スネーク・オイル
不条理コントユニットMELT
王子小劇場(東京都)
2024/03/06 (水) ~ 2024/03/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
魂の存在を科学的に証明する…いくつかのコントというか寸劇を入れ子のように組み合わせ、独自の世界観を構築した異色作。内容的には人間(魂)と社会(時事)を巧みに描いており、重層的な物語に仕上がっている。
少しネタバレするが、前提は王様ゲームから始まる。そして説明にあるような物語が展開しだすが…。魂を巡る人の物語に、内憂外患を想起させるような時事問題をブラックジョークのように絡め、その(話題の)豊富さが 観ている者の知的好奇心を刺激する。
(上演時間1時間55分 途中休憩なし) 追記予定
通る道
劇団芝居屋
中野スタジオあくとれ(東京都)
2024/03/01 (金) ~ 2024/03/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
自分好みの舞台。
旗揚げ公演をした<中野スタジオあくとれ>…比較的小さい空間だが、三十三回忌法要に集まった人々の心情を描き出すにはピッタリ。登場人物は5人、そこに三十三回忌法要らしさが出ており、人の死と過疎化という世の移り変わり、その寂しさ侘しさが感じられる。
説明では北国とあったが、舞台は冬の北海道、寒風が吹いており 極寒の様子がしっかり伝わる。それを体現する演技が実にリアル。
死という必然と少子高齢化という抗えない現代日本の課題・問題もちらつかせ、それを抒情豊かに描く。
法要という典型的な儀式、事件も大きな出来事も起きないが、そこに集まった人々の近況も含め人生が語られる。そこに この劇団の「覗かれる人生芝居」の面白さを観ることができる。
(上演時間1時間35分 途中休憩なし)
猛獣のくちづけ
くちびるの会
OFF OFFシアター(東京都)
2024/02/22 (木) ~ 2024/02/27 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、自分好み。
舞台は渡良瀬川近郊の街、派遣労働者として働く男の 不思議な出来事を通して、世の不条理を浮き彫りにするような物語。
男の周りの人がワニになっていく中、孤独にならないよう友達作りを始めたが…。ワニがどんな比喩をしているのかハッキリしないが、世の中の不安・不穏といった雰囲気が漂う。それがコロナ禍の閉塞感・不寛容といった状況に重なるような気がする。
(上演時間1時間40分 途中休憩なし)
東京在住資格
劇団BBF
RAFT(東京都)
2024/02/16 (金) ~ 2024/02/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
東京という<街>に住み続けることに拘る一人の女性 幸子の心象劇。10代の頃から東京に憧れを抱いているが、その理由が漠然としている。東京とそれ以外の街の違いはなにか といった明確な答えはない。それを10代から30歳頃までの特徴的な出来事を3人の女優(一役3人)で紡ぐ。登場人物は幸子と幸子の周りの人々(7人)といった曖昧な括りで描いており、衣裳もそれを意識した分かり易さ。役者陣は 出捌けせず、ほとんど舞台上におり幸子を見ている。いや 見るというよりは観察・洞察するような役割を担っているようだ。
経験しなければ解らない…東京で暮らしてみなければ、その<街>の居心地の良さや悪さは理解できないかも知れない。一方、幸子が東京に求めるモノ<希望や夢>が曖昧であるがゆえに追い詰められていく様子、それが青春の残酷さとして浮き彫りになる。小さい劇場、シンプルな舞台セットだけに、演技によって幸子の心象をしっかり伝える必要がある。その人物像は等身大の女性として巧く演じていた。
(上演時間1時間45分 途中休憩なし)
かわりのない
TAAC
新宿シアタートップス(東京都)
2024/02/07 (水) ~ 2024/02/12 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
夫婦3組による存在(登場)しない子を巡る、いや正確には、夫婦2組と妻に出奔された夫と息子(不在)の愛憎劇といったところ。「変わりのない」か「代わりのない」で意味が大きく違う。説明ー難病の息子の移植手術するために募金活動を行ったがあと少しで目標額に届きそうな時に亡くなったーは、時間の経過とともに少しずつ日常が戻ったということか、それとも亡くなった息子の代わりはいない といったことか。公演では視点を変えて両方の事柄を描いているようだ。それは並んで立っているが、同一空間ではなく、台詞だけがシンクロしている妙。この届かない 聞こえないであろう慟哭こそが不在の(我が)子を強く印象付ける。
少しネタバレするが、チラシの座っている男女が説明にある募金活動を行った夫婦、後ろに立っているのが刑事。必要なくなった募金活動を続けたことによる詐欺か、実はもっと別の観点で展開していくが、何となくミステリーサスペンス風の様相を帯び 一気に関心が高まる。
(上演時間1時間40分 途中休憩なし)
CROWDED CHAOS FANTASY TURBO
SPIRAL CHARIOTS
「劇」小劇場(東京都)
2024/02/01 (木) ~ 2024/02/12 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
【ABチーム】観劇。楽しませるに徹した公演。
2チーム同時に同じアクション&台詞、息が合うか否かが見所か。内容は王国(聖者)と悪魔の戦いーー有名なロールプレイングゲームを擬えた展開のようで、勿論、音響音楽も聴いたことがあるような。
ネタバレ厳禁とのこと。
(上演時間1時間15分 +アフタートーク約30分)
谷崎潤一郎『白昼鬼語』
楽園王
サブテレニアン(東京都)
2024/02/01 (木) ~ 2024/02/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「人殺しを見に行こう」という衝撃の誘いから始まる『白昼鬼語(はくちゅうきご)』…谷崎潤一郎の推理小説だが、論理的というよりは 心象的であり幻想的な描き方。1918年発表の短編探偵小説、この小説は未読であったが、読んでみたいと思わせるような舞台化だ。全体的な印象は虚実綯交ぜのような独特の世界観、それを音響・音楽、照明の効果的な演出によって耽美的な雰囲気を醸し出す。
物語(あらすじ)の表層的な事象は分かるが、その奥に隠された人間心理は複雑で怪奇といった印象を受ける。小説は 想像でその世界を思い浮かべることが出来るが、舞台化すると視覚・聴覚を通して生身の人物が迫ってくる。冒頭の「見に行こう」は覗き見るといった好奇心の表れ、それを役者が客観的に演じていた。その意味では、感情移入するというよりは 観察もしくは推察といった冷徹な感じだ。その描き方と観劇後の印象が心象的という一見矛盾したような感覚に陥る、見事!
(上演時間1時間20分) 追記予定
カンテン「The Foundations」
カンテン事務局(Antikame?)
座・高円寺1(東京都)
2024/01/24 (水) ~ 2024/01/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
舞台芸術の幅広さ奥深さを感じられる公演であり、好企画。
観劇したのは、Select C「接 ここはクチ以上にモノを伝える」で、架空畳の『柔らかい非流線形のフーガ メメント/アライメント』とSky Theater PROJECT『黒沢家の家じまい』の二作品。タイトルからも何となく想像できるが、前者は抽象的でパフォーマンスという動的な描きであるが、後者は具体的で身近にある出来事を静的に紡いでいる。その意味では素舞台という共通した条件下で、まったく違うテイストの公演を観ることが出来る。それぞれの団体の個性を十分に活かした内容、それを端的に表すに相応しい空間(更地)での企画は面白い。
『柔らかい非流線形のフーガ メメント/アライメント』は、或る役割を担った者たちの独白(言葉)を繋ぐことで、或るコトを準えた又は喩えたような作品。舞台技術の照明等に特徴があり心象的な印象を受ける。一方『黒沢家の家じまい』は、典型的なストレートプレイで、日常にあるリアルな会話劇。
(上演時間2時間10分 途中休憩なし) 追記予定
「八月のシャハラザード2024」
ネバーランドプロモーション
萬劇場(東京都)
2024/01/24 (水) ~ 2024/01/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
事故と事件という2つの出来事を交錯させ、限りある命をいかに未練を残すことなく全う出来るか…硬軟ある描き方だが 基本はコミカル ヒューマンストーリー。観応え十分。
ストレートプレイに歌(カラオケ)、ダンス(群舞)といった魅せるシーンを挿入することで、エンターテインメントとしても楽しめる。
舞台技術の音響 音楽、そして情景描写を効果的に表す照明が印象的だ。勿論、役者陣の熱演が物語にグイグイと引き込んで飽きさせない。虚構性の中に楽しませるという娯楽性、その意味では 演劇という総合芸術がしっかり堪能できる好公演。
(上演時間2時間 途中休憩なし)【Aチーム】追記予定
舞台「GAKUYA」
文化芸術教育支援センター
中目黒トライ(東京都)
2024/01/17 (水) ~ 2024/01/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
第9回新人シナリオ発掘プロジェクト…楽屋をテーマにワンシチュエーションの会話劇をオムニバス形式で上演。「楽屋」という限られた空間で紡がれる人の悲喜交々、とても味わい深い公演であり好企画だ。「シナリオを学ぶ多くの人に自分の作品が形になる場を作ろう!」という意気込みがしっかりと伝わる厳選された作品群。面白い!
少しネタバレするが、上演作品と設定楽屋を紹介する(上演順)。
1.「たかがキス」…舞台楽屋
2.「大橋さんのいる楽屋」…TV局控室
3.「それいけ、グリーン!」…街のヒーローショー
4.「ボックス・オブ・チョコレイト」…ストリップ小屋
自分は、「たかがキス」「ボックス・オブ・チョコレイト」が印象に残った。
前説や最初の作品を上演する前、CAST紹介を兼ねて 各作品の特徴的なシーンを披露したり 劇中へ繋がりを持たせるような演出。例えば、街のヒーローショーの会場間違えや ストリップをイメージさせるような妖艶なダンスなどを観(魅)せる。
少し気になるのは、演技力に差があり 作品の面白さを十分に表現出来ていないような。当日パンフに「キャストの約半分はオーディションで選ばれた新人たち」とあるから無理からぬことかもしれないが…。
(上演時間1時間50分 途中休憩なし) 追記予定
ストレンジャーズ イン ザ ナイト
スラステslatstick
駅前劇場(東京都)
2024/01/16 (火) ~ 2024/01/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
元女子プロレスラー3人がそれぞれ第二の人生を歩んでいたが、そんな彼女たちにトークイベントのオファーが舞い込んで、といったコメディタッチの物語と思っていたが…。少しネタバレするが、ほぼ素舞台、暗幕で囲い あるのは横長の箱が2つ。情景に応じてパイプ椅子が持ち込まれるだけ。出演者は5人(女優3人、男優2人)、演技力が求められるところだが、何となく ゆる~く演じているよう。しかし、それが敢えての演技で、一人ひとりの個性であり生き様が感じられるといった不思議な魅力がある。上演時間は約2時間だが、飽きさせることなく展開していく。
素舞台だが、上手に或るモノが現れた時からSFの不思議な世界へ誘われる。チラシにある「地球の存亡をかけた戦いが始まった!」のだ。人は外見によって惑わされることなく、その人間(本)性を見極めることが重要。地球存亡の戦いは、惑わされ疑心暗鬼になる<心>との戦いでもある。
歌ありアクションありの魅せるシーンもあり、笑わせ楽しませる、そして少し考えさせる公演だ。カーテンコールでネタバレしないようにとあり、「元・悪役女子プロレスラーVS宇宙生物‼」は、ぜひ劇場で。 追記予定
タージマハルの衛兵
東京演劇アンサンブル
野火止RAUM(埼玉県)
2021/09/04 (土) ~ 2021/09/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
東京演劇アンサンブルの新拠点・埼玉県新座の野火止RAUMで観劇。新座駅から少し距離(約2㎞か)があるが、事前に予約しておけば送迎車を出してくれるのでありがたい(毎公演かは要確認)。
初日観劇。劇場はひな壇(当日は4段)型で、少しであるが市松模様的にパイプ椅子を配席し観やすく配慮。観た回、それも1列目に小学生と思われる子供が観劇していたが、衝撃的なシーンがありトラウマにならないか心配になった。また同シーンで この劇場では可能な(目測であるが奥行きがある)演出が他の劇場で出来るか気になるところ。
(上演時間1時間55分。前半1時間 後半40分 途中休憩15分含む)【Aチーム】
野火止RAUM劇場は対象外だが、第33回池袋演劇祭参加作品(シアターグリーンBOXinBOX THEATER)になっているため、☆評価は2021.10.10日付。
ほどける双子
クレネリ ZERO FACTORY
小劇場 楽園(東京都)
2024/01/10 (水) ~ 2024/01/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
一人の女性を妻、母そしてベビーシッター(職業)といった多面性をもって表出する珠玉作。一人芝居にも関わらず、内省しつつ濃密な関係性を表すといった表現力の豊かさ、そして衝撃的な結末へ導く。
(上演時間50分) 追記予定
死神と9月のベランダ
東京カンカンブラザーズ
ザ・ポケット(東京都)
2017/10/11 (水) ~ 2017/10/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
映画音楽「唐獅子牡丹」…♪義理と人情を秤にかけりゃ 義理が重たい男の世界♪と歌われていたが、本公演、自分では理屈と感情を秤にかけたら”感情”の揺さぶりの方が上回った。
演劇らしい現実離れした設定であるが、人が持っている優しさ、厭らしさが端的に伝わる公演である。タイトルから明らかなように死神は登場するが、「死神」と「死に神」という表記では印象が違ってくる。物語は人と死に神の関係の変化、地域という風景の移ろいが感じられるヒューマンドラマである。1997年から2017年という20年間に亘る時間軸の長い物語であるが、時代を区切り(演出の工夫)分かり易く観せている。
(上演時間1時間50分)
NOa「の」八コぶ.ね.
中央大学第二演劇研究会
荻窪小劇場(東京都)
2024/01/07 (日) ~ 2024/01/08 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
世界に溢れる災い(人災・自然災害 問わず)を旧約聖書の『創世記』にあるノアの方舟に準えて<生きる>ことを模索するような物語。
前半はダジャレのような言葉遊びが多く、話が漂流するようで どのような物語を描きたいのか 解らない。後半から終盤にかけて ようやく言葉や記憶を失った人々を通して、争いごとや災いの惨さ、それでも人生という荒波を乗り越えようとする。人生という航海は後悔の連続かもしれない、そんな味わいの感じられる内容へ。少し回りくどいのが難点か。
(上演時間1時間10分) 追記予定
境界
劇団夢現舎
新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)
2024/01/06 (土) ~ 2024/01/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
タイトルにある「境界」だけではなく、「きょうかい(漢字変換した)」に係る11演目をテンポ良く描く。中にはアントン・パーヴロヴィチ・チェーホフの短編や山本周五郎の時代小説 さらには古典落語という幅広いジャンルから題材を得ている。正月の御節料理のように それぞれ違う味わいがあり楽しめる。また場転換に時間をかけず、かと言って衣裳は話に応じて着替えるなど飽きさせない工夫にも好感がもてる。
さて、当日パンフには「これらを境界と取るか否かは貴方次第」とあるが、中には境界ではなく区別もしくは選別といった印象のものもあり、考えさせる。構成は、教会 教戒 教誨といった括り、チェーホフ短編、そして日本での話といった纏まりが妙。5人の役者が 瞬時に色々なキャラクターの人物を演じているが、それでも違和感なく話の中へ入っていける。
(上演時間1時間36分) 追記予定
ネズミ狩り 2024
劇団チャリT企画
ザ・スズナリ(東京都)
2024/01/06 (土) ~ 2024/01/08 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
凶悪少年犯罪をモデルにしたブラック・コメディという謳い文句であるが、その実事件と架空(創作)事件を巧く絡めた力作。少しネタバレするが、舞台となる老舗そば屋・南海亭の姉妹の激論が見所の一つ。この店の店主で父親が少年事件に巻き込まれて殺害された。しかし 跡を継いだ長女は加害者の極刑を望んでいない。一方、次女は自身が痴漢被害に遭ったこともあり犯罪を憎んでいる。そして加害者の極刑を望んでいる。それが<更生>か<死刑>という立場の違いを端的に表している。
物語は、この殺害された店主の意思ー元犯罪少年の更生支援という崇高さ、しかし 理屈で感情を抑えることが出来ない難しさ。その悶々とした感情を巧く表現しており観客の思考を刺激する。またSNS・スマホ時代2024年版としているが、姿なき市民による誹謗中傷 さらには嫌がらせといった風評に現代的な怖さを潜ませる。その見えない不気味さ、それを音だけで屋根裏にいるであろうネズミに重ねる。本当は 誰を何のために狩りたいのか。
また常連客の富永(おとみさん)が、蕎麦でいう隠し味のようで 重苦しく緊張を強いるような物語に程よいクッション的な役割を果たしている。当事者のことを知らない世間、その登場しない無責任な悪意に対し、常連客で家族のことを知っているご近所さんという存在で対抗させる。このさり気無い構図が絶妙だ。
(上演時間1時間50分 途中休憩なし) 追記予定
イヨネスコ『授業』
楽園王
サブテレニアン(東京都)
2020/01/21 (火) ~ 2020/01/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
未見の不条理劇…自分にとってこの公演が今後の同作品の基準になる。たぶん、本公演は文章でいう倒置法のような描き方になっているのではないか。つまり結論が先になり、その説明を順々に展開していく。そうすることで難解と思われそうな公演を解り易くする演出的な工夫である。確かにその面は良かったが、逆に不気味に逆転していく立場と言った不条理の醍醐味が弱くなったように思えたのが残念だ。
(上演時間1時間20分)【Aチーム】
他人
公益社団法人日本劇団協議会
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2023/12/15 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
現代的なテーマのリアルを コメディータッチで描いた珠玉作。
本作は2022年「日本の劇」戯曲賞最優秀賞(竹田モモコ女史)を受賞している。その上演台本(冊子)を無償で配付しており、上演前に1~2頁読んでみた。会話の中に方言があり、急いで当日パンフを見ると彼女の出身地 高知県土佐清水市の「幡多弁」を使用…とある。この方言が、作品の中で独特の味わいと保守的になりそうなテーマへの緩衝的な役割を果たしているようだ。
登場人物は3人の女性。彼女たちと関わりのある 言わば中心人物は登場しないため、「他人」同士が気まずい雰囲気の中で探り合うような会話をしていく。物語は中心人物が不在の一週間、この限られた時間の中で本音と建前 そして<秘密>を紡ぐが、面白さの中に切なさが滲み出るような味わいがある。
3人の女性は年齢や職業、 住んでいる所も地方と都会で地域での付き合い方も違う。勿論 立場や性格も違うが、女性という共通項で親近感、世代や考え方で違和感を浮き彫りにする。一週間という短い そして奇妙な共同生活の中で それぞれを認め合い将来を話し合うが…。
観客は劇中の設定を知っているが、登場人物はその事実をどのようにして知るのか、そしてどんな態度をとるのかといった関心を惹きつける。慌てふためき、戸惑い 困惑といった可笑しみと人に話せない苦悩、そのコミカルとリアルな姿にテーマの難しさを落とし込む。この3人の女性を原日出子さん、畑中咲菜さん、平松美紅さんが見事なコメディエンヌぶりを発揮して溌溂と演じている。観応え十分、ぜひ劇場で…。
(上演時間1時間35分 途中休憩なし) 追記予定
薄膜インタフィアレンス
BEHATI OWL PRODUCE
エビスSTARバー(東京都)
2023/12/21 (木) ~ 2023/12/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
舞台は地方都市にあるBar、時は2023年大晦日の夜に集まった幼馴染による心情劇。魅力的な言葉(台詞)に溢れた会話、そこには人の本音と建前という典型的な人間模様が描かれている。言葉は魔法であり呪い…その使い方次第で人を癒したり傷つけたりする。幼馴染ゆえに知り尽くした相手の思いや事情、そのことを遠慮なく言葉に(干渉)する.。相手がそれを どう受け取る または受け止めるのか、その感情の行き違いを巧く表す。トライアル公演とは思えない表現力だ。
地元に残った人、東京で暮らしている人、今では生活環境も違うが、久しぶりに会っても気心が知れた仲、そこに遠慮会釈はない。表面的には厳しいこともズケズケ言うが、心の内では相手のことを心配している。こんな会話を地方都市ならぬ東京のエビスSTARバー(会場の妙)で覗き見る臨場感、一方 舞台となる北陸地方の深夜にしては寒冷さが感じられない不自然さ。出来れば、地元に残った人達は 方言で喋ってくれたら 雰囲気が出たかも(電話通話の時、少し聞けたような)。
シャボン玉を人の多様・多面性の比喩として使っており面白い。劇としては、ノスタルジックな風景の中に悲痛な現実、そこに もう少しユーモアやペーソスを交えて滋味深く描ければ、もっと印象的になった のではないか。次回公演が楽しみな団体(BEHATI OWL PRODUCE)。
(上演時間1時間20分 途中休憩なし) 追記予定