月船さらら・出口結美子

月船さらら 月船さらら(つきふね・さらら) 1975年滋賀県生まれ。女優。1996年に宝塚歌劇団に入団し、男役として数多くの舞台に出演。2005年に退団後、テレビ、映画などにも活動の幅を広げている。主な舞台はTPT「スペインの芝居」(天願大介演出)、パルコ「MIDSUMMER CAROL ~ガマ王子VSザリガニ魔人~」(G2演出)など。映画「世界で一番美しい夜」(天願大介監督)にてヨコハマ国際映画祭・最優秀新人賞を受賞。月船さらら×篠山紀信 写真集「FREE」が発売中(小学館刊)。

出口結美子 出口結美子(でぐち・ゆみこ) 1975年大阪府生まれ。女優。大学在学中に無名塾に入塾。1997年の退塾後は映像中心に活動。CX「ガリレオ」「のだめカンタービレ」「電車男」「小早川伸木の恋」、NTV「斉籐さん」「14才の母」、NHK「人間交差点」「芋たこなんきん」「出雲の阿国」など多数のテレビドラマ・CMに出演。主な舞台は北九州芸術劇場「地獄八景…浮世百景」、 「A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM~THEじゃなくてAなのが素敵~」 (ともにG2演出)など。NHK教育「わたしの気持ち」にレギュラー出演中。

今ならやれる。同時に確信した女優2人が立ち上げた、métro(メトロ)。
インタビュアー

 演劇ユニットmétro(メトロ)を結成したきっかけを教えてください。

 
 

 出口とは2年ぐらい前に、同じ事務所の先輩俳優が主催するワークショップで出会いました。私は宝塚を辞めたばかり、出口は大阪から東京に移ってきたばかりで、年齢も近ければ悩みも一緒だったんです。2人で舞台をやりたいとも思ったけれど、演劇界での自分たちの居場所さえわからなかった。

月船さん
 

 それから東京で2年ほど経験を積んだ頃に、 先輩の女優・楠見薫さんらが旗揚げしたユニット“タニマチ金魚”の舞台を2人で観に行きました。先輩が手作りでがんばっているのが伝わってきて、自分たちも「できるぞ!」「やってやる!」っていう気持ちが湧いたんです。

出口さん
 

「今ならやれる!」ってね。

月船さん
 

 その日の夜からインターネットで劇場を探し始めて、立ち止まることなく一気にここまで来ちゃった(笑)。

出口さん
インタビュアー

 出演だけでなく制作もするのは、大変なご苦労があると思うのですが?

 
 

 パルコ劇場(458席)に出演した時、小さい劇場にも帰りたいと思ったんです。舞台と映像の両方のお仕事をするように、大きな劇場と小さな劇場を自由に行き来したい。誰かにまかせないで自分たちで制作もできたら、フットワークも軽くなるし、きっと怖いものもなくなるんじゃないかって。

月船さん
インタビュアー

 2人の合議制で運営されているんですね。

 
 

 そうです。どちらかだけの責任にならないように、何かを決める時は必ず2人ともがわかっている状態にしています。劇場を下見して予約して、稽古場もいくつか見て回って決めました。値段交渉もだんだん上手くなってきたりして(笑)。

インタビュー風景
出口さん
旗揚げ公演の作・演出を、映画監督の天願大介に依頼
インタビュアー

 映画監督の天願大介さんが小劇場演劇の新作を手がけるのは、とても面白い企画だと思いました。

 
 

 天願さんとは舞台と映画でそれぞれ1度ずつお仕事をさせていただきました。「映画は頼まれて作るのではなく、自分が作りたい時に作るものだ」という自主映画の精神を持っている方なので、私たちがmétroを立ち上げた経緯を気に入ってくださるはずだと思い、私からお願いしました。

月船さん
 

 月船が出演した天願さんの作品はもちろん、過去の映画も拝見したんですが、特に初期の自主映画の魅力にのめりこんじゃったんです。この人と心中するぐらいの覚悟でやってみたい!って(笑)。 

出口さん
インタビュアー

 天願さんが演出された舞台「スペインの芝居」は、シンプルな装置で膨大なセリフの1人語りが多く、役者の力量が問われる作品だったように思います。今回の演出はいかがですか?

 
 

 まず、絶対に怒らない。けれど逆に追い詰められます。役者の中から出てくるものに少し修正を加えるような演出なので、役者はすごく自由度が高い。例えば「スペインの芝居」では、自分自身のことを深く、深く掘り下げさせられて、もう役者を辞めようかと思ったぐらいつらかった(苦笑)。

月船さん
 

 稽古で常にやっているのは、自分の中に耳を傾けて、今、自分が何を感じているのかを探っていくこと。役者は自分の得意とするところに逃げてしまいがちなんですが、天願さんの前ではそんな風にはいかない。嘘はつけない、ごまかせないと思っています。

出口さん
 

 今回は客席が対面式になるので…もう、逃げられないことばっかり!

月船さん
 

 もう、追い詰められてばっかり!でも、それがやりたい(笑)。

インタビュー風景
出口さん
脚本は「陰獣」と「化人幻戯」を掛け合わせたオリジナル
インタビュアー

 なぜ江戸川乱歩の「陰獣」と「化人幻戯(けにんげんぎ)」を選ばれたのでしょう?

 
 

 乱歩作品はもともと好きだったんですが、フランスで「陰獣」が映画化されるのを知って読んでみたら、女性の心理描写が素晴らしくて。色っぽくて、大人の知性をもってじっくり楽しめる世界は、私たちがやりたいものに近いと思いました。
 「化人幻戯」を組み込むのは天願さんのアイデアです。「陰獣」には大江春泥という不気味な作家が登場します。その春泥が書くのは、「化人幻戯」のような話ではないかと。

月船さん
 

 出来上がった脚本を読んだら、ものすっごく面白くて。稽古で読み合わせをしたら、さらに凄かったんです!「陰獣」のヒロインは実はこんな女性だったんだと、改めて気づかされました。これを私たちが上演してもいいの?と、嬉しさで身震いするほどです。

出口さん
インタビュアー

 乱歩の世界にふさわしい、アングラ演劇の香りがするキャスティングですね。

 
 

 客演の皆さんには私たちが直接、体当たりで(笑)オファーしたんですが、このメンバーには大、大、大満足です!パっとした派手さというより、陰湿さを備えた華やかさというか、大人の色気があるんです。

月船さん
 

 それぞれに全然違う雰囲気を持ってらっしゃるので、今、稽古をやっていて面白いです。例えば鴇巣直樹さんは、何もしゃべらずそこにいるだけで不思議な空気が漂ったり…(笑)。

出口さん
インタビュアー

 この舞台の見どころはどういったところですか?観客へのメッセージをお願いします。

 
 

 この作品では、役者1人で何役も演じます。衣裳を着替えて役を変えるのではなく、舞台上で急にスイッチしたり、A役だったはずが徐々にB役になったりするので、役者の魅力を満喫していただけると思います。5人全員が、今までどおりの当たり前のことはしたくないと思っているので、新しい魅力が多面的に出てくるはず。

月船さん
 

 先ほども言いましたが、稽古初日からみんな追い詰められているので(笑)、その成果をご覧いただきたいですね。そして脚本が抜群に面白い。その面白さを、役者が演じることでもっともっと膨らませて、お客様にお伝えしたいと思っています。

インタビュー風景
出口さん
月船「テント芝居がやりたい!」 出口「最終的な目標は、吉本新喜劇。」
インタビュアー

 いままでに出会った舞台作品の中で心に残っているものは?

 
 

 中学生の時に読んだ、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの戯曲「カラフルメリィでオハヨ」です。ケラさんのバンド“有頂天”のファンだったんですよ(笑)。精神病院の患者が大勢登場してギャグばっかりやるようなお話なんですが、中学生だった私は色んなところで感動して泣いちゃって。私の芝居の原点ですね。

月船さん
 

 無名塾で新劇を3年間みっちり学んだ後、初めて出演したのが福田転球さん主宰の転球劇場でした。いわば両極端ですよね(笑)。転球さんらとエチュード(即興)で作り上げた作品が、自分でも驚くほど完成度が高くて、面白かったんです。芝居にはこんな取り組み方もあるんだ!と衝撃を受けて、考え方が変わりましたね。

出口さん
インタビュアー

 これから舞台でやりたいことは?

 
 

 métroはずっとやっていきたいと思っています。できれば「陰獣」を再演したいですね。映画が上映されたフランスにも持って行きたい。あとは、テント芝居がやりたい!

月船さん
 

 私は大阪の難波で生まれ育ったので、小さい頃からよく吉本新喜劇を観ていました。私にとって最終的な目標は、やっぱり新喜劇なんです。あの舞台に立ちたい。それまでにはもっと色んな経験を積んで、深みのある人間にならないと。
  20代の頃にはわからなかったことが、今では突き刺さるようにしっかりと、感じ取れるようになった気がします。だから「陰獣」のように楽(らく)ができない舞台を、もっと自分を追い込む作業を、10年でもそれ以上でも続けていきたい。

出口さん
インタビュアー

 お2人の熱意に圧倒されっぱなしでした。東京・神楽坂のひっそりとした小さな劇場で、乱歩の官能的でミステリアスな世界がどのように生み出されるのか、今からゾクゾクしつつ開幕を待っています。

インタビュー風景
 

月船:みんなで「がんばったね」と言い合って飲むビール!人とお食事するのが好きなので、ご飯を食べながら飲むビール、ですね。

出口:半年前に引っ越したんですが、自分の知らない近所の方が「おはようございます」「いってらっしゃい」と、普通に挨拶してくれるんです。それが嬉しくって!最初はびっくりしましたが、今は私も「おはようございます!」とお返事しています。

métro「陰獣 INSIDE BEAST」(CoRich内 公演情報 陰獣 INSIDE BEAST 33歳女優、月船さらら&出口結美子のユニット「métro」旗揚げ公演。
映画監督・天願大介が、江戸川乱歩の「陰獣」と「化人幻戯」をベースに書き下ろし!

「陰獣」のヒロイン静子と「化人幻戯」のヒロイン由美子。
陰と陽、静と動、まったくタイプの違う二人の美女が舞台で繰り広げる美しい悪夢。
二つの物語はやがて重なり溶け合って、甘美な迷宮が出現する!

【原作】江戸川乱歩 【脚本・演出】天願大介
【出演】丸山厚人/池下重大/鴇巣直樹/métro(月船さらら・出口結美子)

期間 2009年1月22日(木)~1月27日(火) タイムテーブル
CoRichチケットで予約する
終演後にトークイベントあり!
1/23(金)19時 佐野史郎×天願大介×出演者
1/26(月)19時 京極夏彦×天願大介×出演者 
会場 神楽坂die pratze
チケット 一般発売日:2008年12月1日
前売・当日ともに4,500円(日時指定・全席自由)
受付開始は開演の45分前 / 開場は開演の30分前
未就学児童の入場不可。
お問合せ先 métro(メトロ) 
TEL:080-6624-0101
Eメール:metro@pal21.com
劇団公式サイト http://www.metro2008.jp/

取材・文:高野しのぶ/撮影: 間瀬修

 

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