最新の観てきた!クチコミ一覧

121-140件 / 181234件中
マーヴィンズ ルーム

マーヴィンズ ルーム

劇団昴

Pit昴/サイスタジオ大山第1(東京都)

2024/05/24 (金) ~ 2024/06/09 (日)上演中

予約受付中

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/28 (火) 14:00

座席1階

メリル・ストリープ、ダイアン・キートン、レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロなどそうそうたるメンバーが出演した映画「マイ・ルーム」の原作。マーヴィンというのは、認知症とみられる症状で寝たきりの父親の名前。この父親と、同居する伯母を一人で介護する姉と、若いころに家を飛び出して結婚し、今はシングルマザーとなって2人の息子を育てる妹の心模様を主に描いた名作だ。

劇団昴は、これを田中壮太郎による新訳・演出で2時間余りの舞台に仕上げた。田中は「ラビット・ホール」でも昴とタッグを組んでおり、ラビットホールがすばらしい出来だったので期待して出かけた。
妹の2人の息子は、上の子が家に放火をしたとして少年院に入り、下の子もひ弱な感じがする少年。何年も連絡を取っていない妹一家に連絡したのは、姉が白血病と診断され、骨髄移植のための検査を受けてもらうためだった。だが、妹一家も問題を家庭内の問題を抱えて行き詰まったところがあり、姉との確執もある。こうした複雑だがどこにでもある家庭の問題を、舞台は丁寧に描いた。

舞台の中心は姉妹の関係性の変化だ。骨髄移植のドナー探しは簡単ではない。「自分は検査を受けるとは決めていない」とうそぶく(妹の)上の息子だが、姉との会話を重ねるにつれて少しずつ心を開いていくところがいい。大きな盛り上がりとか情勢の変化がない物語を新たに翻訳して練り上げていった試みに、拍手を送りたい。

46番目の密室

46番目の密室

歌劇「46番目の密室」製作委員会

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2023/10/15 (日) ~ 2023/10/22 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

出来るキャストが揃っていて、演技に安心感を感じた。ただドラマ版のこのシリーズの大ファンだったので、火村英生 という人物の危うさや脆さがあまり感じられないことがとても物足りなかった。シリーズとして続いていけば、もっとそれを感じるシーンも増えるのだろうが・・・。

ネタバレBOX

逆に犯人役の輝馬さんの演技には、魅入ってしまった!あの歌いづらいであろう歌をガッツリ感情込めて長々と歌い上げた辺りは、まさに感動もの!あの迫力、絶賛です!
ひなたの道を

ひなたの道を

しゅうくりー夢

ザ・ポケット(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

元公安の刑事を主人公としたハードボイルド系犯罪ものシリーズ最新作。
今回の中心となる宗教法人の所業は映画ならPG-12、テレビドラマなら23時以降の放映という陰惨なものだし、主人公側の複数のゲストキャラが命を落とすなど悲惨な内容ながら、主人公たちの人物造形や彼らが交わす「粋な(あるいはオトナな)会話」により2時間を超える長尺を見せてしまうのはベテランの味か?
しかし当日パンフレットや劇中の台詞であれだけルイ・アームストロングに言及していながら、主人公とヒロインの「あの場面」とエンディングがトム・ジョーンズの「I'll Never Fall In Love Again」って……(笑)
いや、内容に合っているので異論はない、どころか感服したんだが。

ピテカントロプス・エレクトス

ピテカントロプス・エレクトス

劇団あはひ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

会場入りすると、猿人さんがお出迎え?なんか嬉しい。実にスタイリッシュな舞台ですね。説明が丁寧で分かりやすいのですが、ちょっとくどさも感じました。

ピテカントロプス・エレクトス

ピテカントロプス・エレクトス

劇団あはひ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 開演前、猿人と思しき者がモギリをしている場に現れたり、開演直前に劇空間に設えられた立ち入り禁止区域のコーンや侵入防止用の棒等を撤去する為に作業に入ったスタッフを邪魔してする悪戯が極めて面白い。追記6月3日0時38分

ネタバレBOX

 劇空間は四方を観客席に囲まれている。板中央に深い奈落が設けられており、奈落の底へ下りる階段、登る階段として都合2つの階段が設けられている。この奈落は化石の堆積層と考えられる。物語はヒトである我々は何処から来て、何処へ行くのか? が今作で表示された問いだが、ヒトである我々とは何か? という問いを当然続く問いとして提起された壮大な物語だ。猿人(アルディ・ピテクス)、原人(ホモ・エレクトス)、旧人(ネアンデルタール)、新人(ホモ・サピエンス)各々の集団が化石層に埋まった別の年代の類縁と交錯し対話する方式を摂る。が、その質疑応答が基本的に同じフレーズで為される為退屈感は否めない。またオープニングで登場した人物がいきなり鴨 長明の「方丈記」冒頭をそらんじ乍ら奈落の周囲を幾度も巡るのだが、無常を現したとされるこの随筆より、寧ろ老子の方が相応しいように思うのである。理由は、その哲学にあるのは無論だが、様々な異論が出され得ることも無論承知している。というのも老子が実在したか否かさえ疑うことが可能だからである。周知の如く“子”は男子に対する尊称であるから、老という苗字の男性に先生という意味で付けた表現、老・子が老子という具合に個人に対する尊称を含めた表現として伝承されてきた可能性を否定できないからである。一方、無論司馬遷の『史記』に老子に関する記述が見られるが司馬遷自身が老子の存在を確定できなかった表現も同時に見て取れる。また孔子による記述も老子の実在の根拠としては弱かろう。だが、老子の述べた言葉としての記述『老子』が残存しているというから一応そこに書かれているとされる言から引くとその哲学の中心の1つを為す“道”に関する後代の解釈は多様である。自分はこれを前秦時代の春秋戦国時代をきめ細かく注意深く生きた人(々)の知恵の集大成であるかも知れないと思うのである。無論、老子個人であると解釈しても構わない。その辺りを研究する研究者の仕事に口出しすることも出来ないし、そのつもりも全くない。が、その知恵の骨子は戦乱の時代を生きた観察をベースに実に科学的な目と見識で編み出された知恵と解釈するのである。今作「ピテカントロプス・エレクトス」も考古学によって明らかにされたホモサピエンスに通じる人類史がどちらかと言えば科学的な実証に基づいている以上、文化的観想である無常観を代表する随筆『方丈記』より親和性も高かろう。演劇の醍醐味は当初バラバラに見えた各要素が一点に収斂してゆくダイナミズムにあろう。この点に留意するなら、今作の思考部分を為す哲学表現的立場もより親和性の高いものにした方が良かったのではないかと感じる。
演劇作品集『ちがう形』

演劇作品集『ちがう形』

中野成樹+フランケンズ

新宿シアタートップス(東京都)

2024/05/22 (水) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

当日券ダッシュで中野成樹+フランケンズ 『#ちがう形』のAプログラムのみ観劇(大池容子さん作『かがやく都市』と『EP2(犬の話)』(シェイクスピア『ハムレット』2幕より)。
始まる前からわくわくが立ち込める客席で図らずも20周年初日目撃の喜び。面白かったし、何よりかっこよかった〜!痺れました。「『ハムレット』を20年かけて上演する」という常軌を逸した果てなき企画もこの方々ならやってのけてしまいそうだし、何より、「全部観たい」と思わせてしまうところが魅力で、20年の賜物という感じもする。これからの20年も楽しみです。『かがやく都市』も面白かった。うさぎストライプの上演を風邪ひいて見逃してしまっていたこともあり、物語との邂逅にも胸熱く。キュートで可笑しく、それでいて登場人物たちの心情は味わい深く。煙の気配をそこまで強く感じなかったのは、もはやすでに煙の中にいたからなのかも、などと想像したり、まんまとふしぎな物語の術中にハマっていました。歌唱シーンのタイミングと選曲がまたよすぎて。もちろん帰り道速攻聴きましたよね...楽しかったし、かっこよかったです。

あと、これは声を大にして感謝をお伝えしたいのですが、上演ステートメントに「子ども向けではないけど入場OK」の旨が添えられていたこと、自分の様な子育て中の観客の存在が決して忘れられていないと思える一言で、救われる気持ちでした。映画と違って演劇は具体的な対象年齢の設定や記載はほとんどありません。未就学NGの記載やチケット種類(に未成年があるか)や作風、また最近はトリガーアラートなどから何となく子と観られるか否かを"察して"観に行くのですが、ナカフラさんの様にカンパニーサイドから内容や作風と入場是非が併せて明記されている公演はまだ少ないので、とてもうれしかったんです(私個人としてはこの文言で作者の創作意向を知ることができた事も有り難かった!)

子どもを対象にした演劇でなくても、子は大人の想像を越えた実感を得たりする。
それはあくまで経験則としてコラムなどにも書いているのですが、一方で「作り手は子ども向けとして作っていない」という情報も私はとても大事だと思っていて、そうした上で「入場はOK」ということがなんかもう言葉がうまく見つからないけど、とても嬉しかったんですよ。
"子を連れてくる親"としてだけでなく、"この作品を観たい一観客"として尊重されている気持ちになったというか。
「子どもを劇場に連れて行きたい」という気持ちの面だけでなく、時には連れて行かざるを得ない状況がある私のような人間にとっては色々悩ましいところがあるのですが、こういった新しい開き方をして下さっていること、本当に心強いです。「演劇や劇場にできたらこうあって欲しい」そう願っていることの一つが叶えられた公演でした。ゆえに満足度は抜群です!

裂け目BB’

裂け目BB’

ダダルズ

SCOOL(東京都)

2024/05/24 (金) ~ 2024/05/25 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

様々な演劇やパフォーマンスがあるけれど、頭というより脳を、心というより内臓を揺さぶられるこんな体験は ダダルズ 、大石恵美さんからしか受け取ったことがない。
言葉と身体を、意識と無意識を切り裂き、かき分けるその裂け目に理屈ではない"生"を見る。あんなにも溢れながらこんなにも「渇き」が訴えられるなんてどうしたことか。
初めて観た日もう絶対に見逃せないと誓ったし、同時に例えば上演前日に大石さんも私も風邪をひいて同じ医者にかかったとして、そこに明日必ず治る薬があるとして、でも一人にしか渡せないとしたら、迷わず大石さんに譲ってまたあのすごい沸騰と蒸発を、またあんな風に世界の裂け目から別の世界をこじあける様に見せつけてほしいと思ってしまう。確実に一人芝居の歴史変えている。もはや人間が一人で行うあらゆるパフォーマンスの中でも頭抜けた求心力ではないだろうか、と前も今回も思う。素晴らしかった。素晴らしすぎて、帰りの電車2駅間違えて降りた。
なんだろう。脳裏に刻まれるとか胸を打たれるじゃなく、本当、臓器への揺さぶりみたいな感覚なんだけど、言葉にした瞬間から足りなさ、乏しさにジタバタする。ここに書かれていることなんかよりずっとずっと以上のことなんだーうわああって気持ちになってしまう。一人の文筆家としてはいつか、ここで起きていること、大石さんが起こしていることの凄まじさをちゃんと言葉にできたら、と思うけれど、一人の人間としてはそれを拒絶するような気持ちもある。
だって、文字にするとやっぱり揮発してしまうんだ。あんなにドバドバと溢れているのに。嗚呼。
星5じゃ足りないくらいです。”観劇”というより、”目撃”をしてほしいパフォーマンスNo.1。言い切ります。

理想郷

理想郷

小田尚稔の演劇

水性(東京都)

2024/05/23 (木) ~ 2024/05/29 (水)公演終了

実演鑑賞

いつか観たいと思っていた、小田尚稔の演劇。
私には昔から極度の不安やストレス、寂しさや心細さなどを感じた時に髪や爪をしきりにさわったり、お布団や布類で肩や足下まですっぽり隠さないと落ち着きを保てなくなる癖?があるのですが、観劇中にその状態になってしまい、自分でもとてもびっくりした。だけど、このざわざわやモヤモヤした感触にこそ、この演劇の核心(やそれと繋がるヒント)があるのかもしれないと思ったりしていて、いまもまだそのことを色々考えています。信頼を寄せる知人に感触を吐露しながら心の整理をつけさせてもらえたのも有り難かった。水性には2回目の来訪。図らずも通行人がキャストに、場合によってはドラマそのものを生む空間でとても好き。今回もっとも食らったのは、絶妙なタイミングで横切った二人の子どもかな。あと、美術のチョイス、使い方好きでした。
存分に戸惑った観劇ではあったんだけど、帰宅して改めてチラシを眺めつつ、シンパシーを感じることだけが演劇の豊かさではないことを痛感したり、(ネタバレBOXに続きます)

ネタバレBOX

同時に、時間が少し経ったことで、このえもいわれぬ気持ちは、あの中の誰か、だとしたら多分最後に出ていった女性かな、に対するエンパシーであったようにも感じたり。はたまた、普段の私が良くも悪くもあまりに感情移入が強く、演劇にも潜在的に共感を求めがちであることにつくづく気づいたりもしました。それは言い換えればやはり他者への勝手な期待でもあって、劇中でも示唆されていたようにそれは"理想郷"においてはともすれば攻撃になりうるかもしれない。だけど、私は女性の逃げ場は決して女性間の戦場にはならないことを信じているし、対立のゴングはいつも第三者が鳴らすとも思っている。もっといえばシェルターなんてわざわざつくらなくてもみんなが安心して暮らせることが本望で。勿論、理想だとはわかっているけれど。
あそこに男性はいなくて、その皮肉なまでの不在、気配の無さが、分断や対立の種子となる無関心さとしてかえって際立っているようにも見えて、多分私は自分の描く"理想郷"と目の前の"理想郷"のギャップに狼狽えたのかな、と今ようやく言葉が追いついてきました。こういう体感こそ残しておくべきなのかも、と思っています。観られてよかった。
ただ、「満足度」という側面からこの作品を判断するのはとても難しい。もちろん、作品の良し悪しという意味ではなく、あの光景を見て「満足」して帰るのはとても無理があるというか…。観た人と出来るだけ沢山の感想を共有したい。そんな作品でした。
マーヴィンズ ルーム

マーヴィンズ ルーム

劇団昴

Pit昴/サイスタジオ大山第1(東京都)

2024/05/24 (金) ~ 2024/06/09 (日)上演中

予約受付中

実演鑑賞

満足度★★★★★

台本も芝居としても、とても美しい作品。壮大なクライマックスが形作られるわけではなく、起伏がないわけではないけれども淡々と登場人物たちの生きる日常の姿が綴られていく中で、人生についていろんなことを感じさせてくれる。美しい芝居を見た後は心が安らかになる。

世界ギュルルン滞在記

世界ギュルルン滞在記

FREE(S)

ウッディシアター中目黒(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かった
弾けた演技で客を楽しませつつ、盛り上がる展開をしっかりといれてくる。
役者も楽しんで演じているのだろう、客がそのよい雰囲気を感じられることで、成立している部分も大きいのではないか
ややベタとも言えるが、どんでん返しはワクワクするもの。
一度のみではない。飽きずに興味をひいたままたたみかける。

テーマに関してメッセージの鋭さが切れているわけではないが、バランスよく風刺が聞いているところに安定感もある
客が楽しめる範囲をわかって、そこをはみ出さない

ドキュメンタリー番組を舞台に起こすうえで
セットも本をしっかりとささえている。引き込まれる作りである

ネタバレBOX

ラストに関しては、別の振り切り方があるかもしれないとよぎりつつ。多くの客が納得する着地所と考えるべきだろうか
ピテカントロプス・エレクトス

ピテカントロプス・エレクトス

劇団あはひ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

ピテカントロプス・エレクトス

ピテカントロプス・エレクトス

劇団あはひ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

反省だけなら猿でもできる?二足歩行なんてするんじゃなかった?

ユメミソウ~夢見荘~

ユメミソウ~夢見荘~

劇団1mg

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2024/05/22 (水) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ワンエムジーを初観劇。
すっきりとしたストーリーで、笑いあり涙ありの舞台でした。
キャストの大半が客演で、今度は劇団員メインの舞台が見てみたいですね。

二人の主人を一度に持つと

二人の主人を一度に持つと

加藤健一事務所

兵庫県立芸術文化センター 中ホール(兵庫県)

2024/05/25 (土) ~ 2024/05/25 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/05/25 (土) 13:00

価格5,500円

昨年は関西公演がなかったカトケンさん、今回はいつもやってくれてる京都府立府民ホール アルティが耐震工事などで閉館中のため、神戸での公演のみ。

今回の作品はイタリアの劇作家カルロ・ゴルドーニ(Carlo Osvaldo Goldoni)が1745年に書いたコメディ。カルロ・ゴルドーニは1707年に当時のヴェネツィア共和国(Repubblica di Venezia)で医師の子として生また。この時代のイタリアは統一前でヴェネツィア共和国の他、サルデーニャ王国やジェノヴァ共和国、パルマ公国、トスカーナ大公国、ナポリ=シチリア王国などの都市国家で構成されていた。今回の話に登場するトリノ(Torino)はサルデーニャ王国(Regno di Sardegna)の首都だった。

ゴルドーニはパドヴァ(Padova)大学で法律を修め、転じてパヴィア(Pavia)大学を卒業し、その後弁護士として北イタリアの各地を遍歴する傍ら劇作に手を染めた。1748年には弁護士を廃業し、座付き作者として矢継早に斬新な喜劇を世に送り、演劇の改革時代を招来した。

しかし、1753年以降、新しい時代の変革を反映した彼の作品を喜ばない観客に加えて、保守的な劇作家の誹謗、攻撃の的となり、失意のうちに渡仏。1764年、ルイ15世の招請を受け、ベルサイユ宮で王女たちのイタリア語教育に当たったが、フランス革命を迎えてパリに退き、1793年2月にパリで他界した。

主な作品は今回上演の作品の他、「コーヒー店(La bottega del caffe)(1750年)」、「宿屋の女主人(La locandiera)(1753年)」、「キオッジャ騒動(Le baruffe chiozzotte)(1762年)」など。

今回の「二人の主人を一度に持つと」はヴェネツィアを舞台にして、同時に二人の主人に仕えることで、二人分の給料をせしめようとたくらむ男を主人公に繰り広げられるドタバタコメディ。1946年にヴェネツィアで初演され、ミラノピッコロ座(Piccolo Teatro di Milano)の看板演目としても知られる。

今回の上演では主人公の召使の名はトゥルッファルディーノだが、ミラノピッコロ座の公演ではアルレッキーノとなっており、「アルレッキーノ――二人の主人を一度にもつと」と云う邦題で、日本公演も行われたことがある(2009年、世田谷パブリックシアター)。

また、1971年に設立されたオペラ・カンパニー、オペラシアターこんにゃく座もオペラ「アルレッキーノ ―二人の主人を一度に持つと―」として2013年(世田谷パブリックシアター)、2021年(多摩市民館)に公演している。

今回の加藤健一事務所公演は117回目。下北沢の本多劇場の11日間の公演に続いてこの神戸公演が行われた。

主人公のトゥルッファルディーノを演じるのが劇団主宰の加藤健一。以前からの繰り返しになるが、カトケンこと加藤健一は1949年10月静岡県磐田市生まれ。1968年、袋井商業高校卒業後、半年間のサラリーマン生活を経て劇団俳優小劇場の養成所に入所。1970年に養成所を卒業後、つかこうへい事務所の作品に多数客演し、10年後の1980年に加藤健一事務所を創立。

この間、2004年には読売演劇大賞優秀男優賞を受賞、2007年には紫綬褒章を受章、その他にも菊田一夫演劇賞など多くの賞を受けている。毎年3、4本の公演を行っているため、映画やテレビドラマへの出演は限られているが、2016年の吉永小百合と二宮和也の主演した山田洋次監督作品の「母と暮せば」では福原母子の家に出入りする上海のおじさんを演じ、毎日映画コンクール・男優助演賞を受賞している。

トリノからやって来たトゥルッファルディーノの一人目の主人になるベアトリーチェを演じるのは加藤健一事務所俳優教室出身で加藤健一事務所公演ではお馴染みの加藤忍。1973年10月生まれで、神奈川県出身。彼女もテレビドラマや映画にも出ておられ、吹き替えの声優もされている。今回は男装でかっこいい。

もう一人の主人となる、ベアトリーチェの恋人のフロリンドを演じるのは坂本岳大。劇団昴出身。舞台を中心に活動する。シェイクスピア作品などの古典劇から現代劇・ミュージカル、文学館・美術館等の朗読公演まで幅広く演じる。1975年5月生まれで、東京都出身。加藤健一事務所は「あとにさきだつうたかたの(2014年)」や「ペリクリーズ(2015年)」にも参加。

ベアトリーチェの兄の婚約者だったクラリーチェは増田あかね。劇団俳優座27期生。1990年12月生れで、東京都出身。その恋人のシルヴィオを小川蓮。劇団扉座準座員。1996年生れで東京都出身。シルヴィオの父のドットーレは奥村洋治。劇団ワンツーワークス所属。1957年生れ、熊本県出身。

クラリーチェの父のパンタローネは清水明彦。文学座所属。1962年生れで千葉県出身。NHK大河ドラマの「翔ぶが如く(1990年)」や「武蔵 MUSASHI(2003年)」、吉永小百合・天海祐希主演の映画「最高の人生の見つけ方(2019年)」にも出演している。

クラリーチェの女中ズメラルディーナは江原由夏。劇団扉座所属。1985年生れで、千葉県出身。2014年のTBS系の観月ありさ主演の連ドラ「夜のせんせい」に出演している。

宿屋の主人ブリゲッラは土屋良太。ノックアウト所属。1967年まれで、新潟県出身。2019年に23年連れ添った女優の 渡辺えりと離婚した。2016年公開の長谷川博己主演「シン・ゴジラ」に出演している。宿屋のボーイは佐野匡俊。劇団菊地所属。静岡県出身。

演出の鵜山仁は1953年3月奈良県大和高田市生まれで、奈良女子大学文学部附属高等学校、慶應義塾大学文学部フランス文学科卒業。文学座に所属し、劇団の内外で精力的に活動を続け、多くの賞を受賞している。2007年から2010年までは、新国立劇場の演劇部門の第4代芸術監督を務めた。現在は日本演出者協会理事。舞台芸術学院学長。

上演時間は前半が1時間35分で、15分休憩の後、後半40分の合計2時間半。今回の作品は完全にコメディーで、最初から最後まで笑わせてくれる。もちろん主役のトゥルッファルディーノの出番が多いのだが、それ以外の人物も結構出番が多く、トゥルッファルディーノがいない場面も結構あった。しかし、トゥルッファルディーノの口から出まかせは、困ったもんだ。

京都公演ではアフタートークが恒例だったのだが、京都は特別なのね。最初に書いたように京都公演の会場になっているアルティの工事が今年(2024年)8月に終わる予定なので、次回は京都公演が復活すると信じたい。いつやろか~


以上

ピテカントロプス・エレクトス

ピテカントロプス・エレクトス

劇団あはひ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

観念的な作品といった印象の異色作 というか意欲作。
舞台美術(設営)を始め、照明・音響といった技術も独特の雰囲気で、その中で極めてシンプルな演技が…。演技だけではなく、衣裳も含め余計なものを削ぎ落とし、内容そのもので描き伝えるといった意気込みを感じる。しかし、観客がそれを どれほど理解し吸収出来るか否か、評価が分かれるところ。

説明にある四幕、その表層は何となく解るが、その裏に潜ませた思いを汲み取ることは難しかった。終演後、カウンターに置かれてあった<あらすじ>の裏面を読んで、その意図を知った。
(上演時間2時間 途中休憩なし)

ネタバレBOX

囲み舞台。中央に四角い穴があるだけ。上演前に猿人らしき者が穴の周りを動き回る。開演して 直ぐ天井から穴に向かって砂のようなものが流れ落ちる。時代というか時間が流れる、その経過であり諸々が堆積していく表現であろうか。

冒頭、鴨長明の「方丈記」の一節が語られ 物語が始まる。劇中の案内役になるのが猿長明であり人長明である。説明にある(表層的な)四幕は、400万年前の猿人(4人)、180万年前の原人(4人)、30万年前の旧人(4人)、そして0万年前の現代以降の(新)人類といった区分。幕の繋がり(交代劇)は、夫々の区分の演者が 順々に穴と会場出入口(四隅)へ移動する。そして前時代の演者4人が、少し上を見上げるような仕草で次時代と語り出す。穴は、前時代と次時代の時空を超えた呼応--メタファーであろうか。

語りの中に「火」「鏃」といった台詞、それは<命><生>への本能的手段・道具を連想させるが、あらすじ の裏面では「兵器」「破綻」といった別のことを警鐘しているよう。まさか、日本の明治維新以降を描いていようとは。全体的には、人類としての反省、自省を客観的に描いているようだ。
自分の思考・想像では、ここまで踏み込んだ主張を 真に感じ取ることは出来なかった。公演(物語)は、この表裏一体をどこまで感じ取り、面白いと思うか否かで評価が違うかも…。

演出・演技は、全体的に薄暗い中で、穴に沿って 直線的に歩き回る。天井は何かが蠢く様な妖しい照明。演者は黒い衣裳、かといって全員が同じデザインではなく少しずつ違う。そこに時代や人も同じではない、画一ではないことを表しているようだ。発声・発語は、明確で独特な抑揚? そう言えば、落語や能といった古典芸能をベースに現代の会話劇としてリミックスする手法が話題になっていたっけ。
次回公演も楽しみにしております。
風と共に去りめ

風と共に去りめ

かーんず企画

シアター711(東京都)

2024/05/02 (木) ~ 2024/05/05 (日)公演終了

実演鑑賞

1人で伺ったが、1人購入すると連れのチケットももらえるというのは画期的。
観劇離れが進むなかで、知り合いを誘いやすい取り組み、ぜひ続けてほしい。

ネタバレBOX

わかりやすさはあったと思うし、始めて舞台をみる人にもストレスがあるものではないと思う。それも重要だが、演劇ならではの楽しみがもっと存分にあっても活きるだろうと思った
なかなか失われない30年

なかなか失われない30年

Aga-risk Entertainment

新宿シアタートップス(東京都)

2024/04/27 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

始めてみたが、設定やその着地が巧みだった

4つの時代が一部屋でまじりあう、と書くとそんなことは可能なのか?となるが、気持ちよく成立している

ぜひ次の作品もみてみたい

ネタバレBOX

懐かしいネタも含めて、広い客がそれぞれの楽しみ方をできるものだったと思う
カラカラ天気と五人の紳士

カラカラ天気と五人の紳士

シス・カンパニー

シアタートラム(東京都)

2024/04/06 (土) ~ 2024/04/26 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

別役戯曲の上演は、養成所を始めレパートリーとしている団体のものでしか見てこなかった

不条理としてだけでなく、シンプルに面白い芝居としてこの規模で成立させた手腕が見事
演出家の腕、装置の新しさ(多くの上演に見られるようなただの電信柱ではない)、役者の質など多くの要素が総合的に成功している
特に装置は面白い

喜劇では冒頭に笑いが早くほしいところであろうが、安易にそこに着地させなかったことによって、戯曲の魅力が引き出されているのではないか。キャスティングもはまっており、役の面白さを体現していた。雰囲気の代わり具合もメリハリとして効いている

なかなか失われない30年

なかなか失われない30年

Aga-risk Entertainment

新宿シアタートップス(東京都)

2024/04/27 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

序盤のシステム・現象の説明が退屈だったのがもったいない。
客席を見渡すと暗いのにチラシ見たり、眠そうな客が目立った。
中盤くらいから一気に盛り返しておもしろい。
熊谷有芳さんの軽快なツッコミが観たかった。

天の秤

天の秤

風雷紡

小劇場 楽園(東京都)

2024/03/29 (金) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

未投稿分を遅ればせながら

楽園という空間を徹底的にいかしきり、場内アナウンスから始まり衣装、照明などのスタッフワーク全てを含めて没入させる作りだった

再現ドラマなども時々あるなかで、生で事が起こる演劇の強みを、大きく実感した

このページのQRコードです。

拡大