公演情報
劇団チャリT企画「ブン/ダン」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2026/05/23 (土) 19:00
劇団チャリT企画の公演を観るの自体は確か、今回の劇含めて3回目だったと思うが、相変わらず日常の会話の中に色濃く、それでいて不自然でない感じで、政治や社会問題が取り上げられ、それでいて真剣に緊張感を孕み続ける展開ではなく、大いに観客を笑わせ、飽きさせず、固唾を飲んで見守ると言うよりかは、肩の力を抜いて気楽に観ながら、劇の最後で深く考えさせられ、すーと寒くなるような作風で有名だ。
ルールもへったくれもあったもんじゃない”力”によって支配されたしっちゃかめっちゃかな世界
「センソーハンタイ!」を叫べば「センハラですよ!」と訴えられ、スパイ防止法が施行され、国旗損壊罪が成立し、憲法改正が次々に実現して、国内の国民の分断も行くところまで行ってしまっているありそうであり得ない近未来SF劇だったが、劇の具体的な舞台となるのはシェアハウス、それもドラマやLGBTQ+の恋愛リアリティーショーに出てくるようなお洒落なカフェのような感じではなく、1960年代や1970年代で言うところの貧乏学生や売れない画家や漫画家、映画監督、演劇人がいた下宿をもう少し清潔感がある感じにしたといったセットち登場人物で、何だか親しみが湧き、近未来が舞台の筈なのに、チャリT企画らしさが全面に出ていて、劇中の会話に出てくる家の外を自警ロボットが彷徨いているのが日常化していたり、国旗が破かれたようにも見えるデザインのTシャツやポスターも国旗損壊罪に当たるかも?と言うような拡大解釈の危険性も会話の中に落とし込んでいて、その日常に潜む不穏さとのバランスの取れた描き方に感心した。
シェアハウス『テラダハウス』内の掲示板は、基本何を貼っても良いことになっていたが、新入居者で普段会社でコンプラ研修等にも関わっているという二階堂さんが、テラダハウスのオーナー寺田さんに、掲示板に貼られていた反戦デモのお知らせのチラシや戦争反対について書かれたビラ等が掲示板の一定数をしめていることを取り上げて、今の時代反戦デモや戦争反対について書かれたビラを見て、不快に思ったり、傷付けられたり、精神病んだりする人がいるというような懸念を伝え、それを受けた寺田さんはシェアハウスのみんなで話し合った上どうするか決めようと言うような話しが劇中出てくる。
そして、まずはシェアハウス内の皆と話し合ってから決めようと言うつもりだった寺田さんがいなくて、二階堂さんしかいない間に、反戦デモのお知らせのチラシや戦争反対について書かれたビラが無くなっていたり、その後、日の丸が破かれたようにも見えるデザインのポスターが無くなっていたり、テラダハウス居住者の中村さんの弟がデモ中に自警ロボットに標的にされ、ボコボコにされ、片足を負傷した関係で1次テラダハウスに住まわせるが、それでなのかどうなのか、シェアハウス『テラダハウス』の外回りを複数の自警ロボットに包囲されるというような危機的状況が劇の後半で描かれ、シェアハウスの住人内でも猜疑心と意見の相違から分断が深まっていくという展開になっていき、ただ普通に暮らして、平和的なデモ行進に参加する人もいて、自由にものが言えて、表現できてと言ったような必要源の日常が静かに少しずつ、音もなく壊されていく怖さが、時々下らない笑いも含めて描かれていて、思わずゾッとしてしまった。
しかも、シェアハウス『テラダハウス』内に、一見人当たりが良く、性格も良さそうに見え、それでいておかしいと思ったことにはハッキリ言うタイプに見える二階堂さんが新入居者として入居してきたことが切っ掛けで、反戦デモのお知らせのチラシや戦争反対について書かれたビラが無くなっているトラブルや電話傍受が明らかになったり、但し盗聴器は見付からず、盗聴器を設置した犯人は分からずといった感じのことが立て続けに起こり、もしや二階堂さんは政府のスパイなのではないかと匂わせる場面も観客には見せており、本当に劇の最後の方で確実にそうかもと感じさせる場面が展開し、震撼させられた。
世の中、イカにもスパイと分かるような言動、行動は映画やドラマではあるまいし、しないよなぁとその手口の巧妙さに呆れ、感心してしまった。
しかし、現実には政府のスパイが今時潜入捜査的な接触の仕方はこの情報社会においてリスクが高過ぎる。
実際には、もっと目に付きづらいパソコンやスマホ内の履歴や個々人のSNS情報から、どういった思想信条、どういった嗜好なのか、名前や電話番号、メールアドレスまでも、やろうと思えば割り出し、言論統制といったことにも活用できてしまうことが技術上は可能。
今のところそういった個人情報を政府が言論統制的な枠組みにおいて、露骨に活用しないのはまだ与党内にも最低限の倫理観がある議員が一定数いるからとも言えるが、この先、高市首相の異性の良い発言も相まって、今回の劇世界が完全に現実とはかけ離れたディストピア近未来劇とも言えないところが、非常に恐ろしく感じた。
正に、今演る、意義のある劇だと感じた。
劇の最後の方の場面で自衛軍をイスラエルに派遣が決定したニュースにシェアハウスの居住者が騒然となり、シェアハウス居住者の雄大さんと大平さん、中村さんが警察に捕まり、と言ったような気な臭く不穏さを残し、全然ハッピーエンドとは程遠く、一抹の希望すらない展開に愕然とし、私たちが政治や社会問題に対して、曖昧戦略や無関心な態度を取り続けたら、いつかこれに近い事が起こり、いつの間にか戦争に加担させられかねない状況になってしまう可能性が高いと感じ、気を引き締め、物事や政治、社会問題や戦争、紛争に対して諦念に駆られず、常に感心しを持ち続け、選挙にも生き続けることが大事だと、改めて、強く感じた。