ろくでなし啄木 公演情報 ホリプロ「ろくでなし啄木」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    啄木の叫び
    とにかく「うまい」。
    展開も構成もいいのだ。
    わずか3人だけの舞台なのに、目は3時間舞台に釘付けになってしまった。
    三谷幸喜さすが! と言っていい。

    ネタバレBOX

    啄木が愛人の前から姿を消したある温泉宿の1日が物語の中心になっており、それを啄木の死後、愛人と啄木の友人が振り返るという、ややミステリー的要素のあるストーリー。

    前半にトミの口からその日の出来事が語られ、休憩後にテツが同じ日の出来事を語るという構成である。いや、そういう2部構成だと思ったのだが、そうではなかった。なんと言っても、その後の展開が素晴らしいのだ。

    単に2人の、それぞれの主観の違いからい出来事を多面的にとらえるというだけではなく、2辺にもう1辺を加えることで、立体に立ち上がっていくように、物語の本当の姿が立ち上がっていくという構成が素晴らしいのだ。
    2辺とはトミとテツであり、もう1辺とは啄木である。

    それまで「啄木」のタイトルがあるものの、啄木はどこか他人行儀で物語の中心にいるようでいない。どちらかと言うと、トミが中心のように感じていたのだ(前半がトミの記憶なのでよけいに)。
    ところが、ラストへ進みながら、啄木が中心にすくっと立ち上がり、この舞台が見事に啄木の物語になっていくのだ。

    啄木の「悪」への憧れと、「悪」になり切れない中途半端さ。モノを作り上げていくということへの苦悩と、自らが描いた虚像の枠に自らをはめようとして失敗していく様とが共鳴していく。そして、彼を取り巻いていた、彼への「愛」の姿たちに触れたときのおののき。
    そう言ったもものが、徐々に顔を見せてくるのだ。

    これには唸った。
    ホントに凄いと思う。

    2人にとって啄木とは何者だったのか、そして、啄木は彼らに何を期待し、何を得たのか、本当に素晴らしい舞台だったと思う。

    テツ役の中村勘太郎さんの激するときの、モロ歌舞伎口調は、ある程度意図されていたのだろう。啄木役の藤原竜也さんの前半の抑え気味さは、後半のジャンプのためだったと思われる。その塩梅が見事。後半の振り絞るような、言葉にならないやり切れなさの全身表現が素晴らしいと思った。また、今回、初舞台のトミ役の吹石一恵さんは、固さはあるものの、この重責を見事に務めていたと思う。
    存在と肉体だけが舞台にあるようなシンプルな、逃げ場のない舞台で、3人の役者が絡み合い、ぶつかり合い、調和して、見事にそれを為し得ていたということがとにかく素晴らしいと思った。

    シンプルなセットの使い方もうまいし、ちょっとした遊び的な要素の入れ方もうまいと思った(ミカンの瞬間移動、前後の座敷の入れ替え等々)。

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    2011/01/18 02:31

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