Ten Commandments
ミナモザ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/03/21 (水) ~ 2018/03/31 (土)公演終了
満足度★★★
「原子力」という、現在日本に住む多くの人が興味を持ち、語るべき主題を持って来たことがまず素晴らしいと思いました。内容としては、“その近さと遠さ”を迷いも含めて率直に提示していて、その正直さは好感の持てるものでした。ただもう少しこの題材が作家の腹に落ち、「書ける」と思ってからあたってもいい作品だったのかな?と感じられ、クリエイション途中のものを観ている印象。俳優達は魅力的でした。
二ツ巴-Futatsudomoe-<舞台写真公開中!>
壱劇屋
ABCホール (大阪府)
2018/04/06 (金) ~ 2018/04/08 (日)公演終了
満足度★★★
台詞なしで、役者の演技と殺陣で物語を見せていく構成に驚きました。キレのあるアクションシーン、くっきりとした輪郭のキャラクターたち、そこに親子のつながりといった普遍的なテーマを絡め、盛りだくさんの内容は満足度が高く、創意工夫のあとが見えました。複雑な手で考えられた殺陣も面白い。ただ動きがなく表情だけで見せる場面は時に再現ドラマのように見えることがあり、演劇/生のパフォーマンスを観る感覚から離れる瞬間があり、課題を感じました。NMB48の久代梨奈さんの動きが素晴らしく、アイドルのポテンシャルを再確認。ゲスト赤星マサノリさんの身体能力も堪能しました。あ・うんの呼吸の見事なアフタートーク、商売魂みなぎる物販まで、観客を楽しませることに徹した劇団力は特筆物です。
iaku演劇作品集
iaku
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/05/16 (水) ~ 2018/05/28 (月)公演終了
満足度★★★
ガン告知された母の今後について話し合う兄弟、子どもは持たないと決めたのに妊娠の可能性が発覚した夫婦……それぞれの対話を交互に見せながら、事情が見えてくるという構成は巧みでした。現代男性&女性の認識の差、人の死に介入することへの迷い。多くの人が身につまされ、共感を持って観られる議論が散りばめられたドラマ。現世を生きる人間とは別の空間にいる〈命の神秘〉を表したような二人の存在は、女性がそういった形のないイメージによって〈母になるべし〉〈子を持つべし〉という無言の圧力に苦しむことも多いゆえに、違和感を感じました。過去作品をレパートリーとして再演し、作品を消費しない、強度を上げていくことを体現した企画性高く示唆に富んだ試みだったと思います。
青春超特急
20歳の国
サンモールスタジオ(東京都)
2018/04/19 (木) ~ 2018/04/29 (日)公演終了
満足度★★★
大人が演じる「高校生」「青春」は気恥ずかしさもありますが、群像劇をスピーディーにさばき、個性的なキャラクターを書き分ける人物描写など、作家としての技術の高さを感じました。同世代の作家がモノローグで処理するような箇所もダイアローグで描き、作家の矜持を感じます。「書ける」作家にありがちな、都合良い展開や書き手のエゴイスティックな人物造形がないことにも好感を持ちました。中盤の卒業式がクライマックス感満載で「終わった感」がする構成は、一旦観客の集中力が切れるので損だと思います。かっこいい子がかっこわるさを見せた時に感じる愛おしさの発見、遠くに存在する誰かが意外な誰かを励ましていること、打ち込むことがない焦燥感など、すくいとる心理はどれも繊細。若者の新しい日々へのエールのような最後も鮮やかでした。ただ、大人の心理も描いた『保健体育B』のほうが個人的には面白く感じられ、「青春」から離れたあとの活動に、大いに期待しています。
SUPERHUMAN
ヌトミック
北千住BUoY(東京都)
2018/03/23 (金) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★
公園のような遊び場のような空間、遊ぶようにダンスする出演者、リズム感あるラップのような台詞、ポジティブな雰囲気溢れる時間でした。感覚的に紡がれる言葉は、軽さが面白いところと、客席に座って多くの人たちと時間と空間を共有する劇場で聞くのには物足りなく感じるところが玉石混淆。自分の立つ世界を確認&肯定し、「テンプレート的な日々」を生き「老いてく若さの先にある」未来への不安を感じながらも今この瞬間を「超スピードで駆け抜けている」気持ちは痛いほど伝わりました。しかし世代が上の人間としては、社会へ声を上げず刹那的な気分に流されて保守的になっていく若い世代と重なり、一緒に楽しむというよりもちょっと心配にもなりました。撮影・飲食可能、当日パンフには北千住おいしい処MAPありと気軽に演劇が楽しめる心遣いが素晴らしいです。
さようなら
オパンポン創造社
王子小劇場(東京都)
2018/04/19 (木) ~ 2018/04/22 (日)公演終了
満足度★★★
田舎の小さな工場で錯綜する人間模様を、エンターテインメント性とグルーヴ感溢れる趣向、役者の表現力で見せた80分間、終始ワクワクしながら観ました。キャラクターや台詞の面白さも際立っていますし、漫画のような飛躍ある展開を立体化する手際も素晴らしいと思います。金によって変化する人々……しょうもなさそうな男と再出発しようとする中年女性の決意、高圧的な先輩になんとなく支配されてしまう後輩、そこに「何もなかった」と気づき、関係性が崩壊する様はとてもリアル。台詞なし、音楽だけで展開する感動的な場面は「さよならCOLOR」の楽曲の良さに乗っていてずるいとおもいましたが(笑)、テンポ良く構成されてお見事。先輩が唄う「マリオネット」も無駄にうまくてズルかったです(ほめてます)。
この声
オイスターズ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2016/02/19 (金) ~ 2016/02/23 (火)公演終了
満足度★★★
不条理劇の可能性
美術教師と無邪気な少女たちのやりとりが、不気味になっていく、会話だけで展開する実にシンプルな芝居なのに、こちらの想像力を刺激しつつ、先を読ませない。不条理劇を書き続けている作家・平塚直隆の才能にはずっと注目して見続けていますし、今回もその持ち味をたっぷりと楽しみました。ただこれまでの作品群と比べて今回は、劇団の中心俳優ではなく若手を起用したキャスト構成もあり、小品の印象が残りました。生徒を演じる女優たちの演技が一本調子だったのも気になります。
ますます複雑になる現代社会ですが、不条理劇こそが、この現状を鮮やかにオソロシク、リアルに描けると思っています。平塚さん、ならびにオイスターズの皆さん、期待しています。
ト音
劇団5454
赤坂RED/THEATER(東京都)
2019/03/27 (水) ~ 2019/04/07 (日)公演終了
スケベの話~オトナのおもちゃ編~
ブルドッキングヘッドロック
ザ・スズナリ(東京都)
2016/04/09 (土) ~ 2016/04/20 (水)公演終了
満足度★★★
艶笑ドラマ
直接的な表現をせず、あくまでいやらしい妄想をかき立てる会話や言葉を駆使して<スケベな話>を展開させるという、大人の趣向に満ちた戯曲/セリフ術が職人的で好きでした。その<微妙さ>を表現する役者陣の力量も高いと感じましたし、チャーミング。特に、出演場面できっちり笑いを取った永井幸子さんが印象に残りました。そういった曖昧さを愛でるシャレた作品だけに、上演時間が長く、冗長に感じました。
レドモン
カムヰヤッセン
吉祥寺シアター(東京都)
2016/04/06 (水) ~ 2016/04/10 (日)公演終了
満足度★★★
現代のSF
地球外知的生命体<レドモン>と地球人とその混血<マジリ>の物語に、人種差別やヘイト問題や難民問題が透けてくる……現代的なテーマ性ある壮大なSFを演劇で、という意欲を感じる舞台でした。とはいえ、肝になっている家族のドラマが薄く感じられ「これが散りじりになっていく家族だろうか?」という印象のまま終わってしまいました。座った席が寒く、途中で一番後ろに移動したのですが(スミマセン)、上から全体を見渡したほうが、地下まで使った舞台美術がよく見え、ロープで境界線をあらわしていく演出が面白く感じました。
SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】
壱劇屋
王子小劇場(東京都)
2016/04/06 (水) ~ 2016/04/10 (日)公演終了
満足度★★★
ライブ感覚
音響と照明を駆使した演出がライブのようで、パントマイムで「SQUARE AREA(四角い空間)」が様々な意味合いを帯びていく、その趣向に演劇的な楽しさが詰まっていて、シンプルに楽しさや驚きを感じられる作品でした。観客の想像力を信じてテンポよく展開する物語も周到。ゲームやアニメに親しむ世代にもドンピシャなのではないかと思います。
流れる
劇団あはひ
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2019/03/28 (木) ~ 2019/04/01 (月)公演終了
満足度★★★
月のように見える時計、揺らめくタバコの煙、自在に変容する空間は時間を伸縮させるよう。松尾芭蕉と河合曾良を軸にし、そこに「鉄腕アトム」の(息子を事故で亡くした)天馬博士、その息子のカタチを映したアトムが入ってくるのは大胆な発想。ジャズの音色も心地よい(生演奏だったらとってもカッコ良さそう)。能の要素を現代に置き換える色々なアイデア豊富で楽しかったです。
お気に召すまま
ヌトミック
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/05/12 (日) ~ 2019/05/19 (日)公演終了
満足度★★★
対面客席で、ステージ部分は吊り屋根を持ち、円形のテープを貼った床は土俵にも見え、大相撲のようなしつらえ。長台詞をプロレスのマイクファイト風(?)にしたり、対話を分解したりと、対立関係を様々な角度でみせてシェイクスピア独特の台詞を扱うための工夫を随所に感じました。
猩獣-shoju-
壱劇屋
HEP HALL(大阪府)
2019/03/21 (木) ~ 2019/03/24 (日)公演終了
満足度★★★
竹村氏の殺陣は各キャラクターにぴったりと合わせたもので、表情豊か。魅力的で感嘆しました。着物をアレンジした衣装も役の個性を表現していて効果的(黒歿の黒い紋付をアレンジした衣装が特に素敵でした)。大所帯の劇団が成立しにくいこのご時世、これだけの人数のメンバーを擁し、身体のキレ、表現力と、高いスキルを持つ人がたくさんいることに驚きました。
THE Negotiation
T-works
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2019/03/13 (水) ~ 2019/03/17 (日)公演終了
満足度★★★
軸となる二つの会社の重要な交渉を象徴するような左右対称の美術。それぞれが有利に立つために本筋から外れていく喜劇、深読みが深読みを呼ぶことで生じるおかしみ。演出も台詞も構成も、よく練ったものだということが伝わってきます。
夕夕方暮れる
立ツ鳥会議
萬劇場(東京都)
2019/05/31 (金) ~ 2019/06/02 (日)公演終了
「芸術家入門の件」
ブルドッキングヘッドロック
吉祥寺シアター(東京都)
2019/05/18 (土) ~ 2019/05/26 (日)公演終了
満足度★★★
「芸術家入門教室」の世界、大学生たちの世界、女神の巨像を作る古代ギリシャの世界、客席と地続きの像を“つくり続ける”世界――この4つの世界を行き来しながら、総勢24名の俳優たちが動き続ける舞台は迫力でした。
ハイライト
うさぎストライプ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/04/03 (水) ~ 2019/04/08 (月)公演終了
男亡者の泣きぬるところ/女亡者の泣きぬるところ
ニットキャップシアター
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/03/27 (水) ~ 2019/03/31 (日)公演終了
満足度★★★
男ver.女ver.でテンポ良い二人芝居×2本立。間口が広いエンターテインメント作品のようにも観られるし、苦い人生スケッチにも見える。壁面の木のモザイク柄を「一本の木」に見れば登場人物はウラジーミルとエストラゴンに、「松」に見立てて能舞台に見れば、次郎冠者と太郎冠者にも思え、悲劇的な状況が喜劇的にも変化します(こう書くと、チェーホフ的でもありますね)。深読みしたい仕掛けが満載、想像できる余白があり、シンプルながらよく考えられた作品だと思いました。
1001100000110101000100101
しあわせ学級崩壊
ART THEATER 上野小劇場(東京都)
2018/05/30 (水) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★
爆音の音楽を流し続けながら俳優が時にマイクを握って台詞を発し、断片的な場面が連なり繰り返され、感情を乗せたポエトリーリーディングのような印象。事前に読んでいた説明文で、現代音楽のように層をなす構成の戯曲を、トランス感あるライブDJで上演するクラブ的なノリの演劇スタイルをイメージしていたので、最初はちょっと戸惑いました。オリジナルの音楽を使うスタイルには個性を感じますが、戯曲にはいろいろな人気劇団を想起させる台詞や展開や設定を感じます。やや内向的な雰囲気は好き嫌いが分かれそうです。震災を思わせる場面はモチーフが深刻なだけに、断片的な扱い方に違和感が残りました。