死と再生とロックに 公演情報 ロ字ック「死と再生とロックに」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    ポップコーンムービー的死生観。
    リアルに対してニュートラルな視点でありつつも、ニートの騒がしい思考がカラフルにぶちまけられたパンチのある演出に驚愕した初演。
    その後の企画公演、鬼FES.2010ではバンドの追っかけをするバンギャの狂騒をぶった取り、『何も考えてなさそう』にしか見えないキャッチーな汚れキャラに徹する姿勢が潔く、強烈に印象に残った。
    二作品とも、彼/彼女たちのアイデンティティの目印を間接的に示していたようにおもわれるのだが、今回の公演ではその兆しはポップと言えば聞こえはいいが、ポップコーンムービーみたいに安易でお手軽な自殺願望という形で表出する。
    彼/彼女らは正気なのか。正気なフリしてSOSのサインを出しているのか。その真偽を見極める目から逃れられなかった。

    ネタバレBOX

    ネットを通じて知り合った自殺志願者たちが同メンバー(未亡人)の所有する別荘にやってくる。
    彼/彼女たちは、まもなく訪れる死を祝い、これまでの人生をねぎらうパーティーを催してから練炭自殺をする予定。

    クダラナイ世界には価値がないとか、かつては同士だった者の成功が憎いとか、フラレた腹いせに。とか死にたい事情は人それぞれ。

    気持ちも気合いも整っているものの、心のどこかに迷いがあるのか自殺はなかなか決行されない。
    そればかりか、パーティーさえはじまらない。
    パーティーの終わりは、人生のピリオドを示唆する。

    それを知ってか知らずか、未亡人はもたもたとパーティーの準備に徹している。
    そうすることで逸る気持ちを落ち着かせているんだろうか。
    準備を手伝おうとする者は特におらず各自、くつろいだり、時折口喧嘩をしたりしながらも間もなく訪れる己の死を想い、途方に暮れる…。

    彼/彼女らは一体何を考えているのだろう。
    自殺のこと、生きること、死ぬこと、誰かを愛するということ。
    そういった誰それの気持ちが、イマイチよく掴めなかった。
    そして、誰も本心を語っていないような疑惑に囚われた。
    そういえば、いちばん最初にロ字ックをみた時も、そうだった。
    ギリギリまで感情を吐き出さない若者を
    『何を考えているのかよくわからない』とおもったのだった。

    相手の気持ちがわからないことは日常生活を振り返ってみると決して珍しいことでははないし、相手に本心を見透かされないようにすることだって恒久的に行われている。しかしながら演劇というフィールドにおける『わからないこと』はなにかとネガティヴな感情として捉えがちである。(第一、自身が理解できないことをひとは恐れるし、場合によっては無関心にもなる。)
    そういった摂理や事情があるなかで、それでもあえて本音を悟られない素振りをみせるのは、理解や共感を超えた世界が存在することを、それを認め合おうとしない趣向がはびこることへのアンチテーゼを臭わせる。そして誤解をおそれずに信念を貫くこと。
    このセオリーは非常にロックだと私はおもう。

    話はやがて、ぐだのパーティーははじまるものの、”生きたくない、逝きたくない”の振り子で自尊心もポリシーもふらついた鳴かず飛ばずのピン芸人が、売れに売れるばかりでなく、間もなく結婚式を迎える元相方を、死ぬ前にぎゃふんと言わせるためにメンバーらに協力を募り、花嫁を奪いに行って人生の目的(誰かのために生きること)を見つけた芸人は死にたいから生きたいへと転調し、事なきを得る。その他の者たちもそれぞれわずかながら、生きることに対して前向きの兆しが見えた。
    それは表向きにはハッピーであるかもしれない。
    そしていい大人たちのドタバタ劇を横目でみていた女子高生の叫び。
    どんなに世界を憎み、蔑んだとしてもロックだけは自分の味方なんだって気付いたこと。ここにいていいんだよ、って教えてくれたこと。
    裏を返せば誰もわたしを救わないシビアな現実をこれからサヴァイヴしていくことに気付いたことは、絶望的かもしれないが、女子高生の小さな成長をもたらしたのではないかとおもう。
    だからラストで人類肯定曲が流れた時、なんか救われた気がした。
    それは一瞬の儚い共同幻想かもしれないけれども、明日に繋がる希望だと信じるほかないという諦めや切なさを飲みこむ強さがあった。

    欲を言えば、核心に踏み込みこまないことを武器にした”混沌とした乱雑さ”をもっと感じたかったし、“死“と”生”の揺らぎやその質感をざらついた感触でもって多層的に、そしてストイックに打ち出してもよかった気がする。
    とはいえお得意のマシンガンジョークは笑えなさ過ぎてかえって笑けてくるし、心地よいタイミングでセンスの良い音楽が流れるのは流石だし、独自性を持っているロジメンも着実に増員しているし、次回は王子小劇場だし、見逃さないっ!

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    2011/03/07 00:58

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