みさの観てきた!クチコミ一覧

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旬の観たいもの展2010

旬の観たいもの展2010

旬の観たいもの展

ギャラリーLE DECO(東京都)

2010/08/17 (火) ~ 2010/08/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

天然果実「Water-Cooler」を観た
「ゲームの名は獣奇的殺人!」そんなタイトルが似合うかのような、ゲーム性の強い、アニメ感覚の世界観。暗転する際の音響の導入、照明、6人の高校生の薄暗がりでの佇まい。それはもう、映画の中のワンシーンのよう。

ほの暗い闇の世界から浮かび上がってくるような斬新な場面だ。閉じ込められた世界、身に覚えのない異次元の世界から彼女らの物語は始まる。

ワタクシのこりっち投稿「観てきた!」の数、1102舞台の中でも極めて経験のない描写だ。その映し方は演劇というより目の前で起こっている高校生らのゲームさながら。作家・広瀬格は勿論の事、津島わかなの演出の見事さに唸る。たぶん、この舞台を観た誰もが今まで経験したことのない描写に驚くと思う。

座席は最前列の桟敷席に座ると女子高校生の・・・、とても美味しい。笑


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

序盤、6人の女子高校生が銃、斧、ナイフ、ロープ、カッター、ペットボトルを持ってちょっとガニマタで佇む。この演出に最初からやられる。この物語はもしかして「殺人ゲーム」なんじゃないかと。6人はそれぞれ自分が何故ここに閉じ込められて凶器なんか持っているのかが、さっぱり解らない。しかし、記憶を辿っていくと、10年前に学校であった獣奇殺人の情景を思い出す。

この6人の中に誰かによって殺された被害者と殺人鬼が居ることを漠然と理解すると、6人はお互いに疑心暗鬼になって殺し合いの模様を描き出す。いったい誰に誰が何で殺されたのか?凶器、殺人鬼、被害者で216通りのシーンがある。これは中学生の問題だ。6の3乗。

そして殺されるかも知れない恐怖に打ち勝つことが出来ない6人はヤラレル前に殺してしまう者、己の精神の限界についつい銃で撃ってしまう者。狂気の寸前で殺し合いの様になるが、殺された者が倒れるシーンの演出はまさにゲームのように静かにゆっくりと落ちてゆく。そして数秒後、また復活するのだ。まさにゲーム。

だから一般的なエンゲキという視点で観てはいけない。これはただの殺し合いというゲームではなく、犯人捜しのサスペンスの中に、仲間が先生によって殺された事を知ると、それに対峙して生徒が手に武器を持って戦うというホラー性もあり、更に殺人者と被害者が繰り返し反転することで観客もいったい犯人は誰か?などとドキドキしながらのめり込み、いつしか自分も物語の中に入ってしまうという高度なトリックも存在する。

正解を見つけないとここから出られない恐怖。ザアーザアー・・と止まない雨の音の演出。舞台ではブレイクダンスのようなゾンビダンスも盛り込み、連続猟奇殺人の犯人に仕立て上げられたプールの死体の謎と中原の呪い。喉が渇くというおぞましい罰から5人の同級生を殺してその血を啜るという吸血鬼のように変化した1人の生徒の終盤の展開と教師との対峙は想像だにしなかった結果で、その風景も新しく斬新だった。

この舞台に関わった彼らにとてつもない才能を感じて、演劇界の新しい夜明けを観ているかのようだった。素晴らしい。



夜のプラタナス

夜のプラタナス

弘前劇場

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/03/19 (金) ~ 2010/03/24 (水)公演終了

満足度★★★★★

姉妹のめあて
凪がざわめく海辺の崖の上に立つ一軒の家。崖は自殺の名所だったりする。舞台は、その家の離れにある書斎。そこで繰り広げられる3人の濃密な物語。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

かつては俳優で現在はエッセイストである53歳の男が住んでいる。男の世話をする姉妹が二人。姉は36歳、妹は26歳。男はガンだ。しかも男はもう長く生きられないことを悟っているようだ。男は終の棲家を探し、この家を借りた。そうして家を借りる時の条件がこの二人の姉妹も付いて、とのことだった。男は奇妙に思ったが、それでも自分の身の回り一切の世話をしてくれるのは丁度いいと思ったのだ。男には家族が居なかったから・・。

場面は病院に行かない男とその世話をする姉の描写から始まる。セットは大きなテーブルと積み上げられた本。右サイドには大きな本棚に横に並べられた本の数々と、その中央に立てかけられた一艘の舟。
この舟が実に奇妙に映る。そうして本の並び方にも。

男の殆どの世話を担当する美しい姉。そうして時々ふもとの街からこの家に通ってくる闊達で可愛い妹。どうやら妹は男とデキてるらしい。一方で男は姉とも肉体関係こそないが感情の部分で繋がってるようす。姉妹の会話が実に楽しい。哲学的でコミカルだ。姉は全ての文学に精通してるようで上質な会話も得意とする。姉妹にも家族はいない。父親は54歳で女と駆け落ちをした。母親は既に亡くなって姉妹二人きりになったのだ。

崖の家から見える洞窟に住んでいるチャトラとチュートラの大きな猫の戦いの描写が可笑しい。まるで姉妹が牽制し合うような風景だ。顎を上げ胸を張り笑みを浮かべて男を眺める妹は、家来に指先へのキスを許可する貴族の女のようだ。一方で清楚な裏に見え隠れする妖艶な輝きを帯びた目をする姉。二人ともネコ科の肉食動物を思わせる危険な光も同居している。

庭にひまわりの種を撒く姉妹。しかし、男はひまわりの花を観る事は出来ない。時折、カッコーの鳴き声が聞こえる。カッコーは自分の卵を他の鳥の巣に落として育てさせる。そんなカッコーに「企んできたかー、君たち!」とささやく姉妹。そして男の事を「少しずつ私たちのものになっていく訳だから・・・。」と二人は愛情を持っているかのように男の世話をする。同時に家の世話をしているようにも見える。

ついに男は日に日に衰えて死んでしまう。それでも男は幸せだったに違いない。男が死ぬ間際まで姉妹は男に尽くしたからだ。「もし、私が理由で君たちに5月の笑顔がないのだったら悲しい。」なんて最後のセリフを吐く。最後の最後まで姉妹を疑うことなく死んだ男。

男の財産を目当てに企んでいた姉妹は、ようやく男が死んで男の財産が自分たちのものになる。姉妹は長い仕事が終わったかのように二人でご飯を食べる。こうやって姉妹は男を食い物にして生きてきた。まるでカッコーのように・・・。

実に秀逸な舞台だった。書斎から見える海の描写や3人の織りなす感情。いきざまなどを観客に投げつけるような物語。セリフの一つ一つは確実に高レベルで言葉に存在感がある。だから長谷川の本は好きだ。重厚な質の高い小説を読んでいるようで、しかもちょっと毒もある。3人のキャストらの演技もお見事で、だからこそ本に厚みが出る。

元気で行こう絶望するな、では失敬。

元気で行こう絶望するな、では失敬。

パラドックス定数

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2010/06/25 (金) ~ 2010/07/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

応援歌を奏でるプロ集団!
オープニングにヤラレル。ナラクからせりあがってくる20人の高校生。この登場の仕方がまるで暗闇から少しずつ浮き出でる勇者のようだ。目に入った完璧なるその画はきっとこの先記憶に残ると思う。そして椅子を巧みに使っての角度90度ずつ移動する彼らの情景の見せ方。素晴らしい演出だと思う。野木萌葱という女性、天才じゃないかと感心してしまう。当日のパンフレットには「太宰治を読んで『こいつぁ、相当、優しい、男だぞ』と思った。」とある。で、「ああ、そうか、男はみんな、どこかしら太宰治なのだな、」とも感じるのだ。そう感じる野木も相当優しい女だな。とワタクシは思うのだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX



森に囲まれた木造校舎の中の男子高校生20人。そこにはイジメもありそれぞれのポジションもあり、誰かと繋がっていたいという切なる想いもあり、自分を見てほしいという自意識もある。思春期という、大人と子供の狭間でモガク18歳の旬を描いた物語。

ソイツを苛めることで優しく出来るという他者との繋がりを求める酒巻、気を遣われながら苛められてると察している十枝。仲間から下に見られてると更に下を見つけねえとやってけねー。というポジションを気にする輩。時には死にたいと思ったり、家族が今里の家に借金をする光景を同級生の今里に見られて毒舌を吐く高井。だけれど20人は夏の川に泳ぐ河童のように無邪気に無心に悪戯に戯れる。悪戯に興じる彼らはただただ、我侭で強情で傲慢な子供に過ぎなかった。

しかし、一つの事件、高井が同級生の財布を盗んだことをきっかけに、ゆうやが森に入ってしまう。つまり自殺だ。ゆうやは高井をかばっての言動と、誰からも見られていないという鬱の心から森に入ったが、最後に今里と話した後に森に入ったことから、今里の心にゆうやを助けられなかったことへの後悔と闇が蔓延ることになる。19人は個々の手に懐中電灯を光らせ、闇が続く森に入りゆうやを捜索するも、ゆうやは見付からなかった。

このことが19人のそれぞれの心に巣食い、時々尖ったナイフでちょんちょんと突かれるように思い起こされ癒されることはなかった。やがて・・・、36歳になったそれぞれは弁護士やら、医者やら、刑事やら、数学者やら、役者やら・・・とそれぞれのポジションで活躍するも、大人の世界はそんなに甘くないことをも表現し、そのことがこちらの心にもズシン!!と重くのしかかり、「そうそう、現実ってのは綱渡りのようなもんだ・・。」なんて共感しつつ、彼らは未だにゆうやの闇を拭い去ることは出来なかった。

だからこそ、彼らは同級生を思いやり相当に優しく接する。そうしなければ、いつ、自分も彼らも上流の方にある心というダムが決壊して濁流と化すかが解らない、自信がない状況なのだ。彼らの血はそういった闇の想いと共に、三本締めで自分自身にも皆にも「ガンバロー」と励ます。このシーンと死んだはずのゆうやが登場する場面や、18年前の彼らと現在の彼らを交差させながらの演出は錆びた鉄の匂いが感じられるような懐かしい演出だった。

最後にゆうやが今里に向かって話す場面「俺はもう祈ることしか出来ない。堂々と幸福を求めて欲しい。この先この国には俺たちの黄金時代など、ないかもしれない。だけどきっと勝てる、確信してる。俺たちが駄目になる理由なんて何もない。それまで悠然と力を磨いておけばいい。だからさよなら。命あらばまた他日。元気でいこう。元気で行こう。絶望するな。では失敬。」

こうして今里は苦しみの淵から解放される。
ここでの20人は全員が太宰だった。死んだものも生き残ったものにも、そしてこれを観たものへの応援歌だった舞台。
明日に希望を持ち、もうちょっと頑張ってみるか、と思える舞台だった。素晴らしい!

三本締めの最初に、何で「よーお!」って言うか知ってる?
あれ「祝おう」っていう言葉から来てるんだってさ。
そうして植村の音頭でクラス全員による三本締めで幕が閉じる。

元気で行こう。絶望するな。では失敬。
ムサ×コジ【ご来場ありがとうございました!】

ムサ×コジ【ご来場ありがとうございました!】

X-QUEST

THEATRE1010 ミニシアター(東京都)

2011/07/21 (木) ~ 2011/07/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

イチバン!
今までのX-QUESTの舞台で確実にトップだと思う。照明、音響、舞台構成とも素晴らしい。そして、トクナガの本、演出、ともに秀逸だった。市川~、ダイエットして戻ってこ~~い!!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

序盤、武蔵と小次郎が真剣に戦おうとする中、セカンド武蔵とセカンド小次郎が登場する。彼らはそれぞれの影だ。つまり、俺はお前でお前は俺ってやつだ。笑
この展開で大爆笑してしまう。格闘アニメで、影が登場したのは確か、「北斗の拳」だったような気がする。

更に、サード、フォースとそれぞれの影キャラクターも登場し、主役のムサコジより、彼らの闇の声(つぶやき)がめっさ、煩い。笑
もう、このシーンで割れんばかりの爆笑があり会場を沸かせる。殆ど少年ジャンプの世界感だ。やがて戦いが始ると銀のニョイ棒を振る効果音と一緒に8人のキャラクター達の超人的なアクションが観られるのだから、ワクワクドッキドッキなのだ。

こう書いてしまうと物語性なんてないんじゃないかと誤解されそうだが、巌流島で一騎打ちの筋立てはきっちり描写してあるのだから、舞台構成のレベルは高い。更に舞台上で繰り広げられるバトルコメディはフォークダンス・オクラホマミキサーを軸にヒップホップにアレンジし、踊るように斬り合いと立ち廻りをやって見せるのだから壮絶にしてコミカルだ!笑

今回、特に素晴らしいと感じたのは舞台上に配置させるキャラクター達の立ち居地だ。踊りながら、格闘しながらきっちりと計算された位置に収まるその場面を観ると鳥肌が立つほどゾクゾクしてしまう。こういった仕掛けはトクナガの天才的なところだが、思うに、トクナガは舞台を横からではなく、天から透けて見えるんじゃないかと疑ってしまうほどの才の持ち主だ。

だから想像するに、舞台を上から観るとリングの上で踊ってるコマは流線的な円を描いてメリーゴーランドのように回ってるに違いないのだ。今回、武蔵役の塩崎こうせいがあまりにも素晴らしい。まるで「ドラゴンボール」の猿を観てるようだった。笑

そうして舞台で表現される小細工やコネタやセリフがこれまた絶妙なのだ。自由奔放なアドリブも楽しかった。格闘シーンの殆どが銀のニョイ棒を使っていたが、これに照明が当たると闇夜に輝くいくつもの光の乱舞が美しい芸術でもあった。格闘アクションでも、コメディでも魅せた。大満足な舞台だった。次回も観たい。


サーフィンUSB

サーフィンUSB

ヨーロッパ企画

本多劇場(東京都)

2010/08/04 (水) ~ 2010/08/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

絶妙なタッチで笑いのツボを突いてくるナンセンスさ
本多劇場という広さを上手く利用した巧みなセットでオープニングの意外性と夏らしい風景が素敵だ。全員のキャストらのセリフもマイクを使用していた為か聞き漏らすことなく始終、楽しめ、更にサーファーらの単純馬鹿さ加減に顔が緩みっぱなしでとにかく面白い。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

自殺するために海を仰ぐ廃墟ビルにやってきた女子一人。そこに海から次々に這い上がってくるボードを抱えたサーファーらの姿がやけに眩しい。笑)
しかし、ここに登場するサーファーらは筋肉隆々ではない。色白やデブや筋肉のカケラもないような輩たちだ。デブのサーファーなどはボードがやけにちっさく見える。笑

彼らは廃墟ビルを勝手に占拠して住まいとしちゃってるのだけれど、そんな場所に紅一点の自殺志願者が来たことから、サーファーらは、死なせないように仕向ける。しかし女子はハナカラ自殺しようなどとは思っちゃいない。更にサーフィンを教えて欲しいと言い出す。教えてくれなきゃ自殺すると言って彼らを脅す。

その身勝手な言動や自己中加減はイマドキ女子だが、そのうち女子も彼らの仲間となり四六時中、サーフィンに明け暮れるのだった。そこに人魚が醤油をもらいにやってくる。人魚といえば人魚姫とすぐさまイメージでき、その出で立ちはアフロディーテのような美しく儚い女神を想像しがちだが、ここで登場する人魚はうす汚れてて貧乏くさい。笑

ああ、貧乏という言葉は何と切ない字面をしているのか。貧しく乏しい。しかも上半身はこれまた汚れたTシャツを着ているのだから、まったくもってナンセンスだ。そして普通に人間の言葉をしゃべる。どうやら人魚はサーファーらのペットのような存在だ。だから名前を付けるとしたら、ポチだ。

そんな薄い雲が棚引く夏の天高くを大きなカモメが羽を広げ風に乗って舞っている情景を想像すると美しい限りだが、その下の岩では廃液で泥まみれになったポチがサーファーらに醤油や食べ物の物乞いに来るのである。

そんな折、秋葉原屋の従業員が廃墟ビルにやってくる。サーファーらに「サーフィンUSB」のうんちくを説明し商品化する為だ。しかしアナログ派のサーファーどもはUSBのうんちくが理解出来ない。データ変換やらバーチャルリアルティーやら端末やらネットワークの言葉自体が解らない。そこで彼らに疑似体験させて商談成立まで持っていく営業マンらの吐くセリフが面白い。

やがて、個々の「サーフィンUSB」のダウンロードの回数を競うようになったサーファーどもは本来のサーファーとしての心得を忘れて、数字に翻弄されてしまう。今まで自由気儘に好きなようにサーフィンしていた輩が、血みどろになっても命をかけてもカウントされる数字に拘り自らをがんじがらめに縛ってしまう。まるで企業戦士だ。笑

焼肉屋の優待券に食いつく単純さも、数字に翻弄される単純さも五月の空に泳ぐ鯉のように風によって向きを変えるさまは滑稽でツボだった。笑)  かつては社員だった女子だけが冷静な目を持っていたという風景も絶妙で可笑しい。

金もない。頭もあまりよくない。約束された将来もない。ないない尽くしなのに能天気にやっている彼らに非常な敬意を感じた瞬間だった。



姫子と7人のマモル

姫子と7人のマモル

ネルケプランニング

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2010/12/18 (土) ~ 2010/12/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

めっちゃオモロイ!
第一、姫子のキャラクターがいい。姫子が7人のイケメンから守られる、なんつーお話だから、どう考えてもめちゃんこ可愛い美形の姫さまみたいな女子を守るナイト。と思うでしょう?ふつう。だけれどここに登場する姫子はけっしてきわめて平凡な(?)女の子ではなかったのだった。そう・・、どこからどこまでもクビレのないおおデブな姫子さまだったのです。

ネタバレBOX

姫子は絵本作家希望の守とささいなことから喧嘩になって別れてしまう。新たな生活を目指そうと一年発起し姫子は引っ越すことに決めたのだった。だから今まであった物を整理整頓し引っ越してみたものの、6、5万円だと思い込んでいた家賃は実は65万だったと解り唖然とする。そこで彼女はルームシェアするアイデアを思いつくのだった。

早速、募集をすると守と名乗るイケメン6人が応募してきた。そこで彼らと一緒に暮らすことになったのだが、何故か彼らは彼女に勝手に忠誠を誓って守るのであった。

そうこうするうちに彼らはかつて姫子に捨てられたストラップやビニ傘、口紅、ビトンの小銭入れ、Gショックらが人間の形に代えて登場したのだと解る。これらのキャラクター達が実にコミカルで面白い。昨今のアイドルは何でも器用にこなしてしまい凄いなぁ。とつくづく感心するがアドリブでも何でもござれで大いに笑わせてくれる。これぞエンタメって感じだ。

更にオカマの京子がこれまた鮮やかにギャグかましながら笑をとる。歌あり、ショーありで全体的に関西のノリだ。西川きよしじゃあないけれどコツコツと貯めた貯金が1000万あった姫子は甘い言葉で言い寄ってきた質屋のおっさんに騙されたりしながらも、守たちのお蔭で人間の守と仲直りすることが出来て元の鞘に収まる。

そうして守は念願の絵本作家大賞を取って賞金の2000万をゲットするも借金だらけの京子や超樽の社長、姫子を騙した鈍塚らにばら撒いてしまう。こういったノリも関西系だ。笑

舞台は確かに思いっきりやりたい放題!の体で、プチ暴走しながらも生あたたか~い、はぁとフルコメディだった。これだけ楽しませてくれたら、もう一回観たいと思う。

それにしても・・姫子を静かにさせる時にペットにお菓子を与えるように「ほい、お菓子」と守らが姫子の口に突っ込む辺り、そして姫子が放つムードもなんとなく可笑しくて笑が止まらなかった。お勧め!
グロリア

グロリア

ハイリンド×サスペンデッズ

「劇」小劇場(東京都)

2010/10/14 (木) ~ 2010/10/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

大絶賛!
すんばらしい舞台だった。出演キャストは7人なのに、観終わったときに感じるのは「ええっ?!、こんなに少なかったの?」とびっくりする。つまり、場面場面の状況でのキャストらの演技があまりにも絶妙なので、その風景がしっかりと脳裏に焼きついているからだ。本当に素晴らしい!
特に枝元萌の女学生、隆志の妹、ナンシー、シゲ子、看護師役ではコメディな部分も展開し、類を見ない演技力だった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

病院に詰めている片山の祖母が生死を彷徨ってる状況下、片山の現在の仕事の情勢と元妻の沙織との今後の話し合いを描写する。片山は自分が立ち上げた「人材派遣会社」の仕事も破産寸前なのでイライラしている。一方で実家が裕福なためボランティアに勤しむ元妻。そんな折、祖母トキ子の「追跡!軍国乙女トキ子の青春」という記録をふとしたきっかけから読んだ片山は当時の1944年の出来事へとリンクする。

そこはトキ子の当時の家族との風景、トキ子ら女子が「風船爆弾」を作っていた光景へと観客を誘う。特にトキ子の弟・勝良や母・シゲ子と間借りしていた杉浦との関係の綿密な演出が素敵だった。物資はないが人間の情が確立していた時代だ。友だちが居ない弱虫・勝良が可愛がっていたチャーボーとの友情な場面の表現、チャーボーを潰した後に泣きながらチキン入りのカレーを御代わりをしながら食する勝良のシーンは泣き笑いの場面だ。

やがて、トキ子の父と兄が戦死した通知、その後の日本軍が飛ばした風船爆弾がオレゴン州の山中で1人の女性と5人の少年少女を殺した経緯をも描写し、現在と1944年の時間軸を交錯させながら魅せる暗転の仕方も絶妙だった。
従来の戦争ものの物語の多くは暗く陰湿さが露呈してしまうが、これを避けて、なるべくカラッと明るくした描写も素敵だった。

そうしてトキ子の書いた物語を読んだ前と後の片山の表情も見ものだと思う。1944年のトキ子を演じた多根周作の衣装は片山のスーツのままだったが、トキ子に見えてしまうカマ風味な演技力はやはり秀逸なのだろうとつくづく思う。

素晴らしい公演を観ました。
しっとりと流れる空気感と時折見せるコミカルな展開が好みだった舞台。
一月三日、木村家の人々

一月三日、木村家の人々

青年団リンク 二騎の会

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/05/23 (土) ~ 2009/06/02 (火)公演終了

満足度★★★★★

すごいなぁ。。考えさせられた。
セットの作りこみが上手いなぁ。。嬉しかったのはあれほど座り辛かったアゴラの幼稚園椅子が高くなって大人向けになったこと。多田氏に聞くと、「自分がセットと一緒に配置した。」との事。
やれば出来るじゃん!したらこのまま、この高さで持続して欲しいですわ。
ゆ~ったりのーんびり疲れも無く楽ちんでした。(^0^)

セットはじゅうたんとテーブルと七輪が二つ。奥に畳の部屋。ごくごく普通の家庭のスペースで観客とセットとの境がなく全体を舞台と化した。コの字に客席を配置した為、観客の表情がとにかく可笑しい!(^0^)口をあんぐり開けて観てた人が居て・・・そっちも面白かった!(^0^)

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX



離婚して認知症になってしまった父の面倒を看てきた長女(明子)が一人で抱え込み過ぎたあまり、行き詰って自殺を考える。長男は仕事にかまけ寄り付かず、長男の嫁も充てにならない。次女は能天気でもっと充てにならない。兄弟たちは明子が父親を看ている事から安心して、ただ何となく任せきりにしてしまったが、明子が父を道連れに自殺未遂を計ってから、父の今後について家族会議をする。
この時点で長男は父と離婚した母に期待するが、その期待は見事に裏切られる。結果、長男がとった究極の決断は、妻の実家に自分達が同居すれば、子供の面倒は妻の両親が看てくれるから、自分はもっと父を看にに来られる、というもの。妻はその言葉を聞いて、うしろでちょっとほくそ笑む。
なんだかなー?妻の実家に入るなら父親も連れて行けよ!と言いたい。
要するに、父親を看るのは今までどおり明子で、兄弟たちはもっと頻繁に看に来る。という結論。

介護問題は親が存在する限り誰にでも同じような場面に遭遇する訳で、本当に身近でリアルな問題だ。だから、胸の底に他人事とは思えない感情が湧き出て痛々しかった。同時に灰色の洪水のように哀しみと苦しみが一気に流れ込んで、ぼんやりと両親の事を思った。しかし物語りは陰鬱なだけではなく、次女の春香の楽天っぷりと31歳の母の恋人のホストが登場した辺りからコメディ感が溢れ会場が明るくなる。
長男、明子、次女の気持ちや性格までも実に見事に表現し、素晴らしい舞台でした。

実際の多田氏の父の介護の問題もありながらの作品作りだったらしく、実父が実際に母親と離婚して、数年後、鬱になり自殺し急逝した経過は今回の木村家と重なる部分があった。との言葉。

家族って何だろう?世の中のいろんな物事を感情以外の側面から理解できるようになったとしても、誰かを殺したり自殺に追い込んだりしたら、その傍に居る別の誰かのことも必ず殺す事になるよね。人間は一人じゃないのだから・・。


續・河をわたる

續・河をわたる

菅間馬鈴薯堂

王子小劇場(東京都)

2008/09/19 (金) ~ 2008/09/23 (火)公演終了

満足度★★★★★

憎らしいほどに温かい物語
セットといい、蚊取り線香やうちわなどの小物の使いからが絶妙です。

私たちが忘れかけた何かがここには存在する。

そんな優しい物語。



以下はネタばれBOXに。。

ネタバレBOX


東京隅田川の佃島の勝どき橋あたりに、ホームレス達が住んでいるバラック小屋があった。
名を「蛍茶屋」という。

ここでは社会に適合出来ない人達がおばちゃんを中心に自分たちの秩序の下、ちっさな社会を築いているのだった。

そんな折、区役所職員の月島が、バラックの立ち退きの話を持ってくる。
町の美観と風紀が損なわれるとして地域住民が反対しているからだ。

月島は、ホームレス達と関わるうちに、彼らの人間の温かさに触れ、すっかり仲良くなっていた。
更に、月島の父親が「関東自動車道の勝っちゃん」と呼ばれていた流浪のホームレスだったという過去も解る。

月島のそんな状況がここのホームレス達を親切にしている理由の一つだった。

月島が語る父親の思い出は、涙なしでは見られません。
タオルで顔(涙)を拭く仕草など、涙をこらえてる芝居が涙を誘います。


ここで一番の長老のおばちゃんが絶妙な味わいを出しながら、ホームレス達の相談相手になったり、癒しになったりしています。

現実の社会で傷ついた彼らは、「俺たち二本足で生まれた者は生まれる前から傷ついてる。」と吐くシーン。

美しいセリフです。


ここまで、音の導入はありません。
しかし、この状況で音は必要ないです。
むしろ、ない方が心地いい。。

静かで暖かい温度のある物語です。


ホームレス達は自分の心の闇を隅田川に向かって叫びます。
心の暗闇を吐きだすように。

ときえは「何も言うことがない。」といい、何もなければ「かあちゃん」と叫べ。と教えられ、

「かあちゃーーーん!」と叫ぶシーン。
前後のやりとりの合間のこのセリフ、泣けます!

仕事を首になったリーマン。
夫に暴力を振るわれて逃げてきた女。
一人で頑張ってみるといって家を出て来た女。

それぞれが辛くなったり悲しくなったりすると隅田川を向こう岸まで泳いで渡ろう!と水泳大会を開きます。



なんだろ・・なんでこんなに温いのに涙がでるんだろ?


後半の導入音楽も素敵です。


そう、、ワタクシはこの芝居で忘れかけたものを思い出したのです。


今日も、ふつう。

今日も、ふつう。

アロッタファジャイナ

新宿シアターモリエール(東京都)

2008/12/10 (水) ~ 2008/12/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

ミステリー映画を観てるような
とにかく、素晴らしい!の一言!大絶賛!

何が素晴らしいかって、ドキドキワクワクの展開とそれをカバーする役者陣の演技力。
物語は最初、断片的でパズルのピースにすぎなかったが、その一つ一つのバラバラだったピースが見事に繋がる。そのネタはそこここに散りばめられて、最後は一つの風景画になる。

その風景画と青い海を見渡せる崖の上の白い一軒家だったりする。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

この物語はネジ工場の社長である澄川が婚約した事から始まる。

舞台の主役は澄川紅緒、つまりネジ工場の社長ダイの妹だ。

タイトルは「今日もふつう」だが、この物語の登場人物は全て普通じゃない。
またこの人達は普通じゃない日常を望んでいる。だから、この人達にとってのふつうはふつうじゃないことだったりする。

兄が結婚をすると知った紅緒は一通の手紙を仕掛ける。その手紙によって友人たちはこの事件の真相を突き止める。

場面は変わって海を見渡せる崖の上の一軒家。
8歳の紅緒は思っているよりずっと大人で、ずっと幼く、ずっと優しく、ずっと残酷で、ぞっとするほど暗い屈折を覗かせる。
8歳の紅緒は、ダイとSEXをしていたのを両親に見つかり、「両親を殺して。」と巧みにダイを操る。

その紅緒の意思通りに両親を惨殺したダイは小さな紅緒を連れて帰り自分の妹として、ネジ工場の社長に納まり暮らしていた。

この物語は紅緒が高校になった今でもダイを愛していたという事実と、過去を忘れてふつうに結婚をしてふつうの幸せを手に入れたいと願った男の物語だ。

ダイを殺すも生かすも紅緒の手中にあるという少女の屈折しているけれど一途な愛情の行方。いざという時にダサくてダメなダイは絶対に自分を裏切らない。それどころか一緒に死んでくれる、誰にも私を渡したくなくて一緒に死んでくれる、という自信を覗かせる紅尾。
過去を背負ったふつうに生きられない二人の物語。


練りに練った脚本はとにかく素晴らしい!の一言です。
小説でも売れそうな予感!
最後の最後まで8歳の少女が紅緒だったというネタをばらさず、少女の両親を惨殺した犯人もばらさず、ある意味、刑事コロンボの真逆の設定。
だからこそ、最後の最後まで、いったい犯人は誰なんだ?というミステリアスな展開にドキドキするし、ふつうの人達がふつうじゃなくなる瞬間の空気にも納得する。

これはお勧めでしょう。本も演技も完璧です。素晴らしい劇団です。


無理やりポップコーン!

無理やりポップコーン!

MILITARY POWER 

あうるすぽっと(東京都)

2009/04/23 (木) ~ 2009/04/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

凄いわっ!魅せられた!
これほどまでにレベルの高さを感じたのは久しぶり。流石に1年間のブランクの修行後、満を持したかと。総勢26人のキャストで繰り広げる、学園青春ドラマ。
平日の夜に池袋あうるすぽっとを満席にさせた素晴らしい舞台でした。
生ロックバンド、ダンス、歌あり~のホント、満足。至福の時でした。

ネタバレBOX

静岡私立三島南高校 野球部2軍を主軸に繰り広げられる青春ドラマ。
ポップな音楽に載せたオープニングが躍動的で素晴らしい。ダンスに合わせて生演奏もあり、ひじょうに洗練された舞台。

高井恵利先生はどこか屈折した子や落ちこぼれてしまった問題のある子達を集めて野球部2軍と吹奏楽部を作り顧問をしている。彼らに勉強は出来なくても他の部分で一生懸命に何かに打ち込む精神を鍛えていた。吹奏楽部の学生らは高井先生公認の下、モンキーパンチというロックバンドを結成し、たまにライブハウスで活動をしていたが、学園の経営監査・城の内はこの落ちこぼれ達を学校から排除すべく、陰湿に画策する。

やがて、学校に取材に来た新聞記者と駐在をうまく丸め込み、野球部2軍と吹奏楽部の学生を退学にまで追いやろうと企む。案の定、単純な彼らは新聞記者や駐在を殴った罪で退学せざるを得なくなり、大人たちの思惑通りに追い詰められていくが、顧問の高井先生が彼らの為に一生懸命に諦めずに親身になって駆けずり回る。その経緯の中で彼らはやがて窮地に追い詰められながらも、友情や思いやり、強い精神力が鍛えられていく。

学生特有の単純さ思慮の浅さなどを盛り込みながら芝居は一人の少年の妹が記憶障害であることへの苦悩、家庭に恵まれない子の孤独と寂しさ、どかか屈折して、ひねくれて、やさぐれて、そしてちらちらと人恋しさも覗かせながら愛に飢えた状況などを上手く絡ませ舞台は観客をまるごと飲み込む。私たちもその時代、ぎこちない青い青春の時代へと迷い込む。まだ中学生の殻をしっぽにくっつけたようなあの頃へ。

ミュージカル!と称してもいいようなパワーダンスのシャワー。そのシャワーをあちこちに散りばめ、野球の試合の光景もパワーダンスに置き換えて見事に魅せてくれました。
聞かせる、魅せる、感動させる、懐かしむ、涙する、楽しませる、笑わせる、の7色の虹のようなエネルギッシュな舞台でした。

行って良かった!
ああ、やっぱ学園ものは素敵です。




美しい手

美しい手

スポンジ

サンモールスタジオ(東京都)

2010/09/23 (木) ~ 2010/09/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

演出その他の構成も素晴らしい!
初見の劇団ということもあり、また前情報(過去の評価)もないことから、期待してなかっただけに物凄い衝撃を受けました。とにかく素晴らしい。大絶賛なのです!現実と妄想の時間軸が交差する場面ではぐにゃりと歪んだずれが絶妙で、はたまた妄想から現実の世界に戻る展開はビデオテープが逆走しているような感覚の描写が巧みでした。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

物語はとあるジャズ喫茶での風景。セットがまさに現実味を帯びていて素晴らしい!

生き馬の目を抜くようなファッションデザインの業界「アンダーグラウンド」ではデザイナーのカリスマ的存在の高崎を筆頭に業績を伸ばしてきたが、その裏ではデザイナーとして力のない井上が試行錯誤を繰り返しながら苦しんでいた。

そんな折、ジャズ喫茶に訪れた同じファッション界の江尻にデザイン画を見てほしいと自分を売り込んだ井上は高崎のデザインをパクッた画を出してしまう。

後日、高崎に呼び出された井上は高崎に詰られ罵倒された腹いせに高崎が大麻を吸っている事を暴露してしまう。「大麻を吸いながらデザインをしてるお前の方がよっぽどクソだ!」と言いのける。それを聞いていた喫茶店の客が記者だと知った井上は他言しないように頼むも、マスコミの餌食にされ高崎は留置所送りとなってしまう。

罪悪感に苛まれながら苦しむ井上は、ついつい悪い方に悪い方にと妄想し捻じれ歪んでしまう。更に高崎が警察沙汰になってからというもの「アンダーグラウンド」の業績は落ち込む一方で遂に井上は解雇されてしまう羽目になるのだが、この時点でも井上は自分が高崎を陥れたという罪悪感からか、抵抗はしない。

ところが喫茶店に集まった「アンダーグラウンド」の面々から高崎を警察にタレこんだのは一ノ瀬だったことが解る。一ノ瀬に掴み掛る井上。もう一方では江尻と揉み合う高崎と井上。このジャズ喫茶では血の気の多い連中が毎回、何らかの騒ぎを起こしているのだが、いちいちその設定が面白い。沸点に達した江尻は包丁を持って殴り掛かろうとするも包丁はサックリと高崎のギプスに突き刺さる。笑

高崎を売ったのは自分ではないか。と罪悪感に苛まれた日々を振り返ると井上は自分が知らない現実はこの世に沢山あることに気付く。やがて井上はファッション業界から身を引き、まったく違う職種に就くのだが、井上がかつてデザインした蝉のTシャツを着た若者が井上をカリスマ的に扱う場面ではホッとさせる温度がある。

そして、物語の最後の終わり方があまりにも素敵でため息が出るほどだった。

今回の芝居で感じたことはキャストらの演技力が秀逸だったこと、須賀谷の照明が生かされていたこと、それに加味して演出が際立って素晴らしかったこと、更にこの物語を引き締めたのは店主・大熊役を演じた牧野はやとだと思う。彼の演技は出すぎず引きすぎずで、静かなパンチ力があった。
『CHORIKO』 チョリ子

『CHORIKO』 チョリ子

anarchy film

新宿アシベ会館B1(東京都)

2010/08/12 (木) ~ 2010/08/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

アングラカラーの強い作風
唐十郎の作品かと勘違いしたくらい作風が似てる。まさにアングラ。キャバレー跡らしい客席と舞台を上手く利用しており、作風にこの箱が妙にマッチして情景を醸し出していた。構造上、舞台が長方形に長いのをまた、見事にセット化し中央に座ると物凄く楽しめる。主役は障害者という設定だが、脚本家のメッセージには障害者を失敗とみている健常者のほうに実は問題がある。という意図があり、その問題意識に感動して泣けた。

素晴らしい舞台だった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

オヤジ狩りのシーンから始まる舞台は秩序のない暴力化した地域でのお話。ここに息づく彼らは自らの世界観を作り上げている。

不思議な能力を持った韓 倁代李(ハン チヨリ)と韓 樹奈子(ハン ジュナコ)。しかし彼女らの母は家族を置いて出て行ってしまう。しばらく3人で暮らしながら「ハン チヨリの名前に子がついてないと女の子みたくないから子をつけてあげて。」とのジュナコの訴えに「チヨリ子」とチヨリの背中に刻んだ父。そして父も同じく二人を置いて出て行ってしまう。「ここで父を待っていろ。」との言葉を残して。

だから二人は運転手だった父、韓 颯馬が残していったトラックの荷台で生活する。二人が住んでる場所はなんだか韓国タウンのスラム街のような湿った匂いのある風景だ。そうして住んでる人たちは異人も異人、特殊な人たちだ。そうして障害者やイッチャッテルような面々も居る。そんな欝な場所を隠すかのように地図に載ってない場所でもある。

ここを舞台に男の借金の為にフーゾクで働く貴子、その貴子を毎晩のように抱くフーゾクのオーナー青木、そしてこの青木がチヨリ子と ジュナコ父、韓 颯馬であった。この物語はチヨリ子の生きてきた記憶を基に、作家になりたい青年、星乃 琥太郎が書き写したものを描いてるようだ。

この地域では一般の法なんて成立しない。独自の法則で独特の治安が守られてるなか、ここで暮らす人々は「理想の世界」を夢見る。その「理想の世界」とは誰もが差別をされない幸せに暮らせる理想郷だ。しかし、ひとたび人が暮らせば多少のもめごとはつきもので、ここでもいざこざが起きて内乱によって発砲騒ぎになってしまう。

これを聞きつけた当局は異常地域の全員を囲い込み射殺という戦乱のさまとなるが、チヨリ子は千尋と一緒に他者から守られて生き延びる。

この物語で透けて見えたのは排他的な扱いを受ける異常地域、つまり異常者と健常者の関係だ。だから、説明の最後の苦言、「 …はぁ…我々の事を健常者だとか異常者だとか 判断するー中略ー… だからっ! キサマらが失敗なんだよっ!」となるのだろう。

だから、ただのアングラやアナーキーだけではない、真面目で真摯なメッセージ性を感じ、う~ん。。と唸ってしまったのだ。
この最後のメッセージで、なんだか幽霊屋敷を観ているような物語だったのがひっくり返って、壮大な物語になるのだから、舞台って面白いじゃないか!



長くて短い秘密の話

長くて短い秘密の話

ハードレインオープンカフェ

TACCS1179(東京都)

2009/05/29 (金) ~ 2009/05/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

とてつもなく素晴らしく、そして深い演劇でした
いあいあ、完璧ですね。まず、役者から吐き出されるセリフのセンスがいい。日本的ではない欧米の独特のジョークやテンポのいい絡み。そして仰け反るほど素晴らしかったのは、キャストの逸脱した演技力にあります。
初見の劇団だったけれど、まだまだ発掘するとあるんですね~、こういう劇団が!
すんごく大満足!ひっさしぶりに内容の濃い見事な演技に全員を抱きしめたかったほど!(^0^)

4篇のオムニバス。舞台セットもいい。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

『ともだちのち』
15年前の作品の再演との事。バスの待合ベンチでの会話劇。一見、友達のような3人だが、不良の安部が真面目そうな鈴木のわき腹をナイフで刺した。そんなことになったのは、安部がナイフを出して見ていたら、安部の子分のような伊達が鈴木にぶつかって反射的にナイフが鈴木に刺さってしまった。という言い訳をする。苦しんでいる鈴木に「鈴木君、やヴぁいよー、バンソウコ、貼っておいたほうがいいんじゃないのー。」なんて、阿部は能天気に苛め抜く。苛めながら、自分達は友達なんだから・・。と講釈して巧みに責任回避する。不良二人が発する言葉のバカさ加減が面白い。安部の卑怯さ、伊達のズルさ、鈴木の弱さを表現し、いじめを題材にした不条理劇。

『アリサよりよろしく』
テネシー・ウイリアムズ作「Hello from Bertha」の80年前のアメリカを現代の日本の新宿歌舞伎町に置き換えた物語。
一軒の風俗店で働いていた風俗嬢のアリサは病気の為、ベッドに居た。その情景は精神的な病らしい。一文ナシのアリサの今後に困った店主は昔の馴染み客の安岡譲二に助けを求めるようにアリサに進言するも、アリサはそれを拒否する。今でも安岡の事が好きなアリサは「アリサから譲二へ。よろしく。」とだけ伝えて、と手紙を書いてくれるように頼む。考え悩んだ挙句、大好きな安岡には迷惑をかけられないと一途に想いを寄せるアリサの純情を描いた作品。大塚悦子の迫真の演技は見もの!

・・・・・・お客さんと一緒に遊ぼうコーナー・・・・
ここでイメージで遊ぼうコーナーが設けられ主宰が司会をしてカラーマスター遊びをする。劇の合間にこうやって観客と一緒に遊ぶという劇団は初めてでした。観客によっては「うざいなぁ。」と感じるかもしれない。それは観客と舞台の境界を取り払うかのような感覚で、ズンズンと観客の懐まで入ってくるんだよね。少しでもエンゲキというものに対して観客に理解して貰いたい!みたいな気負いが感じられて、その気迫にヤラレル!(苦笑!)

『アクロス・ザ・ユニバース』
再演。盲目のふりをしたシンガーが他人を騙しながら小銭を稼ぎなんとか生活していたが、ある日精神病院を 追い出された女に出会う。女は桃源郷を夢見て「生まれた街に帰りたい」と話す。シンガーは「この街の奴らはみんな、イカレテル。仕事以外は何にもねえ。」と、吐き捨て自分の置かれている現状を嘆く。自由を渇望する男と女の二人芝居。

『個人面談』
面接官「本当に生きたいですか?」
審査にかけられてる男はこの質問に対して「はい。生きたいです。っつーか、すごく生きたいです。」
面接官「どうして生きたいのですか?」
「なんつーか、どうしても生きなきゃいけない!みたいな?っつーか、生きてみたいんです。」男は曖昧なぼんやりとした主張しかできない。
面接官「貴方は前回、出かけられる前にも同じ事を言い残したのですよ。そうしてその前と同じように自殺してここに来たのです。」
「今度はちゃんと真面目にやるから・・・、出世とかお金とか名誉とか、多くは望まないから・・、ちょっと空をみたり、花をみたり、人と話して、少し笑えたら、それでいいんです。」
面接官「解りました。それでは、良い旅を。」

死んでる男が下界に戻るにあたっての個人面談!


4篇、どれも内容の濃いひじょうに素晴らしい舞台でした。そこに息づく現実と不条理を織り交ぜながら、人間の悲しさ、哀れさ、切なさを訴え、そうして最後は多くを望まない事が幸せに近づく一歩だということをさりげなく響かせるのです。時には重厚に時には軽口で。素敵な舞台を観ました。
訪問者

訪問者

ワンアワーパーキング

小劇場 楽園(東京都)

2010/11/16 (火) ~ 2010/11/23 (火)公演終了

満足度★★★★★

ピュアな想い
舞台セットは何もない。あるのは椅子とテーブルに見せた箱だけ。しかしそんな簡素なセットとはうらはらに実に重厚で感動的なエンゲキを観た。ワタクシはその刹那に落涙し、終演後の観客の拍手は鳴り止まなかった。その光景を見て自慢げに頷く宮澤が印象的だった。公演時間は1:15分。濃密なひと時。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

水野は幼少の頃、発達障害を持っていた。知能は高いが感情のコントロールが上手く計れなく、ついつい暴れてしまうため友人もいなかったが唯一の心のよりどころは並木紀美子という幼馴染だった。

水野は並木が勤めるスナックに頻繁に行き、二人で飲み歩くようになったが並木には一緒に住んでいるヒモがいた。並木は今の幸せではない状況を水野に愚痴り、それを真に受けた水野は一緒に逃げようと口約束を交わす。

水野はそんな約束を頑なに守り、今でない何処かに幸せを求めて彼女と一緒に逃げる為にコンビに強盗を決行してしまう。そしてとりあえずの隠れ家として吉沢家に訪問するも、ナイフで脅し、そこに居合わせた直美を人質としてとるが、ここで直美の恋愛事情も知ることとなる。

女の言葉を信じて強盗をした水野。妻子もちの男の言葉を信じて付き合っていた直子の二つのピュアな心が痛々しい。水野の要請で並木を迎えにいった父・和夫の表情もぐっと身につまされ、物語は一つの部屋に集った5人の時間で架橋を迎える。

チック症のように顔を歪める水野を庇って絶叫する直子の訴えるもの、妻子を思い遣る日下、直子を愛している父、並木を慕う水野のそれぞれの感情が激流のように交錯し物語はクライマックスを迎え、そうして並木の言葉に絶望した水野は自らの頭を打ち抜いて果てる。

その後の全員のスローモーションな動きはまるで人が死ぬ前の一場面のようだ。暗くて空しい空洞は観ている方の心にもポッカリと穴をあけ、目の前の壮絶な死に様を観ていた。男と女の関係は百の夜が明け千の日が暮れても変わらないようだ。

舞台は序盤の演出からワタクシを引きつけ放さなかった。約束を守ってもらえなかった男の最後が悲しくも切ない物語。
Zyklon B (再演)

Zyklon B (再演)

劇団パラノワール(旧Voyantroupe)

サンモールスタジオ(東京都)

2010/06/02 (水) ~ 2010/06/07 (月)公演終了

満足度★★★★★

それぞれの正義
過去に観た「劇団 海賊ハイジャック」の公演の中で一番の熱演だったと思う。ちょっと噛んだキャストやかちゅぜつの悪い箇所はあったものの、まあ、生身の人間だから、仕方がないかな・・、とは思う。舞台のセットがキャストらを大きく見せていた。音楽、照明、演出・・・どれをとっても秀逸だった。それにも増して、いきなり衝撃的なシーンからの幕開けは芸術的だった。
余談だが制作さんの前説はモヒカンに似合わずガチガチに緊張しており、かわいらしかった。笑

以下はねたばれBOXにて。。

ネタバレBOX

アンリ・バレリ大尉はユダヤ人たちを救った功績から「諸国民の中の正義の人」として賞賛を得た。しかし、その影には人肉を喰らう殺人鬼・ウォレスが兄・アンリの全ての罪をかぶった由の上に成り立った事柄だった。それはアンリがユダヤ人亡命の手助けをした時に彼らの財産を自分のものにしたことだった。

これを知らない町民は、 彼を英雄と慕うなか、一方では影の英雄が存在していた。おりしも、突如として町に異国の女が現れる。 彼女の名をヴィヴィアンという。彼女は特異な体質を持ち、女に近づくと 死ぬという。物語の後半で解明されるがヴィヴィアンはチクロンB(毒ガス)の後遺症によって、このような体質になってしまっていた。だから彼女はずっと孤独だった。こんな彼女を2mの長さの鎖で繋ぐウォレス。

奇異な事件と殺人鬼の恋を絡ませながらも、ウォレスが結果的には異国の女・ヴィヴィアンを拉致し山小屋に監禁しながらも町民とヴィヴィアンを守る。

チクロンB(毒ガス)の謎や軍の不正、Drモンローの考えや行動、犠牲になった人からのワクチン採取など物語は怒涛な展開で、息もつかぬまにまに時間を忘れさせ、特異な空間へと誘う。不条理を噛み締めながらも折れるティファニー大尉の表情が忘れられない。そうして、ウォレスの最後の死の場面、絵画のような情景はキリストの死となぜか重なり美しく気高い絵だった。

見事な演出と頑張ったキャストら。拍手を送りたい。素直にそう思う。

ブードゥー

ブードゥー

Oi-SCALE

駅前劇場(東京都)

2010/11/12 (金) ~ 2010/11/17 (水)公演終了

満足度★★★★★

奇怪で不思議な物語
「マインドトリップサスペンス」とあるが、観てるほうもサスペンスだった。序盤、川崎が幽霊なんじゃないか?と勘繰ったほど。笑)・・、相変わらずセットの作りこみが圧巻で素晴らしいです。よくもまあ、あんな風に作ったものだ。ものすっごく拘ってるなぁ。物語は病院での一室での出来事。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

前説で林が色々しゃべるが本当に不思議な人ですわ。この世の者とは思えない不思議さ。笑

病院のベッド数は5つ。5人が入院している。主役の川崎は雑誌の編集をするリーマンだったが救急車にはねられて、ついでに救急車で運ばれてきた合理主義者でもあった。そんな彼が入院した先の部屋ではそれぞれの事情を抱えた4人が入院していた。4人とも闇を抱えた患者らだ。

当初、5人の患者らは仲良くそれぞれのポジションを守りながら入院生活を楽しんでいたかのようだった。しかし、彼らは一人ずつ死んでいく。そうしてその死んだかつての隣人に川崎が乗り移ったかのように隣人の家族や環境もそっくり受け継いでしまう。

何がなんだか解らなく納得出来ない川崎は自分の家族に聞いてみるが家族も、後輩も、そして入院患者らも川崎の今の環境が元からあったように受け入れている。

だから隣の厚木が死ぬと、そのまま厚木の部下が自分の部下となり、そのまた隣の中井が死ぬとそのまま中井の妻も引き継ぐ形だ。要は元の川崎が持っていた環境、境遇を他人にトリップしながら、他人になり切って他人の人生を生きてみる、という思考のようだ。これは川崎の欲する条件を生き返りの度に与える、という試みのようだが、前作の「サイゴ」でも取り上げた命や死についての後編みたいなものだった。

他人の持ってるものや家族。他人になれたら満足できるのか?という問答と共に今の自分を見つめなおす物語のようだとも思う。

劇中、椅子取りゲームの展開があったが、このゲームのように一人、またひとり・・と、いなくなっていくさまは末恐ろしい光景でもあったが、割にコミカルなシーンも多く、コメディの要素もかなり強い。他人の人生を背負うような展開がなんとも不条理だったが、人間は本来自分が持ってる器があり、そこから零れるほどの水はやはり必要ないのだとも思う。

きっと考えすぎると生きるという基本的なことは楽しめないのかもしれない・・。なんて単純なワタクシは思うのだった。まあ、好きなことやってへらへら笑って、ちょっとだけ鈍感なほうが生きやすい世の中なのだ。笑)

キャストらの演技が絶妙だった。特にはやし大輔がいい。
賭博師・梟 ―Fukuroh

賭博師・梟 ―Fukuroh

劇団俳小

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2009/06/03 (水) ~ 2009/06/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

すんごくおもろい!(^0^)
賭博師・梟 ―Fukurohのアニメ版のファンはたまらない筈!
本物の雀卓を見たのも初めてなら、そこに配置する賭博師たるものを見たのも初めて。
楽日だったのも効してか、役者の演技力に脱帽!
孔雀チームを観たのも良かった!(^0^)

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

賭場「五稜郭」では、アイヌ出身の天才賭博師・フクロウを向かい撃つ為に日本一の博打打人が集められる。
ここで麻雀を知らない観客の為にだと思うが、劇中の記者役に賭博とは?賭ける技は?賭ける金額は?などのルールを丁寧に教えるナビ役がガミ(堀越健次)。
雀卓を囲んだ4人の賭博師たちがどんな風に1人を追い詰めていくのかも見もの。親一人が大枚を借金し、一方で他の三人の横に積み上げられていく大枚に唖然とし、一世一代の大勝負では、緊迫したシーンの連続で観ている観客もドキドキ・・ドキドキ・・。指を詰められるシーンでは後の女子が「ひっ!」と思わず叫ぶなど、1on1のサシ勝負!タイマンはってる気分!になっちゃってる。(^0^)

大きな借財をこさえた賭博師は妹をポンポンに売ろうとするし、はたまた自殺する賭博師もいるわ、博打のハリの大勝負をして心臓が破裂しちゃいそうになる賭博師がいるわで・・・、いあいあ、とにかく別世界というか、次元が違うというか、賭博師には賭博師のロマンがあるって事で納得して見入ってしまいました。

そんな賭博とポンポンの世界でもそれぞれの生い立ちに悲しい過去や育ち方が描写され「情け」を押し出します。みどりの愛やフクロウ(勝山了介)とラバ(斉藤真)の男気、そして女主人の金だけではない心意気などを見せつけ、終盤は命を賭けて勝ち取った6億円のフクロウの遺言は「6億はみどりに。」でした。
男と女の愛の形は時代と情景は変わっても、不器用な男たちが表現する愛情はやはり不器用でしかなかったのでした。


追伸:空調が寒すぎる。風邪引いたらどーしてくれんだい!(女主人風)
ZiN-Ki

ZiN-Ki

さるしげろっく

劇場MOMO(東京都)

2007/03/15 (木) ~ 2007/03/19 (月)公演終了

満足度★★★★★

鬼ファンタジー
要するに、劇団「さるしげろっく」とプロデュースユニット「Hal's Party」とのコラボですわね(^^)




■ Story
天皇の正統性を示すといわれる三種の神器。それらを守る、鬼の一族と呼ばれるもう一つの闇の系譜を持つ天皇の末裔。
その末裔に生まれた男女の双子。その姉弟をそれぞれ主人公にした2幕劇。




いあーーー、観劇じゃなくて感激しましたっ!


企画が素晴らしい!!


芝居が2部構成になっていて、

一幕がさるしげの脚本、演出は共同。
二幕がHal’sの脚本、演出は共同。


一幕・二幕は時系列順に並んでいるけれども、その視点が異なる。

第1幕「藤の花咲く村の名医」

争いの種を持つ三種の神器。その守人として人に忌み嫌われる怪しげな力を持つ鬼の一族を飛び出した弟キイチ側からの視点。



第2幕「不如帰去(ホトトギス)~時つぐ鳥~」

一方弟キイチが投げ出した、三種の神器を守るため、「ヤガミ一座」として東京を転々としながら興行を続ける姉のキキ側からの視点。



この2作を両方見ることによって互いの作品の主役キイチとキキのそれぞれの伏線がクロスしてかみ合う………作品としてひじょうに美味で奥が深い。




鬼二人がニンゲンによって陥れられ翻弄される。
本当の鬼はどちらなのか。。



それでいて笑わせる部分のセリフが完璧!
あの3人がいい味だしてる。。

そして、それぞれの持ち味を出してる役者も素晴らしい!!





かなりのハイレベルな脚本・演出・役者、そして照明が凄いっ!


最後の部分、キイチとキキが鬼となって戦おうとする瞬間、ステージ上で二人は止まり、その止まった角度が美しい。。
一つの画になるように計算されて・・・

ハラハラと桜吹雪が舞い降りたかとおもうと、周りは暗くなり、止まったままの二人の美しい画像にスポットライトが当たり、更にキャンパスに書いた水彩画のごとく浮かび上がる鬼二つ。



なんて美しい。。美しい。。






書上奈朋子の曲がBGMに使われていて、それもこの舞台にあっている。。


その美的センスは芸術的で観終わった後、ずっと余韻は残るのでした。





民俗学的なストーリーなので、民俗学の第一人者、小松和彦の本か京極の本から脚本を書いたのだろうか・・?



で、脚本家の黒木崎六九に話を聞いたところ、違う。とのこと。。



そっか・・・何も材料がなくてあんなストーリーを作れるんだね。
やっぱ、才能だろうか・・・。



劇の画像はこれ↓

http://hann.dion.jp/stage-photo/s-zinki.html




さるしげろっく、って・・・
猿山のぼる の さる

賢茂エイジ の しげ

黒木崎六九 の ろっく  から取ったのね?(意外に単純)

いあーーー、やっぱ舞台は素晴らしいーーー!!


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エムキチビート

シアターサンモール(東京都)

2010/12/08 (水) ~ 2010/12/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

夢とうつつの狭間
間違えてサンモールスタジオの方に行ってしまったワタクシは、シアターサンモールだとやっと理解してびっくら仰天!だ、大丈夫なのか?!こんなでっかい会場で。なんつって心配しちゃった。笑)・・会場に入るとセットが美しくて感嘆したがそこは仮想現実の世界。物語は案外コミカルに進ませ笑いのコネタも満載ですんごく楽しめる。終盤は泣かせどころもあって会場はすすり泣きが聞こえた。

ネタバレBOX

過去に列車の事故で幼馴染のナユタを失ったハジメはショックの後遺症からPTSDを引き起こし幻覚に悩まされていた。この病気の治療法としてオンラインゲームを利用したセラピーを受けていたハジメはオンラインの仮想空間でログインしたプレイヤーたちが集る広場で戯れる。ここが今回の物語の場所だ。しかしこの場所は終盤の展開から列車の中と考えたほうが観やすい。

自分のせいでナユタが列車事故にあって死んでしまったと思い込んでいたハジメはログインしてナユタを探し出し、謝りたいと考える。

序盤、仮想現実の広場で多数のアバターたちがハジメの周りで雑多な争いを繰り広げ、この時にこれまた雑多なコネタを披露する。数々のネタは面白い。観客もワタクシもこの時はハジメが生きていてPTSDとナユタの為に足掻いているとしか思わなかったが、終盤になって列車事故で亡くなったのはハジメのほうで大惨事から一人だけ生き残った少女がナユタだったと、どんでん返しをくらう。

現実の世界でナユタはハジメと同じようにPTSDを引き起こし同じように自分のせいでハジメが死んでしまったと思い込んでいた。そして広場に集っていたアバターらとハジメと関わった現実の世界で生きていた人たちは列車事故で亡くなっていたという種明かしが後半にあるので、広場は車両の中と想像した方がしっくりくるのだ。

ハジメは自分が生きていると思い込んでいたがナユタと逆転していたと知らされるとナユタの心を癒そうと努力する。そうしてナユタがトラウマから開放されて明日への希望を捨てずに頑張って生きようとする姿勢が清らかだった。

物語の中で劇団が登場するがこれはかつてのエムキチビートのリアルな風景のような気がしてならない。書くという仕事とそれらを支える劇団は魂が削がれるほどの努力をしていると思うがあまり多くを望まず頑張ってほしいと心から思う。

魂が作ったフィクションの世界、その美しさは透明なブルー。

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