公演情報
Pカンパニー「闇の中に」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2026/06/07 (日) 13:00
座席1階
Pカンパニーの「罪と罰シリーズ」の中でも、これは恐らく最も難しい題材だ。舞台化に挑戦したこと自体にまず、敬意を表したい。心神喪失もしくは心神耗弱などで不起訴、あるいは無罪となった容疑者・被告人は、20年ほど前にできた「医療観察法」で司法の判断を経て入院・通院で専門的な治療を受ける。ほとんど知られていない実態に切り込んだこと自体が価値あることだが、今作はこれについて犯罪被害者の視点からも描くというさらに難しい挑戦を試みている。
演劇集団円の劇作家内藤裕子を起用し、詳細な取材を重ねて練り上げられた物語だ。物語の中心となる医療観察法病棟(対象者が入院治療を受ける)でどのような治療がどのくらいの期間行われているか、知っている人はほとんどいないだろう。綿密な取材の結果だろうが、その一端が演劇という形で明らかにされた価値は大きい。自分も不勉強ながら、その実態をこの舞台で学ばせてもらった。
さらに、不起訴・無罪となった容疑者・被告人がどこにいて何をしているのか、個人情報を盾にして被害者側も容易に知ることができない現実も描かれる。ただ、近年は被害者に、不十分であるがある程度の情報は伝えられることになっている。加害者・被害者の人権という観点だけでなく、さまざまな感情が真正面からぶつかり合う事柄なのだが、当初に比べれば被害者側の思いが汲み取られるような方向にいっている。舞台ではラストシーンにかけてその点についても触れられていた。
盛りだくさんの内容で仕方ないのかもしれないが、この殺人事件がどのようにしてなぜ起こったのかというところに全く触れられていないのは、欲求不満が残った。被害者や被疑者の人生を考える手掛かりになる部分なのに、ここまでばっさり切り捨てた台本には疑問が残った。また、事件発生時には記者たちが被害者や被疑者の家族に取材に押しかけ、いわゆるメディアスクラムになるような場面が描かれているが、これはかなりステレオタイプなのではないか。記者たちのセリフを聞いていたが、このような発言をする記者は、そもそも事件記者失格なのである。(かつてこのような取材をする記者が目立ったのは事実だとしても)
舞台をよく理解するためには、医療観察法について少しネット検索してから劇場に向かうのがお勧めだ。客席の側も、覚悟を決めて舞台に臨むという姿勢が必要な演劇だと思う。