実演鑑賞
満足度★★★★
社会派とコメディのバランスが良く飽くことなく楽しめた。
同じ被害者遺族でも受け取る事実によって取る立場が異なるということが巧みに表現されていて、ナツキとフユコの衝突がリアルに感じられた。
個人的にはハジメの心情を深掘りして欲しいなぁと…そんな思いも。
実演鑑賞
満足度★★★★★
この舞台を観ていたら
人を殺したら=死刑、は、どこかの宗教みたいに、やられたらやり返すを連想してしまいました。
負の連鎖を断ち切るには、なにが必要なのか難しいところですね!?
あと、正義感をふりかざす記者、昨今の報道もですが、主観が入りすぎる感じがあり、本来、事実だけを正確に伝えるだけでいい気がするのですが.....
色々考えることが多いですが面白かったです!
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/01/08 (月) 13:00
社会派シニカルコメディな作風のこことしては珍しく、笑いは緊張感を緩和する程度にすぎず基本はシリアスな異色作。2011年版を2回、2012年のULPS版を1回観て通算4度目となるが、被害者遺族の心境と犯罪者の更生/社会復帰を芯に据えたた内容には毎度舌を巻く。
また、今回は特に「(自分が信じているだけの)正義を振りかざした者の無自覚な悪意」が印象的だった。最近そういうのが多いもので。
実演鑑賞
満足度★★★★★
劇作家樽原氏の新境地!?と思ったら過去作品の再演。初演は2008年王子小劇場、再演2011年3月(楽日2日前に震災)アゴラ劇場。後者のチラシは鮮明に覚えていたが、何と13年前とは。。
今回はスズナリで短時日での上演との事で馳せ参じた所。チャリTの他作品とは一線を画する作り込み舞台(そば屋の店内)、抽象的な装置が一切ない。芝居も回想や他場面挿入がなく全て時系列に沿って展開する。笑い要素は若干入りつつも終始リアリズムでテーマ性もはっきり浮かび上がる。へーこんな戯曲を書いていたんだな、と敬服した。今回主役(女将役)を演じた女優が好演(割と近い過去二度程見た記憶)。青春事情舞台で二度見て覚えたおばさんキャラ笑わせ女優も配して、安定の舞台だ。元服役者の社会復帰の困難さ、世間の偏見、死刑制度の是非・・。
芝居では被害者目線で加害者に極刑を望む側と、加害者の人生に寄り添う側の対立が、姉妹(女将とその妹)のついに暴発した口喧嘩の中で顕現する。度々訪れる雑誌記者を手厳しく追い払う若手(だがベテラン)そば職人にも溜飲を下げる。悪く描き過ぎとも言えるが、SNSやネットでは姿を現わす偽善塗れの下衆人格に肉体を与えた役として、私にはリアルな「存在」に見えた。
事実愚かな世論が適切な被災地支援に積極的とは見えない政府を指弾せず、「言いつけに背いて」現地に入った議員を攻撃する誘導にまんまと乗せられる現実。こういう時いつも思い出すのが「未必の故意」で安部公房が描いた人間たち。利害の前には非合理を恥じないとある島に暮らす土着日本人の実態が日本人精神の「淵源」を抽出したようで興味深かったが、実は今の姿だった。。
いま思い出した。アワード投票が、昨日まで‼︎ ウーまたやってしまった。順位は決めていたのでこのネタバレ欄に紹介しておく。
実演鑑賞
満足度★★★★★
過去に凶悪犯罪を犯した者が自分たちの住む街に住んでいることを知った人々が抱く不安感。
これを蕎麦屋の天井の上を走るネズミの不快な音で巧みに表現している。
物語の最後で蕎麦屋の若い店員が元犯人であることを告白して店を去るとネズミの音は消失する。
だが「ネズミ狩り」が終わって一件落着したはず蕎麦屋の天井で再びネズミの音がし始める。
我々が常に「異端の発見と追放」を求める存在であることを象徴するラストシーンはまさに秀逸。
社会学者田野大輔氏は「権威への服従と異端者の排除を通じた共同体形成の仕組みのこと」をファシズムと呼んでいる。
その意味でこの芝居で描かれているのは「ファシズムの萌芽」ではないだろうか。
本宮真緒さんのファンなので見に行った芝居だが、演者全員の気迫溢れる演技に圧倒された。
実演鑑賞
満足度★★★★★
重いテーマではあるが、コミカルな部分を入れているので暗すぎず面白かった。
自分の近くで起こったらどうするだろうと考えさせられる内容でした。
実演鑑賞
満足度★★★★★
良かったです。迫力ある演技に引き込まれました。内容は重いものだけど、被害者も加害者もどちらかなんて無い。知る権利ってなんだろうって考えた。人は憶測や情報に躍らせられる事が多い。真実って難しい
自分や身内がいつ被害者や加害者にならないとは言え無い
罪を更生する人もいれば繰り返す人もいるのも事実
実演鑑賞
満足度★★★★
加害者の幸せ、被害者の幸せ、加害者・被害者含めた人々の暮らし、何が優先されるべきことなのか、何を切り捨てるのか、とても考えさせられる作品だった。
きっと観客それぞれに違った意見や立場を持っていて、登場人物の中に自分の意見に近い人がどこかにいて、感情移入できるのではないかと思う。
ラストの盛り上がりにいくまで、ちょっとだけまったりしたのを感じたけど、面白かった。
観た後、心に何かが残る作品だった。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/01/07 (日) 14:00
座席1階
前回、ジャニーズ事件をテーマにした舞台はとにかくこれでもかというくらい笑ったが、今作は犯罪加害者の更生問題に正面から切り込んだ力作。再再演といい、今の時代背景に合わせてリニューアルしたという。
街中の蕎麦屋が舞台。この店の主人は少年犯罪に巻き込まれて亡くなり、長女が跡を継いでいる。犯罪被害の遺族だが、長女は父を殺害したとされる少年の死刑求刑に反対している。一方で末娘は痴漢被害のトラウマで電車に乗れないという状況になっていることもあって、死刑を求めて活動。姉妹の仲は険悪になっている。
亡くなった父親もかつては犯罪を犯し、更生して蕎麦屋を立ち上げたという経歴があると明かされる。自分と同じ境遇の少年の更生に協力してきて、積極的に少年院出の若者を雇っていることも、舞台の進行と共に分かってくる。そんな中で、サカキバラ事件を連想する元少年を雇っているのではないかというウワサが立つ。
凶悪な犯罪加害者が隣にいることに拒絶反応が起きるのは、かつても今の世の中も同じだ。元少年Aの更生を阻むのはこんな世の中である。事件から何年も経っても変わらぬ空気にはため息が出る。
しかし、舞台は死刑運動に参加する被害者の女性をキーパーソンにして、この難しい問題を客席に突きつけてくる。チャリTがこんな硬派な舞台を作っていたとは恥ずかしながら知らなかった。
役者たちの熱演も見事だ。特に姉妹の言い合いの場面の迫力は特筆もの。この展開を目撃するだけでも、舞台を見る価値がある。
この舞台が、犯罪加害者に拒絶的な世の中の空気を少しでも揺るがす力になるだろうか。舞台の力に思いを馳せる。
いい舞台だった。ぜひ見ておくべきだ。
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
凶悪少年犯罪をモデルにしたブラック・コメディという謳い文句であるが、その実事件と架空(創作)事件を巧く絡めた力作。少しネタバレするが、舞台となる老舗そば屋・南海亭の姉妹の激論が見所の一つ。この店の店主で父親が少年事件に巻き込まれて殺害された。しかし 跡を継いだ長女は加害者の極刑を望んでいない。一方、次女は自身が痴漢被害に遭ったこともあり犯罪を憎んでいる。そして加害者の極刑を望んでいる。それが<更生>か<死刑>という立場の違いを端的に表している。
物語は、この殺害された店主の意思ー元犯罪少年の更生支援という崇高さ、しかし 理屈で感情を抑えることが出来ない難しさ。その悶々とした感情を巧く表現しており観客の思考を刺激する。またSNS・スマホ時代2024年版としているが、姿なき市民による誹謗中傷 さらには嫌がらせといった風評に現代的な怖さを潜ませる。その見えない不気味さ、それを音だけで屋根裏にいるであろうネズミに重ねる。本当は 誰を何のために狩りたいのか。
また常連客の富永(おとみさん)が、蕎麦でいう隠し味のようで 重苦しく緊張を強いるような物語に程よいクッション的な役割を果たしている。当事者のことを知らない世間、その登場しない無責任な悪意に対し、常連客で家族のことを知っているご近所さんという存在で対抗させる。このさり気無い構図が絶妙だ。
(上演時間1時間50分 途中休憩なし) 追記予定
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/01/06 (土) 19:00
2008年に初演、2011年に再演された同劇団の代表作の再々演。やはりいい。観るべし!観るべし!!観るべし!!!(4分押し)109分。
町の蕎麦屋を舞台に、善意を装った悪意の問題を扱った作品で、初演も再演も観ているのだが、同じ題材が10年以上を経ても変わらず成立するあたりに、なんだかなぁ、の感じを強く持った。