帆を掲げて~音楽と朗読で文学の海を漂う2026 公演情報 gusuto de piro 「帆を掲げて~音楽と朗読で文学の海を漂う2026」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    ステージに女優、吹き抜けのような高い天井、中二階位置の広いバルコニーを見上げるとそこに演奏者の鍵盤楽器(多分)と音響機材がセットされている。音楽は環境音的で秀逸で、凝っている。だがそれが体の芯の疲労を溶け出させ、相当部分寝入ってしまった。
    それで両作を取り寄せて読んだのだが、川端康成のは奇妙な設定をリアルに描写したもので、別々に住まっているうら若い自身の娘がその夜「右腕を貸す」(肩から外して)と言って渡してくれた腕と、官能的な交わりを結ぶといった話。この架空の設定で作者は妄想を逞しく荒い息を吐いているかのような生々しさがあるが、文章がたどたどしくこれを耳で聴くのは中々に厳しい気がした。
    一方の川上弘美、名はよく聞くが一文字も目にしていない作家の短編を、面白く読んだ。しと降る雨の道を、酔った中年男と歩いて行く若い女性(私)。男は女を好いているらしいが理性ではとどめており、酔いが本心を露呈させ、女に告り、キスをする。が、ひと眠りした後、自分の習性を知っている彼は自分がそうしてしまった事を知り、詫びる・・という展開なのだが、女はそれをどう見、感じているのかを想像させる所が味わいで。強く迫られ、本気が見えたなら、恐らく受け入れたに違いない余地を、どこか残している。
    田舎にある通好みの料理屋で「○○料理」というのを食べて看板になって外へ出ると、夜も遅く車も通らない田舎道を歩き始め、やがて小ぬか雨にも降られ・・という特殊な状況なのであるが、飄然とした男の風情はその特殊な状況を受け入れさせてもいる。二人の距離の接近を予感させつつ、あるいはその逆を予想させつつ、不思議なバランスが面白かった。これなら朗読で聴いても面白そうだったが。
    少し前にミステリーの朗読を聞いたのは秀逸だったが、同じ演目を繰り返している。作品のチョイスは、結構重要であるな、というのがこの公演で考えたこと。作品ありきであるなら、表現形態が妥当かの検証がある。表現形態が決まっているなら、それに相応しい作品かどうかが重要になろう。近しい人が朗読に勤しんでいたりするが、やはり作品選びが肝要。かつ、惚れ込める作品でなければやる価値は無いわけで・・中々面白い世界である。

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    2026/10/04 12:14

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