月を抱く人魚 公演情報 世田谷パブリックシアター「月を抱く人魚」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    鈴木アツト氏作品だと思ってチケットを買った気がするが、脚本だけだった。

    アイドル・ホラー演劇。東映とかの安いVシネっぽい。主演の岡本圭人氏は滝沢秀明みたいでカッコイイ。小柄なんだな。引き締まった肉体、美しい上半身。
    ヒロイン、南沢奈央さんはショートカットがよく似合う。ショートパンツからスラリと伸びた脚。
    主人公の親代わり的友人、薬丸翔氏はどこか森脇健児や山本太郎っぽい抜け具合。台詞のトチリが多くハラハラした。
    彼の恋人である占い師、鈴木結里さんは若い頃の室井滋っぽい。
    要所要所の複数の役を兼ねた相島一之氏は今回みのもんたっぽいかも。
    主人公の父親役だが、兼ねている金魚すくい屋の時の上村聡氏は川谷拓三っぽかった。
    大女優、松岡依都美さんの無駄遣いに愕然とした。

    金魚すくいの演出は鈴木清順や寺山修司の映画をやりたかったんだろう。

    絵画モデルの岡本圭人氏は依頼人の画家・南沢奈央さんの部屋でデッサンされつつ肉体関係を持ってしまう。南沢奈央さんは人魚画専門の画家で岡本圭人氏の背中に背びれを描いた。目が覚めると部屋は廃墟、彼女はいない。どうしても彼女ともう一度逢いたい岡本圭人氏は手掛かりを頼りに必死に捜す。

    『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』
    遊びをせんとや生(うま)れけむ
    戯(たはぶ)れせんとや生(むま)れけん
    遊ぶ子供の声聞けば 
    我が身さへこそ揺(ゆる)がるれ

    ネタバレBOX

    第二幕、松岡依都美さんの語る日本画にとっての色論が興味深く俄然面白くなる。天然の鉱物を砕いて作製する岩絵具。硫化水銀の鉱物、辰砂(しんしゃ)を砕き朱色の顔料とする。岡本圭人氏と南沢奈央さんの織り成すデッサン場面のリフレイン。互いを知り味わっていく性交のような遣り取りのデッサン風景。岡本圭人氏の肉体美は絵画モデル役としてプロフェッショナル。絵画モデルで生計を立てている33歳という役柄、20代前半の方がキャラとしても精神年齢としてもリアルなのにと思ったがこれは岡本圭人氏の実年齢だった。

    装飾が上にせり上がると宮木の部屋の上に上下反転した部屋が現れる。『ウイングマン』のポドリアルスペースのような異空間の表現。

    『雨月物語』の「浅茅が宿」と「青頭巾」がモチーフ。「浅茅が宿」の登場人物である勝四郎と宮木。松岡依都美さん演じる高名な日本画家、青頭金子(あおとうかねこ)=青頭巾という駄洒落。ちょっとだけ「夢応の鯉魚(りぎょ)」と「菊花の約(ちぎり)」のエッセンス。

    複数の脚本家が関わった為、まとまりがつかず失敗した大作映画みたいな脚本。思いついたエピソードを脈絡無く無理矢理詰め込んだ為、夢オチ幻覚オチその場の嘘話が続く。主人公の設定も母親が失踪し、戦場カメラマンの父親に施設に預けられ、施設で(?)出会った同世代の男女が親代わりとなって世話を焼いてくれている···、といった掴み所のないもの。失踪した母親も安土桃山時代の安土城の天守閣に障壁画を描いた女流画家も何もかもが雰囲気。ムード怪談でしかない。主人公が時空も因果律も喰い破って宮木と一緒になるしかないネタ。

    ※今年のパブリックシアターは酷い。ちょっと関係者で話し合った方が良い。脚本の良し悪しを判断出来る人がいないのだろう。商業作品(大衆娯楽)と芸術作品、どちらのファンからもそっぽを向かれる内容が続く。
    大衆娯楽小説と純文学の違いについて、かつて『作家の値うち』だったかで福田和也が論じた。「大衆娯楽小説は家の中の部屋の間取り、インテリアの配置やそのセンスを楽しむもの。純文学は家の構造そのものの是非、意味合いについて考えを巡らすもの」。(もう記憶が曖昧で全く違うかも)。演劇の場合は商業作品=有名人が出ている筋が分かりやすく作品の意図が掴めやすいもの。芸術作品=作家の思想や価値観、世界の観方に感銘衝撃を受け味わうもの。パブリックシアターはどちらも取ろうとしてどちらも取れていない。

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    2026/08/16 16:01

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