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デカローグ1~4

デカローグ1~4

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2024/04/13 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

B ②④

②同じ集合住宅の最上階に住んでいる女(前田亜季さん)が下の階の老医師(益岡徹氏)を訪ねて来る。彼は入院している女の夫(坂本慶介氏)の主治医。「寝たきりの夫は助かるのか、このまま死ぬのか?」「そんなことをこんなところで軽々しく答えられない。決められた曜日に来院して正式に面談してくれ。」
テーマは「プラマイゼロ」。

④娘(夏子さん)を産んですぐに亡くなった母(松田佳央理さん)。父親(近藤芳正氏)は独りで娘を育て上げた。長期出張に出掛けた父の引き出しの中に意味ありげに置かれた封筒。「私が死んだら開封するように」と書かれてある。それを読むべきかずっと考え続ける娘。

前田亜季さんだとは気付かなかった。確かに①②の組み合わせだと暗くて動きがなく、つまらないかも知れない。(だから変則的なプログラムにしたのだろう)。
夏子さんは熱演。背景に映し出される巨大な映像がなかなか効果的。公園の池のシーンは良かった。
MVPは近藤芳正氏。笑いに飢えている観客が食い付いた。

全話に登場するであろう、亀田佳明氏演ずる名無しの男。石森章太郎の『ジュン』に登場する少女のように集合住宅の人々の暮らしを哀しそうに見つめている。この役をもっと意味ありげに配置するべき。この連作集の謎を解く鍵のように。

是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

何か自分的にはイマイチだった。映画を無理矢理舞台化しただけで、この表現こそが正解とまで至っていない。

②旦那とは別の男の子供を妊娠した妻。旦那が助かるなら堕ろすし、死ぬなら出来れば産みたい。医師は適当な事を言えず、諦めた妻は墮胎しようとする。慌てて医師は「夫は助からない」と告げる。戦争中の空爆で幼き子供達を失った辛い過去があったのだ。堕ろすことをやめた妻だったが、奇跡的に回復した夫が医師に挨拶に来るオチ。「生命が助かった上に子供まで授かるなんて。」
妻はヴァイオリニストの設定だが別に弾くわけでもない。主人公は医師であり、重要なのは失くした子供達のエピソード。しかも愛犬さえも女の車に轢き殺されている。その葛藤が巧く伝わらない。妻がどうしても子供を産みたい訳でもなさそうなので、ある意味どうでもいい話。

④父が実の父親ではないことを知って、愛を告白する娘。近親相姦的なコメディなのだが違和感がある。血縁関係がなければいいのか?母親が実の母でないと知って、世の男性は急に異性として意識するものか?DNAではなく、これまでの関係性の方が重要だろう。ポーランドではまた違うのかも知れないし、このドラマの父娘の関係が特殊なのかも知れないが。しかもオチでは手紙は娘が偽造した物で、母の手紙の内容は読んでないとのこと。実の父娘のままの可能性も普通にあるだろうし、娘の頭はイッちゃってる。
トライアル 2024

トライアル 2024

A.R.P

小劇場B1(東京都)

2024/04/24 (水) ~ 2024/04/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

Aチームを観劇しましたが、すごく面白かったです!
ストーリーの面白さ、役者さん達の熱演に、あっという間に惹き込まれました。
台詞やキャラクターのリアクション等、笑える場面が沢山あり、ずっと口元が緩んでいました。
且つ、事件の真相は何なのか?真剣に考えながら観ました。
予想外の展開で、本当に良く出来た脚本だなぁと思いました。
大満足の舞台でした!

「あぁ、自殺生活。」

「あぁ、自殺生活。」

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2024/04/17 (水) ~ 2024/04/21 (日)公演終了

実演鑑賞

3回目の観劇。
更に洗練され、見やすくなった印象。
ただ最初に見た時のあの怪しげな
雰囲気も好きです。

トライアル 2024

トライアル 2024

A.R.P

小劇場B1(東京都)

2024/04/24 (水) ~ 2024/04/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
当日パンフによれば、初演は14年前で裁判員制度が施行された頃 だという。本作は時代に合わせ加筆修正したとある。表層的には裁判員制度を揶揄するような印象だが、物事(事件等)を疑って多面的・多角的にみることの大切さを描いているよう。演劇的には、裁判員制度といった堅苦しい内容(制度)を 面白可笑しく描くことで、その在り様を楽しく観せ そして考えさせる。

有名な「十二人の怒れる男」を連想させる内容で、勿論 被害者と被告人は登場しない。謎の そして曖昧な人物像を想像させ、事件が起きた状況を素人なりに推理していく。その過程と登場人物1人ひとりの性格や立場を立ち上げながら軽快に展開していく。観客の気を逸らせない楽しい会話、そして いつの間にか事件の核心に迫っていく巧みな構成、見事。
(上演時間1時間45分 途中休憩なし) 【Aチーム】 追記予定

3156(サイコロ)

3156(サイコロ)

WATARoom

ブルースクエア四谷(東京都)

2024/04/26 (金) ~ 2024/04/28 (日)公演終了

実演鑑賞

コントののりで進行していく。

ネタバレBOX

一人複数役かと思いきや、多重人格の話。
ここから面白くなる。
そして予想の上をいく結末。
見事な脚本。
2×3

2×3

甲南大学文化会演劇部 甲南一座

甲南大学岡本キャンパス甲友会館(兵庫県)

2024/04/28 (日) ~ 2024/04/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

学生演劇は無料カンパ制で観れるのが有り難いです☆でも内容はクオリティ高いお芝居されるので見応え十分でいつも感動させてもらってます!今作品も素晴らしかった\(^o^)/

ARTE Y SOLERA CONCIERTO Vol.28

ARTE Y SOLERA CONCIERTO Vol.28

ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団

めぐろパーシモンホール(東京都)

2024/04/20 (土) ~ 2024/04/20 (土)公演終了

実演鑑賞

この手の発表会にはありがちなことですが、やっぱり上手い人とそうでない人の差が大きいなあ、と。

音響はもっと自然に演奏が聞こえていたら、更に良かったかなあ、と。

最前列では、ハレオやパルマで盛り上げている人がちらほらと。
その点については本公演よりも良い点だなあ、と。

ユリが咲く頃には

ユリが咲く頃には

名城大学劇団「獅子」

G/Pit(愛知県)

2024/04/19 (金) ~ 2024/04/21 (日)公演終了

実演鑑賞

タイトル見ただけでおおよその結末がわかってしまいそうなお話。

ネタバレBOX

いやいや、犬や猫の仔拾ってきたわけじゃないんだから
今の世で記憶喪失の見ず知らずの女の子を
男の部屋なんかに連れ込んだりしたら犯罪でしょう。
まずは、警察行くなり
親元に返してあげるのが普通だと思うんだけれど
それもせずに、勝手に住まわせて
あげくの果てに働き過ぎて身体壊して
「自分は困っている人を見捨てられないんだ」って
まずこの感覚のズレ、常識のなさが理解できない。
『やさしさ』を履き違えているのかな?
舞台を現代にしたのなら
やっぱりある程度時代に合わせてもらわなくっちゃ。
そして、もしどうしてもそういう設定にしたかったのなら
もう少し説明のつくつじつま合わせくらいやってほしかった。
女の子は女の子の方で
自分記憶戻ったし迷惑かけてるみたいなんで帰りますって
あの子がこの世まで飛ばされてきた意味は?
いったいこの世に何しにやって来たんですか?
そしてどこに帰っていったんでしょうか?
自分の描きたい場面、セリフだけをただペタペタとノリで貼り付けていった感じ。
何もかもがちぐはぐでご都合主義に終わってしまった感が否めない。
どつぼ

どつぼ

ナイスコンプレックス

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2024/04/26 (金) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

市街発イマーシブ演劇…阿佐ヶ谷編。劇場<阿佐ヶ谷アルシェ>を結婚式場に見立て、観客は これから始まる結婚式の参列者という 没入と言うか体験型の観劇。観客(参列者)によって好みが分かれる公演。自分は楽しんだ派。
ちなみに イマーシブ演劇は、新郎が寺山修司を慕う劇団員という設定が妙。

ホームページにあるが、本公演の始まりは、阿佐ヶ谷駅前で北口(新婦側列席者)・南口(新郎側列席者)に集合し、阿佐ヶ谷の街を散歩しながら「結婚式の会場となる阿佐ヶ谷アルシェ」に向かう。散歩は新郎コースと新婦コースの2つ。先導する案内人(濱仲太サン)が、Zoomを使って 店や景色などに思い出や2人の出会いや抱えている悩みなどを説明しながら歩く。そこに結婚式会場で起こる事の伏線が散りばめられている。

結婚式を挙げる迄の苦労話。それは世界的な感染症「ゾンビ禍」で順延を余儀なくされたカップルの苦悩を、ナイスコンプレックスのコンセプトである「実際にあった事件をモチーフに描いている。現実にあったであろう事を観客に体験させることで知ってもらう」を意図している。まさしく劇場のみで完結するのではなく、観客の脳髄に作品の一瞬を焼き付け残したもの。

説明にある「結婚式を控えていた普通の人間。全ての準備が整ったその時、世界は『ゾンビ禍』となる」は、どのような状況下か 容易に想像がつく。公演の結婚式は3回目という設定---延期・中止・決行中断、そして有り得ない事態への「慣れ」は怖いが、それでも人間は逞しい。そんなことを改めて感じさせる公演。
(上演時間2時間15分 散策含む)【新郎側参列者】

ネタバレBOX

寺山修司は、1975年4月に<ノック>と称し 阿佐ヶ谷近郊を劇場に見立てた実験演劇を行っている。閉ざされたドア、閉ざされた心をノックしてみる という謳い文句であったよう。
阿佐ヶ谷アルシェには何回も行っており 道順は知っていたが、改めて街中を散策してみると面白い。案内する場所---例えば、スナック ラスベガス等は公演に関わりがあることから、もう少し詳しく説明してもよかったかも(同じ場所に長く止まることは出来ないが)。

舞台美術、当初は新郎・新婦側の参列者という前提であるから 左右に分かれ椅子に座り、中央はバージンロード。物語(挙式)が進むにつれて椅子の位置やテーブルが運び込まれ 変形していく。

以降追記する
鴨川ホルモー、ワンスモア

鴨川ホルモー、ワンスモア

ニッポン放送

サンシャイン劇場(東京都)

2024/04/12 (金) ~ 2024/04/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/04/27 (土) 13:00

鴨川の岸の舞台美術が面白かった。
「吉田代替りの儀」も楽しめた。

空夢

空夢

劇団papercraft

すみだパークシアター倉(東京都)

2024/04/26 (金) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/04/27 (土) 18:00

舞台美術、音楽とストーリーのギャップが面白かった。

デカローグ1~4

デカローグ1~4

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2024/04/13 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

クシシュトフ・キェシロフスキ監督と言えば、映画好きであった昔2本ほど観た記憶があり、それがTVシリーズ「デカローグ」から映画化された2本(「殺人に関する短いフィルム」「愛に関する短いフィルム」)に当たったのだが、元がTV用作品だと知ったのは後の事で、いつかTV版の全作が見れたらな~、という思いが脳の奥底に残っていた。
今回の新国立主催の公演は(にしては)中々の盛況ぶりな印象だが、映画ファンの動員という事もあるだろうか。

Aプログラム(1話・3話)を観た。
子役が出演する。見たところ小学高学年。特に1話では主要人物3名の一人の役を担い、台詞も多く、父子家庭(母親とは死別か別居か不明)の健気だが繊細な、しかし自分の考えや疑問を中心に存在し得ている、うまく言えないがある特徴を備えた役柄。父親は間違いなく彼の成長を大事に、不要な作為で相手の精神を歪めないよう、自分も自然で正直な、それゆえ世界を肯定する前向きな存在であろうとするような、そんな姿を想像させるすくすくと育った子どものキャラが浮かぶ。
つまりドラマが想定した父子関係を成立させる役のキャラが鍵に思われる。その点でこの低年齢の俳優は、「稀に見る天分」の子役ではない事は全く良いのだが、キャラがフィットしない感が残った。指定された動きをこなし、台詞を出す範疇に止まり、心を動かす領域には到達できなかった。と言ってもそれは恐らく劇作りで難度の高い作業で、小川絵梨子演出はこの最大のネックをどれほど意識しただろうか、と疑問が過ぎった。勿論大意を伝える役割は果していたけれど。

第一話は父子と、父の姉(=息子の伯母)が主な登場人物。学者の父は、パソコンの計算式を活用する技量を体得した小学生の息子と、プログラムの話題で日々のコミュニケーションをかわしている(パソコンに打ち込まれる文字・記号は、縦に長い「団地」の装置の上部の壁面に映し出されるが、ポーランド語らしい)。
この所息子は「死」についての質問を父によくする。なぜと聞けば、近々建つ教会の敷地の前に、犬が死んでいたという。「死とは何か」の質問に対し、父は分子レベルの話をする。死によって人間は「消える」だけだという。
「今日は伯母さんが夕食を作ってくれるからな」と出かける父。伯母の興味に答えて息子はパソコンを立上げ、打ち込んだ指示算式で家内の電化製品を動かし、玄関の鍵を解除し、風呂の湯を沸かす。感心する伯母。父は遅く帰って来る。伯母は甥のために教会に通わせたいと願い、弟にも勧めるが、無神論を貫く科学者である弟は難色を示す。父はコロンの匂いをさせ、姉に指摘される。(姉はこれを厳しくは咎めないので、妻はいないと思われる。)
不思議な場面がある。ある夜、子どもが得意で毎日プログラムを作っているパソコンの電源を消したにも関わらず、点いてしまう。もう一つ伏線らしい事が起きるが、その後、ある日の夕方学校帰りに事故が起きる。サイレンが響きわたり、近所の大人が「子供二人が池に落ちた」と告げに来る。息子は池の氷の厚さを計算できる。そういう間違いは犯さない。だから息子ではない、と推量するも父は居ても立っても居られず駆けつける。救助隊に引き出されるのを凝視するもう一人の近所の母親が、絶望の声を上げる。息子とつるんでいた級友を見つけ、姉が声を掛ける。「スケートに行くと言っていた」と言う。そして父も現実を知り、崩れ落ちる。家に戻った父は、再び「勝手に」立ち上がったパソコン画面に映った「I am resdy」を見つめ、エンターを押す。再び「I am ready」と出る。何度もエンターキーを押すが他に何も起きない。普請中の教会の壁に蹴りを入れる。まるで無神論である自分をあざ笑った相手に抗議するように。
ポイントは、上述した「不思議」で、最初私は息子が不可思議の領域に触れつつある事を示唆するものかと考え、池の氷の厚さは十分だったのに息子に備わった別の力が氷を貫いた、とも想像したが、恐らくはパソコンが息子に嘘の解を教えた、というのが作家の意図だろう。
旧約聖書にはアブラハムが高齢にして漸く授かった一人息子イサクを、生け贄に捧げるよう神が命じるという有名なエピソードがあるが、旧約の神は理不尽な神、人間を「試す」神だ。しかし現代において、人間が神を裏切るテーマは数あれど、神がかくもあからさまに人を試す物語は寡聞。息子を死なせたのは神ではなく、「科学への過信」と言い換える事も可能だが、このドラマは事故の背後に「神」を読み取らせる。
以上がエピソードⅠ。Ⅲはネタバレに改めて。

ネタバレBOX

クリスマスイブの夜。車を降り、ホッホー、サンタが来たぞ~と赤い服と白い髭の出で立ちで子供たちにプレゼントを渡す彼は、父親である。やれやれ、とこうして家族水入らずでの時間を過ごすのは久々な風。もう寝なさい、プレゼントはツリーの下に。明日開けるのよ、と母。ふいに淡泊になりそうになる妻に、夫は心を傾け、買ってきたワインとグラス二つをテーブルに置く。揺らいで来た愛を今夜は互いに確認する機会として与えられた・・そんな空気が流れるが、突如ベルの音で破られる。
男が出ると、かつて付き合いのあったらしい女。外へ出て「何しに来た!」と詰め寄ると、彼女の夫が消えた、と言う。男が停めた車はタクシーだったらしく、商売道具が盗まれたと妻に告げ、探しに行くと言い置いて外へ出る(妻が出てきたらバレるので動かしておく、と女が言い、男がキーを渡す周到なやり取り)。あくまで友人を心配して義理を果たす男の様子であったが、次第に二人の「かつての関係」が語られる。救急搬送された男は無いかと病院を訪ねたり、駅方面へ出て彼女の夫の車を見つけたり、一旦女の部屋に戻ったりしながら・・。生活に倦んだ男は女を本気で愛した。だがある夜二人が居た部屋に女の夫が現われ、女に「どっちを取るか決めろ」と言われ、女は男に目もくれず夫の元へ走った。女は自分の夫に場所を教えたのは男だ、関係を終わらせたかったからだ・・と主張する。男は懸命に否定する。冷たい目で見つめる女。「なぜまたやって来た」問う男に、女はついに真実を語る。夫とはとうにうまく行かなくなった事、今まで語った事は大部分嘘だった事、ただ淋しく孤独に耐えきれず男を訪ねた事・・。引き裂かれるような思いで、自分のかつての思いが真実であった事を訴える。だが今は家族を大事にしたい、本気でそう思っている、と告げる。女は一夜を過ごす相手を求め、引き回し、最後には車を故障させまでして、目的を遂げたが、男はその事をとがめる事なく、ただ己の当時の「愛」の真実性を認めさせようとする。恐らくはその機会とするために(無意識レベルで)、彼女の捜索に付き合う事にしたとも思える。
別れ際、女が男への嫌疑(二人の逢瀬の場に自分の夫を呼んだ)を解く。その一言で男は報われ、彼女に感謝さえする表情を浮かべる。嵐は過ぎ、男は居眠りする妻のそばに寄り、先の続きを始める・・。
「デカローグ」の十話は聖書の十戒の罪に寄せて書かれたそうで、解説本でも読めば何話がどの戒律かと分かるのだろうが、この第三話は「嘘」の罪だろうか。

阿部海太郎の音楽は、劇中ではクラシック曲等も挿入している感じだが、メインテーマに当たるのがシンプルにメロウな短調で、メロドラマに相応しい。
物語は、ギリシャ悲劇に似たシンプルな構造の強さがある。
答えを出さないが、「落ち着き所」に落ち着く印象。
東欧の空気感というものを勝手に重ね合わせて観るせいか、「らしい」感じを噛みしめてたりする。
「東欧の空気感」と言っても自分の場合は全て映画からであるが。
カラカラ天気と五人の紳士

カラカラ天気と五人の紳士

シス・カンパニー

シアタートラム(東京都)

2024/04/06 (土) ~ 2024/04/26 (金)公演終了

実演鑑賞

開幕から注視させる流れである。別役戯曲の中でも些か軽いナンセンスの部類だが、加藤拓也演出は客との馴れ合いでナンセンスのもたらす緊張を即座に笑いへ着座させられる所をさせず、手練れの役者が「真剣に」というか「純朴なまでに真面目に」そのアホな言葉を吐く男共を演じてる。その様が良い。
松井るみの装置はその場所を近代的な地下鉄のホームに見立て、柱を上ると等間隔に設置された最近風の電灯に手が届き、これは劇中で使われる。
「俺たち」という集合が見えて来るのが終盤のこと。女性二人が嵐のようにやって来て、去って行った後、「男ども」の集合が残る。彼らはあの彼女たちこそ本当に物事を実行した「何かを為した者」だ、と評する。だとすると何事をも為し得ない自分らは一体何ができるのか、何をすれば良いのか・・。
時代の産物を微かに戯曲に残して行く別役実の台詞の端に、何かが引っ掛かる。恐らくはこれが書かれた当時あった何か、またはその当時人々の記憶に残っていた何か..。
加藤拓也は令和に読み替えた「カラカラ天気」をやったと言う。
当日立ち見で観劇した時、令和への翻訳のポイントは分らなかったが(今もあまし判っとらんが)、配信をやるというのでこれも観て、新たな発見もありまた初見と随分印象も違った。戯曲の時代性という点で言うと、「何かを成し得ない」事への自省、自己批判は今の時代、そう厳しくは問われない(己を突き刺す事はない)のではないか。
何かを成そうにも成せない時代、条件的に剥奪された状況がスタンダードな時代だから。
戯曲的にも、男たちの前に何か具体的な課題を持ち込まないと、彼らはそれほど痛烈には、その事(何も成し得ない事)を慨嘆するには至らない。
しかし言葉の一般的な意味としては、つまり語義的には理解はできる。そして、彼らは今少なくともやれる事に、真摯に向き合うというラストを作る。これはこれで、感動的なのである。

絶望という名のカナリア

絶望という名のカナリア

甲斐ファクトリー

小劇場 楽園(東京都)

2024/04/23 (火) ~ 2024/04/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白かったです。
主人公、そして闇を持った登場人物達の行く末は?と、どんどん惹き込まれました。
様々な社会問題について考えさせられる内容で、観応えがありました。
役者さん達の演技も素晴らしかったです。
何とも言えない余韻を残す、良い舞台でした。

空夢

空夢

劇団papercraft

すみだパークシアター倉(東京都)

2024/04/26 (金) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

2022年9月、この劇団の『世界が朝を知ろうとも』を観てガックリ。今後もう二度と観るつもりはなかったが、入手杏奈さん出演で反射的に即チケット購入。
前田悠雅さんも出演、ショートカットがまた似合ってる。
主演の坂ノ上茜さんが魅力的。川口春奈とか辻希美っぽくも見えた。
随分贅沢な女優陣、このキャスティングだけで半分以上は満足。

ドウキュウセイと呼ばれる者達が暮らす世界がある。高度に管理された監視社会、センセイと呼ばれる者が権力を持つ。その街に時折紛れ込む存在がいる。彼等は座敷童子的に周囲の記憶を弄って居座る。それを摘発する組織があり、常に異分子の存在に敏感になっている。貴方の記憶は改竄されていないか?隣りにいる者は本当に昔から知っている存在なのか?

流れるのは童謡。『線路は続くよどこまでも』など。

ネタバレBOX

冒頭の食卓を囲む家族のネタが良かったので、時折そっちに戻すべき。雇った新人家政夫の料理の不味さについて、如何に伝えるべきか?をもう一つの柱に。その話の方がよっぽど興味深い。家政夫の話という額縁を利用しないのは勿体ない。

作家のアイディアや語り口はそれなりに面白いのだが、それを説明しようと理論武装すればする程、粗が出る。訳の分からない設定はそのまま観客にぶん投げた方がいい。並行世界とか、学生時代のメタファーとか匂わす程にげんなりする。そもそも作者にすら何なのか分からない原初衝動なんだから丸ごと観客に放り投げるべき。正解などない夢のようなもの。下手に理屈をこじ付けようとしても無理がある。

良い部分もある。だが語れば語る程、設定の薄っぺらい底が見えてガッカリする。今作一番の問題は誰にも感情移入出来ないこと。誰が死のうと生きようと本当にどうでもいい。一人でも観客が感情移入できる存在を作れれば。

ヒロインは彼氏と同棲してラブラブ。彼氏のレストランの手伝いをしながら婚約。だがセンセイから「彼氏が紛れ込んだ異分子の可能性が高い」と言われ毎日調査報告をする。もしそうなら彼氏は殺されるので、この時点でかばわないとおかしい。いざ殺されるとなって泣き叫ぶのもさっぱり判らない。
絶望という名のカナリア

絶望という名のカナリア

甲斐ファクトリー

小劇場 楽園(東京都)

2024/04/23 (火) ~ 2024/04/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

最初はTPOに合わせて笑うのを我慢していましたが、やがて同じ思いをしていたであろう忍び笑いが耐え切れずにあちこちから
あぁ~これで少しは解放できる、それにしてもブラックでずるいなぁ(笑)
何より役者さんの等身大な感じの演技がとても心地よい
自虐が入った女優さんに対しても「等身大」というのは失礼な話だけれど、いやホントそんなスピリッツも素敵でした

当事者には全く見えていないけれど、観客には見えてくる彼等の“鳥かご”
がんじがらめの“鳥かご”は当の本人の思考や行動が材料になっている事を興味深く体感できる公演
第10回記念公演、拝見するのはまだ3回目が言うのも何ですが、甲斐ファクトリーさんの真骨頂キターーーーという思いがしました

何故に甲斐ファクトリーさんの描かれる“闇”がこんなに魅惑的なのか
日常生活の中で存在は知っていても、危険な香りがしてとても近づけない世界
そこを覗き見できる魅力というのもありますが、その磁場から派生する偏った価値観
当人がそれを絶対だとこだわるほどに”闇”は甘美に広がっていくよう
心の震えは恐怖なのか歓喜なのかもはや見分けられない
先に「とても近づけない世界」と書いたけれど、それは本当にさりげなく日常に入り込んでくる場合もありそうで自分だけは安全圏にいるとは決して言い切れず
その立場になれば”闇”の中で陶酔し、冷静な判断はすっかり消え去り、自ら破滅の方へと進んでいくのではないかと想像できてしまうのにはゾクッとしてしまいます
エピソードの絡み方、個々の存在感、観客目線の移させ方、象徴のように置かれた鳥かごと主人公の絡み方、どれもが素晴らしかったです

ネタバレBOX

世間では新NISAが話題になっている中、どこかで株式投資を扱った公演はないのかなぁと思っていたところ、本作では“投資信託”がモチーフのひとつに
投資する側からではなかったものの、ヒリヒリと物語の中で溶け合っていて良かったです

今回の行き過ぎた押し活や信仰も依存症と言えますが、いつか買い物依存症やSEX依存症など〇〇依存症を題材に取り上げて欲しい、ぜひ甲斐ファクトリーさんで


なかなか失われない30年

なかなか失われない30年

Aga-risk Entertainment

新宿シアタートップス(東京都)

2024/04/27 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/04/27 (土) 19:00

130分。休憩なし。

ピーチボーイズ

ピーチボーイズ

Peachboys

シアター711(東京都)

2024/04/23 (火) ~ 2024/04/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/04/27 (土) 13:00

125分。休憩なし。アフターイベント除く。二回目観劇。

銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2024/04/25 (木) ~ 2024/04/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/04/27 (土) 11:00

チーム白鳥座。70分。休憩なし。

銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2024/04/25 (木) ~ 2024/04/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/04/26 (金) 14:00

駒場のアゴラ劇場サヨナラ公演、青年団100本目の「銀河鉄道の夜・チーム蠍座」を観る。
シンプルなセットだと思ったが、これは2011年フランス公演のために創られた作品で、
劇場からの依頼が、全国を回る為に簡単なセット、出演者は4人までというものだったから。
その公演中日本で東日本大震災が起こり、フランス公演の意味は大きく変わったという。
子どもにとって早すぎる「お別れ」がどれほど重く理不尽なものか、それは計り知れない。
ラスト、ジョバンニのカンパネルラに呼びかける台詞が印象に残る。

ネタバレBOX

舞台上には大きな積み木のような丸・三角・四角が点々と置かれ、
それらはやがて教室になり、街並みになり、列車の座席になり、町はずれの丘になる。
客入れの時から正面の壁にはキラキラした宇宙の映像が映し出され、まもなく
「天の川は何で出来ているか」という学校の授業が始まる・・・。

この有名な物語は、終始もの悲しい響きを帯びている。
ジョバンニの母親は病気で、父親は遠い海へ仕事に行ったきりなかなか帰って来ない。
彼はいくつも仕事を掛け持ちしていて、同級生からはいじめられている。

カンパネルラは「ほんとうのしあわせ」とは何かを考えている。
ジョバンニをいじめる仲間に加わりはしないが、いじめを止めさせようともしない。
両親に対して無条件に甘えられる家庭ではなさそうなひんやりとした空気を感じさせる。

銀河鉄道で出会う人々は ”死者を見守る、あるいは見送る” 人々だろう。
鳥採りが「白鳥を捕まえて食べる」証拠にカバンから「鳩サブレ」を出したのには大笑いした。

微妙に発音しにくい「カンパネルラ」という名前を、
ジョバンニが大変きれいに転がるような発音で連呼するので感心した。
彼のカンパネルラに対する繊細で一途な友情を感じさせる。

100年近く前に生まれたこの物語は、現代と同じ湿り気を帯びている。
子ども時代の屈託に満ちた、解決方法を知らない絶望感に深く共感せずにいられない。
大人になってからこの作品を観たり読んだりすると、子供の頃よりずっと哀しく苦しい。
だから繰り返し逢いに行く。独りぼっちのジョバンニに逢いに行く。
「銀河ステーション♪、銀河ステーション♪」という、歌うようなアナウンスに誘われて・・・。


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