藤田嗣治〜白い暗闇〜 公演情報 劇団印象-indian elephant-「藤田嗣治〜白い暗闇〜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    藤田嗣治(つぐはる)は名前しか知らなかった。藤田進のイメージからTHE日本男児みたいな勝手な先入観。実はおかっぱ頭にロイド眼鏡にちょび髭。ジョニ男にイッセー尾形を彷彿とさせる。赤塚不二夫のイヤミのモデルはトニー谷らしいが「おフランス帰り」の台詞は藤田嗣治のイメージもあるのかも知れない。いとうせいこうの髪型もここから来ているのかも。石橋徹郎氏大熱演。ちなみに現在公開中のアニメ映画『パリに咲くエトワール』の主人公・継田フジコのモデルにもなっている。1913年(大正2年)、学業が振るわず官費での留学の道が閉ざされた藤田嗣治は陸軍軍医の父親にお金を出して貰い渡仏。巨大な額縁のセットがカッコイイ。

    ネタバレBOX

    第2場、1914年9月、娼婦ナタリア(後東ようこさん)の部屋。かなりの美脚。ここの会話の間から妙な空気になる。わざと狙ってやっているのか?この辺から居眠りする人が目に付いた。ナタリアはポーランド移民の設定。絵のモデルから恋人に。

    第3場、1914年12月、藤田嗣治の弟分的な画家だと言う村中青次(斉藤悠氏)の登場。

    第5場、1920年5月、結婚してアメリカに行くことを告げに来たナタリア、赤ん坊を連れて。汗もで泣く赤ん坊にベビーパウダーのシッカロールを塗るナタリア。それを凝視した藤田嗣治はおもむろにキャンバスに塗ってみる。墨汁の線が崩れない。到頭見付けた!探し続けていた画材を!

    第6場、1929年8月、村中青次は藤田嗣治の名を騙り、モデル志望の中国人娘ユーリャン(笹野美由紀さん)を抱いていた。ココリコ田中直樹っぽい。

    第一幕は演出がちぐはぐで違和感。劇場の大きさを気にし過ぎたのか空回りしている。どうもずれているような。ホンと噛み合っていない。こまつ座をやりたいんだろうなと思った。栗山民也や鵜山仁に演出を頼んだらどんな作品になっただろうか?

    第二幕からは安心して観られたがラストら辺がグチャグチャで台無しに。

    南米旅行でお金を使い果たした藤田嗣治は日本に帰国。
    第7場、1938年7月佐乃美千子さん演ずる奥さんの登場から作品にリズム感が生まれる。朝日新聞社の男、二條正士氏が戦争画の制作を依頼しに来る。安定した日常と人間関係を観客に共有させてから一気に崩すのが作劇の基本。

    木山廉彬(ゆきあき)氏の演じた文筆家見習い多門土郎は写真家・土門拳がモデルだろう。1941年、31歳の土門拳を気に入った藤田嗣治は誰にも見せなかったアトリエでの制作風景ですら撮らせた。1949年、日本を去るまで二人の交流は続いた。

    自分的には作家の駄目なところの詰め合わせのような作品に見えた。自分の体調のせいなのかも知れないのでもう一回観たいとも思う。何でだろう?ラストの方は嫌いな展開のオンパレード。役者の熱演は魅力的なだけに辛い。巨大な額縁が前方に倒れていくのが見せ場。後東ようこさん演ずる人形を持った戦火の少女も伝わり辛い。良心の呵責なのだろうが。

    村中青次の正体が『ビューティフル・マインド』的存在(自分の妄想が作り出したイマジナリーフレンド)だったことが発覚するがそれも効果的ではない。もっと自分の美学に反する軽蔑すべき存在として描き込むべき。それが自分自身そのものだったことを知ることこそが衝撃。

    この作品の駄目な部分は「戦争=悪」とハナから決め付けているところ。戦争に協力したんだから「悪」だと。もっと大きな価値観で俯瞰的に見るべき。藤田嗣治は「画家は本来、自由愛好家であり、自分は国民的義務を果たしたに過ぎない」と戦争画批判に反論した。実は彼の戦争画を見ると歴史的な大事件に遭遇した画家の興奮と高揚が伝わってくる。そんな場面で絵筆を託された選ばれし者の震え。芸術家として表現者として最高の場面。神から絵筆を手渡された者の震え出すような栄誉。そこに善悪の入る余地はない。

    戦争は一つの外交手段でもある。日清日露で領土を手に入れた日本はわざと揉め事起こして弱い国から領土を分捕ろうと企んだ。ヤクザの遣り口。調子に乗って意気がって好き放題やっていたら世界中から袋叩きに遭う。そこで目が覚めた。二度とこんなみっともないことをやる国にしてはいけないと。謙虚でおとなしい国へと。だが周りからは舐められる。中国は散々挑発してくる。イライライライラ、鬱憤は募る。筋のある戦争なら出来る所を見せてやりたくなる。一番のプライドだった経済も中国に追い抜かれた。アメリカ頼みの弱い国。もしアメリカが見捨てたら?

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    2026/03/23 06:09

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