのは旨い。こちらにも生活がある。そんな無駄なことはしないだろう。新劇団は、組織としては大きいのだから、リサーチをもっと丁寧にやるとか、配役の順番制をやめるとか、作家と時間をかけて取り組むとか、制作を分厚くして、中身の濃い本を作ることがまず第一だろう。
満足度★★★★
鑑賞日2019/09/26 (木) 18:30
座席1階
特定技能という新たな在留資格を設けて、本格的に外国人労働者の受け入れを始めた日本。地方都市にある小さな食堂を舞台に、日本人が生活者としての外国人を受け入れられるのかを、この芝居は問う。
食堂の周囲にも技能実習制度による外国人が増えてきた。ゴミ出しのトラブル、深夜の騒音。食堂の仕事を継ごうと故郷に戻ってきた息子が在留ベトナム人からカレーを習ってメニューに加えようとしているところも、長年食堂をやってきたオヤジは気に入らない。
この食堂で、職場の上司にあたる日本人と合わず仕事をやめようとしているベトナム人を巡って、シビアな会話が続く。このあたりが、民藝に書き下ろした中津留氏の真骨頂だろう。主宰のトラッシュマスターズの舞台では、議論と言ってもよい激しい台詞の応酬が見られるが、そこまでではないにせよ会話の中身は技能実習制度の矛盾というか、非人間的な部分を鋭く告発している。
これはタイトルにも表れているように思う。私たちが、彼らを自分と同じ生活者てして受け止めて付き合えるか、本音では異邦人と見ているのか。この舞台が問いかけたものへの答えは、数年後に出るだろう。
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千秋楽観た、劇団民藝 異邦人。 外国人技能実習生、と聞いて堅い話?と構えたけど、個人経営の洋食屋さんの家族の話として身近に感じられて、自分ごととして制度や日本社会を考えさせられる作品。 はてコムデギャルソンはどうしたんだろうと… https://t.co/2rPFktxW8J
約5年前
劇団民藝「異邦人」、観劇。今の自分には身につまされる話で、幸せの形ってなんだろうかと問われる。誰の心にもある差別の意識、それでもコミュニケーションをあきらめない人間の強さ。役者陣の安定した演技と中津留さんのじっくりした演出が温情を炙り出していた。
約5年前
劇団民藝「異邦人」観劇。外国人実習生の話。生まれた国が違っていても、お互い歩み寄って、交流して、一緒にご飯を食べれば、良い関係が築けると思うんだけどなー。 https://t.co/yoew36vl3z
約5年前
劇団民藝「異邦人」観劇してきました 外国人実習生たちと日本人家族の物語 実習生の「意見が言えないことへの憤り」がとても共感できて、生々しくて、見ていて胸が苦しかった 末端にいる人々の声をきちんと拾える人が、国にも企業にも必要… https://t.co/Slg7TtnEcq
約5年前
劇団民藝「異邦人」@紀伊國屋サザンシアター おなじみ中津留章仁さん作・演出も、いつになくあったかい空気の中で展開。それでもやっぱり中津留ワールド。「実習生」とか「特定技能」という政治のごまかしを乗り越える、地域での外国人との衝突、… https://t.co/r3busdGuT4
約5年前
劇団民藝「異邦人」、電車の事故で一時間ほど観れなかったけど、どんどん身近になってくる外国人労働者の人たちと日本人のお互いの葛藤がよく伝わってきた。異国の地で働く彼らの不安に気づかされた。樫山さんが可愛らしい。
約5年前
[アメブロ更新]お世話になってる中津留さんが作演の劇団民藝「異邦人」@紀伊國屋サザンシアターを観て来た... https://t.co/4xNaUieL5e #ameba #ameblo #ametwi
約5年前
お世話になってる中津留さんが 作演の劇団民藝「異邦人」@ 紀伊國屋サザンシアターを観て来た。民藝さんは、いつも後援会みたいなメンバーが客席を埋めてるので、ぶっちゃけ 客席の9割がシルバーヘアだったりする。… https://t.co/LPZg6zdTHb
約5年前
劇団民藝『異邦人』を観てきました😃中津留さんの作品らしい問題提起と今回の座組のメンバーの力かポップさがあって面白かったです✨7日までサザンシアターで上演しております。しんごさんとひさよさんとふとしさんが並ぶのが個人的ツボすぎました… https://t.co/aedn53iwBH
約5年前
ありがとう御座います。お近くまでお越しの際には是非また。 開演数日経過、調子が上がってきましたか?今日の公演はご予約満席で、当日券のみですね。 劇団民藝「異邦人」~10/7(月) 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA (… https://t.co/S6vQAmw3BQ
約5年前
劇団民藝「異邦人」@サザンシアター 地方の洋食店を舞台に、急速に増える外国人労働者に関する諸問題を取り上げた物語。 日本の将来の進む道について考えらさせらる内容でした。我々日本人も色々と変わらないといけませんね。 クアンの一途な想… https://t.co/XVtHf3IScl
約5年前
昨夜は、劇団民藝『異邦人』初日観劇 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 最前列センターで観劇😆 舞台セットは「洋食屋むらもと」の店内、のみ、転換なし 庶民的な町の洋食屋さんの雰囲気がよく出ている 業務用冷蔵庫まで置か… https://t.co/DurZH34J95
約5年前
劇団民藝【異邦人】二日目。 夜は【体育の時間】@スズナリ観劇。 終演後、皆さんで楽しく飲んだ。 ふっこさんをはじめ多くの方から元気を沢山貰いました。 マキノさんのチェーホフ【かもめ】論にハッとさせられる。 刺激的な一日。
約5年前
昨夜は、劇団民藝『異邦人』初日観劇 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 舞台セットは「洋食屋むらもと」の店内、のみ、転換なし 庶民的な町の洋食屋さんの雰囲気がよく出ている 業務用冷蔵庫まで置かれていて本格的❗ タイト… https://t.co/PfI7ShbMJc
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昨夜は、劇団民藝『異邦人』初日観劇 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 舞台セットは「洋食屋むらもと」の店内、のみ、転換なし 庶民的な町の洋食屋さんの雰囲気がよく出ている 業務用冷蔵庫まで置かれていて本格的❗ タイト… https://t.co/l03Yl6K2ST
約5年前
劇団民藝【異邦人】初日です! そして、王位戦第7戦、木村九段頑張れーっ!
約5年前