卓 公演情報 風雷紡「」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    吉水女史の処女作をリクリエイトとの事。地方の旧家を舞台にした金田一耕助が登場しそうなサスペンス色濃い物語に魅入らされ、風雷紡を貫く「事件の背後に時代あり」の原型を認めた。
    敗戦を知らせる玉音放送。家督を継ぐのは誰か、出征中の次男の名が当主の口にも上るも、聡明だが病弱の長男の娘にスポットが。家に出入りする武道の指南役(今で言う家庭教師のような?)の子息が軍服姿で現われ、婚約者にと紹介される。これを見て苛立ちを見せる長男の妻は、家内を賢く切り盛りする姿にも旧弊さが滲む。前掛けをした使用人の女性ら、故あって住んでいるらしい謎の男女(白シャツに黒のスラックス、スカート)、舞台上に幾つもある柱時計。敗戦直後の世相を背景色にした「家」という異空間が導入から際立つ。この空気感、照明の届かない暗部がミステリー性を静かに煽る。謎の存在を謎のまま、台詞に多くを語らせず、その心地良さに酔わせて飲み込ませる。B1を巧く使った劇空間、美術照明(特に照明)は殆ど完璧に思えた。

    ネタバレBOX

    代々養蚕業を営んだ地方の名家である藤森家の揺らぎ。冒頭家長である藤森泰彦(斎藤圭祐)は皆を集め、家の行く末を案じた結果、自身の孫、その名も絹代(吉水雪乃)に婿を迎えると語り、胴衣をまとった和田英(福来せんり)に「えい」と呼ぶと「はい」と応じた英が息子を連れて来る。軍服の好男子・盛一(生島誠人)である。
    戸惑う絹代に彼は「私は、待ちます」と告げる。それは家のために婚姻を急いでいるだろう泰彦に対し「個人の意思」を表明したに等しく、その誠実さを絹代は受け止め、二人の恋物語は静かに進行する。
    が、一方不審な事が起き始める。「不審」とは最初判らない。この所咳き込みの出ていた泰彦が居間で再び咳き込んでうずくまり、家族が見る中粉薬を絹代の介助で飲んだ直後、悶え苦しみ、絶命する。
    現社長である泰彦の長男・雅彦(山村鉄平)が家の者らの頼る所となるが、元々家の者は(泰彦の意向を汲んで)次の家長は出征中の次男・龍彦(高橋亮次)であり、生死不明のため婿養子の話があった、という認識である。そしてある日、龍彦の所属した南方の部隊が玉砕した、との報を受ける。(台詞にあったか失念したがフィリピン・レイテだったか。史実として玉砕の報は戦中は控えらえていたのか、戦死の報は家族に伝えられたのではなかったか・・劇中では確か敗戦直後に伝えられた事になっていたが、地方によってはそういう事もあったかも。)
    ところが父の死の直後、外地で龍彦と行動を共にしたという地元の友人・小口一政(祥野獣一)が、龍彦生還の一報を伝えて来る。程なく現われる龍彦は、見る影もない姿。脳に障害を負い、記憶は喪失し、パニック障害を持つが、子供のような言動を繰り返す。「未亡人」から妻に返り咲いた真澄(月野原りん)は動揺する。数日後、雅彦が「龍彦に家督を譲る」と宣言する。その妻・繭美(生粋万鈴)が激しく抗議する。こんな事があって良いのか・・(裏で彼女は夫に、貴方はずっと私の事など考えては下さらなかった・・と涙ながらに罵る)。この雅彦と龍彦のキャラについては過去に言及する台詞の中で、龍彦が持つ天性の楽天性や明るさ、天真爛漫さが説明される。
    家族内の情報を観客に対してアナウンスする使用人らと対照的に、謎の伏線を打ち続ける存在が、朝鮮に進出した泰彦と出会い、日本に引き取られたという兄妹・林修治(杉浦直)、明子(本間理紗)。兄は片足を引き摺り、手拭いを腰に下げ、住み込みの使用人として雑用に勤しみ、家が面倒を見ている。妹は世の価値観に染まらない批評的な視線を秘め、兄だけが時折彼女を諫める姿がある。明子は泰彦への思いがあり、またある時絹代の純真さに打たれ「約束」の指切りを大事に胸に仕舞うが、泰彦といい絹代といい彼女の内部では偏執的な拘りとなる様子がある。
    龍彦が気を許す唯一の男・小口も時折龍彦の様子を見にやって来る。
    泰彦の妻・貞(下平久美子)も夫亡き後、良心をもって助言を行なう権威ともなるが、その死が訪れる。第二の死。龍彦の社長就任の祝いの席とする流れで、繭子が「では、例の酒を」と明子に命じて持って来させる。絹代が注いだ酒を、「いいえこの家の家長はまだ私です。私から」と酒を口にし、倒れる。龍彦を狙った殺人だ、との認識が現代のミステリーならすぐさま浸透するものだろうが、即「殺人」→「警察」「調査」とは現代の感覚であり、その認識の緩慢さをさほど違和感なく見せ、人間の台詞に人間を語らせる事を可能にする。作劇的には龍彦を歓迎しない繭子が手配した酒で人が死ぬ、という運びで人間ドラマが描かれている。結果的に繭子は犯人ではなく、ある夜実の娘の絹代と母が語る場面があり、赤子の絹代が自分に全くなつかず、乳も飲んでくれなかった事を語る。その逸話はこの家での自分への処遇を象徴するもので、耐えた母の来し方、言わば弱さを娘の前で吐露するのも、義母の死という異様な空気によるものだろうが、この会話の中で娘が母に「貴方を信じます」と言い、自分が母を守るとまで言った後、照れ隠しのように母が娘に水を所望するが、指示を受けた明子が水差しを持って来た結果、繭子は亡くなる。
    小口が実は刑事でもあった事、最後には絹代の婚約者・盛一のカミングアウトもあるのだが、殺人の犯人は観客に示唆されていた通りであった。

    殺人の動機は、うまく説明されていない。彼女が激した口調で語った言葉は、自分でも説明しきれない事を説明しようとした結果、的外れな言葉を吐いてしまったのだろう、くらいに受け止め、私らがそれぞれ補足するしかないものかな、と。
    (これについてまた少しだけ、後日把捉してみる。)

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    2026/08/14 08:45

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  • 重要情報を恐縮。三度見比べてやっと気づきました。;

    2026/08/15 13:49

    ちなみに吉水さんです。
    私も昔同じ錯誤をしていました。

    2026/08/14 21:39

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