おもいのまま 公演情報 トライアングルCプロジェクト「おもいのまま」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    選択の物語
    飴屋法水の仕掛ける、選択の物語。
    絶品でした。
    休憩で帰りたくなっても、帰っちゃダメ!

    ネタバレBOX

    久々に行ってきました、あうるすぽっと。
    なんか息苦しい額縁舞台だった記憶しかないので、客席入ってびっくり。
    粋な装置。
    家なんだけど、壁とかは作らず、柱だけでうまく作ってる。
    あうるすぽっとの広い舞台空間を無理して埋めてる感もなく、音響スピーカーが山積みされてたり、脚立が立て掛けてあったりと、
    「ここは劇場なんだぜ」
    って感があって好き。
    かっけー。

    芝居は休憩挟んでの二部構成。
    前半がとにかくしんどい。
    高級住宅地のある一軒に、スクープ記事ばかり書き続けている二人の記者が侵入してくる、
    ってのが大雑把なストーリーなんだけど、
    この二人が、本当にゲス野郎で、観てて胸くそ悪くなる。
    それだけ芝居うまいって事なんだけど、ほんとに、しんどいくらいゲス。
    脚本もまたドギツイのでゲス度MAX。
    大切にしてた道徳とか倫理観とかを目の前で粉砕されるような、言い様のない怒りが込み上げてくる。
    芝居のクオリティとか役者の演技にいらいらする、とかではなしに、芝居の登場人物に対して怒りを覚えるってのは久々の体験かも。
    それだけ引き込まれてたって事か。

    前半が終わり、休憩に。
    前半で、一つの芝居として完結している。
    続けるとしたら、あの方法。
    と思ってたら、やはり。

    ラン・ローラ・ラン形式と呼びましょうか、
    あるいはキラー・クイーン・バイ・ツァ・ダスト(敗けて死ね)形式と呼びましょうか。

    この芝居の一つのテーマとしてチラシにも書いてあるのが、

    「選択」

    あの時ああしていれば、なぜあんな風に…

    生きてる中でしている選択の数々は、未来を大きく変えてゆく。

    その「選択」についての物語なだけに、後半も前半と同じ入り方をする。

    この戯曲の仕掛けがまた、粋。
    前半の展開から、少しづつ少しづつ変わっていく後半に、
    完全に心をつかまれる。
    なんともまぁ、ずるい展開。

    前半のドギツさも、後半の為に過剰に盛られたスパイスに違いない。
    前半でキツいからって休憩で帰ったら間違いなく損する芝居。

    演出の、空気のコントロールが、巧み過ぎる。

    後半は、佐野史郎らしい佐野史郎で少しほっとする場面も。

    選択によって変化していく物語は、自分の選択を受け入れる物語でもある。
    自分が選んだ道から目を背けながら歩んだり、後悔し続けながら歩む事は、なんとももったいない事なのだ。

    あの時こうしていれば、な思考ではなく、
    自分で選んだ道だから、と道を受け入れて歩む事。

    「誰が選んだのでもない、自分で選んだ道ですもの」
    森本薫『女の一生』の名台詞を久々に思い出した。

    私も、「なんであの時…」って考えがちな人間なのだが、
    この芝居を一つのきっかけに、久々に前向きな気持ちになれそうだ。

    演出・飴屋法水のやり方にはびっくりさせられる。
    演出・美術・音楽デザインとクレジットされているだけあって、美術・音楽の演出効果が半端ない。
    特に音楽。
    ノイズ的なサムシングが、生理的に嫌な部分を非常にうまく突いてくる。
    芝居の空気感が、聴覚化されているとでも言おうか。
    ヤバすぎる。
    音で、会場全体がびくっとする光景なんてそうそう出会えない。

    演出家・飴屋法水、凄すぎる。

    この人が演出した『4.48 サイコシス』がべらぼうに評判良かったそうだ。
    観てみたい。

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    2011/07/14 02:20

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