かいころく 公演情報 安住の地「かいころく」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    『かいころく』は養蚕農家編、蚕種編、工女編の3部作から成る安住の地のツアー公演で、私が観劇したのは、横浜の若葉町ウォーフで上演された養蚕農家変・工女編でした。

    ネタバレBOX

    上演に入る前に、作・演出を手がけた私道かぴさんから、本公演の背景や、なぜ「蚕」に関するお話を書こうかと思ったのか、そこにどんな出会いや気づきがあったのかが語られました。簡潔でありながら、公演の意図や思いが伝わるとても丁寧な解説で、演劇作品に入る導入としても、舞台と客席を均すコミュニケーションとしても素晴らしい前説でした。その前説によると、本作の制作は「元養蚕農家で上演する作品を」という依頼をもとに始まり、取材やフィールドワークなどを重ねて作られたそうです。そうした人々の歴史や暮らしといった背景や、そこで発生する生の声からあらゆる言葉やシーンが紡がれたことが実感できる、生々しく繊細な作品でした。

    『養蚕農家編』は養蚕農家に生まれた青年の人生やその葛藤を描いた一人芝居で、男手を中心に行われる厳しい肉体労働や母への思い、やがて戦争に召集される様子までもが描かれていました。対して『工女編』は、同じく一人芝居でありながら、養蚕農家に生まれ育った女性が製糸工場に出稼ぎにいくところから結婚や出産などを含み、数世代にわたって女性の姿を描いた作品でした。日本における男性性と女性性をめぐる様々な歴史や問題を考えるにあたって、この二つがセットで上演されている回があることにもとても意味があると感じました。

    同じ女性としては、13歳という年齢で家を支えるために自立せねばならなかった少女の姿に、母性との距離感やえも言われぬ寂しさ、戦争がもたらした様々な苦しみや、現代にも通じるヤングケアラーといった問題なども切々と想起させられ、観劇後にもいろんなことを考えました。カンパニーの代表作としてはもちろん、戦争やそれによって人々の暮らしにどんな変化がもたらされたのか、また、性や性差をめぐる問題を考える上でも、今後も何度もさまざまな場所で再演される意味のある公演であると感じました。
    関連して、チラシ束には劇場付近で開催されているシルクにまつわる美術展の案内が入っており、そのことに言及がされていたことも素晴らしく、「養蚕」という営みが最終的にどういった形になるのか、人の手に届くのかも含めて、深く考え抜かれたクリエーションであることが伝わる一幕でした。

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    2026/06/23 15:07

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