母 公演情報 劇団文化座「」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    2023年5月、チケットを持っていたがコロナで中止に。ようやく観れた。佐々木愛さん82歳、最後の主演作との謳い文句。想像以上に素晴らしい作品。佐々木愛さんは凄いな。ひれ伏す。日本人の心の奥にある温かくて優しくて全てを受け止め許してくれるお母さん像の体現。こんな母親が家にいてくれたら子供は真っ直ぐ正しく優しく胸一杯に育つ筈。小林多喜二というちょっと変人めいた作家の人物像が少し掴めた。

    小林多喜二は藤原章寛氏、佐々木蔵之介や坂本昌行系。カッコイイ。
    その弟役の小佐井修平氏は本当に十代に見えた。
    小林多喜二が生涯を懸けて救おうとした田口タキ(今作ではタミ)役高橋未央さん。卑屈な彼女の小林家との関わり合い方が大きな主題となる。同じ貧しくも心豊かに暮らす小林家に私みたいな無学な者は不釣り合いだと自身を責めて逃げてしまう。彼女と佐々木愛さん演ずる母セキとの遣り取りが今作の要。

    「カタツムリが背延びをしたように延びて、海を抱え込んでいる函館の街を見ていた。」
    小林多喜二の代表作、『蟹工船』とは日本の縮図。どうにか皆の力を合わせて劣悪な環境を変えていかなければならない。その方法論を大衆に説かなければならない。

    今作は井上ひさしの『組曲虐殺』とセットで観ると尚良いと思う。10月に風姿花伝で劇団しゃれこうべが演るので要チェック。

    これで最後とは言わず、佐々木愛さん主演でまだまだ作って欲しい。勿論観に行く。太宰治の『津軽』なんかどうだろう。声も動作も一流のプロフェッショナル。

    ネタバレBOX

    「ほれっ! 多喜二! もう一度立って見せねか! みんなのために、もう一度立って見せねか!」
    この有名な台詞を静かに抑えて呟くように言うリアリティー。観客を泣かせる為ならもっと感情的に狂乱する選択もあるだろう。それを自分に言い聞かせるようにしっかりと呟く。流石。

    キリスト教の思想を現実の社会に投影する手段としての共産主義。全ての人間が平等な社会の実現。現実の共産主義ではなく、人々の心の中で理想に燃えていた共産主義は美しい。

    もう駄目だと追い詰められた時、最後に思い返すのは遠く懐かしき貴女の記憶。あそこに戻ればやり直せる。あそこに帰ればもう一度自分自身を取り戻せる。誰の心にもあるそんな原風景。

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    2026/05/25 18:05

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