タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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蜘蛛女のキス

蜘蛛女のキス

パンダの爪

不思議地底窟 青の奇蹟(東京都)

2014/08/31 (日) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

濃密な会話劇
ブエノスアイレスの刑務所に収監されている囚人の会話劇。

基本的には二人芝居で、ストーリーテラーの役割が二人、さらに場面転換と思われる時に出てくる歌い手1名、計5名でストーリーを紡ぐ。上演時間は休憩10分を挟み4時間という長編である。

 また、「不思議地底窟 青の奇蹟」 という劇場は初めてで、地下なのにさらに暗幕で囲っている。地上に出るドアは両開きの綴蓋(とじぶた)で、正に監獄のイメージ・雰囲気だった。

 自分はこの作品を映画(同名、1985年制作)で見たが、その意義深さを感じるには、まだ若すぎたかもしれない。

ネタバレBOX

自分の暮らしと政治を切り離し、未成年との性行為に及んだ罪で収監された、ゲイのモリーナ。一方、過激な反政府思想を持ちゲリラ団に加わり、反政府運動を行った咎で収監されているバレンティン。

堅く言えば、思想・信条が異なる二人が同房で過ごす日々。
その環境は、かたいベッド、粗末な食事、そして不衛生な衣服と劣悪なものばかり。
そんな状況下においてモリーナが好きな映画の話をバレンティンに聞かせ、いつの間にか交情を結ぶ。
この濃密な会話にこそ、当時のアルゼンチンの国情が見て取れる。

そして、実はバレンティンの所属するゲリラ団壊滅を図るため、刑務所長に買収されたモリーナの仕掛け。
こちらは人間の暗部を鋭く抉り・・・、監獄という小窓を通して“人間とは”、“国政とは”という極めて高次元の課題を取り上げていると思う。逆に底辺で蠢く人間だからこそ、その厭らしさが分かるのかもしれない。

今後の公演にも期待しております。
宵闇よりも速く駈けて

宵闇よりも速く駈けて

演劇企画ハッピー圏外

TACCS1179(東京都)

2014/05/09 (金) ~ 2014/05/13 (火)公演終了

満足度★★★★★

堪能した~
典型的な時代劇。テンポが良く2時間を超える公演だが最後まで飽きさせない。
粋な物語だけに主人公の”ねずみ小僧”を応援したくなるが、義賊と言えど盗賊…人情に流されず、見事な結末を魅せる。
舞台美術は時代劇の雰囲気を十分作りこんでおり、さながらその時代にタイムスリップしたかのようだ。そして畳返しならぬ…○○返しなど、いくつか笑える細工を施しており面白く、そして楽しめる。
演技は申し分ない。特に主人公(内堀優一)は上演後の挨拶で、客席から「相変わらずウマイ!」との掛け声がかかるほどの人気役者だ。
本当に堪能した公演でした。

いしだ壱成主演「俺の兄貴はブラームス」

いしだ壱成主演「俺の兄貴はブラームス」

劇団東京イボンヌ

スクエア荏原・ひらつかホール(東京都)

2015/06/03 (水) ~ 2015/06/05 (金)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしいの一言
この公演の最大の魅力は、観客に「芝居と音楽を融合」させたファンタスティックな世界を楽しんでもらう、そんな思いやりが感じられるところである。
舞台後方を少し高くし、そこにオーケストラ(17名編成)を配置し、客席の全方位に楽曲が聴き取れる工夫をしている。通常であれば、ピットでの演奏になるが、会場(スクエア荏原ひらつかホール)はオペラ等の専用劇場ではないため、芝居と融合させるには難しいと思う。演奏者は少し高いところから、芝居だけではなく、客席まで見えてしまい集中力を保つのが大変であったと思うが、見事に演奏していた。逆に観客としては、クラシック音楽と芝居の両方が楽しめた。

ネタバレBOX

この公演は、着想と構成が良かった。まず、着想であるが、バッハ、ベートーヴェンという巨匠...この傑物を超える人物が現れるのか。そんな時、彗星のごとく現れるヨハネス・ブラームス。そして兄の才能とは雲泥の差のある弟フリッツ・ブラームス。本公演ではその弟にフォーカスし、大作曲家ヨハネスとの対比を通して人間的魅力を浮き彫りにする。その姿は、信頼、羨望、時には嫉妬という人間の持つ感情を現しているが、その心底は兄への尊敬...。兄ヨハネスの心情は、弟を持て余しながらも愛し、その心の移ろいが師シューマンとの出会い、その妻クララへの思慕、愛情がわかり易く展開する。
クラシックというと、堅苦しい感じもするが、この公演では、コミカルな場面、悲哀な場面等々、その状況に応じて奏でられるため自然と聴き入る。そして、場面転換が名曲(多くの観客が知っている馴染みのあるものばかり)によってされるのだから贅沢である。この奇を衒わない選曲こそ、観客に親しみと楽しさを持たせ、芝居(物語)の面白さと相まって、この公演の魅力を引き出している。その意味でキャスト(俳優、声楽家、演奏者、バレエダンサー)の演技、演奏、舞踊はもちろんであるが、音楽監督:小松真理 女史の選曲・構成は見事であった。特にシューマンに認められた「ハンガリー舞曲」は、ドイツ各地の演奏旅行での採譜であり、そのリズムは楽しませる。また編曲で名高いリストを登場させ、ヨハネスの古典音楽...当時の音楽をめぐる有り様についても一石を投じる、など幅広い視点が盛り込まれており観応え十分であった。
芝居は、ベートーヴェンの第九交響曲の第十番目ではなく、ヨハネス・ブラームスの第一交響曲として...弟フリッツ・ブラームスの思いは、兄のこの曲によって昇華されたようだ。

また、自分が気に入ったのが、照明技術である。舞台上に芝居スペースと楽団スペースがあり、その照度・照射角度を調整することは難しかったと思われる。それは客席からも分かる多重射光で見事に観(魅)せていた。

最後に、日本ではオペラ等の専用劇場はそれほど多くない。あっても東京を始め大都市が中心であろう。今回の公演スタイルであれば、ある程度の設備を備えた劇場でも上演可能のように思える。演劇・音楽等は文化であり、多くの人に親しみ、楽しんでもらいたい、という姿勢が素晴らしい。
このような試みに果敢にチャレンジしている主宰、脚本、演出の福島真也 氏のご活躍に期待したい。

本当に素晴らしい公演、次回も楽しみにしております。
ゴーゴリ/作  「外套」 "The Overcoat"

ゴーゴリ/作  「外套」 "The Overcoat"

プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2014/10/21 (火) ~ 2014/10/22 (水)公演終了

満足度★★★★★

絶賛
この公演は随分前から観たいと思っており、念願が叶った。と同時にやはり観て良かったと思うほど素晴らしかった。当日は大雨にも関わらず「満員御礼」が掲げられ、それでも観たいという観客のためにパイプ椅子が用意されるという盛況振りである。
さて、ゴーゴリ作「外套」をモチーフにしており、「魂の彷徨」「精神の解放」という人の深層に触れ、それをコミカルに演じる。この劇団は、公演先の言葉で上演することを特長としており、今回は当然”日本語“であるが、見事な台詞回しである。台詞は、言語“音”として捉え、それを発声するというもの。この方法で日本は9カ国目というから凄い。

ネタバレBOX

原作「外套」のあらすじはシンプルであるが、今作はその後の展開を中心に描いている。シンプルゆえに愚直な主人公の哀れさ、無念さがストレートに伝わる。その純粋な思いが見事に描かれ感動!感動!の連続である。
とても素晴らしい公演である。
悪事の代償

悪事の代償

青色遊船まもなく出航

シアター711(東京都)

2014/05/02 (金) ~ 2014/05/05 (月)公演終了

満足度★★★★★

二度見が…
必要なほど凝っている、というのが第一印象である。まぁ、ほぼ全員が悪事を働いているか、悪意を持っている。ダ-クな公演であるが、さほど暗くなく、後味も悪くない。それたけ脚本・構成・演出がしっかりしているからだと思う。しかし、何でも詰め込み、繋がりを持たせ過ぎたため複雑になった感がある。
2時間20分は長いと思ったが、中弛みもなく、最後まで緊張感を持った公演だった。それだけ役者の演技も迫力があり素晴らしかった。
これが旗揚げ公演というから、今後が大いに楽しみである。

落伍者。

落伍者。

ラチェットレンチ

小劇場てあとるらぽう(東京都)

2014/09/26 (金) ~ 2014/09/30 (火)公演終了

満足度★★★★★

真摯な…
落語という芸を極める噺家の物語。
落語は世相・人情を滑稽な咄(はなし)に仕立て、最後に落ちのあるもの、だと言う。
公演でもその咄を十分取り入れて味わい深く仕上げていた。

ネタバレBOX

「死神」 「品川心中」 をモチーフにした物語であったと思う。
落語の咄 「死神」 に研きをかけ名人域を目指す話と、公演全体を牽引するミステリアスな咄 「品川心中」 を上手に紡いでいた。

少し強引な展開もあるが、“咄”のエキスは十分注ぎ込まれていた。その脚本・演出に応えたキャストの演技は見応えがあった。

さて、釣り好きな噺家の最後は…落語だけにその「オチ」は海に「落ち」たようなイメージを持たせ…。

今後の公演も楽しみにしております。
おせん

おせん

サスペンデッズ

シアター711(東京都)

2018/01/30 (火) ~ 2018/02/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

井原西鶴・好色五人女の巻二「情けを 入れし樽屋物語」のおせんをモデルにした創作で、江戸時代に実在した大坂・天満の樽職人の女房せんの話…それを題材に劇中劇のように仕上げているが、それも単なる劇中劇ではなく、物語性を別の角度から捉え芸術性豊かなものにしている。

観劇当日は雨が降っていたが、前説で「雨から雪になるかもしれない天気予報にも係わらず(中略)観て良かったと思えるような公演にしたい」とあったが、その期待は裏切られることなくとても素晴らしい公演であった。
3人芝居、その演じる主体が特徴で原作の悲喜交々とした物語を別次元の高みへ導いていた。
(上演時間1時間20分)

ネタバレBOX

舞台セットはシンプルで、大きな衣桁のような衝立(所々に唐草模様の布が縫いつけられている)、折りたたみ式の木机3つ。劇団員三人が複数の役を担い、サスペンデッズの「おせん」を創っている。物語は、木机に折り重なるように横たわっているところから始まる。

梗概...貧しい農家の娘おせんは、14歳の時、麹屋に女中奉公に出される。姿かたちがよく、働き者のおせんは麹屋で重宝されている。そのおせんに出入りの樽屋は惚れているが、しがない職人の樽屋はそれを言い出せない。樽屋の気持ちを知った産婆は、樽屋のためにおせんがお伊勢への抜け参りに出かけるよう仕組み、樽屋を同行させる。しかし、やはりおせんに気のある久七も一緒に旅をする事になってしまう。邪魔は入ったが何とか夫婦になった樽屋とおせん。数年後、麹屋の法事の手伝いに来ていたおせんは、麹屋主人の長左衛門との仲を女房のおきちに疑われてしまう。そして…

物語を紡いでいるのは人形3体。それを役者3人が擬態(体)化した設定であり、冒頭、横たわっているのは、用済みで廃棄されたような格好に思える。3体は主役になれない、端役のような存在であったらしく、主役人形は出て行ったという。勿論、主役人形は登場しない。その状況で芝居が出来るか心配な3体は、そのうち自分たちで全てを演じてみようと…その演目が「おせん」である。既にボロボロに傷んでいるがまだ役に立つ、廃棄されたくないという危機意識のようなものが働く。主役も含め自分たちで複数役(女形あり)を割り当て必死に練習する姿(勢)に圧倒される。練習という設定であるから、自分たちでダメ出しをし始めのうちは貶し合っていたが、いつの間にか励ましあう。生身の人間という設定より、人形という視点で捉えることによってより人間(社会)を客観的に観察することが出来るという優れた演出。

また舞台技術が効果的で、和物らしく拍子木を用い、照明はモノトーンを意識し暗・明の強調で引き立たせる。演技も素晴らしく、思わず人間劇と思い勝ちであるが、人形による芝居練習であり、体が時々軋むような擬音を織り込む細やかな演出によって人形芝居ということを確認させる。人形によって人間の情や社会の在りようが浮かび上がる秀作。

次回公演も楽しみにしております。
錆色の瞳、黄金の海 2016

錆色の瞳、黄金の海 2016

劇団ショウダウン

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2016/01/21 (木) ~ 2016/01/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

人類永遠のテーマが...
本公演は、「グリーンフェスタ2016」において「BASE THEATER賞」を受賞した。
この芝居は、4人で演じる脚本になっていたらしいが、どうしても描きたいエピソードがあり7人へ構成し直したという。
伝承的な話を大胆に脚色することで物語に魅力付する。壮大なロマンとその村に生きる少年の成長という極小の両極を描くことで、大きな世界観と繊細な人の機微がうまく融合しており、実に観応えのある公演であった。
(上演時間1時間45分)

ネタバレBOX

今もチェコに伝わるゴーレム伝説をモチーフにしているようだ。ゴーレムは泥人形で、作った主人の命令だけを忠実に実行する。そこには厳格な制約がありそれを守らないと凶暴化し、世界を破壊し尽くしてしまう。

梗概...冒頭、仮面の男女によってゴーレムによる戦闘場面が語られる。最後は「人々は知るのです。自分たちを守る巨人は、自分たちを滅ぼす力がある」という。中盤では「人は、自分が制御できないものを持つべきではない」という台詞がある。この2つの台詞が物語のテーマの根幹をなすといえるだろう。

100年以上前に国王の「一つの自治体に一体のゴーレム」という施策によって、ジェミの村にやってきた石人形・型番129、すなわちゴーレムはイハナと名付けられ、「村に永遠の平和」という命令のためにだけ従って動き続けた。

そして時は流れ、技術進化に伴い新しいゴーレムが...。そしてイハナの運命が大きく変ろうとしている。そのイハナ、川に入り黙々と作業を行っているが、その目的は何か。新旧ゴーレム対決という緊迫感もさることながら、そのミステリアスな展開も魅力的である。

ユダヤ教に伝わるゴーレムは、ギリシャ神話の青銅の巨人タロースや旧約聖書の天地創造において、土によって作られたアダムなどと繋がるところがある。物質と生命という人類の永遠のテーマを孕んでいる。
物語は分かり易く、またテンポよく展開するから心地よく観ることが出来る。そして物語の案内役のようにジェミの村の少年・ミルキ(林遊眠サン)が、この世界に飛び出してくるようだ。

劇団ショウダウンの公演、といっても東京での「マナナン・マクリルの羅針盤」(2014年9月@風姿花伝)、「マナナン・マクリルの羅針盤再演2015」(2015年2月@シアターグリーンBASE THEATER)、「パイドパイパー」「千年のセピラ」(2015年9月@あうるすぽっと)の4公演であるが、そのどれもが時と場所・状況が大きく動く。時空を超えたり、大海原を航海したり不死の力を持つなどその設定が魅力的である。

本公演は確かに100年以上の時を経るが、それは台詞だけで、その移ろいが感じられない。また中世の街らしい舞台セットを走るが、あくまで周壁内だけ。そのスケール感が先に記した公演に比べると物足りない。この公演だけを観(初見)れば満足するところであるが...人(自分)は満足の度合いが高くなるもの。その求めるレベルが高くなるのも必然かもしれない。劇団ショウダウンはその欲求に応えてくれるだろう。

次回公演を楽しみにしております。
出張診療所

出張診療所

劇団芝居屋

ザ・ポケット(東京都)

2016/11/30 (水) ~ 2016/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

芝居の王道
時代劇「水戸黄門」は、印籠を見せて一見落着という定番でありながら、長寿番組になっていた。劇団芝居屋は、「現代の世話物」の創造を目指し「覗かれる人生芝居」というコンセプトの下に役者中心の表現を模索している。

本公演「出張診療所」は、僻地医療に焦点を当ているが、その物語はもう少し広範囲な問題提起をしており飽きさせない。
(上演時間2時間)

ネタバレBOX

舞台セットは、場面によって転換するが、中心は診療所待合室と外道のような所。診療所は診察室もあるが紗幕で遮られており、もっぱら待合室での展開である。

梗概は、町医者である父が病に倒れ、大学病院に勤務している娘・柴田光江(増田恵美サン)が、父の代理として僻地の出張診療所に務めることにした。 大学病院に帰りたいと願い、三ヶ月の期限を切る光江であったが、僻地医療の実態を目の前にして、その心境に変化が見られる。

公演では過疎化・高齢化に伴う世代交代、地域の活性化(資源開発)などの社会的な問題と、嫁姑、父と息子という人の関係とを描く。その「社会」と「個人」という問題を僻地医療という問題にうまく織り交ぜて内容を豊かにしている。
過疎化・高齢化は、その地域に医療施設が在るか否かは重要な問題。そのポイントをしっかり中心に据えている、その視点が人情話としても観せる。

この娘が医者を志したのは、映画「赤ひげ」(黒澤明 監督)の影響だという。江戸時代の貧しき人々の医療に当たった小石川養生所が舞台になっている。そこは市井の人々、そしてこの公演では僻地の人々という繋がりも見える。娘にとっての赤ひげは”父”であったという。

物語の演出は、娘自身の気持ちはボイスレコーダーを利用し吐露する、何ら芝居で説明することなく、素直な気持を語らせる。一方、人間関係の表現は伏線を巡らせじっくり観させるという違い見せる。そして3カ月期限、その更新という時(季節)の移り変わりは衣装や妊婦の姿として自然に分からせる。実に見事な演出。さらに人の生死を長老・磐田源蔵(増田再起サン)の病死と息子嫁・磐田美由紀(神崎あやかサン)の(孫)出産シーンをシンクロさせるという印象付けも良かった。

細かい演出だが、海まつり(地域情景)に出かける浴衣姿、柱時計の時刻音、花火の音など心に残る。この物語に登場する人々は、日本のどこかにいるであろう人の姿...その情感がしっかり伝わるような「覗かれる人生芝居」、その真骨頂を観た。全ての役者名を記していないが、とても素晴らしい演技でバランスも良かった。

次回公演を楽しみにしております。
料亭老松物語

料亭老松物語

劇団芝居屋

ザ・ポケット(東京都)

2014/05/21 (水) ~ 2014/05/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

見事でした
心のストライクゾーンに速球が投げ込まれたぐらい気持が良かった。今回も「芝居屋」らしい手堅い脚本・演出だった。また演技も上手く、安心して観ていられる。自分的には申し分ない公演だった。
次回公演が楽しみです。

ミュージカル 牡丹さんの不思議な毎日

ミュージカル 牡丹さんの不思議な毎日

ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ

上野ストアハウス(東京都)

2014/06/18 (水) ~ 2014/06/23 (月)公演終了

満足度★★★★★

好演!
日本の四季折々の景色と慣習が見えるような公演で、個人的には好きです。家族で山間部の町へ引っ越してきて起こる不思議な出来事と地域の人たちとの交流を描いた芝居である。日本の情緒あふれる風情とそこでの幻怪が見事に演出されていた。
まず、舞台は回転・暗転させることで場面転換を図り、小道具でより状況を上手く説明していた。演技も個性豊かで見応え十分である。本当に生き活きとしており、テンポも心地良い。また、地域の人との交流は心温まり、幽玄さを醸し出していた。
脚本、演出、演技の全体を通じて秀逸な公演であった。
今後の公演も楽しみにしております。

True Fake Truth-真実の消息-

True Fake Truth-真実の消息-

SPPTテエイパーズハウス

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2014/03/06 (木) ~ 2014/03/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

面白かった~
2時間弱の公演で、泣き笑いがあり楽しめた。役者が魅力的なところに負うだろう。劇中劇な演出は見応え十分で集中して観れた。テンポもよく心地よいし、余韻が…素晴らしい。
なお、殺陣があるから仕方がないかも知れないが、キャストが多いような気がする。

スーザンナ・マルガレータ・ブラント

スーザンナ・マルガレータ・ブラント

オフィス再生

APOCシアター(東京都)

2014/05/23 (金) ~ 2014/05/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

見逃せない
小空間に耽美的、幻想的な雰囲気が漂い、既に魅せられた。舞台美術・衣装はもちろん、小道具にも工夫が施されていた。哲学的要素の強いテーマながら、その演出力は卓越しており、訴求力は素晴らしい!人間の悪意に満ちた行為、それを法という制度枠では御しきれない不条理。証明(特に悪事)が必須であるが、それを成す事の難しさ。人の悪意を際立たせることで、その対極にある善意または慈愛が鮮明になった。それだけにもの悲しい気持になった。その心理描写は見事で、2時間の公演時間を飽きさせることはなかった。
今後の公演…更に期待しております。

眠る羊

眠る羊

十七戦地

LIFT(東京都)

2014/02/19 (水) ~ 2014/03/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

見応えあり
脚本・演出は素晴らしく、実にリアルな社会派作品だ。演技は狭い空間で濃密に繰り広げられ、一瞬たりとも目が離せない。心地よい緊迫感があり、見応えがある。重要なテーマを扱いながらもストーリーは極めて坦々と進む。多少、演出・演技で誇張した場面はあったが、ひとつの山場と捉え楽しませてもらった。この作品、観るなら「今でしょ!」、見応え十分あり。

RED

RED

KENプロデュース

北沢タウンホール(北沢区民会館)(東京都)

2014/05/09 (金) ~ 2014/05/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

壮大な人間ドラマ
切ないほどの人間愛憎ドラマ。印象はテーマ性の強い公演であるということ。権力者による弱者への強欲な仕打ち。人間の歴史はその繰り返しであったかもしれないが、その断片を切り取り強調した芝居として捉えた。それだけに”教訓”色が見えすぎたと思う。主人公の名は「垢太郎」(終盤に”垢”には意味付けされる)だが、、ストーリーとしては、昔話「桃太郎」を想像した。そして、権力者(鬼)退治へ…。脚本・演出は比喩的だが、それが効を奏していたと思う。
多数のキャストであるが、各々の役どころをキッチリ果たしており、迫力・魅力ある公演に仕上げていたと思います。

バスに乗る天使たち

バスに乗る天使たち

ナマイキコゾウ

「劇」小劇場(東京都)

2014/11/19 (水) ~ 2014/11/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

ファイナル公演…残念!
劇団ナマイキコゾウ…素晴らしいファイナル公演ありがとうございます。
そして残念です。今年は多くの旗揚げ公演を観たが、一方ファイナル公演もいくつか拝見した。

(公演については、後日追記)

鼠小僧

鼠小僧

劇団め組

アサヒ・アートスクエア(東京都)

2014/03/27 (木) ~ 2014/03/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

これぞ大衆演劇!
タイトル通り鼠小僧を主役にした時代劇。まず、劇場全体が江戸時代にタイムスリップしたような作りで素晴らしい。舞台は中央だけでなく、左右の三方から観劇できるよう配置しており、それぞれの方向に花道がある。舞台設営・衣装・美術は凝っていた。
脚本は江戸人情もの、その物語は素直に観て楽しめる。公演時間は約2時間だが、短く感じるほど面白かった。これぞ大衆演劇の真骨頂だと思った。
演技は安定感があり、テンポも良い。
とても堪能しました。

マインドファクトリー~丸める者たち~

マインドファクトリー~丸める者たち~

かわいいコンビニ店員 飯田さん

王子小劇場(東京都)

2015/06/10 (水) ~ 2015/06/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

嫌悪感がするが、芝居は凄い!
かわいい劇団名とは違う、嫌悪感のする内容である。観客の受け取り方に違いがあるだろうが、それだけ芝居...自分は演出・演技に見応えを感じた。
この芝居から感じるのは、いろいろな柵(しがらみ)、閉塞感から脱却したく、もがく若者がいるという印象である。
この公演の目を背けたくなるような迫力、圧迫感は半端ではない(芝居としては好意的な意味)。

少し気になる所もあるが...。

ネタバレBOX

弱小野球部から強豪校へ変貌してきた、地方の高校野球部が舞台。劇団主宰の池内風 氏の実話のようにも思える。この地方、ナレーションでは人口5,000人程の町で、その希望、誇りがこの高校野球部(存在)である。この強豪校へ育て上げた監督(永田祐一郎役=山森信太郎さん)の嫌らしさが鼻に付く。球児達を力で押さえつけ、屁理屈のような理論を言い、なぜか説得力、納得性ある言葉に聞こえるから不思議である。それだけ台詞が立っているのだろう。この監督の悪辣感ある演技がこの公演の見所の一つといっても過言ではないと思う。まさしく、”ハマッテ”いた。

舞台セットは、野球ネット(もっと粗い)サークル(2m以上の高衝立)のようなものを可動させ、その組み合わせで状況設定をイメージさせる。いわゆる薄暗い中での場面転換をする。その都度、キャストが力仕事をする。この場面転換が頻繁に行われ、始めのうちは違和感を持った。公演全体を通してこのスタイルは続くが、段々と芝居の迫力・強烈さに押され、自然と見入るようになった。

キャストの球児達は全員が坊主頭になっており、役作りへの姿勢も素晴らしい。この監督の理不尽に向かう純粋さと若さゆえの懊悩を上手く表現していた。それも球児達の家庭環境、置かれている立場も絡めながら、丁寧に描いており、キャストはその意を十分現していた。

地域、学校、家族、仲間...その狭い繋がりの中で、それぞれが持つ、または持たされる期待と誇りが当人達をジワッと追い詰めていく。このまとわりつくような嫌悪感、閉塞感が、実際ありそうで、それが表面化しないだけ。そのような危うい問題を内包しているようで、実に上手いシチュエーションである。

先に記載した気になる点...途中で挿入された、”鶏の場面”は何を意味しているのは分からなかった。弱い物(者)苛めのイメージか。
もう一つは、薄暗い中での場面転換が多いこと。状況設定のための場面作りは分かるが、その状況はセットを動かさなくてもイメージができる。それよりも物語の流れやテンポの良さを優先して観せたほうが、という思いである。

公式の2時間20分を越えていたと思うが、最後まで迫力・緊張をもって駆け抜け、その長さが気にならなかった。実に見事であった。

次回公演も楽しみにしております。
ワンダフルムーン

ワンダフルムーン

トツゲキ倶楽部

d-倉庫(東京都)

2016/12/07 (水) ~ 2016/12/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

人の棘と温かさの両面
時代設定の妙、ミステリアスな物語で興味を持たせ、トツゲキ流ミュージカルで観せるという、いろいろな工夫が好ましい。
「人」という漢字は、背を向けているのに、その一方で支えあっている。昭和時代の団地の人間関係、そこで起こる奇妙な出来事を面白可笑しく、ちょっぴり切なく描いた秀作。
(上演時間1時間45分)

ネタバレBOX

昭和44年の希望が丘ニュータウンという団地が舞台。そのセットは、高さの違う台座2つが前後(都合4つ)に設置されている。上手側(1)と下手側(3)にスタンドマイクが用意されている。シンプルな造作であるが、その上下の動きが躍動感とテンポ感を生み出している。

梗概...2つの話を従えて本筋が展開する。まず、この団地に越してきた母・立花帆凪(杉村理加サン)、娘・芽里(前田綾香サン)のミステリアスな行動。外出は夜だけ、娘は声が出ない。父親は既に亡くなっている。2つ目は、団地内で自転車による交通事故が発生した。この事故が事件かもしれないと刑事が団地内で聞き取りを始める。事故死した男の尻に咬まれた痕が...。団地の住人によるよからぬ噂話...それが新しく入居してきた母・娘に向けられ...。

昭和44年といえば、乗用車とトラック等の事故件数が拮抗してきた頃。それだけ乗用車による事故が多くなってきた。本公演ではさすがに団地内で乗用車という訳にもいかず、自転車での事故死として描いている。そこは芝居としての”笑い”と現代の自転車事故という状況の両方を意識しているようだ。コーラス主婦(松井由起子サン、高島素子サン、金井恵理花サン)の衣装は赤・黄・青という信号機(並び含め)をイメージさせている。

サスペンス仕立では、後方壁幕に月を映し出し...劇中では民俗学として、月の不思議な”力”として「竹取物語(かぐや姫)」「人狼」の話を紹介していた。しかし、アポロが月に行ったのは半世紀ほど前。ウサギも棲んでいない。そういえば、この物語では不思議な薬(実は「整腸薬」)が出てくるが、竹取物語でも不老不死の薬が出てくる。昭和45年には大坂万博で「月の石」も展示された。そういった、いくつもの小ネタ、演出が面白い。

しかし、本公演の最大の魅力は、初「トツゲキ流ミュージカル!」の謳い文句にある歌であろう。この劇団の公演は下北沢が多い(d-倉庫もある)が、この劇場の天井の高さが聴かせる効果を果たしていたようだ。もちろん出演者(専門家もいる)のボイストレーニングの賜ものであろう。
物語は、団地の人々の小さな悪意が込められた噂話であるが、底流にあるのは大きな思いやりと優しさ。年末に相応しい”トツゲキ倶楽部”らしい公演であった。

次回公演を楽しみにしております。
未開の議場

未開の議場

カムヰヤッセン

王子小劇場(東京都)

2014/10/22 (水) ~ 2014/10/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

漂流議論か…
観客席は舞台(さながら議場)を対面から見下ろすような雛壇式である。
地元の活性化を目的としたフェスタ開催に向けて話し合う商店会(青年部)の様子を観覧するという感じである。その議論は一見漂流するがごとくまとまりがない。舞台には13名がおり、その性格・職業・立場の違いから意見の同調・対立を通してストーリーが進んで行く。「建前」「本音」と「理屈」「感情」という本能・表現を上手く描いていた。人間の喜怒哀楽が垣間見えて面白かった。
映画「12人の優しい日本人」(中原俊監督・三谷幸喜他脚本)を連想した。この映画は、アメリカ映画「12人の怒れる男」(シドニー・ルメット監督)のパロディーで、どちらも法廷に関係するが、本公演は別内容であるが、話の展開手法は同じであろう。
全体的には、実に見応えのある会話劇だった。

ネタバレBOX

少し気になるのは、外国人によるレイプ事件について、物語をデフォルメする狙いから描いたと思うが、人種差別に受け取られないかという危惧をもった。劇中にもあったが、一時が万事そうではない、という趣旨の言葉が印象的であった。

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