udonの観てきた!クチコミ一覧

21-40件 / 55件中
あの日はライオンが咲いていた

あの日はライオンが咲いていた

PocketSheepS

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/09/10 (木) ~ 2015/09/13 (日)公演終了

満足度★★★★

こういうの好き。
記憶もの。というより、オモイデものか。
初演は観てません。

1995年だったら☆5つつけてた。というのも、良くも悪くも演出やビジュアル的な画ヅラに古臭さを感じる。好意的な表現をすれば、現代小劇場演劇におけるクラシック…かな。

今回は小泉匠久が世界のド真ん中にいる、という構図でないこともあって楽しめた。

ヒロインの高津春希改め高津はる菜の技術力が突出している。ほかにも「上手い」役者はいるが、ちょっとした所作や声の使い方など、一人だけ明らかにレベルが違う。抜群の美形というわけではないかもしれないが華もある。

もう一人、衣装と振付も担当している和泉奈々。アナザーヒロインあるいはアイコン的な位置。この人もバレエによって磨かれたと思われる身体表現のレベルが高い。ただある方向を指さすだけの動きにも美しさと、かつ落ち着きがある。

この二人だけでも十分に観る価値がある。

終盤、阿久津優と小泉匠久の弱った男対決みたいなのも見どころ。

きむらえいこ。独特の脂っこさがいい方向に働いている。

阿部晃大。いつも通り、この人だけ中学生日記みたい。

植草みずき。爬虫類系の顔立ちにはOLよりも海賊や盗賊の役の方が似合う。

ところで、ここの作品は以前から「会社」の描写にリアリティが感じられない。衣装がビビッドすぎるのも関係ありそう。

キャストの固定化も気になる。それも個別の役者さんが、というわけではなく、こういうやつ担当、みたいな役者さんが、候補が何人かプールされてる中から選んでいる、ぐるぐる回してる感じ。

僕は小劇場35歳定年説というのを唱えていて、そう考えると高齢化が進んでいるこういう座組の賞味期限もそう長くないのかもしれない。

ネタバレBOX

ごく大ざっぱなプロットとしては前向性健忘の話。
シザーブリッツ「永遠にムーン」
SANETTY Produce「ロストマンブルース」
のように題材としては使い勝手がいいのか比較的よくある話。
そこにEDELという「装置」を持ち込んで若干のSF色をつけて展開したのがポケシのオリジナリティ。

ストーリーテラー(狂言回し)の一人が実はコトの当事者だった、という演出も
ボクラ団義「鏡に映らない女 記憶に残らない男」
等、それほど独特というわけではないがオリジナリティ含めうまくまとめている。
時をかける206号室

時をかける206号室

企画演劇集団ボクラ団義

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2015/08/19 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★

祝1位
2回観たから2回書いていいよね?

やはりボクラ団義の真骨頂は現代劇だ。
久保田作品の醍醐味は、常軌を逸した行動に出る人の、直接的な動機の些細さをどう感じるかによるのではないかと。
「この程度の理由でこんなことしないだろ〜」という些細なきっかけと重大な結果。その些細さが、むしろ異常さと狂気のリアリティを際立てる。

もうひとつ、ビジュアル的に大きな要素である衣装について語っちゃう。
ここの衣装力はすごい。近年ファンタジーや時代ものが多かったが、現代劇においては凄味すら感じる自然さ(←日本語としておかしい)。中でも、おしゃれ的にはネガティブな「垢抜けなさ」「イマイチさ」の表現力が抜群。
なおかつストーリーやキャラクターの演出上の意図に正しく合致している。役者が衣装を着ているというより、もう、ただ、その人がそこにいる、圧倒的なリアリティ。
これは衣装部長の平山空自身が役者であることが大いに関係しているように思う。彼女の仕事が単純に二人分になって大変そうなのだけが心配。

殺陣教室やワークショップのように、平山空率いるボクラ団義衣装部によるおしゃれ教室を開いてほしい。

今回の衣装的MVPは高橋明日香と高田淳。役柄の動きまで含めてパッケージとして完成されている。
今出舞の体型含めて若干ぼてっとした感じも◎

最後に。
こりっちに「観てきた」を書くタイプの観客、すなわち物語を深く理解して楽しむためなら複数回観劇も厭わないディープな演劇ファンもしくはボクラ団義マニアにウケすぎるのもちょっと心配になる。
未だ観劇自体がメジャーな趣味とは言えない中で、ボクラ団義は小劇場では類稀な、マニアとマスのキワを狙っていける団体。もっと言えば、次世代のキャラメルボックスになれる可能性がある。キャラメルボックスに取って代わるという意味ではなく、演劇界でキャラメルボックスが成し遂げた功績と同じくらい、時代を押し進める、そんな歴史を近いうちに見られるとしたら、やるのはきっとここ。

音楽は最近(「天誅」以来?)のオリジナルサウンドトラック路線よりも、以前の「こんな曲どこから見っけてきた!?」という既存曲を使う方が好き。
あと舞台監督は海老沢さんが好きみたいです。僕は。

次あたり、わかりやすい痛快コメディ観たいなぁ。

ネタバレBOX

1回目のアフターパンフをカンペにしてどうにか理解できた感じです。
まだよくわからないこと
・「小説家」の元担当編集者で妻(=平山空、今出舞の母)は203号室のエピソードの後どうなったのか?(なぜ206号室にいないのか?)
・漫才師(図師光博)は、なぜあそこまで背負い込んでしまったのか?あるいは、背負い込ませて吐き出させる必要があったのか?
・「二重生活の男」の「妻」の子の父親は誰?
時をかける206号室

時をかける206号室

企画演劇集団ボクラ団義

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2015/08/19 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★

やりすぎ。
星4つは複数回観劇前提です。
一回だけでは全容が把握できないと思う。

ボクラ団義の本公演によくある「やりすぎ」感たっぷり。
大掛かりなセットは演出の必要上やってみちゃったという感じだし、稽古の段階から話題になっていたオープニングも、観客を世界に引き込むためにきわめて有効に機能している。
手段と目的を取り違えていない。

ただ、込み入った話に関しては、そろそろ一旦おいといてシンプルな話が観たいかなとも思う。

人間の情報を受け止められる量というのは有限で、視覚情報(セットの動きを含めて役者さんの演技)と言語情報(セリフ)を合わせた上限がある。この作品はぼんやり見てると容易にその上限にぶち当たる。複数回観劇前提+見る側にも真剣勝負を要求される。

この「何回か観ないと本当の意味で楽しめない」のはリピーター獲得という点では有効だが、むしろ一見さん初見さんを遠ざけることになっていないか若干心配ではある。

永遠にムーン

永遠にムーン

合同会社シザーブリッツ

笹塚ファクトリー(東京都)

2015/06/23 (火) ~ 2015/06/28 (日)公演終了

満足度★★★

ブラッシュアップ以上アップグレード未満
前回(何回めの再演?)がすばらしくよかったのでどうしても比較してしまう。

全体的にブラッシュアップされた感はあるが、やはり高橋明日香のかぐやを思い出してしまった。(そんなに猛烈なファンというわけではないが、彼女の演じるかぐやはそれくらい強烈に愛おしかった)

全体の構成、個別の場面ともに判で押したように似通ってはいたものの、個人的に課題だと思っていたドタバタの処理はかなりよくなっていた。頻度、濃さともに過不足ない。いや、まだやりすぎの感あるかな。

特筆すべきは結束友哉、船津久美子。
以前に別の作品で見たことのある役者さんだが、この作品でも重要な役どろこでその実力(技術力?)を遺憾なく発揮していた。

最後にビジュアル的なことで、水原ゆきが華奢すぎて、並んだ栗生みなが変にガタイよく見えてしまうのは(とくに序盤の衣装)、もうこれは物理的にどうしようもないかな。

ネタバレBOX

栗生みなさんの方がウーパールーパーっぽいと思います。。。
倫敦影奇譚シャーロック・ホームズ

倫敦影奇譚シャーロック・ホームズ

タンバリンステージ

六行会ホール(東京都)

2015/06/17 (水) ~ 2015/06/21 (日)公演終了

満足度★★★★

完璧ではないが観る価値あり。
本番一週間前に主演が降板、代役も初日3日前に配役変更という迷走を辿った作品。
そのため2日目時点で完璧とは言えない完成度だが、それを差し引いても十分に観る価値のある出来。

原作を知らずに観たからか、登場人物みんなが「謎の力」を普通にそういうものとして受け入れているあたりに違和感があった。久保田氏の脚本では、荒唐無稽な超常現象をキャラクターが受け入れていく過程の描き方がうまいなーと思って観てきたので。

ネタバレBOX

プロットの要素としては「遠慮がちな殺人鬼」+「虹色の涙 鋼色の月」といった趣?

平山空の、まれにみる「かわいくなさ」は白眉!
本人いわく、デヴィ夫人のモノマネをする清水ミチコを想定して演じてるそうです。感じの悪いオバサン。
ロストマンブルース

ロストマンブルース

SANETTY Produce

笹塚ファクトリー(東京都)

2015/05/26 (火) ~ 2015/05/31 (日)公演終了

満足度★★★★

何かが足りない。(追記)
----追記----

☆ひとつ増やして4つにしました。なんとなくわかってきたので。

過ぎたるは猶及ばざるが如し?
キャストが豪華というのもいいことばかりではなくて、たとえば野球で選手全員がエースで四番なら常に最高の試合ができるのか?みたいな話かと思ったのです。
僕は、地味(ネームバリュー的に)だけどイイ役者さんが、舞台上の「メイン」ではないオフな部分で細かい演技してるのを見てるのが好きだったりするので。
このあたりはプロデューサーが今後経験を積むとバランスが取れてくるのではないかと。ちょっと欲張りすぎた?

みんなが絶賛している平山空について改めて。
確かに終演まで彼女が誰かの代役だったことをおぼえてる人はいないだろうというくらいの出来。ただ、彼女自身、役者としての器用さと突破力のバランス次第で、まだもう一皮むける余地が残っているように思う。
5年ぐらい前の映像を見ると圧倒的に突破力が高い。今もその突破力は持っていて時折見せることがあるが、どちらかというと器用さの方が目立つ。
このあたりのバランスがうまいのは高橋明日香。
と、こんな感じでキャストがお互いに影響している感じも、またこの作品の見どころではある。

----以下、観劇当日の感想----

※初演は観てません

ある意味、久保田唱らしい作品。
得意とする「記憶」「時間」という題材を扱いながらも、これだけバリエーション豊かなプロットを生み出せるのはやはりすごいと言わざるを得ない。

ただ、中盤である事実が明らかになったところからの展開が、もうちょっと、文字通り「劇的」であってほしかった。登場人物みんなが優しいことが、展開のゆるさにつながってしまっているように感じた。笑いの入り込み方も中盤以降ちょっとゆるくなる。

急展開でバタバタバタっと伏線を回収していくというよりも、二回三回と観ると細かい伏線に気づくタイプの作品でしょうか。

全体的に女性キャストがパワフルだった。
がんばれ男子。

個人的には普通の人=かわいい役の平山空が見られて満足。

ネタバレBOX

前向性健忘を扱った、全体的な構成は「嘘つきたちの唄」+「永遠にムーン」かな?
舞台 新選組オブ・ザ・デッド

舞台 新選組オブ・ザ・デッド

舞台 新選組オブ・ザ・デッド

CBGKシブゲキ!!(東京都)

2015/05/13 (水) ~ 2015/05/18 (月)公演終了

満足度★★

ときには酷評する勇気を持って。
あまり過剰にイイ客になりたくないというのもあって、あえて映画を見ずに舞台だけ行ってみました。あ、ほんとは出無精なだけ。

ザ・ド商業公演です。
そもそも映画ありきという企画が難しいのだと思う。
舞台作品としては、ほぼItomasaさんに言い尽くされている感があるので、もうちょっと媒体の構造的な話でも。

まずね、世の中的に言えば、そりゃ舞台よりも映像の方がメジャーな媒体なわけです。動く人もお金も多大でしょう。そこで発注側>受注側(下請け)みたいな構造が垣間見えちゃうのと、映像の世界で知名度や何かが高いとされる人々のヒエラルキーがそのまま作品に持ち込まれてしまっている。
結果、作品を楽しむというより人を観る要素が強め。そういった意味で商業性が高すぎる。このへんの複数の文脈というか事情を飲み込んだ上でないと、新宿コマ劇場か!という感じになることうけあい。

知名度もキャリアも同じ舞台に立ったら関係なしの真剣勝負と多数の役者さんたちが気を吐くも、そもそも舞台上で下克上が起こりうる構成になっていない。これは、彼らの力量からいって、できないのではなく、あえてこういうつくりにしているんだろう。

しつこいようだが映像から入ってこの舞台を観にきた人たちに「舞台なめんな」「ボクラ団義すげーだろ」というメッセージが伝えきれていないのが残念…。

映像メディア、映画はともかくテレビも娯楽の王様ではなくなって久しいわけで。どちらかというと、それぞれ活躍の場を持ってる人がたまに告知に出る程度のものだと思ってます、僕は。

双鱗姫

双鱗姫

PocketSheepS

TACCS1179(東京都)

2015/03/26 (木) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★

いつものやつといえばいつものやつ
ここの持ち味は120分程度で後味よくキレイにまとめる作風だと勝手に思ってたのですが若干変わってきた感じです。
今回、正味135分ほどあって少し長め、かつ結末については、そんな最後まで描くのも野暮ってもんだろと、あえて片付けない部分がすっきりしない。

ついでに例によって劇団メンバーの小泉匠久、阿部晃大の使い方がまだイマイチ。いい意味で垢抜けないと言えなくもないが…。「ポケシらしさ」と「いつものやつ」紙一重でコッチ側にきてしまっている。

いつもの、といえば女性キャストにパンチのきいた人が多く、全体に男性キャストが押され気味…。

決してつまらなくはないんだけどなぁ…基本おもしろくて観る価値があるだけにアラさがしをしてしまうとでも言うべきか。

本当に毎回しつこくて申し訳ないが、いまだにポケシを観るたびどこかに泉亜樹がいるのではないかと探してしまう。そうせずにはいられない何かが彼女にはあった。

ネタバレBOX

ハト!おいこら意外に暴力的な平和の象徴!
出オチ、おふざけ担当かと思ったら、セリフというよりも日本語そのもののリズム感が抜群でダンスもすばらしく美しい。さすが奈々せんせー!

蛟(みずち)が鱗(りん)の別人格というのはちょっと読めなかった。演じてる役者さんのビジュアルからしてまったく違うタイプだったのもあって。実体のないものが物質化して人格を持つ、というのは、言われてみればポケシのお家芸かもしれない。
ユニゾンのシーンは似たような手法自体まったく見たことがないというものではないが完成度高し。

おこうづかわいいよおこうづ
忍ブ阿呆ニ死ヌ阿呆

忍ブ阿呆ニ死ヌ阿呆

企画演劇集団ボクラ団義

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2015/03/11 (水) ~ 2015/03/22 (日)公演終了

満足度★★★★

難しい。。。
ボクラ団義の作品にはあえて★4つまでしかつけない、という変なポリシーを持っている者です。すべてのものは完成した瞬間から朽ちはじめるのだ。

今回のコレは初演から数えて5回ぐらい観てやっと80%ぐらい理解できたかも。まだ気づいてないところがいっぱいありそう。それくらい難しく奥深い。

まず僕が個人的に歴史苦手ってこと。
もうひとつは字幕や台詞などverbal informationが多すぎる。

それでも、その上で、もう、すごいとしか言いようがない出来。
すべての作品に共通する見せ方、フォーマットのようなものを確立しつつ、この完成度でいろんなジャンルを制覇しにいってる団体を、僕は他に知りません。
動員という数字ときちんと向き合おうとしている点も好評価。

…さて。
PlayAgainは毎回いろいろグレードアップしてますがキャストだけは初演の方がよかったと思うことが多いのです…。

たとえば柴田勝家、蜂須賀小六、そしてもちろん八屋団蔵。初演がとてつもなく魅力的なキャラクター&キャストでした。今回別の役者さんが演じるにあたってそれぞれ十分なキャリアと実力のある役者さんだから初演をマネようとは思っていないのでしょう、違った解釈で楽しめました。ただ、それでもなお僕は初演の方が好きです。

余談ですが事前の予想で蜂須賀小六と柴田勝家のキャストは逆だと思ってましたし、逆だとどうなるのか見てみたいです。

あとはもう沖野晃司ショーですな。
いや、そうならないようにキャスト全員が必死でせめぎ合ってるのが見どころ。笑
やってる人たちは絶対楽しいわ、これ。体力的にも精神的にもキツそうだけど。

衣装も、目が行きがちな部分だけじゃなく足元まで、それぞれのキャラクターが身分に応じた、考証として正しいものを履いている。こういう隙のなさがボクラ団義の底力。

やや苦言を呈しておくと、音楽の使い方が安易になってきたように感じます。これはボクラ団義本体ではなくACRAFTの「天誅」や「紅蓮」シリーズあたりを経て顕著になってきた。以前だったらあえて音楽を入れなかったであろうシーンで薄くBGMを流したりとか。オリジナルサントラも、うーん。アイドルのイメージDVDとかに入ってる、いかにもLogic使って全曲一晩で作りました、みたいな感じ…。

もうひとつ同様の影響か、派手に見せようとしすぎの感もあり。舞台上あちこちでいろんなことが同時に起こりすぎていて追いかけきれない。
脚本、演出、役者がきわめて高水準で揃っているのだから、見せ方自体は素朴でも十分見応えがある作品ができる、という自信を持ってほしい。って、前作「シカク」で僕が期待する「ボクラ団義らしさ」は炸裂してたから今回こういうのもいいかー。

ネタバレBOX

大音文子は本キャストのバカップルぶりだけでなくヤングでも素晴らしかった。
十歳の茶々は当然イジられて笑いを取るであろうところまでは予想できたが、迫力あふれる大人の淀君に一瞬で切り替わるシーンは見てて背筋に寒気を感じるほどだった。

凛。下忍チームの中でも最も常識人であり、観客の声を代弁してくれる凛ちゃん。死遁の術で生きていた、というところまでは初見で理解していたものの、より明示的に描かれていてよかった。
裏設定では、お江も姉二人と同様に風花の子だから下忍チームで見守ろう、ということだったのではないかと。お江本人は侍女(?)の中にさっきまで老人に聞かされていた「歴史」の主人公たちが「忍んでいる」ことに気づいていなかった、という展開が今回やっとわかっておもしれー!と思いましたとさ。

あとヤングチームを観て気づいたこと。
風花は風花として単独で存在するというより、いかにお市に食われるか、みたいなところで成立しているように思います。食われっぷり、という点で言えば大友歩は往生際が悪いというか、森田涼花や今出舞とは違う風花を演じてやろうという気概は感じました。
髪型が一人だけ昭和みたいでしたが。。。

大友嬢は前説でも大活躍してる、もはやマスコットキャラみたいな扱いですな。久保田氏との「ちょっと大友くん!」コント、いつも楽しみにしてます。
『山茶花』

『山茶花』

演劇人*

d-倉庫(東京都)

2015/03/18 (水) ~ 2015/03/22 (日)公演終了

満足度★★★

役者の熱量は大いに見る価値あり。ただし…
まず最初に苦言を呈しておくとプロットが雑。
演出と役者は相当がんばってると思うが、おもしろさの上限があらかじめ決まっている中で、稽古では「理論上限値に近づける」ことしかできなかったのではないか。
これ以上はネタバレで。

とは言っても、キャスト。
見目麗しく、しっかり演技もできる「女優」が山ほどいる中で、凛と美しいヒロイン、今まで見たことがない役をそれはもう堂々と演じる本間理紗を見るだけでも3,000円の価値は十分にある。
(ルパン三世「カリオストロの城」におけるクラリスの位置、と思っておけば半分ぐらい合ってると思う)

やまこの三人は立ち回りもキレがあってよかったし、石部雄一の妖しい色気と弱さの二面性は物語の奥行きを増していた。
森下まぐ、松木わかはも出番こそ多くないものの独特の存在感を放っていた。
全体的に女性キャストがパワフルな座組。

殺陣は、目の前で刀がビュンビュン空を切るので最前列で見てたら怖かった。安全対策は講じているんだろうけども。。。

衣装や小物も凝っていてよい。でも残念だったのが足元。
ゴム底のAirMaxみたいな地下足袋はこの世界にマッチしておらず、詰めの甘さを感じさせた。

ネタバレBOX

中盤、永楽園から出るの逃げるの、逃げる途中でどうの、やっぱり戻るの、戻ったら戻ったで今度は別の人と逃げるので何回も同じような立ち回りが繰り返された挙句、ちょいちょい挿入される細切れのエピソードで話の全体像が見えてくるのかと思いきやそれも中途半端。

やまこという設定上の必然性もイマイチ。
彼ら自身の出自である「里」にリアリティが感じられず、掟や指輪のくだりも裏付けが不足しているように思う。

そしてサンサカの母、チャドの妻、源兵衛の母など終盤で伏線が(少なくとも明示的には)回収されず曖昧なまま。

むりやり悲恋話にもっていくのも強引に感じられ、ひょっとして「小劇場でハッピーエンドはご法度」という呪縛でも感じているのだろうか?と勘ぐるほど。

つばき(椿)とサンサカ(山茶花)の対照、対称性をより明示的に描くとか、違うやりようがあるのではないかなぁ。
春ベリー

春ベリー

順風男女

しもきた空間リバティ(東京都)

2015/03/13 (金) ~ 2015/03/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

おもしろかった。
以前「ボンゴレロッソ」という作品で気になった藤桃子さんが出演されてるということで行ってみました。

こういうのは過去いくつか観たことがあって、残念ながらどれもおもしろくなかったのです。やってる方は楽しいのかもしれないけど、みたいなやつ。だから、始まり方からして「ああ、こういうやつか…」と思って油断しました。

おもしろかったです。

女性が笑いを取りにくるとき、とかく安易にシモに走りがちで観客どっぴき置き去り、というのがよくあるパターンなのですが、女性特有の社会観を通しつつも安易な手法に頼らない、作り込まれたネタの完成度はすばらしく高く、間(ま)の扱いやリズム感も、お笑いを本職にする芸人に勝るとも劣らないレベル。

役者魂かくありき。天晴。

ネタバレBOX

トイレのやつ等、見目麗しい系のキャストさんじゃないとただ汚い話にしかならないところを、ギリギリのところを攻めつつ、ちゃんと笑いに昇華させていたのがすごいと思いました。

むしろ会場整理?してた順風男子の方と思われる男性の日本語が敬語とか結構あやしくて大丈夫か…?
シカク

シカク

企画演劇集団ボクラ団義

サンモールスタジオ(東京都)

2014/12/18 (木) ~ 2014/12/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

どうかしてる。
なんかすごいもん観ちゃったな。。。

ある意味マニア向け、そしてもちろん一見さんド新規ウェルカム。
ここ数年、何作も続けて観てきて、常にボクラ団義らしさを感じさせつつも、常に「いつものやつ」ではない。

今作は入り組んだ、二転三転する話ではあるものの、伏線がちゃんと回収されているさまが理解しやすい、いわばユーザーフレンドリーな作品と感じた。
これは主宰はじめメンバーの多くが「紅蓮」シリーズや「天誅」を経験した成果かもしれない。それが前作「耳があるなら蒼に聞け」で若干色濃く出ていたのが、今作で本来のボクラ団義名義らしさを取り戻した。

僕が観た初回は竹石・沖野・大神・平山という看板役者ド鉄板の組み合わせ。はっきり言ってこの時点で完全に「完成」つまりはこのキャストだけで全21公演やっても十分なレベル。これを全部の公演キャスト違う組み合わせで上演するというのだからやってることは「サーカス」(加藤凛太郎・談)に近い。それも100mを全力で走りながらやるような。

あえて注文をつけるとすれば、序盤の軽い感じが、中盤以降どろっとした世界へ浸っていくにつれて失われるのがちょっと残念。
それでも、その「軽い」言葉遊びのような台詞のひとつひとつがそれぞれストーリーに濃密に関連していることに気付きながら展開していくのは、ちょっと他では観られないレベル。

脚本・演出の久保田唱は毎度「頭ん中どうかしてる」等と称賛されているが、そのプロットから舞台作品に作り上げる過程(の役者や各種スタッフ等の仕事)は十分に評価されていないように思う。

個人的に見ていて楽しいのは福丸繚。成長著しい。

ネタバレBOX

今回のはサスペンス枠ですかね。
「鏡に映らない女 記憶に残らない男」と「遠慮がちな殺人鬼」に、テイストとしては近い。
next BLUE

next BLUE

7contents

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2014/10/15 (水) ~ 2014/10/20 (月)公演終了

満足度★★

キャストのファンなら…
空チームを見ました。
本間理紗のパフォーマンスは期待以上で文句なし。これだけでチケット代金の分+αの価値あり。この人はいつどんな役を見ても、その演じるキャラクターであると同時に本間理紗でもあり続けるのが稀有な女優。
ただお目当てのキャストが見られたからよし、と諸手を挙げて絶賛してもいられない。

以下ほぼすべて苦言。

まずプロットに新規性、独自性が感じられない。
池袋よりも中央線沿線(中野区、杉並区あたり)の小劇場にふらっと入ったらどっかでやってそう、いつでも観られそう。それも平成26年というより昭和56年ぐらいに。

次に、キャラクターの背景描写が希薄すぎて誰にも感情移入できない。
関係性を説明するようなシーンはそれなりにあるが、背景あるいはもっと遡って出自が曖昧なまま関係性を定義しようとしても軸が定まらない。
92番隊のメンバーにしても、なぜそこに所属するのか、中盤で各キャラクター自ら語る場面はあるものの、そういった技術的にも最低限の演出しかない。
彼女らの感情表現も、それが表出する個々の「場面」をつなぐ「文脈」によって慣性や加速度が与えられるから振り幅が出るのであって、その段取り、つまりは文脈とその下地となる前述「背景」の描かれ方があまりに淡白で、多くの場面が感情的に平坦になってしまっている。
一般に、人は「泣きの芝居」そのものでは泣けない。そのキャラクターが泣くほどの感情の昂りに至る文脈を共有したときに初めて泣ける。

トイトイの性同一性に関しても説明不足。

キャラクターの名前が麻雀用語に由来している理由もわからない。
ここの作品は毎回そうなんですかね?一見だから知らないだけ?

また、どんな時代のどこの国かを特定しないのはこういった作品の常套手段ではあるが、軍隊(陸戦部隊)そのもの組織構造や想定される戦闘行為、使用が予想される兵器等まったく具体的描写がなく(「ミサイルが着弾」ぐらいか?)、そういったものから醸し出される文化・教育・科学水準がさっぱり想像できず、彼女らが生きている世界にリアリティを感じづらい。

ラストも、ハッピーエンドでもなければバッドエンドでもなく、かといって考えオチというほどでもない。

何か既視感あると思ったら日本映画ってこんなんですね。特にテレビ局が作るやつ。

演出手法も、小さな劇場のせまい舞台だからこんなもんだろう、という感じがした。神関係で照明が逆光気味のシーンが多くて見づらい。(手元が明るくて上演中にアンケートを書けるメリットはある)

さらに言えば7contentsのwebサイトは1年近く更新されていない。

この手の団体が一皮むけようと思ったら、話題性や動員力のある客演を迎えて一度ベッタベタな商業演劇みたいな公演を打ってみたらどうかと思った。

ネタバレBOX

終盤だけとってみても、以下がわかりません。
・トイトイが神になる(リュウが選ぶ)理由
・間接的とはいえ全力疾走したことが死因であっても自死とみなされないのか?
・92番隊の6人が、なぜトイトイが神になったことを知っているのか

んで結局みんな死んじゃうのね…。

中盤、どーしても本間さんの胸元に目がいってしまうボーナスシーンあり。意外に着やせするタイプ。。。
紅蓮、ふたたび

紅蓮、ふたたび

ACRAFT

笹塚ファクトリー(東京都)

2014/10/08 (水) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

満足度★★★★

運営の難しさ
あらかじめお断りしておかなきゃいけないことがあって、こういうプロデュース公演ではいろんな人がそれぞれのお客さんを連れてくる(動員)と思うのですが、僕は完全にボクラ団義ファンとしての視点で書きます。

たびたび言ってるのは、こういう世界にリアリティを感じられる客層が相当限られるということ。脚本、演出からキャストまで強力に協力してるボクラ団義の「荒唐無稽な超常現象をむりやり受け容れさせてしまう」力量をもってしても。
だって専属歌手がいるようなBarにお酒飲みに行く習慣ある?これ前世紀末だったらVシネマという文化の中にあったものでしょう。

悩ましいことに、キャストとキャラクターはすごくいいんだよね〜。

さて。。。
まず、紅蓮が弱い!笑
前作だと圧倒的に強い、出てくるだけで場の空気が一変するような力を持ってたのに、柳生とチャラ雨より弱いのでは?前作の先代紅蓮ちーちゃんの方がせまい舞台でギリギリまで攻めてる感じがした。
あとジャワこと糸永徹氏に似てると思う。顔が。

次。
殺陣そのものを見せようとしすぎ。
ボクラ団義本体の作品では、殺陣だけでなく無声芝居やダンスと組み合わせた見せ方を追求している(多分)だけに、立ち回りの水準がどんなに高かろうがそれだけ見てると退屈に感じるようになってしまった。贅沢か。
いろんなキャラクターの斬り合いの場面が多すぎて結局どいつが強いんだかよくわからない。

平山空!
今回は髪型や衣装まで含めて、見目麗しく表情も生き生きとしている。彼女自身が衣装担当であれば選ばないような服装。
生歌もよし。
この人、本当は「かわいい」の引き出しをたくさん隠し持ってる。今後もっとかわいい役を積極的に演じてほしい。アクトレス!

さあ、ここまで読んできた人にだけ、おそらく相当に偏っているであろう私見をぶっちゃけていくぞ。
僕は梶研吾、ACRAFT、ボクラ団義の組み合わせはあまりマッチしていないと思うのです。ボクラ団義は梶研吾の原作を舞台化するには若すぎるし、ACRAFTの商業性とボクラ団義がこの数年で作り上げてきたPRからマネタイズの手法は明らかに方向性が違う。これは誰が悪いとかダメ、つまらないというのではなく、単純にシナジーを感じない。それぞれが培ってきた手法を追求するためには、袂を別つ方が三者にとって幸せにつながるのでは。いわんや観客をや。

さらに。
ACRAFT作品に多く関わっている朝倉紀行の音楽がどうも好きになれない。
昭和のアイドル歌謡のB面に入っているような曲、生音が扱えるようになった直後の世代のゲーム音楽、フリー素材に入ってるような曲のどれか。耳から入っても頭に残らない。

最後に。
なかなか言いづらいのだが、七海ななが思いのほか舞台映えしなかった…。

ネタバレBOX

中盤?柳生と村雨、なぜあのタイミングで「ほんとは英語が…」笑
ボンゴレロッソ

ボンゴレロッソ

A.R.P

サンモールスタジオ(東京都)

2014/08/12 (火) ~ 2014/08/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

ある意味で小劇場演劇の鑑。
おそらく2014年の東京でこの作品を観るであろう客層に、あの「30歳女性」にリアリティがない点だけが惜しい。あれ15年前の30歳像だ。

作・演出Aロックマン氏?が当日パンフに書いている通り、本当に何も残らない!それなのに何かいいものを観た感じを覚える不思議な作品。
思えばブルーハーツの歌詞なんかも本当は大したこと言ってない。リンダリンダやトレイントレインではなくチェインギャングを持ってきたセンスは称賛すべき。

いわゆるドタバタギャグのレベルが高い。よくある舞台でのドタバタはみんなあっちこっちで好き勝手に騒いでるだけで全体として成立してないものが多いが、これはきっちり細かいボケまで回収していて、全体の何割かを占める、いまいち清潔感に欠ける顔芸も許せる。
役者の技術水準が平均して一定以上でないと到達できない領域。

本間理紗。
見目麗しい担当だと思っている。ちょっと鼻声かな?
(この舞台のために始めたのでなく)もともと叩いてたドラムが本当にうまい。手数や複雑なプレイという意味ではなく、スネア8連打、リムショット、ハイハットまわりの手首の使い方など玄人はだし。ただ力いっぱい叩けば大きな音が出るのではなく、打楽器の鳴らし方がわかっている。演奏しているときの表情も演技なのか素なのかわからないくらいいい。

イシトヤチグサが少し前に入院していた、そして若干大きくなったのが心配だったが、本人によると「(演出家に?)やせるのを止められた」ということなので、じきに元に戻ることだろう。役柄にはかえって合っていたし。

ネタバレBOX

坂本先生の姪と称する人物、性転換した坂本先生本人だとずーっと思ってました。「仮面をつけて」生きてるのかと。
エデンの空に降りゆく星唄

エデンの空に降りゆく星唄

アリスインプロジェクト

六行会ホール(東京都)

2014/08/13 (水) ~ 2014/08/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

95%ボクラ団義
満席+補助席の入り。
ここでこのタマ(脚本)を使ってくるか!という出し惜しみのない久保田唱の潔さと、きわめて丁寧に作られた感触が伝わってくる作品。
完成度で言えば数年前のボクラ団義の本公演なみで、作風自体はむしろボクラ団義本体よりもボクラ団義らしいかもしれないし、でもボクラ団義で上演するのはおそらく不可能な脚本。ハイミレの逆みたいなことは期待していいのかも?

終盤で一気に伏線を回収にいくのではなく、中盤から丁寧にストーリーを「解いていく」傾向は初見でもわかりやすいし、ボクラ団義や観劇そのものに慣れていない人にも敷居をうまい高さに設定できている。

たとえばキャスティング。那奈@なんとかさんの人間離れした容姿がそのままミスリードのための伏線になっているとか。
春原さんの振りはおそらく相当に難しくて、ちゃんと踊れてる人はそんなに多くない、けども、その「ちゃんと踊れてる人」に視線が誘導されるようになってる。誰が何ができるのか、あるいは得意ではないのか冷静に現状を見て各自が最大のパフォーマンスを発揮できるよう配慮されたつくり。少なくとも完成した舞台上にかぎれば組織運営のお手本とみなせる出来。
ただし、いかんせん人が多すぎて判別がつかない。それぞれちゃんとストーリーに絡んでるキャストの半数程度が僕の中だけでアンサンブルというか事実上のモブ扱い。

終演後のロビーのあれも相変わらずな感じで、本編だけ観たらもういい感。

ここから先は、ひとつ前にコメントされてる方と同じような感想。
今回は6番シードが制作担当のようですが、当日制作スタッフの皆さんは、演劇を観にきた人、アイドルを見にきた人どちらもうまくさばけていない印象を受けました。
パンフほしいと思うも列ぶ気力がなくなるくらいロビーはカオス状態。パンフ買うとちょうど2,000円だから握手会みたいなやつ参加できるんだけどそういうのはいいやと。本編だけで満足したのでさっさと帰りました。

動員+物販売上でキャストさんに厳然とヒエラルキーが存在するんだろうなぁ、と考えると微妙な気持ちになります。この中で何人がこの世界に残ってやっていけるのか。

もうひとつ、遅刻してくる観客の多さ。そのつどペンライト持ったスタッフさんが指定席へ案内するので通路を何回も横切るわけです。そのうち一回はキャスト紹介ダンスの途中!
遅刻しちゃった人専用の補助席みたいなの用意できないものでしょうかね?

さらに僕が観た回は撮影が入ってて常時明るい液晶モニターが目に入る位置でした。僕はわりと平気なタチで、むしろおもしろがって見てましたけども、ああいうのダメな人もいるかも。せめてモニターだけなんとかならないかな。

ネタバレBOX

エネミーゼロ+火の鳥+アルジャーノンに花束を+ハンズアップ+オーバースマイルみたいな作品。

上で「ボクラ団義で上演するのはおそらく不可能な脚本」と書いたけどハイライトミレニアム -> ハイスクールミレニアムの逆みたいなことは期待していいのかも?

平山空さんの出てきかた。
「ハロ〜?…あれっ日本語?」
結局ダンナと子供がいる自分の船に戻れてないよね?笑
耳があるなら蒼に聞け ~龍馬と十四人の志士~

耳があるなら蒼に聞け ~龍馬と十四人の志士~

企画演劇集団ボクラ団義

ザ・ポケット(東京都)

2014/06/25 (水) ~ 2014/07/06 (日)公演終了

満足度★★

わかんないものはしょうがない。
★2つは一回しか観ないという条件つき。
二回観たら★4つ。

わかんないんです。歴史を知らないから。
そういう人向けに「史実とされていること」と新解釈の差分を丁寧に説明してくれようとはしているのですが、その、台詞による説明が多すぎて頭に入っていかないのですよ。みんな限られた尺に収めようとするからどうしても早口になるのをギリギリ抑えてる感じだし。

もうひとつは、僕がボクラ団義に求めているものとはちょっと違ってきた点。
いつものやつだと、前半で、あらかじめ告知されていた「こんな話ですよ」的なテーマを片付けにかかって中盤「ほんとはそれちょっと違ってね…」と急展開から終盤で怒濤の伏線回収劇、ハッピーエンドとはいえないまでも希望に満ちたエンディング、みたいなの、そういうのが観たいのです。

そもそも幕末という実在のモチーフがもう本当の史実と司馬遼太郎あたりによる創作の境界が曖昧で、前提を共有してる間に話が進んじゃうんです。
もともと「史実もの」をやらないことがボクラ団義のアイデンティティだと思い込んでいたので。幕末とか三国志とか西遊記とか水滸伝とか。
「忍ぶ阿呆」も、まあ史実ものではあるんだけども。あれは信長が主役というよりも信長が暗殺された事件をを世にどう伝えるかという点に主題があったわけで。

今回のは、キャラクターとその心情を描くためにストーリーがある、という、おそらく久保田氏の頭の中での作り方としては従来と変わらないのだろうけども(*)、観る側からだとまるっきり反対に感じられる作品。

*久保田氏のインスピレーション
「バウムクーヘンが食べたい、と言わせてみたかった」
「船を作る話が書きたかった」
「いろんな時代の人がファミレスのドリンクバーに並ぶとこ想像したらおもしろいかなって」等

ボクラ団義のナンバリング公演ではなく、外部プロデュースに提供された脚本ならさほど不満はないのかもしれないけど…。

あと劇場内が寒い!
これから観にいく人はTシャツだと寒いので何か持っていこう。

ネタバレBOX

終わり方がね、いろいろあってこんなんで現代に至るわけですわ、といった投げっぱなし感があるんです。今まで観てきた作品は、そこはもう徹底的に丁寧にケアする印象だったので。後味の悪さも含めて。

以下短評。

平山空。
こういうのが見たかったの!
悲劇的と絶望的の際にいるヒロイン。強く美しく儚い女性像。殺陣が迫力。やや腰が引けてる印象あるがむしろ気持ち的に上半身が前のめりということかも。以前は「間合いに入ることもできなかった」龍馬に片手であしらわれる屈辱と、強さと強い男への感情の混同みたいなものが同居している感じ。

大神拓哉。
ただの泣きの芝居ではなく、あの状況であの感情を抱くに至る過程が丁寧に作り込まれていて説得力がある。ふざけ回し少なめ!

福丸繚。
ただの頼りなさげなお兄ちゃんかと思ったら、もう。もーう!ああいうヤツが危ないんだ!オバスマにおけるミズーリ?

内田智太。
階段でおまんじゅう食べてたり小芝居が光る。踊れる、そして強いデブキャラ。これからも健康第一で活躍してほしい。

竹石悟朗、沖野晃司。
何も言うことなし。このまま、まだいける。

竹花久美。
わざわざお茶を持ってきてやるアレ。ボクラ団義らしさ担当の一人。

春原優子。
まっこと、ふっときおなごよのー。
この人がニコニコしてるのもボクラ団義らしくてよい。

福田智行、糸永徹。
今回の作品では派手さはないが欠かせない存在。誰か知らない別の人がやったらどうなってしまうか考えてみたらわかりやすい。

高橋雄一。
この人のすごいところは、毎度この役を他の人が演じるところがまったく想像できないところ。ゴーライの油小路にしてもオバスマのドクトルタカマツにしても初演の方がベスト。

添田翔太。
いちいち所作が美しい。忍ぶ阿呆の浅井長政を彷彿とさせる。

映像、音楽、ダンス、無声芝居はあいかわらずかっこいい。文句のつけようなし。

音。
劇場の特性かエンジニアさんの好みなのか音量自体は大きいのだがいまいち音圧を感じない、音像がぼやけている。映像やダンス、無声芝居の爆音シーンのテンションが100%を超えられない。
舞台版天誅

舞台版天誅

ACRAFT

シアターサンモール(東京都)

2014/05/07 (水) ~ 2014/05/11 (日)公演終了

満足度★★★★

事実上ボクラ団義の総力戦
隣接するサンモールスタジオで公演中の「永遠にムーン」マチネからハシゴ。

アスリート系キャストはそれぞれ華があり、身体能力が高いことは伝わってきたが、役者として経験不足が否めない。
そこを補う、いま東京の小劇場で最も勢いがあると言っていい企画演劇集団ボクラ団義の脚本、演出とキャストの活躍が目立った。彼らもまだ若いと言っていい世代、外部プロデュース+大きめの会場で商業的な相乗効果をねらう試練を課せられているよう。

ボクラ団義特有の凝った「文法」が観客にどの程度届いたのかは未知数。膨大な数の伏線を終盤で怒濤のように回収したり、一部のキャラクターが実は…という後半スピード感が上がる部分はボクラ団義の本公演に比べたら過度に複雑でない、文字通りゲーム感覚で「そういうことか!」と快感を得られる水準だったと思う。

江田結香はただ新体操選手として実績があるだけでなく所作に色気が感じられる。今後に期待!

ネタバレBOX

この作品・公演に「天むす」必要か?
永遠にムーン

永遠にムーン

合同会社シザーブリッツ

サンモールスタジオ(東京都)

2014/05/01 (木) ~ 2014/05/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

圧倒的
作品自体は★3つ
ただし高橋明日香が圧倒的なパフォーマンスで★+2つ!
いい意味で器用というのか、並の役者では形にならないであろう役を存分に演じきっている。

バカおもしろくて儚くて悲しくて、でも希望が残る。
すぐ隣のシアターサンモールでやってる「天誅」とハシゴすべき!

和興の存在感もすばらしい。あれだけのキャリアを持つ、おそらくはベテランと呼んでいい役者を、ああいうヒドイ扱い、で、本人も結構やってて楽しそうなのが尚よい。

古臭い演劇的な表現を古臭いと笑い飛ばそうという演出にまだ古臭さが残る。
また、大声でドタバタするシーンが多く、個々のキャラクターやエピソードが秀逸であるがために、物語の本筋がボンヤリしてしまっている印象を受けた。
ドタバタを本筋に落とし込む「詰め」にまだ徹底の余地があるように思う。

ネタバレBOX

かぐやの症状の原因は語られないが、前向健忘?
僕が小劇場演劇を観るようになったきっかけ、企画演劇集団ボクラ団義「鏡に映らない女 記憶に残らない男」の深い絶望とは正反対の、希望あふれる終わり方が心地よい。
くりかえしになるが、かぐやがとてつもなく愛おしい。精神年齢だとかそういったことを超越した普遍的なかわいらしさすら感じる。
あれは高橋明日香ではなく、この作品の中だけに生きる「かぐや」なのだ。高橋明日香はまだこれから何度も観られるだろう。しかし、かぐやには、きっと、今度の日曜を最後に、会うことはできなくなる。そう考えたら、出るかどうかわからない当日券めあてに開場の時刻から並ぶ価値がある。
歓喜の歌

歓喜の歌

ソラリネ。

上野ストアハウス(東京都)

2014/03/19 (水) ~ 2014/03/23 (日)公演終了

満足度★★★

本間理紗が傑出!
ソラリネ。+福地慎太郎どちらも初体験。
で、その演出手法における「文法」が理解できていないからか、なんだか何もかも抽象的でよくわからなかった。とくに導入部〜中盤、設定や世界が不明確すぎて、いや、あえてそういう手法での展開なんだろうけれども、サッパリついていけなかった。
物語を伝えることよりも、漫画的な記号表現や映像的演出、劇中での時間の扱い方など、技法が目的化している印象を受けた。

そして中盤以降。
もともと数年前にEテレ(教育テレビ)の高校講座で見かけて、ちょっと気になる程度だった本間理紗!
もともと本間理紗が出演するということで興味を持った作品だったのだが、ここまですばらしいとは思わなかった。

儚く、可憐で、ミステリアスで、哀しい。
ときに恐ろしく、絶望に満ちた表情をたたえつつも、救い、救われる。

この作品の中で、他のキャストがダメとは言わないにしても、本間理紗抜きでは世界が成立しないのではないか、そしてダブルキャストのもう一人の方は大丈夫か?と思ってしまうほどの白眉。
本間理紗がアリッサじゃなかったら途中でストーリーを追うのを放棄していたかもしれない。
今後この人が出演する作品は必ず観にいこうと固く決意した。

…ところで穢多のゾンビどうなった?

このページのQRコードです。

拡大