タッキーの観てきた!クチコミ一覧

81-100件 / 2115件中
宵闇よりも速く駈けて

宵闇よりも速く駈けて

演劇企画ハッピー圏外

TACCS1179(東京都)

2014/05/09 (金) ~ 2014/05/13 (火)公演終了

満足度★★★★★

堪能した~
典型的な時代劇。テンポが良く2時間を超える公演だが最後まで飽きさせない。
粋な物語だけに主人公の”ねずみ小僧”を応援したくなるが、義賊と言えど盗賊…人情に流されず、見事な結末を魅せる。
舞台美術は時代劇の雰囲気を十分作りこんでおり、さながらその時代にタイムスリップしたかのようだ。そして畳返しならぬ…○○返しなど、いくつか笑える細工を施しており面白く、そして楽しめる。
演技は申し分ない。特に主人公(内堀優一)は上演後の挨拶で、客席から「相変わらずウマイ!」との掛け声がかかるほどの人気役者だ。
本当に堪能した公演でした。

『0<ゼロ>地点「つぎはぎだらけのヒーローズ」』

『0<ゼロ>地点「つぎはぎだらけのヒーローズ」』

演劇企画ユニット劇団山本屋

笹塚ファクトリー(東京都)

2015/12/16 (水) ~ 2015/12/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

観応えあった【つぎはぎチーム】
公式な上演時間は2時間とあったが、実際は2時間20分ほどあった。しかし、その長さを感じさせない迫力のある公演であった。魅力は登場人物の見た目のビジュアル、その個性豊かなキャラクター設定とアクションにあると思う。ストーリーも少し分かり難い場面もあるが、全体的には重層的で最後まで飽きさせない。

タイトル通りヒーローは登場するが、その”つぎはぎ”の意味するところは...。映画にもなったが、”アンデス山脈から奇跡的に生還”を連想するような究極な選択における堕ヒーローが描かれる。設定状況は、劇中劇ならぬ映画撮影を通してという多重の観点を設け、時空間をも隔てる。登場人物(主人公の仲間)ごとの感情と現状を上手く描いており、キャラクターとその超能力が丁寧に明かされる。その観せ方は多彩であるがイメージしやすい。

ネタバレBOX

ヒーローのイメージが壊れるシーンは、映画「アンデスの聖餐」(1976年公開)、「生きてこそ」(1993年公開)を連想した。争いごとに終止符を打ったヒーロー、実は窮地の場面で人肉を食し生き延びた。その暴露ドキュメントを映像化しようとする監督・スタッフと真実は秘匿しておきたいヒーローメンバーとの攻防。その手段として超能力を駆使して記憶を摺りかえる、または消去するなど、観せ場となるシーンを演出する。

その観せる舞台は、中央に城門イメージ、両側に客席に向かって二階部から降りる階段がある。簡素なセットであるが、大勢によるオーバーアクションを行うには適している。そのあたりの計算は見事。

プロローグとエピローグを繋げるところは常套手法のようであり、それによって時空を越えさせる。舞台という額枠に映画撮影現場を持ち込み、大勢の人物描写と時空を跨ぐという、いろいろな仕掛けが後半では複雑になり、冗長に感じたところもある。しかし、構成、制作は丁寧で、観客(自分)の気を逸らさない。終盤は怒涛の如く事実が明らかになり、慟哭する姿が痛ましい。

演技は、アクションだけではなく、人物像(内面も含め)を確立するような熱演であった。できればエンターテイメントのような芝居にも、先の映画にあった普遍的な課題...自分と宗教等との向き合いが垣間見えると更に人間的な深みが増したかも(本公演は、ヒーローという”正義”に”好奇の目”を晒すだけに止まったようだ)。

次回公演も楽しみにしております。
かぜがふいた

かぜがふいた

ナイスコンプレックス

調布市せんがわ劇場(東京都)

2016/07/09 (土) ~ 2016/07/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

魂を揺さぶる秀作
「第7回せんがわ劇場演劇コンクール」のオ-ディエンス賞受賞作品。物語の構成に分り難いところもあったが、心で話す(黒)電話...その擬人化した芝居はとても面白く、そして泣ける。
私事で恐縮であるが、自分の誕生日にこのような素晴らしい芝居を観ることが出来て嬉しく思っている。
(上演時間40分)

ネタバレBOX

3.11東日本大震災から5年...骨太い情景描写と繊細な人間観察という対比を持たせて描いており、無機質な黒電話を擬人化することによって、そこに声なき人々の心の声が聞こえてきそうな、そんな豊かな感情表現を感じる。
シンプルであるが、丹念でややもすれば王道的な描き方は、その観せる切り口がシャープなだけに観客(自分)が置いて行かれそうになるが、公演全体としては、目に見えない感情を上手く描き出し、その命題に向かう強固な意志は、この大震災の悲しみと痛みを十分引き出している。だからこそ、未来に向かう”力強さ”がしっかり伝わり、確かな前進、希望を感じさせ、前述の賞(特別審査員、市民審査員、全公演を観劇した人の投票で選出した公演)を受賞したと思う。

劇団からのメッセ-ジ...実際にある「風の電話」を擬人化し、震災後そして現地から見る今を、押し付けるのではなく、物語を通して浸透させるアナグロファンタジーで紡ぐ、という。その説明の通りであるが、その主張は確固たるもの。

この公演はコンクール参加作品であるから40分という時間枠の中で収めている。通常公演より短い時間であるが、場面転換に暗転を多用しているように思った。脚本には先に記したように悲しみを呼び起こすような痛々しさがあるが、それを乗り越える”力”を持っているのが”人”...そう信じさせる、また思わせる印象深い仕上がりになっている。

芝居的には音響・照明という技術面も効果的で、総合的に観せる魅力を持っている(専門審査員の中には、その技術に頼り過ぎとの批評もあったが)。一般観客は公演全体を通して、その芝居で何を感じるか(面白いか)という観点からすれば観応えのある作品であると思う。

この公演は、8月の0章作品(中野ザ・ポケットで本公演「かぜのゆくえ」)になっている。
次回公演が楽しみである。
宮地真緒主演  「モーツアルトとマリー・アントワネット」

宮地真緒主演 「モーツアルトとマリー・アントワネット」

劇団東京イボンヌ

スクエア荏原・ひらつかホール(東京都)

2015/12/08 (火) ~ 2015/12/10 (木)公演終了

満足度★★★★★

観せて、聴かせて...
歌劇ではなく、芝居とクラシック音楽を楽しむ公演...時は、18世紀中頃のフランスが舞台で、登場人物は音楽史、世界史で有名な二人が主人公である。フィクションであるから、自由に物語を展開することができる。この出会い、モーツァルトが神童と呼ばれていたことから、その存在を「神」として人間界へ降臨(憑依)させる。一方、マリー・アントワネットは通史の通り。
この虚実綯い交ぜを上手く描き、さらにお馴染みのモーツァルトの曲が聴ける至福、素晴らしかった。

ネタバレBOX

舞台はセットは、宮殿をイメージするような左右非対象の変形階段で、その上辺の中央から上手側に演奏者が並ぶ。ピアノだけが劇中でも使用するため通常の舞台上にある。そのピアノ(演奏者:音楽監督の小松真理 女史)も含めると14名の演奏者であったが、選曲した楽曲からすると演奏人数はぎりぎりであろう。先にも記したが、本公演は音楽に特化したジャンルではないため、フルオーケストラでも、その配置でもない。例えば、劇中劇のようにして「フィガロの結婚」を演奏しているが、本来であれば、その歌劇の「音楽」と「劇」であるから、そのジャンルに興味を持っている方には好まれない。しかし、この公演は「モーツァルトとマリー・アントワネット」という”フィクション劇”に合わせて、劇中の彼が作曲した音楽を場面に応じて演奏している。そして、場面に応じた選曲が見事であった。「フィガロの結婚」の「序曲」「誰の作曲?~恋とはどんなものかしら」からバリー夫人との確執から「伯爵夫人、私を許して下さい」(通史とは違うかも)などがその例である。ここは音楽監督の手腕の見せ所であった。また「フィガロの結婚」は、贅沢する王妃に対する非難(貴族社会への痛烈な批判)が込められている、ということを説明した上で演奏しているが、まさに舞台上の進行形の中で描いている。コメディでの展開だと言うが、権力者に対する反発であるが、それを笑いとユーモアで包みこんで、最終的には人類愛へ向かう。さらに好いのは、多くの(クラシックファンではない)方も聞き覚えのある曲を演奏することで興味を惹かせる。彼没後も演奏され続けていることは、(曲の趣向はあろうが)それだけ愛されている証であろう。今回は、芝居の観(魅)せるという面でもダンス(群舞)を取り入れ楽しませてくれた。

さて、自分が気になったところは、物語としての二人の距離感である。「神」と「人」というよって立つ存在が違うことを前提にしていることから、心魂の交流や深淵が観えないこと。もう一つは、フランス革命前後の不穏な雰囲気が感じられないこと(物語性の重視)。舞台セットや合唱団、ダンサーの衣装がホワイト基調であり、淡色・浮遊感があることが影響していると思う。しかし、逆に照明色彩によって、状況変化が演出できる工夫もしている。いずれにしても新しいジャンルを目指している中で試行錯誤している、その真摯な姿勢に共感を覚える。

この劇団の好ましいところは、芝居、生演奏を観(聴か)せる工夫(演奏者数も含め)をし、大劇場のみならず、中規模劇場でも上演できるような試みをしている。その結果、演劇の裾野拡大を図っているところ(企業メセナもあった?)。
次回公演も期待しております。
ニホンオオカミはいなかった

ニホンオオカミはいなかった

十七戦地

小劇場 楽園(東京都)

2015/11/11 (水) ~ 2015/11/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

多角的な思考
表層的な話は「ニホンオオカミ捏造詐欺事件」の顛末が中心であるが、その物語が進展する中で、生態系、自然環境など現代人が考えなければならないテーマが織り込まれ、複眼的に問題提起しているようだ。

本筋は、次の展開を待ち望むようなスリリングさ、テンポ良く観せ飽きさせない。そして登場人物は本当に必要な役柄のみ。その人物像もしっかり性格付されている。

クリミナル・ホームドラマ...それは骨太の内容であるが、観せ方は巧緻である。

ネタバレBOX

梗概は、福岡県の林業一族・辻交(つじかい)家の当主が亡くなり、広大な山林が遺された。同時に莫大な相続税を課せられるが、その納税に”ニホンオオカミの目撃談”をでっちあげ、研究機関や財団から「ニホンオオカミ保護基金」を詐取するが、その足元では破滅の影が忍びよる、というもの。

ニホンオオカミは明治時代に絶滅したといわれている。食料(家畜)被害を防ぐため捕獲し続けた結果だという。しかし、現在では鹿による食物被害が深刻になっているという。本来、鹿の天敵であったオオカミがいないため動物の生態系がおかしくなっている。
ちなみに、観劇した日のある新聞の記事...他国での話であるが、オオカミが馬を常食している。村人は馬が捕食されても放置しているという。実はオオカミを保護している。ヨーロッパオオカミは絶滅の危機に瀕している。野生馬がいればオオカミは無理して羊や牛、鶏を襲わない。馬は肉も多くは取れないから、犠牲にし他の家畜を守ると同時にオオカミの絶滅を防いでいると...。

他方、山林を育てるには50年以上必要で、伐採したら将来その(木の)恩恵を享受することができない。先祖代々守ってきた林木...所有権は辻交家にあるかもしれないが、目先の対応(欲)で将来の自然(環境)は保たれるのか。

この公演では、相続(税)という期限のある事柄を上手く利用し、緊急かつ切迫した状況を自然に作り出している。無理なく進む話、一定期間内に決着させる必要があるための山場作り。しっかりした脚本に基づく観せる演出は見事であった。特に食事シーンは登場人物を一堂に会させ、その役割セリフを言わせる。その濃密な会話がその場の空気を引き締める。

この公演は物語の面白さと、そこに内包している数々の問題を投げかけているようだ。語弊があるかもしれないが、芝居という見世物に知的な問いかけ...実に見事な公演だと思う。

次回公演を楽しみにしております。

【追記(2016.1.9)】
東京新聞に次の見出記事が掲載
「ニホンオオカミ 信じて探す」
早大探検部OB
「百十年前に絶滅したとされるニホンオオカミだが、その生存を信じ、調査を続けている民間グループ「ニホンオオカミ倶楽部」(東京)が、、新たに三重県松阪市の山中で調査を開始する」...と。
蜘蛛女のキス

蜘蛛女のキス

パンダの爪

不思議地底窟 青の奇蹟(東京都)

2014/08/31 (日) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

濃密な会話劇
ブエノスアイレスの刑務所に収監されている囚人の会話劇。

基本的には二人芝居で、ストーリーテラーの役割が二人、さらに場面転換と思われる時に出てくる歌い手1名、計5名でストーリーを紡ぐ。上演時間は休憩10分を挟み4時間という長編である。

 また、「不思議地底窟 青の奇蹟」 という劇場は初めてで、地下なのにさらに暗幕で囲っている。地上に出るドアは両開きの綴蓋(とじぶた)で、正に監獄のイメージ・雰囲気だった。

 自分はこの作品を映画(同名、1985年制作)で見たが、その意義深さを感じるには、まだ若すぎたかもしれない。

ネタバレBOX

自分の暮らしと政治を切り離し、未成年との性行為に及んだ罪で収監された、ゲイのモリーナ。一方、過激な反政府思想を持ちゲリラ団に加わり、反政府運動を行った咎で収監されているバレンティン。

堅く言えば、思想・信条が異なる二人が同房で過ごす日々。
その環境は、かたいベッド、粗末な食事、そして不衛生な衣服と劣悪なものばかり。
そんな状況下においてモリーナが好きな映画の話をバレンティンに聞かせ、いつの間にか交情を結ぶ。
この濃密な会話にこそ、当時のアルゼンチンの国情が見て取れる。

そして、実はバレンティンの所属するゲリラ団壊滅を図るため、刑務所長に買収されたモリーナの仕掛け。
こちらは人間の暗部を鋭く抉り・・・、監獄という小窓を通して“人間とは”、“国政とは”という極めて高次元の課題を取り上げていると思う。逆に底辺で蠢く人間だからこそ、その厭らしさが分かるのかもしれない。

今後の公演にも期待しております。
ひなあられ

ひなあられ

演劇ユニット「みそじん」

シアター風姿花伝(東京都)

2016/09/07 (水) ~ 2016/09/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

微笑ましい...面白い!
本当に”喫茶店・ひなこ”の客になり横で見聞きしているような感じである。登場するのは三十路女、四十路女の10名。そこはやはり恋愛・結婚話が中心になる。ちょっと痛くておもしろあったかい演劇、というフレーズ通りであった。

さて「みそじん」は、お座敷公演は何度か観ており、その4姉妹の人物造形、立場という関係を濃密に描いている。本公演は劇場公演ということで「第1回公演」と銘打ったという。お座敷という小さい空間からシアター風姿花伝という少し大きな場所に舞台を移し、10名の女優が彩り豊かな花をそれぞれ咲かせたようだ。
(上演時間2時間弱)

ネタバレBOX

舞台は喫茶店内をしっかり作り込んでいる。上手にトイレ、その奥に店出入り口。下手はカウンター、その壁には飾り棚。中央にはテーブル・椅子が配置されている。カウンターには、公演タイトルに因んだ雛人形が飾られている。

梗概というよりは、その登場人物の紹介が面白い。3姉妹と店の常連客が織り成す恋愛、結婚話が中心である。長女は競馬場通いの46歳、次女はこの店を実質的に切り盛りする35歳、三女は結婚間近いの30歳。若い(35歳)アルバイトもいるが、常連客はパチンコ狂の女、夫婦仲冷え切り女、離婚を繰り返す女、万引きGメン、砲丸投げの選手と個性的な面々。ドタバタ騒動の繰り返えしであるが、実に微笑ましい。近所にこんな喫茶店があれば自分も行ってみたいと思わせる。

この物語中、雛人形は飾ってあり、それ故婚期が遅れるような。婚期が遅れる...片付けも満足に出来なければきちんとした女性になれず、お嫁さんにもなれない。「お雛さまを早くしまわないと嫁に行き遅れる」と言って躾る。また、早く飾り出すと「早く嫁に出す」、早くしまうほど「早く片付く(嫁に行く)」。雛人形は婚礼の様子を表しており飾る時期を娘の結婚に準えるなど様々な理由があるようだ。いずれにしても親心のようであるが...本公演では親はいない。出来れば親の陰が見えれば印象的だったかもしれない。

女優10名とも適材適役といった感じで、本当に実在しているかのようである。何しろ生き活きとしている。市井に見る出来事をデフォルメして観(魅)せる。できれば、この年代であれば介護、姑仲、子育、もしくは働く形態(正社員OL、派遣社員、パート、アルバイトなど)の苦楽のようなもの。もう少し社会との関わりが見えると...個人的にはそんな場面も見たかった。

次回公演も楽しみにしております。
天泣に散りゆく

天泣に散りゆく

文化芸術教育支援センター

世田谷観音(野外舞台)(東京都)

2016/09/07 (水) ~ 2016/09/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

身魂揺さぶられる...凄い!
見た目から言えば、世田谷観音境内に設えた奉納野外舞台が時空間を越えて、1945年8月中旬の満州を出現させたかのようだ。当日は雨が降ったり止んだりの不安定な天気であり、上演中、一時小雨が降ったが中断することはなかった。上演後、藤馬氏は「人の涙が雨になった」旨の挨拶をしており、自分もそのフレーズをこの「観てきた!」に書き込もうと思っていたが...もしかしたら大方の人たちも同じ思いかもしれない。その当たり前のようなことが戦時中という異常時になると当たり前でなくなる。
戦争、その最悪な不条理をしっかり観せてくれた秀作。身魂が揺さぶられた。
(上演時間2時間)

ネタバレBOX

舞台は本堂に向かう境内石畳の左側に設える。右側を中心に天幕・パイプ椅子が並ぶ。舞台には紗幕に世界地図を描いたもの。場面転換に応じてテーブル、椅子が持ち込まれ場景を作り出す。その様子が見て取れるが実に自然な動作で、観客(自分)の気を逸らさない。
そして、外見から感情移入できるような作り込みである。男優陣は全員坊主頭、軍服姿が当時を思わせる。石畳に響く軍靴の音。それも境内入り口方向から段々と大きく聞こえる演出は巧い。好戦況と思わせながら、終戦(玉音放送)に向かっている様子に重なる。

梗概...満州では日ソ不可侵条約を一方的に破棄したソ連軍が日本人(民間人)への虐殺を繰り返す。祖国を守るため、家族を守るため、11人の男たちは弾薬なしの飛行機で突撃する。その名は『神州不滅特別攻撃隊』 である。
これは史実であり、世田谷観音に「神州不滅特別攻撃隊之碑」があり、この場で上演する意味があった。
この物語を体現する役者は、それぞれの人物造形がしっかり出来ており、当時の愛国心、夫婦愛、そして仲間との連帯感が濃密に描かれる。そして回想する老人が、当時死ねなかったことに負い目を感じる死生観に”戦争”という狂気が見える。

国策によって満州へ移住した日本人や「王道楽土」の満州国人に対して、それらしい保護も行わず撤退しているようだ。軍という作戦主義ばかりで政治という態度が見られない。そもそも国策のため繁栄のためと称し、どれだけ多くの人たちが犠牲になったことか。犠牲を強いる構造に対し、過去の悲惨さを教訓とし死者と共闘しなければ...。それこそ夢違観音。

この企画・脚本の松本京 氏、演出の山本タク 氏が当日パンフで同趣旨で多くの人々に平和の尊さを伝えたいと...まったく同感である。そして営利団体ではなく、NPO法人が開催することに意義があるという。

次回公演を楽しみにしております。
学校の催眠室

学校の催眠室

enji

OFF OFFシアター(東京都)

2014/03/21 (金) ~ 2014/03/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

面白い!
2時間近い公演だが、面白く見応えがあった。タイトル「学校の催眠室」とは違う舞台美術だ。それは観てのお楽しみだが、結構凝っている。
脚本は当初のものを捨て…、本公演内容へ変更したとか。脚本・演出は面白いが、役者の演技が良かった。登場人物のキャラ設定が十分伝わる演技で、見入ってしまった。当時の斜陽産業の実情、社会状況から、人間の内面(本音)を抉る描写まで、全てにおいて魅せられた。
公演全体はコミック仕立てだが、その底にある問題提起は鋭い。本当に堪能しました。

Infinity

Infinity

ハグハグ共和国

萬劇場(東京都)

2016/09/07 (水) ~ 2016/09/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

大切な人の思い、想い...見事!
生まれ出ずる悩み...その思いを強くするのが、生まれた日から死に向かって歩み始めることだろう。何故、何のために生まれたのか、人は苦境に陥った時にこそ、そんな哲学的な自問自答を繰り返すのではないか。

終末医療の現場、ホスピスを描くとなればその抱くイメージは泣けるもの。しかし、本公演は死という覚悟をいったんは受け入れ、その上でやりたいことは、生まれ変わったら何をしたい、という前向きな姿を描いている。滂沱を好む観客には肩すかしになるかもしれないが、それでも患者本人、家族や近しい人々、そして医療従事者のそれぞれの思いや立場から繰り出される珠玉の台詞に泣かされるであろう。

私事だが、家族としてその思いをしたことがあり、身につまされる内容であった。
(上演時間1時間50分)

ネタバレBOX

病院内の中庭といった舞台。上手側は一般病棟(治療を継続)、下手側はホスピス病棟。下手側上部は紗幕になっているが、幕を開けると診察室が現れる。この病棟を向かい合わせに配置することで、終末医療における治療続行かホスピス受入れかという選択を促しているようだ。中庭(床は芝イメージの緑)からやや上手側奥に向かって傾斜になっている。芝居ではその上部や途中に立・座して、俯瞰・全貌しているかのようだ。実に空間処理が巧い。ベンチ、テラス風のテーブル・椅子、鉢植えなどがアクセント。

梗概...このホスピスでは恒例でイベントを実施している。今回はカリスマモデルによるファッションショー。実はこのモデルも傷心しているようだ。
患者や医療従事者、その関係者が参加する物語(白雪姫)形式のファッションショーへ仕上げる。その表現の場が、これからの自分の物語の続きを...。
ここは子供ホスピスも併設されており、その子供たちの願いは”大人になりたい”である。もう一つ印象的な台詞...色々な思い(考え)は多くあるが、命は一つ。思いは大切(尊重)したいが、生かしたい命は...。このような珠玉にあふれた言葉の数々に泣かされる。

患者意思の尊重、分かりきったことであるが、医療従事者はそれに沿(そ)う。家族は生きてほしいと治療を促すが、それには痛みが伴う。こちらも本人の意向に副(そ)うだけ。本人も含めみんながつらく悲しい苦渋の選択に添うだけ。それが鮮明になるシーンが、ホスピス病棟の医者とこの病院の医院長(娘が末期癌で一般病棟に入院しており、その母)による終末医療に関する論戦が圧巻。どちらが正しく、間違っているという短絡的なものではなく高次元の提示。もちろん観客への投げかけであろう。一方、モデル事務所の人々は、このホスピスとの関わりを通じて心豊になる。

この話を体現するキャスト陣の演技は確かでバランスも良い。驚きは、ショーに挟み込まれるファッションシーンがアクションシーンへ変身する。その一端を池袋演劇祭CM大会(サンシャイン噴水広場前、8月19日)で披瀝し「優秀賞」を受賞していたが、改めて本編で全部観たが迫力があった。

次回公演を楽しみにしております。
未開の議場

未開の議場

カムヰヤッセン

王子小劇場(東京都)

2014/10/22 (水) ~ 2014/10/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

漂流議論か…
観客席は舞台(さながら議場)を対面から見下ろすような雛壇式である。
地元の活性化を目的としたフェスタ開催に向けて話し合う商店会(青年部)の様子を観覧するという感じである。その議論は一見漂流するがごとくまとまりがない。舞台には13名がおり、その性格・職業・立場の違いから意見の同調・対立を通してストーリーが進んで行く。「建前」「本音」と「理屈」「感情」という本能・表現を上手く描いていた。人間の喜怒哀楽が垣間見えて面白かった。
映画「12人の優しい日本人」(中原俊監督・三谷幸喜他脚本)を連想した。この映画は、アメリカ映画「12人の怒れる男」(シドニー・ルメット監督)のパロディーで、どちらも法廷に関係するが、本公演は別内容であるが、話の展開手法は同じであろう。
全体的には、実に見応えのある会話劇だった。

ネタバレBOX

少し気になるのは、外国人によるレイプ事件について、物語をデフォルメする狙いから描いたと思うが、人種差別に受け取られないかという危惧をもった。劇中にもあったが、一時が万事そうではない、という趣旨の言葉が印象的であった。
春の遭難者

春の遭難者

B.LET’S

「劇」小劇場(東京都)

2014/02/05 (水) ~ 2014/02/12 (水)公演終了

満足度★★★★★

良かった!
見応えのある素晴らしい作品だ。前説では、1時間45分とあったが一気に魅せられた。よく練られた脚本・演出だと思う。特に、法も含め色々な制度が平等だと思われているが、その実態は必ずしもそうでないこと。本作では、女と男という性別を括りに取り上げていた。承知の上で描いていたと思うが、性別の元には「個人」が在る。
「不条理」のセリフ…予想通り緊迫した場面で出ました。人はそんな中で生きているのでしょうか。考えさせられた。

ときのものさし

ときのものさし

HOTSKY

遊空間がざびぃ(東京都)

2015/11/20 (金) ~ 2015/11/23 (月)公演終了

満足度★★★★★

心が揺さぶられる珠玉作
初見の団体...「介護」という説明文に興味を持って観たが、滂沱した。観る年齢層によっても捉え方に差があるかもしれないが、人はいずれ老いる。その時までどう生きるか...この公演でも特別な出来事は起きない。ただ坦々と日常の生活が...しかし、だからこそ身近で味わい深いものがある。

芝居の魅力は波瀾万丈か、虚実皮膜の世界を描くだけではない。その物語性も大切であろうが、芝居の丁寧、細密にもその魅力を感じる。本公演は言葉に力強さがある。その輝く台詞が公演全体を覆いつくし観る者の心を揺さぶる。
なお、認知症が進むと言葉が少なくなるが、そこに演出の工夫が…。

ネタバレBOX

介護施設「緑風荘」にいる母は認知症が進み、息子や嫁、孫の名前まで忘れがちである。自分の思いは、「後悔先に立たず」という諺があるが、本当にそのとおりであると実感した。認知症になると会話が著しく困難になり、意思相通が難しくなる。公演では「こえ」という役柄があり、無音になる芝居を観(魅)せていた。

また、公演の構成の巧みさに感心させられた。約60分という短い上演時間を前半・後半に括り分け、その前半...心の彷徨は、既に故人となっている離婚した夫、実妹に向けられる。その会話は方言や標準語が交わり愛らしく聞こえる。丁寧な展開の中に深い思いやりが見てとれる。今になって言える、または聞かされる本音の数々。”生きてきた”という実感がこもる。
後半...実の息子夫婦との関係は、自分の覚束ない記憶への諦め、苛立ち、息子への気遣いが痛いほどわかる。親密(親子)であれば向き合いたくない現実がある。その突き放したような描写が切ない。

この”夢・現”で繰り返し呟く言葉...胸の中で自分の支えとなる「しょうがないね~」は、”自分を許すお守り””大事な人を安心させるおまじない”という。慎ましやかな響きは、彼女の人間性をしっかり印象付ける。

最後に「認知症は、英語でロンググッドバイ」というそうだ。長い別れであるが、大切な思い出もたくさん残してくれた。そんな余韻を感じさせる見事なラスト。
次回公演も楽しみにしております。
ドアを開ければいつも

ドアを開ければいつも

演劇ユニット「みそじん」

atelier.TORIYOU 東京都中央区築地3-7-2 2F tel:03-3541-6004(東京都)

2015/11/21 (土) ~ 2015/11/23 (月)公演終了

満足度★★★★★

秋バージョン
一つ屋根の下、日々起きていた出来事は今は昔。面倒くさくて、やっかいで、温かくて懐かしい。
亡き母の七回忌前夜に集まった四姉妹の他愛無い会話、綺麗ごとだけではない波瀾の家庭史を、静かに時に激しく繰り広げる珠玉のホームドラマ。

今は父と二女の二人だけが実家で暮らしている。人は現在だけを生きてきた訳ではない。時空を越えて過去の家族との心を通わすことができる。それを仲立ちしているのが、長い時を一緒に積み重ね、やさしく見守ってくれた家の存在。その家の風景が家族の思い出とともにある。舞台となっている家も老朽し...唯一の物理的騒動であるが、父が登場しない家にあって5番目の登場(人)物のように思える。このお座敷公演は、その雰囲気にピッタリである。

ネタバレBOX

今、この四姉妹はそれぞれの生活を築いており、少し距離がある関係になっている。それでも会えば一瞬にして時が逆戻りする。そして、さりげなく近況も見せる巧みな演出。

さて、「人」という漢字は、背を向けるように2本の線が左右逆方向に払われながらも互いを支えあっている。他人とは違い、家族(母は亡く)...それでも姉妹は、日常的に会わなくなった分、お互いの近況が気になり、思いやりも増す。もっともそれが、お節介、煩わしいという反発を生むこともある。姉妹のキャラクターがしっかり立ち上がり、遠慮のない本音がぶつかり合う。観客(自分)は、それをそっと覗いているような感覚である。

公演によってキャスト(役柄も含め)が変更になるが、それにも関わらず濃密な会話が聞こえる見事な公演。

今回は秋バージョンということで、ホトトギスの花が咲いている。できれば、音響として、窓を開けたら雨の音、そして止んだら虫の音が聞こえたら...風情があったかもしれない。

次回公演を楽しみにしております。
眠る羊

眠る羊

十七戦地

LIFT(東京都)

2014/02/19 (水) ~ 2014/03/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

見応えあり
脚本・演出は素晴らしく、実にリアルな社会派作品だ。演技は狭い空間で濃密に繰り広げられ、一瞬たりとも目が離せない。心地よい緊迫感があり、見応えがある。重要なテーマを扱いながらもストーリーは極めて坦々と進む。多少、演出・演技で誇張した場面はあったが、ひとつの山場と捉え楽しませてもらった。この作品、観るなら「今でしょ!」、見応え十分あり。

セーラー服とブルーシート

セーラー服とブルーシート

B.LET’S

ワーサルシアター(東京都)

2015/05/27 (水) ~ 2015/06/01 (月)公演終了

満足度★★★★★

メッセージ性が… (ゲネプロ拝見)
とても強い公演である。
セーラー服とブルーシー(青い海)と...のような副題のようでもあった。もちろん女子高内で起こる或る出来事をめぐる話が中心であることには変わりない。一方、その高校や住んでいる環境は、海岸開発が進み、昔のように泳げる海ではなくなった。人も環境も何らかの契機があれば変化していく。それは否応なしにである。

*ネタバレ注意

ネタバレBOX

舞台セットはシンプルで、劇場入り口側にひな壇客席、そしてほぼ素舞台で左右にスタッキングチェアが5脚ずつと舞台中央に1つ。奥壁面に縦に赤い紐(?)も数本と鎖が下がっている。その広く確保した空間での濃密な会話劇は、脚本担当の滝本祥生 氏らしい。そして、それは今まで観た公演よりも、さらにテーマを鮮鋭にした。その点において問題提起はシャープになったが、逆に観客自ら考える、その委ねる幅のようなものが狭くなったようにも思う。

さて、物語は女子高の部活のコーチによるセクハラ...性犯罪に端を発した出来事。そのコーチを放火で殺害した女生徒達と学校側(教頭、顧問、副顧問、殺害されたコーチの甥...理事長の息子で将来の理事長)による真実を明らかにするというサスペンス&ミステリーのような内容は観応えがあった。
その否応なしの状況に立たされた時の錬られた会話...「殺人を犯してならないのは何故」「戦争殺人は許されるのか」という個人と国家の行為の比較論議...その理屈・論理のすり替え、そして生徒と教師の立場の逆転が面白い。そして主張したい世界観は青い海のようにきれいになっていくのだろうか。

一瞬、女子生徒の主張が通り、学校側も事件真相を明らかにしない(警察は事故死の方向)。しかし、最終的には、”良心の呵責にたえきれず”のようになり、ブルーシートに隠され連行される。
場面の中で、女子生徒が自殺を図るシーンがあり、それをイメージする血管(血)と閉塞感が奥壁の赤い紐や鎖に現れているような気もした。

この2団体のコラボは初めてだというが、出演しているB.LET’Sの永島広美さん、土田有希さんは、2014年7月新宿サンモールスタジオでの「愛、あるいは哀、それは相」に出演していたので、演技的には馴染みがあるだろう。
いずれにしても、この合同企画はそれぞれの持ち味が出ており、成功したと思う。

実に観応えのある公演(ゲネプロ)であった。
ミュージカル 牡丹さんの不思議な毎日

ミュージカル 牡丹さんの不思議な毎日

ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ

上野ストアハウス(東京都)

2014/06/18 (水) ~ 2014/06/23 (月)公演終了

満足度★★★★★

好演!
日本の四季折々の景色と慣習が見えるような公演で、個人的には好きです。家族で山間部の町へ引っ越してきて起こる不思議な出来事と地域の人たちとの交流を描いた芝居である。日本の情緒あふれる風情とそこでの幻怪が見事に演出されていた。
まず、舞台は回転・暗転させることで場面転換を図り、小道具でより状況を上手く説明していた。演技も個性豊かで見応え十分である。本当に生き活きとしており、テンポも心地良い。また、地域の人との交流は心温まり、幽玄さを醸し出していた。
脚本、演出、演技の全体を通じて秀逸な公演であった。
今後の公演も楽しみにしております。

ストリッパー薫子

ストリッパー薫子

BuzzFestTheater

シアター711(東京都)

2015/11/11 (水) ~ 2015/11/17 (火)公演終了

満足度★★★★★

タイトルとのギャップに驚き
この公演の最大の魅力は、エロチックなタイトルと物語の脚本、コミカルとシリアスな演出のギャップ...その感情振幅が大きく、良い意味での裏切られが印象的である。芝居の画一化といえば大袈裟であるが、例えば悲劇・喜劇は、泣き・笑いという感情表現が片寄るような観せ方になる。自分もその流れを自然に受け入れていたと思う。
しかし、このリップ座公演はエロカワイイと人間の深淵という異質な状況を見事に融合させていた。

ネタバレBOX

梗概は、説明文から「ストリッパー薫子に近付く、テレビマン・岡本は、 『貴女のドキュメンタリー映像を撮らせてください!』」と懇願する。だが、薫子の心の奥底には、今でも深い深い傷跡が残っていた。 岡本は彼女の闇を消し去ることができるのか。そして岡本の真の目的は、薫子の父(実は養父)が大手芸能事務所代表で、その力で所属事務所にいたお子元の妹を甘言を弄し陵辱した上で自殺に追い込んだ。その復習のために近づいてきたと...。

そして、薫子自身も幼き頃に父から受けた心の傷...その結果、多重人格を形成する。サイコサスペンスの様相を見せるが、その描きはユーモアとグロテスクなシーンが交差し、観ている者(自分)の感情を揺さぶる。

ストリッパーという華やかな表舞台、一方哀愁、焦燥が漂う裏舞台は楽屋である。その両方を舞台セットとして見せる。表舞台(非日常)は、スポットライトを浴び回転盆の上で艶かしく踊る姿態(肢体)。楽屋は化粧台、長椅子、ロッカーなどが乱雑に配置されている。それが現実(日常)生活を物語っている。ここでも非日常と現実(虚実)というギャップを見せるが、まさに薫子の心の多重性を暗示しているようだ。
この公演は、職業こそストリッパーという設定であるが、悲喜こもごもの人間ドラマが垣間見える。
なお、ラストは映画「監督失格」(2011年制作)に見るような悲しい結末であるが、しっかり余韻(ナレーション、音楽)を感じさせる見事な幕引きであった。

次回公演を楽しみにしております。
悪事の代償

悪事の代償

青色遊船まもなく出航

シアター711(東京都)

2014/05/02 (金) ~ 2014/05/05 (月)公演終了

満足度★★★★★

二度見が…
必要なほど凝っている、というのが第一印象である。まぁ、ほぼ全員が悪事を働いているか、悪意を持っている。ダ-クな公演であるが、さほど暗くなく、後味も悪くない。それたけ脚本・構成・演出がしっかりしているからだと思う。しかし、何でも詰め込み、繋がりを持たせ過ぎたため複雑になった感がある。
2時間20分は長いと思ったが、中弛みもなく、最後まで緊張感を持った公演だった。それだけ役者の演技も迫力があり素晴らしかった。
これが旗揚げ公演というから、今後が大いに楽しみである。

体夢-TIME

体夢-TIME

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2014/12/11 (木) ~ 2014/12/23 (火)公演終了

満足度★★★★★

感じる…時間
普通、時間は過去から未来に向かって流れると思われる。しかし、屁理屈は承知の上で、例えば砂時計は、上部が未来、括れた所が現在、そして下部が過去として見れば、時間の流れは逆転している。
本公演は体夢(タイム)の悲惨な出生から物語が始まるが、9歳の時、15年後と初老期の自分が現れ、同時並行して存在する、という、通常の“時”の概念がない。将来から来た自分が告げる未来の姿とは…。

ネタバレBOX

”絶望“が暗示されながらも今を懸命に生きる…その姿が健気で愛おしい。社会がパンデミックに侵され人類滅亡の寸前…その世は作為の結果か、それとも無作為が原因か。人間の愚かな行動・活動や見てみぬふりをするような無責任な態度に対する警鐘・批判が込められた骨太な作品という印象である。
舞台セットは、奥行きを利用し、緞帳に代わる重層化した仕切りボードを開閉させる。その仕掛けで暗転に代わる状況転換を現し、さらに天井から役者が降下してくるという立体的な演出で、まさしく時空間を描いた。舞台全体が目に見えない“時“と”汚染”という抽象的なことを可視化できたと錯覚させたようだ。
余談だが「指サック人形」は、最近話題の映画「寄生獣」に出てくるVFX映像「ミギー」を模したような…。

今後の公演も楽しみにしております。

このページのQRコードです。

拡大