いしだ壱成主演「俺の兄貴はブラームス」 公演情報 劇団東京イボンヌ「いしだ壱成主演「俺の兄貴はブラームス」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    素晴らしいの一言
    この公演の最大の魅力は、観客に「芝居と音楽を融合」させたファンタスティックな世界を楽しんでもらう、そんな思いやりが感じられるところである。
    舞台後方を少し高くし、そこにオーケストラ(17名編成)を配置し、客席の全方位に楽曲が聴き取れる工夫をしている。通常であれば、ピットでの演奏になるが、会場(スクエア荏原ひらつかホール)はオペラ等の専用劇場ではないため、芝居と融合させるには難しいと思う。演奏者は少し高いところから、芝居だけではなく、客席まで見えてしまい集中力を保つのが大変であったと思うが、見事に演奏していた。逆に観客としては、クラシック音楽と芝居の両方が楽しめた。

    ネタバレBOX

    この公演は、着想と構成が良かった。まず、着想であるが、バッハ、ベートーヴェンという巨匠...この傑物を超える人物が現れるのか。そんな時、彗星のごとく現れるヨハネス・ブラームス。そして兄の才能とは雲泥の差のある弟フリッツ・ブラームス。本公演ではその弟にフォーカスし、大作曲家ヨハネスとの対比を通して人間的魅力を浮き彫りにする。その姿は、信頼、羨望、時には嫉妬という人間の持つ感情を現しているが、その心底は兄への尊敬...。兄ヨハネスの心情は、弟を持て余しながらも愛し、その心の移ろいが師シューマンとの出会い、その妻クララへの思慕、愛情がわかり易く展開する。
    クラシックというと、堅苦しい感じもするが、この公演では、コミカルな場面、悲哀な場面等々、その状況に応じて奏でられるため自然と聴き入る。そして、場面転換が名曲(多くの観客が知っている馴染みのあるものばかり)によってされるのだから贅沢である。この奇を衒わない選曲こそ、観客に親しみと楽しさを持たせ、芝居(物語)の面白さと相まって、この公演の魅力を引き出している。その意味でキャスト(俳優、声楽家、演奏者、バレエダンサー)の演技、演奏、舞踊はもちろんであるが、音楽監督:小松真理 女史の選曲・構成は見事であった。特にシューマンに認められた「ハンガリー舞曲」は、ドイツ各地の演奏旅行での採譜であり、そのリズムは楽しませる。また編曲で名高いリストを登場させ、ヨハネスの古典音楽...当時の音楽をめぐる有り様についても一石を投じる、など幅広い視点が盛り込まれており観応え十分であった。
    芝居は、ベートーヴェンの第九交響曲の第十番目ではなく、ヨハネス・ブラームスの第一交響曲として...弟フリッツ・ブラームスの思いは、兄のこの曲によって昇華されたようだ。

    また、自分が気に入ったのが、照明技術である。舞台上に芝居スペースと楽団スペースがあり、その照度・照射角度を調整することは難しかったと思われる。それは客席からも分かる多重射光で見事に観(魅)せていた。

    最後に、日本ではオペラ等の専用劇場はそれほど多くない。あっても東京を始め大都市が中心であろう。今回の公演スタイルであれば、ある程度の設備を備えた劇場でも上演可能のように思える。演劇・音楽等は文化であり、多くの人に親しみ、楽しんでもらいたい、という姿勢が素晴らしい。
    このような試みに果敢にチャレンジしている主宰、脚本、演出の福島真也 氏のご活躍に期待したい。

    本当に素晴らしい公演、次回も楽しみにしております。

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    2015/06/05 23:55

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