公演情報
海ねこ症候群「帰ってきた?! 新版:プレイス・リバティ」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2026/03/06 (金) 19:00
今回の劇は、再演ということはCoRichチラシのタイトル的にも分かるようにはなっているが、厳密には新板とはどういった感じか、新板と再演に違いがあるのか、あんまりピンと来なかったが、実際に会場に行くと、パンフレット代わりの無料冊子があり、それの中身を開演前に見たのと、劇が始まってから、出てくる登場人物たちの関係性や舞台セットの女子トイレ、トイレットペーパーなどを観てみて、しっくりきた。
具体的には、無料冊子やチラシに書かれていた主人公のトイレの住人成願寺高校3年清水詩織さん(訳あり)と廃部寸前のオカルト研究部対生徒会と謎の女子高校生(実は学校の7不思議の1つ、トイレの花子さん張本人)の全然接点が無いようで、徐々に関係性が浮かび上がってくる感じが、イラストも相まって分り易かった。
但し、実際に劇の中身を観てみると、登場人物たちの関係性や生徒会長石田亜紀さんと主人公の清水詩織さんとのかつての関係性、調整型で温厚そうに見える生徒会長石田亜紀さんが生徒会長になってから、下駄箱に必ず誹謗中傷が書かれた紙が沢山入っている、こういったタチの悪い悪戯をする真犯人が実は生徒会内で誰よりも生徒会長のどんな相談にも親身になって聴く、誰よりも生徒会長の理解者で真の友達だと豪語していて、生徒会長の石田さんからも信頼されていた女生徒だったりと、劇も終盤に差し掛かると、単なる対立、摩訶不思議でオカルトな要素、そして軽快なコメディというだけではないんだなという、クラスの陰湿な虐めや嫌がらせ、嫉妬など、学校という狭い世界の中での社会問題を次々に浮かび上がらせていく展開が、軽く想像を飛び越えていて、良い意味で衝撃的だった。
初演を私は観ていないので何ともだが、初演では女子高という設定を今回は共学の学校という設定に変え、オカルト研究部なる新たな存在も出すことで、シリアスに行き過ぎて、救いがあまりない内容になるところを緩和して、ワチャワチャと騒がしく、楽しいコミカルな部分と、トイレの花子さんやトイレの神様などの摩訶不思議な存在などが混じり合うことで、とてもバランスの取れた劇になっていたと思う。
普通謎の女子高生(トイレの花子さん)はどこか不気味で、隙きあらばトイレの中に引きずり込もうとしたりするような気がするのに、今回の劇での花子さんは、優しくて、寂しがり屋で、何処か子どものような純真さをもっていて、オカルト研究部の部員たちとも仲良くなったり、孤独感を抱え込み、相手との間に壁を作る主人公の清水詩織さんとも段々と仲良くなったり、その辺の人間より人間味のある幽霊として描かれており、一方で成願寺高校の生徒たちの人間関係のほうが余程複雑で、周りと少しでも違ったことをしたりすると、裏で陰口叩かれ、時に集団無視され、陰湿な虐めだけでなく、嫉妬や恨みの対象にさえなり、今日まで学校の頂点にいても、いつ振り落とされるか分からない、陰謀渦巻く歪んだスクールカーストとの比較が見事だった。
トイレの花子さんを親近感のわく女子高生として描いているのは新鮮だったし、トイレの神様が威光なんて微塵もなくて、庶民的な上に、細かくて、人間臭く描かれているのも共感できた。
意外と、幽霊=怪奇、ホラー的に必ずしも描く必要もなければ、神様=絶対的で威厳を持つという風に描かないといけないという事はない、柔軟性に富んでいても良いんだと立証してくれた作品だった。
ノリ的には、映画『学校の怪談』シリーズと近いと感じた。勿論、そこまでの絶望的な怪奇現象、ホラー要素こそないけれど、上手くいかない人間関係やすれ違い、虐め、嫉妬や恨みなどの要素が物語に影響を与えている部分など、良い意味で共通点が多く見受けられた。コミカルな部分が要所要所で出てきて結構笑えるところも似ていたが、今回の劇のほうがより笑える場面も多くあった。
イメージしていた以上に、軽いだけのエンタメ摩訶不思議芝居ではなく、軽快な笑いも多いし、怪奇現象も時にコミカルに、手作り感満載で描かれるが、学校内で起きている社会問題にも登場人物たちの視点から、具体的に斬り込んでいて、思った以上に考えさせられた。
特に、生徒会長の石田さんが、1番の親友だと思っていた生徒会内の女生徒の個人的な嫉妬が原因で嫌がらせの紙を下駄箱に入れていたことも劇の後半で明らかになり、自分の今までの生徒会長としての言動に自信が持てなくなり、人間不信になってトイレに籠もる場面、皮肉にも今までトイレに籠もっていた清水詩織さんによって心が徐々に開いていくという終わり方に、人生常に勝ち組ということもなくて、どこで脱落するか分からないが、それでも、一旦動けなくなってしまった状態を無理に周りに合わせようと努力する必要はない、ありのまま自分を受け入れなければ、自分自身がまず自分を信じてあげないと、前に進めない。時には立ち止まっても良いんじゃないかと感じさせてくれる劇だった。
答えは、1つじゃないし、選択肢だって1つじゃない。無理に人に合わせる必要はない。人は、十人十色で多様なんだから、色んな生き方があって良いと感じさせてくれた。