旧体 公演情報 劇団papercraft「旧体」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    以前の観劇では戸惑いが大きかったのだけど、今回は過去作とは違った手触りもあり観られてよかった。
    "球体"化という突然変異を経て、「全能」に生まれ変わる新たな人間と「無能」のまま生きる"旧体"の人間に二分される世界。とはいえSF色よりも現代に置換できる軋轢や分断自他におけるディスコミュニケーションの絶妙な出力が印象に残った。ここが前観た時とはガラッと違う感触だった。
    (以下ネタバレBOXへ)


    ネタバレBOX


    「全能」と「無能」の感度の差を際立たせる音と光の演出も効果的で、中でも選曲が、歴史上初めて声楽を取り入れた交響曲「第9(歓喜の歌)」であることを示唆的に感じた。「人間の声を交響曲に使う」は当時にしたら旧式と一線を画す革新で、また第9は戦争とも関わりの深い交響曲でもある。今でも年末年始に「◯万人と奏でる第9」などとして、博愛の象徴や復興や平和への祈りとして多く演奏されるこの曲は「声」という「人間の感覚や力」なくして完成はしない。できないそのことは、『球体』で描かれた、世界が進化しているのか/退化しているのか、新しいのか/旧いのかといった命題をコントラストを以て問いかけるのに打って付けだったように思った。
    (※極私的な解釈です!)

    SFよりドラマにおける演出が印象的だっただけに、この設定(球体)でならなかった理由にもう一歩踏み込まれていく様をみたい気持ちにも駆られたけれど、今後「人間ドラマ」に全振りした作品も生まれるのではないか、という期待の方が大きかった。前に観た時に私が感じた戸惑いがまさにそこで、設定だけが一人歩きをしていたり、またその設定自体にも既視感を覚えたことなどから、内側に流れるドラマを欲してしまった節があった。今回は違った。

    「社会規範」という定義の内外で、一人ひとりが抱える圧倒的な寂しさや焦燥や偏執さが生々しく伝わってきた。これは本当に俳優の力も大きい。全員素晴らしかった。
    尾上寛之さんはついこの間九劇で観たばかりなのにこの短時間での凄まじい変幻に圧倒されたし、村上さん佐久間さんという喜劇玄人が演じる癖あり人物の解像度。あと常連若手勢イトウハルヒさんと櫻井健人さんの底支えもやはり素晴らしかった。作風上客席もどうしても緊迫するのだが、あんな張り詰めた中でも櫻井さんが随所でしっかり笑わせて、もの凄いことだ!

    主人公は最後、「球体はいつも私の人生をぐちゃぐちゃにする」として、子の死因になった飴玉や妊娠(した体)の破壊を選ぼうとするが、結局は飴玉だけだったんじゃないかな?って。
    球体とか全能とか無能とかどうでもよくて、飴玉が、それによって我が子を死なせた夫や自分が憎かっただけなんじゃないかな。妊娠出産育児を憶えた私の体はそう思うのを堪えられなかった。妊婦の腹は確かに丸いが、丸いだけじゃない。毎秒変化して突然角張ったり、硬くなったり、中の様子が皮膚に浮き出たり色んな形になる。そこに別の命があるからだ。他者がいるからだ。土村さんの繊細な目と声色を通じて私はその葛藤を追体験した。だから最後はショックで、そうなってないとまだ信じてる

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    2026/06/30 16:35

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