実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
凶悪少年犯罪をモデルにしたブラック・コメディという謳い文句であるが、その実事件と架空(創作)事件を巧く絡めた力作。少しネタバレするが、舞台となる老舗そば屋・南海亭の姉妹の激論が見所の一つ。この店の店主で父親が少年事件に巻き込まれて殺害された。しかし 跡を継いだ長女は加害者の極刑を望んでいない。一方、次女は自身が痴漢被害に遭ったこともあり犯罪を憎んでいる。そして加害者の極刑を望んでいる。それが<更生>か<死刑>という立場の違いを端的に表している。
物語は、この殺害された店主の意思ー元犯罪少年の更生支援という崇高さ、しかし 理屈で感情を抑えることが出来ない難しさ。その悶々とした感情を巧く表現しており観客の思考を刺激する。またSNS・スマホ時代2024年版としているが、姿なき市民による誹謗中傷 さらには嫌がらせといった風評に現代的な怖さを潜ませる。その見えない不気味さ、それを音だけで屋根裏にいるであろうネズミに重ねる。本当は 誰を何のために狩りたいのか。
また常連客の富永(おとみさん)が、蕎麦でいう隠し味のようで 重苦しく緊張を強いるような物語に程よいクッション的な役割を果たしている。当事者のことを知らない世間、その登場しない無責任な悪意に対し、常連客で家族のことを知っているご近所さんという存在で対抗させる。このさり気無い構図が絶妙だ。
(上演時間1時間50分 途中休憩なし) 追記予定