川添史子の観てきた!クチコミ一覧

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物の所有を学ぶ庭

物の所有を学ぶ庭

The end of company ジエン社

北千住BUoY(東京都)

2018/02/28 (水) ~ 2018/03/11 (日)公演終了

満足度★★★

庭の中を散歩するように〈所有〉の境界線を見つけていく気分を味わいながら、登場人物たちと一緒に “物の所有を学ぶ”という趣向は大変面白く感じました。妖精への教育、人物たちのいわくありげな関係、この独特の劇世界のルールと、いろいろな概念が台詞の中で示され続けるので、全部に付いていくのに必死で、それに同時多発の発話も加わり、後半、こちら側の思考を重ねる集中力が少し散漫になりました(答えを一つにしないという狙いかもしれませんが……)。個人的には〈人の所有〉をめぐるくだりが一番面白い主題だと感じました。

レモンキャンディ

レモンキャンディ

匿名劇壇

王子小劇場(東京都)

2017/05/26 (金) ~ 2017/05/29 (月)公演終了

満足度★★★

故障した飛行船の7日間を描いた群像劇はテラスハウスのような様相でどこかコミカル。恐怖はありますが、やり遂げられなかった夢や残した家族…つまりこの世への未練が薄く感じますし、「性欲」「食欲」が動物状態で出ることもありますが、最後まで理性が充分残っているように感じました。最初は不思議に感じたのですが、「若い人たちの時代感覚なのかもしれない」と思ったら、むくむくと興味がわいてきました。日本の未来は「落下」していくように不安だけれど、彼らは実に理性的に淡々と受け入れているのかも…それは上の世代が簡単に批判できない、現代を生き抜く合理的リアリティーのような気もします。対話の切れ味もよい(「絶対曲げちゃいけない間接曲げた」「そんな間接ないだろ」は笑いました)。劇中、レイプの扱い方には違和感が残ります。有料パンフだけではなく、当日パンフにも配役表がほしいと思いました。

ホールドミーおよしお

ホールドミーおよしお

オフィスマウンテン

STスポット(神奈川県)

2017/05/24 (水) ~ 2017/06/10 (土)公演終了

満足度★★★★

「全身がアンテナなのでわ!」というような俳優たちの演技体にびっくりしました。役者のつまらないかっこつけが入り込む隙のない、高い集中力! それゆえに逆に際立つ存在感! 言葉や音や空気によってぐにゃりと変化していく面白い身体! こういったユニークな作風は、「ストイック」になりがちですが、ユーモアが舞台に風通しのよさを生んでいました。独特の文体を持つ戯曲は、「個性的な言語感覚」と「ただのダジャレ?」の狭間をいったりきたりしつつ、確実にこの世界を立体化するために必要な旋律を持っています。

ネタバレBOX

トイレでるるぶを読み続け北海道に思いをはせる男、男子グループでドライブしながらフェスに向かうフリーター、共産党に投票しつづけている売れない役者…雲が浮かぶような登場人物たちの語りは、落語を聴くように想像力を刺激します。もうとにかく最後まで目が離せない、オリジナリティーも完成度も高い世界でした。
『あゆみ』『TATAMI』

『あゆみ』『TATAMI』

劇団しようよ

アトリエ劇研(京都府)

2017/05/10 (水) ~ 2017/05/15 (月)公演終了

満足度★★★

まず、同時代の作家、しかも自身が演出していて、ある完成形とも言えるver.が誕生している、さらに言うとファンも多い作品に挑むという冒険心が天晴れと思います。男性でも女性でもない、汗くさい「人間」としての人物造形は新たな発見も多く、また、キュートな俳優陣の魅力を伝えるものでした。生演奏のオリジナル音楽も心地よく、世界を弾ませました。原作の持つある意味保守的な女性像への批評性を随所に感じる演出は、チャレンジングな試みとして面白いと思いました。が、その多くが、解答としてうまく機能していたかは疑問を感じました。多くの先鋭的な演劇人を輩出して来た京都に、こういった挑戦的で生きのいい集団がいるのは、とても嬉しいことです。期待しています。

罠々

罠々

悪い芝居

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2017/04/18 (火) ~ 2017/04/23 (日)公演終了

満足度★★★

生き方がわかれてしまった友人との再会、その会わなかった時間が生み出してしまっていた距離。軸となるモチーフは多くの人が人生の中で出合うであろう苦さで、そこを思考する流れは魅力的でした。どろどろっとした感触と、入り組んだ迷路のようにあちこちへ飛ぶストーリーテリングは独特。バラエティー溢れる数々の演出アイデアは素晴らしいのですが、整理すれば物語の骨格や詩情や言葉がより浮かび上がるのではないかと思いました。

「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」

「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」

道産子男闘呼倶楽部

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2017/04/05 (水) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度★★★

人生の挫折とそこからの再勝負、ストレートな物語。台詞が説明的と感じる部分もありましたが、うまくて味のある二人が役を膨らませ、演技を堪能しました。一人の男の成長物語、もう一人は心の中の葛藤、脳内の対話相手だとも考えられます。90分のコンパクトさもあり、演劇初心者にも「舞台って楽しいな」とすっと受け入れられそうなドラマ。北海道出身者たちばかりが集まった公演を、札幌で上演するというアイデアもステキだと思いました。自由席の観客と行列をつくった当日券の観客を段取りよくさばいて満席の会場を開演時間ぴったりに始め、諸注意アナウンスも気持ちよい制作手腕も特筆ものでした。

ハムレット

ハムレット

ゲッコーパレード

旧加藤家住宅(埼玉県)

2017/03/31 (金) ~ 2017/04/10 (月)公演終了

満足度★★★

『ハムレット』を民家で上演するというコンセプトにワクワクしました。台所をアクティングエリアに、出演者はたった3人。さまざまな手法や演技、ポップな美術で、かなりデコラティブ。

ネタバレBOX

舞台の多くを彩るにぎやかな要素よりも、冷蔵庫の中の明かりが暗闇にもれたり、食事の支度をしたりといった、台所という背景に現れるごく普通の仕草と、戯曲の言葉や世界が響き合うパートが面白いと感じました。
時をかける稽古場2.0

時をかける稽古場2.0

Aga-risk Entertainment

駅前劇場(東京都)

2017/03/22 (水) ~ 2017/03/28 (火)公演終了

満足度★★★

タイムトラベルものは数あれど、それを“小劇場あるある”に重ねた趣向に大いに笑いました。シチュエーションコメディーという技術的に難しいことに果敢に取り組んでいる姿勢も作品からビシビシ感じられ、演劇をあまり観ない、広い層に訴える可能性があると感じます。スピーディーに展開しなくてはいけなく、テンポが命なだけに、役者たちが「準備した演技を繰り出すのに必死」な感じに見えてしまうのが惜しいと感じました。観客を案内する場内係の手際がてきぱきとしており、当日パンフレットに載っている情報(あらすじ、キャスト表、各役者のSNSなど)もコンパクトで周到。制作手腕の高さを感じました。

遠くから見ていたのに見えない。

遠くから見ていたのに見えない。

モモンガ・コンプレックス

BankART studio NYK 3C gallery(神奈川県)

2017/03/18 (土) ~ 2017/03/19 (日)公演終了

満足度★★★

中央の柱が死角を生む使いにくい空間を逆手にとって、「見えないこと」で広がる世界を展開。座る場所によって「違うものを観る/しか観られない」という演出は、人間の「限界/可能性」にも考えられます。親子で観られる席というアイデアもステキで、小さな観客と一緒の空間を過ごす体験は大人にも楽しく、そこには我々と違うものを観ているであろう「子供たちの視点」という別のアングルも加わるのです。

ネタバレBOX

強く誰かを求めるかのような「Sexual Healing」でグングン突き抜けていくところが素晴らしく、これぐらい「ダンス」で満たされるような瞬間が多くあったらと思いました。
いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した

いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した

ロロ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/03/04 (土) ~ 2017/03/13 (月)公演終了

満足度★★★

「高校生に上演してほしい」というコンセプトは面白いと思いました。若い人たちの気分をすくいとった戯曲は巧み。テンポも言葉選びも演出も「今」を充分に感じさせるもので、現代の観客に違和感なく演劇を楽しませる仕掛けに溢れています。しかし想像していたより10代の人たちの肉体で演じるからこそ見えてくるものが多そうな戯曲で、出演者はチャームのある女優ばかりなのに、彼女たちのポテンシャルが生きていないように見えました。

「母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ~キャンピングカーで巡る真冬の東北二十都市挨拶周りツアー♨いいか、お前ら事故るなよ、ぜったい事故るなよ!!編~」

「母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ~キャンピングカーで巡る真冬の東北二十都市挨拶周りツアー♨いいか、お前ら事故るなよ、ぜったい事故るなよ!!編~」

MICHInoX(旧・劇団 短距離男道ミサイル)

Studio+1(宮城県)

2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度★★★

太宰治の原作と役者たち自身の“人間失格”を重ね、しかもそれが「そんなダメな、俺」みたいな鼻白む自己肯定にならず、客観性を持ちつつ身を舞台に放り出している俳優たちの様が見事でした。

ネタバレBOX

普段は、客いじりがあったり、脱いだりする舞台は苦手ですし、技術の未熟さも感じましたが、あれだけ自分をさらけ出すなら脱帽です。コントのようだったり、ドキュメンタリーのようだったり、浄瑠璃(さすが奥浄瑠璃を生み出した東北!面白かった!)のようだったり。さまざまな手法をぶちこんでいますが、それを一つにまとめる力も感じました。
レドモン

レドモン

カムヰヤッセン

吉祥寺シアター(東京都)

2016/04/06 (水) ~ 2016/04/10 (日)公演終了

満足度★★★

現代のSF
地球外知的生命体<レドモン>と地球人とその混血<マジリ>の物語に、人種差別やヘイト問題や難民問題が透けてくる……現代的なテーマ性ある壮大なSFを演劇で、という意欲を感じる舞台でした。とはいえ、肝になっている家族のドラマが薄く感じられ「これが散りじりになっていく家族だろうか?」という印象のまま終わってしまいました。座った席が寒く、途中で一番後ろに移動したのですが(スミマセン)、上から全体を見渡したほうが、地下まで使った舞台美術がよく見え、ロープで境界線をあらわしていく演出が面白く感じました。

SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】

SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】

壱劇屋

王子小劇場(東京都)

2016/04/06 (水) ~ 2016/04/10 (日)公演終了

満足度★★★

ライブ感覚
音響と照明を駆使した演出がライブのようで、パントマイムで「SQUARE AREA(四角い空間)」が様々な意味合いを帯びていく、その趣向に演劇的な楽しさが詰まっていて、シンプルに楽しさや驚きを感じられる作品でした。観客の想像力を信じてテンポよく展開する物語も周到。ゲームやアニメに親しむ世代にもドンピシャなのではないかと思います。

この声

この声

オイスターズ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/02/19 (金) ~ 2016/02/23 (火)公演終了

満足度★★★

不条理劇の可能性
美術教師と無邪気な少女たちのやりとりが、不気味になっていく、会話だけで展開する実にシンプルな芝居なのに、こちらの想像力を刺激しつつ、先を読ませない。不条理劇を書き続けている作家・平塚直隆の才能にはずっと注目して見続けていますし、今回もその持ち味をたっぷりと楽しみました。ただこれまでの作品群と比べて今回は、劇団の中心俳優ではなく若手を起用したキャスト構成もあり、小品の印象が残りました。生徒を演じる女優たちの演技が一本調子だったのも気になります。
 ますます複雑になる現代社会ですが、不条理劇こそが、この現状を鮮やかにオソロシク、リアルに描けると思っています。平塚さん、ならびにオイスターズの皆さん、期待しています。

保健体育B【終演しました!ご来場ありがとうございました!】

保健体育B【終演しました!ご来場ありがとうございました!】

20歳の国

駅前劇場(東京都)

2016/04/27 (水) ~ 2016/05/01 (日)公演終了

満足度★★★

欲望だらけの青春劇
「前代未聞のキスシーン数」や「今すぐに恋したくなる、演劇」などといった分かりやすい売り文句の底、描かれた狂騒的な恋愛の裏には、実は現代人にひそむ「常に誰かに愛されていないと」という焦り、人間が持つ普遍的な孤独感があると感じました。登場人物の高校生だけでなく、大人たちも等しくダメな恋愛/結婚生活を送っていて、この郊外らしき街に浮かぶ人生の未来のなさにも、時代の空気を感じました。気軽に浮気したり二股をかける人物たちは、小腹を満たす為にコンビニでインスタントラーメンを買うがごとく、身近な相手を求める。そういった人たちのズルさやいい加減さを「愚かしい」と片付けず、それらのダメさを書き分ける作家の筆致には人間に興味を持って、愛している感じがします。テクニカルなところには、やや拙さを感じましたが、この「人間を描きたい」という作家の態度に共感しました。

スケベの話~オトナのおもちゃ編~

スケベの話~オトナのおもちゃ編~

ブルドッキングヘッドロック

ザ・スズナリ(東京都)

2016/04/09 (土) ~ 2016/04/20 (水)公演終了

満足度★★★

艶笑ドラマ
直接的な表現をせず、あくまでいやらしい妄想をかき立てる会話や言葉を駆使して<スケベな話>を展開させるという、大人の趣向に満ちた戯曲/セリフ術が職人的で好きでした。その<微妙さ>を表現する役者陣の力量も高いと感じましたし、チャーミング。特に、出演場面できっちり笑いを取った永井幸子さんが印象に残りました。そういった曖昧さを愛でるシャレた作品だけに、上演時間が長く、冗長に感じました。

緑茶すずしい太郎の冒険

緑茶すずしい太郎の冒険

(劇)ヤリナゲ

王子小劇場(東京都)

2016/03/24 (木) ~ 2016/03/28 (月)公演終了

満足度★★★

深刻な問題を扱ったコミカル劇
出生前に胎児の状態が分かる「出生前診断」及び「異常を発見した場合、産むか産まざるべきか」への考察、われわれ現代人がぶちあたっているテーマを演劇で扱う志の高さを感じました。それがお説教くさかったり、説明的だったりせず、観客の興味を惹き付ける物語に織り込んでいく個性もありました。胎児が話すだけではなく、胎児同士が会話をするというアイデアも楽しかった。ただ、終始葛藤するのが主人公の女性だけなので、父親である男性も、周囲の人間も、ただ彼女の周りを通り過ぎるだけという展開に、テーマが個人の話から広がっていかず、観客(社会)の中に議論が高まっていかない不満も残りました。
 観劇した日、開演時間付近に電車の事故で遠回りしたのですが、劇団twitterなどを利用して、観客に他駅からのルート案内をしてもよかったと思います。

ネタバレBOX

性器あるいは生殖器をあらわすお茶のペットボトルを頭に乗せた演出(最後に水がこぼれて流産を現す)は、テーマや物語にリンクしていく記号として私の中では像を結びませんでした。
椿姫

椿姫

カンパニーデラシネラ

シアターX(東京都)

2016/03/24 (木) ~ 2016/03/31 (木)公演終了

満足度★★★★

想像力フル回転
ちょっとした仕草、人間の位置関係や触れ合った瞬間など、さり気ないシンプルな動きから物語が紡がれてゆく快感が散りばめられていました。変化して行く男女関係が、コミカルだったり、色っぽかったり、あらゆる角度で見えてくるスリリングさ。遊び心あふれる趣向のかずかず、独創性のある場面構成、魅力的なパフォーマーが繰り出す無駄のない動き。とにかく、最後までワクワクして見ました。

東京ノート

東京ノート

ミクニヤナイハラプロジェクト

吉祥寺シアター(東京都)

2016/03/24 (木) ~ 2016/03/28 (月)公演終了

満足度★★★★

名作を全く違う形で
矢内原美邦さんの、舞台上の人物たちが一斉にしゃべりだす演出は、時に街の風景そのものに見えることがあるのですが、この作品では、東京の喧噪そのものに見えて、ゾワゾワとしました。色々な演出家によって手掛けられて来た作品が、「ここまで違うか!」という手法で立ち上がり、あらためて矢内原さんのアーティストとしての手腕と鋭い感性に感服。21人の俳優たちが見事なフォーメーションを見せ、汗をかいて叫ぶ様子には、戯曲や東京の底にある声が聞こえてくるようで、胸がギュッとしましたし、大変美しかった。今この戯曲を選んだ意図も明確でした。

しんじゃうおへや

しんじゃうおへや

yhs

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2016/03/12 (土) ~ 2016/03/13 (日)公演終了

満足度★★★

重いテーマをエンタメで
死刑制度を取り上げ、「人が人を裁くことができるのか?」という問いを、演劇で扱うという意欲にまず驚きました。「目の前で人が死ぬかもしれない」という状況を観客が疑似体験する冒頭の死刑執行室の場面は、演劇でこそ感じられる生感覚を利用した巧い趣向。戯曲も、加害者のシビアな人生を描いたり、違う事件の被害者家族の声を入れたりと、様々な議論や思考を重ねながら、“悪”を一色で断じない工夫が凝らされていました。ただ、死刑囚を演じた小林エレキ氏の怪演は印象に残ったものの、俳優陣の演技の意図が分かりにくかった気がします。戯曲/各場面に周到に織り込まれた議論を、演技でもっと明確に立ち上げてほしかった……と思いました。初演に感動したという大阪の劇場のプロデューサーの方の情熱で、大阪公演が実ったとか。伺った日も満員御礼、地域同士の交流の中心に、熱望された作品があるというのは、素晴らしいことで、大阪まで観に行った甲斐を感じました。

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