隔たる 公演情報 JACROW「隔たる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2026/08/08 (土) 13:00

    座席1階

    連続射殺事件で死刑判決を受けた永山則夫をテーマとした話。「永山基準」と呼ばれる死刑を選択する量刑判断の枠組みができたことで知られる死刑囚だが、今作では獄中結婚した妻の人生や視点から描かれている。

    政治・経済をテーマとしたJACROWが、社会的な事件を取り上げるのは久しぶりとか。田中角栄役で著名な狩野和馬が永山の弁護人役で登場する。だが、何といっても出色だったのは永山の妻を演じた宮越麻里杏であった。今作は彼女のためにあった舞台であると思う。
    物語は宮越演じる妻の生い立ちからスタートする。永山の故郷は北海道・網走だが、彼女は沖縄県。この二つの故郷を背景として描かれた生い立ちが象徴的だ。この二つの地がラストシーンで重要な要素として浮上してくるのがとてもいい。
    永山は獄中で「無知の涙」という手記を書き、小説家として文壇に出るという人生を送る。ベストセラーの印税は遺族に渡したいと願い、本作でもその通りに描かれる。これは永山夫妻側からの視点だが、中村ノブアキは事件の犠牲者の家族を重点的に登場させ、その苛烈な思いを舞台に提示していく。また、年月を重ねるにつれて被害者家族の胸の内に変化が表れてきたところも鮮明に描いている。ここが、この舞台のとてもいいところだ。

    劇中でも触れられているように、凶悪な事件は後を絶たず、年かさが行かない被告人にも死刑が選択されている。「殺してやりたい。殺すだけではすまない。できる限りの苦しみを与えて殺してやりたい」という言葉は被害者家族のセリフとして今作でも登場するが、この思いが死刑制度を支えていると言ってもいいのではないか。死刑制度に反対しづらい世論は根強いし、刑罰の厳罰化の風潮も強まっている。この舞台はこうした世の中に異議を唱えているわけではないと思う。その答えはラストシーンに出てくる。これを見逃してはならない。

    中村さん、JACROWは政治や経済だけとは言いません。見事な舞台でした。

    「隔たる」外伝として、本編の終演後に永山の母を演じた水野あやの一人芝居がとてもよかった。次回は11,22日だ。こちらもぜひ、見てほしい。

    0

    2026/08/08 16:45

    1

    0

このページのQRコードです。

拡大