公演情報
タテヨコ企画「野々村良枝の失踪」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2026/03/19 (木) 14:00
座席1階
タテヨコ企画はずっと前から見たいと思っていた劇団だった。やっとその機会が訪れた。結論から言うと、期待通りに面白かった。いや、期待以上に面白かった。今作は認知症の女性を取り巻く家族の群像劇。よく練られている戯曲である。
野々村良枝という70代の女性がお気に入りのリュックサックを持って黙って家を出ていってしまった。彼女はアルツハイマー型認知症。ケアマネジャーの女性を夫の愛人と思い込んで攻撃したり、トイレの失敗を重ねるようになったが、ニートの50代長男らと何とか暮らしていた。長男については今風の「8050問題」であり、良枝のことより仕事もせずパチンコの日々を送るこの息子の方が心配である。
良枝を介護しているのは、二男の妻だ。良枝には3人の子がいたが、長女は一人娘を実家に置いて仕事で海外へ行ってしまって戻ってこない。このように野々村家にはさまざまな困りごとがあるのだが、それらが少しずつ明らかにされていく。なぜ、実の子どもたちでなく「次男の嫁」が主たる介護者なのかも劇中で明かされるが、この人間関係も面白い。
良枝だけでなく、家族一人ひとりの物語がつづられる群像劇。いつの間にかバラバラになってしまった家族の肖像が描かれていく。うまいと思ったのは、狂言回しにケアマネの女性などを配置しているところだ。劇中、ケアマネが認知症の人の思いなどについて語る場面があるが、このあたり、よく取材されていると思った。ただ、多くの利用者を抱えるケアマネが、ここまで一つの家族に深くかかわるケースは現実にはめったにないと思われるが。
冒頭に登場するのは3人の子が小さかった頃の家族旅行だが、いい年をしたおじさん、おばさんがだだっ子を演じるさまには少し、驚かされた。笑うべき場面もあったのだが、客席の多くは引いてしまっていた(笑)
しかしこのシーンが実は、後段で重要なことを示唆していたという答え合わせがなされる。そこまで来て、冒頭のドタバタ親子劇の意味を客席は知ることになるわけで、まあ、年齢・風貌が子どもとかけ離れているという違和感はこの際、不問に付してもよいのだろう。
タテヨコ企画がこのような家族劇を得意としているかどうかは分からないが、今作は、次も見たいと思わせるに十分な出来栄えだった。認知症だけでなく多くの社会的な課題をうまく盛り込んでいる秀作だ。見ないと損するかも。