ROOM 公演情報 劇団黒テント「ROOM」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    黒テント、というだけで出向いてく客も結構居るだろうが、自分もその客層の一人になってしまっておる。芝居を習い性で観に行く事じゃ既に焼きが回ってるのかもだが、せめて評は厳しくである。
    団員総出の舞台は感慨深いものがあるが(今回はプラス龍昇氏)、齢八十になんなんとす佐藤信氏の新作てのも然りで。全てを可能にする演劇という世界に無防備なまでに身を委ね、遊ぶ姿がある。文脈や繋がりが読めない箇所も多々。後々回収される伏線を見過ごすまじとの緊張はやがて手放し、さてこの奇妙な舞台をどう楽しもうか、楽しめるか、に関心が移っている。
    既視感がある。昨年亡くなった福田善之氏が老境にしてサルメカンパニーに書下ろした作(上演は一昨年だったか)。中々厳しいシナリオだったが書き手一流の一筆入魂の勢いと詩的台詞で乗り切る技を駆使し、空中分解しかねない作品を繋ぎ止める。思うに、演劇人にとって演劇の価値即ち人生の価値と想定するなら、彼らには最早ストーリーの完結に心血を注ぐだけの意義を感じられず、人生といふものの何たるかを言い残したい欲求が勝るなんて事があるのかしらん、と勝手な想像を膨らませたりする。
    ストーリー性の薄味と老境、で思い出すのは黒沢明監督の「夢」とか。我が人生を振り返って見え来る場面は夢の如し。
    芝居に戻れば、こちらは演出も秀逸で楽しめたが別役氏が病床で書いたというエッセイのコラージュのような「背骨パキパキ」(名取事務所)もその部類のようにも。が別役氏はその後亡くなる前にガッツリな戯曲を書いている。
    さて黒テントatスズナリは、舞台と客席をつないで「所詮作り物」の演劇だと吹聴する狂言回し(内沢氏)を配して、新聞の求人欄を見て応募し、面接に来た男(龍氏)を翻弄する不条理劇。求人欄には「潜水夫募集」とあった。町(村)に到着するなり、ままならないコミュニケーション困難に見舞われ、面接にこぎつけるも役所の発行する証明書が必要、それが届くまで待ちぼうけとなる。住み込みと聞いて身一つでやって来たのに...。カフカの審判みたい。海岸のある村で、、というとつげ義治の短編の一つにあったな。
    しかし本作には他の軸もあって、どう絡むのか分からない。複数の着想を無理くりに織り物にしたと思しい。歌まである。意味深である。が断片的。かくして混迷の舞台は終幕を迎える。
    黒テントというよりは佐藤信的世界。「メザスヒカリノ・・」が黒テント始めの自分には難渋であるが、何にせよこの集団が元気に何かやってるのは嬉しい。滝本女史も久々に目にした。平岡氏も。服部氏がやはり最後を締め、澱みないソプラノサックスを披露したが、健在振りを何時まで見せてくれるだろう。老獪な立ち姿をもっと観たい人は多いに違いないのだが。。

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    2026/04/01 23:39

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