実演鑑賞
満足度★★★★★
劇作家樽原氏の新境地!?と思ったら過去作品の再演。初演は2008年王子小劇場、再演2011年3月(楽日2日前に震災)アゴラ劇場。後者のチラシは鮮明に覚えていたが、何と13年前とは。。
今回はスズナリで短時日での上演との事で馳せ参じた所。チャリTの他作品とは一線を画する作り込み舞台(そば屋の店内)、抽象的な装置が一切ない。芝居も回想や他場面挿入がなく全て時系列に沿って展開する。笑い要素は若干入りつつも終始リアリズムでテーマ性もはっきり浮かび上がる。へーこんな戯曲を書いていたんだな、と敬服した。今回主役(女将役)を演じた女優が好演(割と近い過去二度程見た記憶)。青春事情舞台で二度見て覚えたおばさんキャラ笑わせ女優も配して、安定の舞台だ。元服役者の社会復帰の困難さ、世間の偏見、死刑制度の是非・・。
芝居では被害者目線で加害者に極刑を望む側と、加害者の人生に寄り添う側の対立が、姉妹(女将とその妹)のついに暴発した口喧嘩の中で顕現する。度々訪れる雑誌記者を手厳しく追い払う若手(だがベテラン)そば職人にも溜飲を下げる。悪く描き過ぎとも言えるが、SNSやネットでは姿を現わす偽善塗れの下衆人格に肉体を与えた役として、私にはリアルな「存在」に見えた。
事実愚かな世論が適切な被災地支援に積極的とは見えない政府を指弾せず、「言いつけに背いて」現地に入った議員を攻撃する誘導にまんまと乗せられる現実。こういう時いつも思い出すのが「未必の故意」で安部公房が描いた人間たち。利害の前には非合理を恥じないとある島に暮らす土着日本人の実態が日本人精神の「淵源」を抽出したようで興味深かったが、実は今の姿だった。。
いま思い出した。アワード投票が、昨日まで‼︎ ウーまたやってしまった。順位は決めていたのでこのネタバレ欄に紹介しておく。