としの観てきた!クチコミ一覧

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モリー・スウィーニー

モリー・スウィーニー

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2011/06/10 (金) ~ 2011/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

谷賢一らしい舞台
目の見えない主人公・モリー(=南果歩)が、天才眼科医ライス(=相島一之)の手術を受け、光を見る。

難しい手術を決行し、成功させるライス。

モリーの夫・フランク(=小林顕作)も手術の成功に大喜びするが、はたして「見える」事が「良い」事なのか。

見える人間が多い中にいる、見えない人間とは、「不幸」なのだろうか。

多数派の人々が持つ一方的な認識が、「幸福」をもたらそうとする行為が、一つの破滅をもたらしていく。



自らの劇団、DULL-COLORED POPで谷賢一が追い続けてきた物が、一つクリアに結集されたようなこの『モリー・スウィーニー』という本。

相性はバッチリだったように思える。

複数の空間を巧みに作り上げていく演出手法も実に鮮やか。

休憩前は、モリーが光を取り戻すまでを、

休憩後には、光を得てからの生活を描いているが、それぞれのラストにあたる部分で用意された仕掛けもグッとくる。



光の無い中で生活していたモリーが、光を得る事で実に多くの物を失っていく。

全く違う世界に移された人間が幸福から転落していく様が、痛々しく、生々しい。



実に谷賢一らしい舞台だった。



重厚な本に、がっつり向き合っている感があったが、

夫・フランク(=小林顕作)の芝居が遊び心を発揮し過ぎる事で全体のバランスを崩していたようにも見えなくもない。



が、ともあれ良い芝居を観た。

ヴェニスの商人

ヴェニスの商人

劇団AUN

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2011/04/06 (水) ~ 2011/04/13 (水)公演終了

満足度★★★★★

最高級のシェイクスピア
何を隠そう、吉田鋼太郎さんの芝居がたまらなく好きなのである。

好きな役者は?と聞かれたら、即答で吉田鋼太郎!と答える私である。
弟子入りしたいくらい好きだ。
ちなみに、次点はキアヌ・リーヴスだ。

なんだが、AUNの公演は一度、番外公演的なのを観た事があるだけ。

恥!あるまじき、恥!

なので、観に行きました。

吉田鋼太郎×シェイクスピアは最高の組み合わせ。

演技のスケールと芝居のスケールが見事に噛み合っている。
パワー×パワーで、舞台の魅力が何十倍、何百倍にもはね上がっている。
吉田鋼太郎はもちろんの事、彼の劇団AUNは、出演者が皆、底知れぬパワーを、そしてそれに裏打ちされた技術を持っている。
谷田歩さんもめちゃめちゃかっこ良かった。

凄すぎて、好きすぎる。

シェイクスピアで、しかもスタンダードな小田島訳で、あれだけ観客を笑わせられる劇団はない。
面白いのだ、シェイクスピアギャグが。
古典だ。
しかし、色褪せぬ新しさを見事に立体化している。
もう、毎公演観に行こう。

「ユダヤ人には目が無いか!手が無いかっっ!」

観劇から一ヶ月以上経つが、いまだにシャイロック(吉田鋼太郎)の咆哮が、咆哮としか言い様のないあの魂の叫びが、脳髄にこびりついて離れない。

私の愛する演劇が、そこにあった。

顔よ

顔よ

ポツドール

本多劇場(東京都)

2008/04/04 (金) ~ 2008/04/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

圧倒されました。
何かと噂だけは耳にしていたポツドール、ついに自分の目で観てきました。
なんて現代を抉った舞台なんだろう。それが素直な感想。
希薄になってゆく人間関係の中で繋がりを求めようとし、またそれを簡単に破壊し、生きてゆく人間。
ここまで見せつけられると、もう圧倒されてしまいます。こんなにも醜くて自分勝手で。
でもそれでも、人間って愛しいなと思える部分がある。

いい芝居でした。

冬物語

冬物語

明治大学シェイクスピアプロジェクト

アカデミーホール(明治大学駿河台キャンパス)(東京都)

2011/11/18 (金) ~ 2011/11/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

とても良い舞台

これ、まじに面白かった。

演劇の面白い所を全部集めたような芝居。



学生の、体当たりな熱量がハンパない。

いい芝居だった。

欲望という名の電車

欲望という名の電車

劇団青年座

世田谷パブリックシアター(東京都)

2011/12/15 (木) ~ 2011/12/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

新劇の意地を見た

これは素晴らしい公演だった。

青年座が「新劇」の面白さを教えてくれた。新劇の意地を見せつけられた思い。

技量のある役者が、しっかりした芝居をやる。

それがどんなに面白い事か。

それを出来ていない芝居がどんなに多い事か。

これが演劇ですよ。まじに熱い。



寂れた遊園地のイメージ、と演出家の言葉が、舞台上に見事に立ち上がっている。



今は失われてしまったベルリーヴが、ブランチ(=高畑淳子)の背後にイメージとしてあり、

街の無法者たちの生活に溶け込んだ、太陽のように天真爛漫なステラ(=神野三鈴)とブランチが、極めて対称的に写る。

ミッチ(=小林正寛)の役に立たなさも素晴らしい。

スタンリー(=宅間孝行)も良かったが、今一つパワー不足な感も。



ともあれ、がっつり芝居してる俳優陣が作り上げた空気感が素晴らしく、本当に良い芝居だった。



神野三鈴はまじに感情表現が豊か過ぎて、コロッコロ変わる!って言葉がぴったり。



ラスト、ブランチを見送った哀しみと、抱き抱える子供への愛情が入り交じるシーン、ステラが素晴らしすぎた。

ピンポン、のような[07再演版]

ピンポン、のような[07再演版]

時間堂

王子小劇場(東京都)

2007/04/26 (木) ~ 2007/04/30 (月)公演終了

満足度★★★★★

暖かい雰囲気
役者が舞台にいる、それが何よりも強烈。しっかりそこにいて、その場の空気を吸って動いている。演技の大きさの問題ではなく、空気が自然。
だからそこに起きる笑いは素直に笑えるし、諸々の感情はとても身近なものに感じる。派手さとかはなかったけれど、深く染みる一本。
舞台上の人間の思考のベクトルが一つにまとまる瞬間ってのが本当に少なくて、人間いろんなこと考えて生きてるんだよなぁ、うんうん。とか思いながら観た。全く退屈しない。とてもよかったです。

愛だろ、愛っ。【全日程終了しました】

愛だろ、愛っ。【全日程終了しました】

神と仏

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2011/03/26 (土) ~ 2011/03/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

最高だよ
全力で鬼ごっこする大人を見たような爽快感。
とてつもなく、馬鹿な人たち。
こんな人たちと演劇したら、きっと面白い。

母アンナの子連れ従軍記

母アンナの子連れ従軍記

サラダボール

アトリエ春風舎(東京都)

2011/03/19 (土) ~ 2011/03/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

それでも私は生きていく
ある観劇記を読んで、どうしても観ておきたくなった舞台。
当日券で観に行く。

『肝っ玉おっ母とその子どもたち』という訳が定着しているブレヒトの作品。
サラダボールは最近出た新訳で、『母アンナの子連れ従軍記』(光文社古典新訳文庫)を使っている。
「肝っ玉おっ母」から「母アンナ」への変化は意外と大きい。
個人的なイメージだが、
「肝っ玉おっ母」からは生命力の強い鬼ババア、
対して「母アンナ」からは、一人の母を、女性を連想させられる。

この公演には確実に、「母アンナ」がしっくりくる。

力強さと美しさを併せ持つ、長野海の演ずる、女盛りの母アンナが、ドイツ三十年戦争の中で幌車を引きながら、それぞれ父親の違う息子二人、娘一人と共に商売を続ける物語。

新教軍・旧教軍の戦火に呑まれ、息子を失い、娘を失いながらも幌車を引き続ける母アンナ。
その力強さ、美しさ、そして、愚かさ。
ブレヒトの描き出した母アンナは、時に身を守るため、息子を他人よばわりし、その亡骸を見ても涙を流さない。
その愚かさ。その愛の深さ。
完全に同情出来る訳ではない。
かといって、誰も彼女を責める事も出来ない。
ただそこには、事実がある。

ブレヒトの芝居は感情移入を拒絶する、なんて言葉をよく耳にする。

息子を失い、娘を失い、それでも生きるため、幌車を引き続ける一人の女がいる。

この事実が、空気感が、とても良く出ていた芝居だった。

ネタバレBOX

衣裳も装置も、無理に時代感を出す事は狙っておらず、時には吉野家の制服までもが登場する。
ケンタッキーのチキンが出たかと思えば、カップラーメンをすする者がいる。
しかし、物がすりかわっただけで、本質は何も変わっていない。
時にレディガガの曲が流れたりもするが、空気は一層引き締まる。
一歩間違えれば壮絶に、痛々しく破綻してしまいそうな要素を、実にうまく、効果的に使っていて、めちゃめちゃセンスがいい。

演技も、いかにも「古典」って感じの仰々しさ、暑苦しさが微塵もない。
簡素で、日常的な演技の方向性が、劇自体のダイナミックさを強調している。

スクリーンの使い方も嫌味がない。効果的。

観てると、生命の力強さが、躍動が、ビリビリとくる。
生きていく事への執着が。
とりわけ、母アンナ、長女カトリン(レシャード真す美)、娼婦イヴェット(ほりゆり)という、三人の女の力強さが。
男は結構、しょうもないやつが多い。
女が、生きるという言葉を体現している。

金持ってそうな男を巧みに利用するイヴェット、
戦争の恐怖で、幼い頃から口がきけないながらも、ここぞの時に底抜けの勇気を発揮するカトリン(カトリンが鐘鳴らすシーンが、まじに、絶品だった。台詞っぽい台詞の無い役だが、鮮烈に印象に残る。)、
そしてなにより、生きるため幌車を引き続けるアンナ。

ラスト、アンナの姿には、ふりかかる運命の火の粉に身を焼かれながらも、なお前に進み続ける、生きていく、気迫が満ち満ちていた。

演出家が、稽古に入る前に考えたという作品のキャッチコピー。

「それでも私は生きていく」

まさに、この一言が塊となってぶつかってくる。
スーパースター

スーパースター

劇団鹿殺し

青山円形劇場(東京都)

2010/01/21 (木) ~ 2010/01/28 (木)公演終了

満足度★★★★★

元気が出ました。
観ていて、観終わって、

「俺もがんばろう」

って気にさせてくれる、すごく暖かい作品でした。

ネタバレBOX

以前、『百千万 2008 改訂版』を観た時にはそんなに思わなかったんですが、

歌がいい。
帰り道についつい口ずさんでしまう、
そんな、ミュージカルの醍醐味のような、
親しみやすく、ぐっと来る曲が揃っていてウキウキ。
菜月チョビさんの歌声にやられました。

話がいい。
子供の頃の思い出をごたまぜにしたような、
おもちゃ箱をひっくり返したような、
そんなにぎやかさと懐かしさの同居する舞台。

ブッチャー(政岡泰志)が全部持っていったようなとこはあるけど、
ハートに響く話。
ラストがほんと見事で、ちょっと泣いちゃいました。

昔のアルバム見返してみたりすると、
当時の思いや夢なんかがそこには鮮明にあって、
今の自分とどうしてもかみ合わない部分が出てきたり複雑な思いもあるけれど、
昔の自分に言うとしたら、
俺は元気でやってるよ、
ってことなんだななんて。

ほんと、懐かしい気持ちと前向きな気持ちとが同時にやってくる不思議な公演で、
活動10周年にこの公演を出してきた劇団の心意気みたいなものにハートを揺さぶられるのでした。
K(ケー)

K(ケー)

零式

小劇場 楽園(東京都)

2007/09/05 (水) ~ 2007/09/10 (月)公演終了

満足度★★★★★

Kですね。
様々な「K」が散りばめられていて、言葉の波の中を楽しく泳いでいるような芝居でした。
本筋がわかりやすく、それでもほんわか零式ムード。

ショート7

ショート7

DULL-COLORED POP

pit北/区域(東京都)

2009/04/29 (水) ~ 2009/05/06 (水)公演終了

満足度★★★★★

Bプログラム。
贅沢すぎる2時間。もう、満腹。

ネタバレBOX

以下、作品毎の感想など。

『息をひそめて』
作・演出 谷賢一

口語会話に独白を織りまぜるダイナミックな作品。
以前観た初演時には口語会話が印象的であったが、改めて観てみると、独白の持つ力強さに心打たれる。
現代の恋愛模様を描いた作品だが、独白は異様な程に力強い台詞で、シェイクスピアを想起させる迫力がある。
恋人の話を床下で盗み聞く、という構成も、情けない話だがダイナミック。
床下・床上の空間の切り取り方、混ぜ方も絶品で、決して映像作品では実現できない舞台の魅力を体現したつくり。
現代日本の小さな一室に起きる、小さな恋の問題を、繊細に、かつダイナミックに描き出す作・演出に惚れ惚れする一品。


『エリクシールの味わい』
作・演出・作詞 谷賢一
音楽 伊藤靖浩(作曲・演奏・出演・音楽監修)

「飲尿ミュージカル」(業界初)という宣伝文句がひときわ目をひく、今回の企画唯一の初演作。
とあるバーで酔いつぶれる製薬会社のサラリーマンのおやすみとおはようの間の物語。
とにかく良かった。
どうしても「飲尿ミュージカル」という言葉にとらわれてお馬鹿作品の様なイメージが付きまとってしまうが、そのイメージを前面に押し出すのは、これほどまでに痛々しく切ないラブストーリーを書いてしまった作者の照れ隠しなんじゃないだろうか。
本当によかった。僕は涙目で観ました。
飲尿を扱った大胆さ・馬鹿さと、作者が全身全霊を込めたラブストーリーの繊細さ・もろさがとてもいい具合に混ぜ合わされていて本当にいい。
初期のDCPOPの馬鹿馬力と現在のDCPOPの緻密さ・繊細さを兼ね備えた、これからのDCPOPの可能性を改めて見せつけられる傑作。
役者も素晴らしい。
「くたびれたサラリーマン」という言葉が似合いすぎる小林タクシーの軽妙な存在感はもちろん、個性豊かなおしっこ娘たち、ミステリアスなバーテン(千葉淳)、感情むき出しの恐い女(清水那保)などなど、強すぎる存在感の絶妙さは何とも言えない。
そしてその中でも極めて異質な迫力を放つ、飲尿の天使・岡田あがさ。
「まるで、天使」なんて台詞を何の疑いもなく受け入れられる、驚異的なまでの存在感・現実感のなさ。
この作品は、このキャスティングにより戯曲の持つ力をとことん引き出している。
岡田あがさの登場から立った鳥肌はカーテンコールまで続いた。本当に、よかった。なんだあれ。

そして、バーの謎の演奏者伊藤靖浩(作曲・演奏・出演・音楽監修)の手によるミュージカルナンバーが本当に心にぐっとくる。
アホらしい歌詞なのにあそこまでぐっと来る曲がつくと、気分はまるでブロードウェイ。
帰り道に口ずさめる覚えやすいが心にささるナンバーは必聴。劇場でCD売ってたら絶対買ってた。
特に「ひゃくまんかい」は本当にいい。小林タクシーの異様に高い歌唱力と岡田あがさの消えてしまいそうに淡く優しい歌声に、もうどうしていいかわからない。
そんなこんなで感動の渦に引き込まれてしまう。
中国の古典に、お粥が出来るのを待ってる間に眠ってしまい、自分の一生の夢を見て、目が覚めたらまだ粥は出来ていない、なんて話があったが、そんな中国の古典の雰囲気を舞台で味わったのは本当に初めて。
いい芝居観たよ。


『藪の中』
翻案・演出 谷賢一
原作 芥川龍之介

芥川龍之介の『藪の中』を翻案した一人芝居。
花組芝居の堀越涼が出演。
『エリクシールの味わい』ですでに夢見心地だったのに、もう一本あるという短編のグランバザールの幸せ。
この作品も初演を観ているのだが、役者に合わせて大胆に趣を変えた作品になっている。
漂うのは日本の伝統芸能的香り。
狂言・歌舞伎を織り交ぜたような独特の演技スタイルは『藪の中』の時代観を出すにはもってこい。気持ちよく見得を切り、朗々と語られる台詞によって作られるピンと貼りつめた空気感は見事の一言。
ただ、型のダイナミックさを追求する余り、感情のダイナミックさ・目に見えない迫力がやや犠牲になってしまっている印象を受けた。
型のダイナミックさで見せる今回よりも、目に見えない爆発力があった初演の方が僕は好み。
本当に、ただの好み。
これはこれで素晴らしかった。
SAMURAI 7

SAMURAI 7

ネルケプランニング

青山劇場(東京都)

2012/04/01 (日) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

エンタメの何が悪いか!
黒澤明の『七人の侍』をアニメ化したものを、舞台化。再々演らしい。
前説の方が名乗りをあげて客席に呼び掛ける。
「この芝居は観客参加型です。お気に入りの侍が出てきたらエールを送ってあげて下さい。では練習してみましょう。」
客席の大半は女性。

「しまった!間違えた!」

心の中にそんな言葉がよぎる。

まさか野太い声でエールを送るわけにもいくまい…。

この規模の、こういう芝居を観に行くのは初めてだったのでかなり戸惑う。

ファンサービスに溢れているのは確かに良い事だが、なんか慣れない。


そして幕が開く。

機械化された侍が村を襲う、用心棒を雇おうという事になり、七人の侍が集められる。

なるほど、設定はパンクだが、ちゃんと七人の侍してる。

七人は結構なスピードで集まり、村をなんとか守りきるとこで一幕が終了。

不思議だ。
俺、泣いてる。

あれだけ戸惑ったんだが、不思議と馴染んで、涙まで流している。

スピード感のある展開、無駄にカッコイイ台詞回し。
派手な装置に照明・音響。

…この感覚、どこかで…

そう、劇団新感線にノリが近い。

こりゃ面白い。

一見、度が過ぎたファンサービスが多いようにも見えるが、しっかり本筋に復帰してくるので嫌な感じはしない。

演者が楽しんでやってるので、もうなんでもいいやと思える。


ボロボロ泣いてしまったのは、一幕終わりのゴロベエ(=高橋広樹)の死に様、そして二幕もラスト、キクチヨ(=住谷正樹)の最期。

どちらも、守るべきものの為に命を賭けた大勝負を仕掛ける。
生きたいと願いながら、守るべき命の為に散っていく様は、まさにサムライスピリッツ。

非常に漫画的でベタな展開であるが、この、ベタで漫画的というのが私のツボのど真ん中なのだから致し方ない。

深い事考えずに、清々しく号泣した。


ちなみにキクチヨを演じた住谷正樹さんはあの、レイザーラモンHG。
良い仕事してたなぁー。

後日、Wikipediaで色々調べたのだが、七人の侍の半数くらいが、『テニスの王子様』のミュージカルに出演しているらしい。
そして演出の岡村俊一さんは、結構な数、つかこうへいの芝居を演出している。
どうりでテンポが良いわけだ。

個性豊かな侍たちを束ねるカンベエを演じた加藤雅也さんが、燻し銀なかっこよさだった事は言うまでもない。


イケメンが大勢出てきてワーキャー!って芝居を心のどこかで敬遠していたのだが、そんな先入観を取っ払ってくれたいい芝居でした。

これぞ、エンタメ。

エンタメはあかん、演劇は芸術や!みたいな主張もあるだろうが、
私としては、お客様が楽しんで観てくれる事が何よりの正義です。

Caesiumberry Jam

Caesiumberry Jam

DULL-COLORED POP

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2011/08/20 (土) ~ 2011/08/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

ダルカラ復活

DULL-COLORED POPの劇団活動再開記念&第10回記念公演は、『Caesiumberry Jam』の再演。

原発事故以降、演劇でも色々な劇団が原発関係の芝居を上演したようだが、

8月、ちょうどセシウムがニュースに上がり始めた時期のこの再演。



チェルノブイリ原発事故を題材にしたこの芝居、初演の時以上のインパクトがあった。



なにより、役者の人数が増え、よりアンサンブルの芝居が強化されていた点が印象深い。



沢山いた村の住人たちが、芝居が進むにつれ徐々に姿を消していき、舞台上の人口密度が減っていく。

たいした説明もないままに人が消えていく様は、不気味以外の何物でもない。



子供たちは、老人は、どこに消えていったのか。

それでも村に留まり続ける人々。



そういった光景が、土の敷き詰められた舞台の上で展開される。



上演終了時、カーテンコールをせずに観客の拍手を一切拒絶する谷賢一らしいやり方は、

芝居を「見世物」でなく、3月11日以降続く我々の問題として観客に持ち帰らせる。



チェルノブイリの、放射能に汚染された土は、地続きで客席の我々の足元にも広がっているのだ。



実に鮮やかな演出。

いい芝居であった。

アントニーとクレオパトラ

アントニーとクレオパトラ

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2011/10/01 (土) ~ 2011/10/15 (土)公演終了

満足度★★★★★

愛すべきダメ男

『アントニーとクレオパトラ』の上演は初めて観るが、こりゃ難しい作品。

なにしろ意を決して自害するアントニーが、しばらく死ねず舞台上に残らねばならない。

よほどしっかり作らねばギャグにもなりかねない展開である。



が、そこはさすが吉田鋼太郎。

かっこ良すぎる。

アントニーの空気感が舞台を丸ごと支配していて文句なし。



手痛い敗戦をした後の、「陸が俺に歩くなと言っている!」との件はアントニーの配下と共に涙がこぼれる思い。



それだけに、アントニー死後の喪失感が半端なく、舞台が空っぽになったようだった。

おもいのまま

おもいのまま

トライアングルCプロジェクト

あうるすぽっと(東京都)

2011/06/30 (木) ~ 2011/07/13 (水)公演終了

満足度★★★★★

選択の物語
飴屋法水の仕掛ける、選択の物語。
絶品でした。
休憩で帰りたくなっても、帰っちゃダメ!

ネタバレBOX

久々に行ってきました、あうるすぽっと。
なんか息苦しい額縁舞台だった記憶しかないので、客席入ってびっくり。
粋な装置。
家なんだけど、壁とかは作らず、柱だけでうまく作ってる。
あうるすぽっとの広い舞台空間を無理して埋めてる感もなく、音響スピーカーが山積みされてたり、脚立が立て掛けてあったりと、
「ここは劇場なんだぜ」
って感があって好き。
かっけー。

芝居は休憩挟んでの二部構成。
前半がとにかくしんどい。
高級住宅地のある一軒に、スクープ記事ばかり書き続けている二人の記者が侵入してくる、
ってのが大雑把なストーリーなんだけど、
この二人が、本当にゲス野郎で、観てて胸くそ悪くなる。
それだけ芝居うまいって事なんだけど、ほんとに、しんどいくらいゲス。
脚本もまたドギツイのでゲス度MAX。
大切にしてた道徳とか倫理観とかを目の前で粉砕されるような、言い様のない怒りが込み上げてくる。
芝居のクオリティとか役者の演技にいらいらする、とかではなしに、芝居の登場人物に対して怒りを覚えるってのは久々の体験かも。
それだけ引き込まれてたって事か。

前半が終わり、休憩に。
前半で、一つの芝居として完結している。
続けるとしたら、あの方法。
と思ってたら、やはり。

ラン・ローラ・ラン形式と呼びましょうか、
あるいはキラー・クイーン・バイ・ツァ・ダスト(敗けて死ね)形式と呼びましょうか。

この芝居の一つのテーマとしてチラシにも書いてあるのが、

「選択」

あの時ああしていれば、なぜあんな風に…

生きてる中でしている選択の数々は、未来を大きく変えてゆく。

その「選択」についての物語なだけに、後半も前半と同じ入り方をする。

この戯曲の仕掛けがまた、粋。
前半の展開から、少しづつ少しづつ変わっていく後半に、
完全に心をつかまれる。
なんともまぁ、ずるい展開。

前半のドギツさも、後半の為に過剰に盛られたスパイスに違いない。
前半でキツいからって休憩で帰ったら間違いなく損する芝居。

演出の、空気のコントロールが、巧み過ぎる。

後半は、佐野史郎らしい佐野史郎で少しほっとする場面も。

選択によって変化していく物語は、自分の選択を受け入れる物語でもある。
自分が選んだ道から目を背けながら歩んだり、後悔し続けながら歩む事は、なんとももったいない事なのだ。

あの時こうしていれば、な思考ではなく、
自分で選んだ道だから、と道を受け入れて歩む事。

「誰が選んだのでもない、自分で選んだ道ですもの」
森本薫『女の一生』の名台詞を久々に思い出した。

私も、「なんであの時…」って考えがちな人間なのだが、
この芝居を一つのきっかけに、久々に前向きな気持ちになれそうだ。

演出・飴屋法水のやり方にはびっくりさせられる。
演出・美術・音楽デザインとクレジットされているだけあって、美術・音楽の演出効果が半端ない。
特に音楽。
ノイズ的なサムシングが、生理的に嫌な部分を非常にうまく突いてくる。
芝居の空気感が、聴覚化されているとでも言おうか。
ヤバすぎる。
音で、会場全体がびくっとする光景なんてそうそう出会えない。

演出家・飴屋法水、凄すぎる。

この人が演出した『4.48 サイコシス』がべらぼうに評判良かったそうだ。
観てみたい。
被告人ハムレット

被告人ハムレット

声を出すと気持ちいいの会

演劇スタジオB(明治大学駿河台校舎14号館プレハブ棟) (東京都)

2011/05/04 (水) ~ 2011/05/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

初コエキモ
この作品が、私と「演劇集団 声を出すと気持ちいいの会」の初めての出会いである。

なんて演劇的な事をやってるんだろう。

感想はそこに集約される。

ドラマを再生するに留まらず、
我々の想像力を刺激する身体性・演劇性を探究する事に挑んでいる。
そんな感じがした。
私が好きな「演劇」も、まさにこのラインにある。
演劇にしか出来ない演劇。

それが今、必要なのである。

構成も古典に題を取っていて、ダイナミックな演劇性を持っている。
今後が楽しみな劇団だ。

冬物語

冬物語

劇団AUN

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2013/01/23 (水) ~ 2013/01/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしいの一言に尽きる。
素晴らしかった。

『冬物語』がこんなにも泣ける話だとは思わなかった。

好き勝手なプロットだが、
役者が皆、細かな心情の積み重ねをしっかりと演じているから、
物語の面白さがちゃんも伝わってくる。

硬派で、しかもちゃんと笑えるシェイクスピアを観られるなんて、素敵過ぎる。

吉田鋼太郎さんの名演は、嫉妬深すぎる感のあるリオンティーズを、
愛嬌のある、矛盾のない人物として作り上げていた。

前半の暗さ、後半の明るさは、
まさに破壊から再生の光を見せてくれる
「冬」の物語だった。

Noir 永遠の夜の彼方に

Noir 永遠の夜の彼方に

水族館劇場

駒込大観音(東京都)

2008/05/23 (金) ~ 2008/06/09 (月)公演終了

満足度★★★★★

夏!
水族館劇場がやってくると夏を感じます。
理屈抜きに面白い!
この、みなぎるパワー!
これぞ演劇!

夏の夜の夢

夏の夜の夢

明治大学シェイクスピアプロジェクト

アカデミーホール(明治大学駿河台キャンパス)(東京都)

2010/11/12 (金) ~ 2010/11/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

愛だよ、愛
すごく良かった。

本当に良い舞台に出会うと、まったく陳腐な言葉しか出てこない。

本当に、すごく、良かった。
楽しかった。

この芝居は、舞台への愛に満ちていた。



お前らもっと舞台を愛せよ!って言ってやりたい芝居が多すぎる中、
久しぶりに本物の愛に触れる事が出来て私は幸せです。

JANIS

JANIS

DULL-COLORED POP

タイニイアリス(東京都)

2008/10/08 (水) ~ 2008/10/13 (月)公演終了

満足度★★★★★

これが私の好きなDCPOPだ。
史上最高の女性ロック・シンガー。ブルース・ロックの女王。あだ名は「パール」。ジャニス・ジョプリン。(チラシより)

恥ずかしながら私は、この芝居の題材となっているジャニス・ジョプリン、全く知らなかったのです。
が、チラシに書いてある文章にさらっと目を通して芝居を観て劇場を出るとあら不思議。
帰り道にジャニスのCD探してみようかしら、そんな気にさせられます。

ジャニスが大好きだという作・演出の谷賢一。彼の、惜しみ無い、だけどちょっぴりひねくれたジャニスへの愛がビリビリと空気を震わせ、ハートの奥に響いてくる芝居だった。

今回の目玉である演劇×ロックバンド生演奏。効果的という言葉では収まらないが、とにかく良い。

ネタバレBOX

ジャニスの孤独が、生き様が、ドラム・ベースの響きとなり地を震わせ、ギターが空を切り裂き、そしてジャニス(=武井翔子)の歌声が劇場を満たす。
マイクを握り、自らの孤独と正面から格闘するようなジャニスのパフォーマンスに、ジャニスの瞳に、鳥肌が立った。
バンドメンバーが繰り広げる会話にはこちらも引き込まれて、客席からは笑いが、拍手が自然と飛び出す。
芝居自体が、こういった観客の参加を積極的に楽しもうとしている懐の深い仕掛けを持っている。
ジャニスにばかり目が行きがちだが、バンドを聴いている観客の姿も、これまた芝居として楽しめるのではなかろうか。『JANIS』を観に来た観客、そして、劇中でのジャニスライブの観客、この全てをひっくるめた『JANIS』を一番楽しんでいるのが作・演出の谷賢一だろう。最高の観客席だなおい。
バーカウンターからジャニスのライブを眺めるリンダ(=堀奈津美)の姿にしびれる。
DCPOPの芝居で微妙なバランスをいつも支えているのはやはりこの人・堀奈津美だろう。
今回はジャニスのビジネスパートナー・リンダの、もろくて神経質な、しかし誰よりもジャニスを愛している様を渋く魅せてくれた。
そして劇中では最も異質な存在・ベルボーイ(=清水那保)が、傷口に塩をぬりたくる形でジャニスの孤独をまざまざと描き出す。
堀がバランサーなら清水は起爆剤だろうか。



観客がジャニスの世界に引き込まれたのか、はたまたジャニスが現代に一夜限りのステージを披露しにやってきたのか。
この、観客と舞台とを違和感なく融和させる空気づくり・空間づくりが今回、最高にシビれた。
客と舞台の融和に大きく貢献しているバーのマスター、バーナード・ワイズマン(=影山慎二)が、ジャニスの孤独を、観客席を暖かく、しかし決定的に距離を置いた形で見守る。
次々にレコードを紹介する彼の姿には、二作目『ラパン・アジルと白の時代』でユトリロの美術館へと観客を誘った主宰・谷賢一の姿がだぶって見えた。

ユトリロに続く形になるのか、実在の人物に焦点を当て鮮やかに孤独をえぐり出すこの形式。
気は早いが、次回は誰をクローズアップするのか、今から楽しみである。

この『JANIS -LOVE IS LIKE A BALL AND CHAIN-』、個人的には今までで一番好きかな。もちろん色々ジャンルが違うから同じ基準では比べられないけど。
谷賢一のロックな演劇パワーが、奔放で孤独なジャニスを通して、痛いくらいに溢れだしているように思えました。
このパワーこそが、やっぱ演劇なんだと思うのです。
このDCPOPの演劇パワーに、自分は惹かれているのだなと。
これが、僕の好きな演劇です。

オススメです。皆さん、ぜひ観てください。

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