人間失格 公演情報 Office8次元「人間失格」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    『人間失格』は2回ぐらい読んだと思う。余り良い出来とは思わない。戦後の太宰治はイマイチ。戦時中の『津軽』とかが一番良かった記憶。太宰治を使ったいろいろな作品を観たが何かどれも違う。自分が勝手に持っているイメージと合致しない。今作も笑いに逃げるんじゃないかと危惧していた。だが観れば解るがメチャクチャ傑作。小説を読んで凄く重要だった部分の情景が一つ一つ素晴らしい。和田誠の『麻雀放浪記』みたいに丁寧に作られている。太宰治ファンにこそ観せたい作品だ。

    額縁として陳内将氏演ずる作家が船橋の喫茶店を訪ね、マダム(奥山美代子さん)から手記を託される話がある。セットの2階をその喫茶店とし、下の1階で手記の内容が展開される。鎌倉の七里ケ浜海岸でのツネ子(原伊理さん)との心中崩れ、一人生き残った大庭葉蔵(小早川俊輔氏)は警察署で取り調べを受けている。署長(​鈴木裕樹氏)に自分という出来損ないの人間には処世術として道化を演じるしかないのですと告白する。
    1階の四隅に排水溝があり下から嫌な記憶が蓋を開けて這い上がって来る。センターにも奈落が。1階の奥には両開きの障子戸、2階にも両開きの障子戸がある。テンポ良く場面が次々に切り替わるテクニック。観客の目線を操り動かすことでカットを割る。こんな狭いステージでこれだけ策を巡らせるとは。多灯ライティングによる人を2重に見せる技術。

    大庭葉蔵役小早川俊輔氏も素晴らしい。赤坂晃や堺雅人の表情に似ていて笑顔はいわいのふ健っぽい。そりゃ人気出るわ。
    少年時代の大庭葉蔵役野口詩央さん、この人、天才じゃないか?
    堀切正雄役​郷本直也氏はハマカーンの浜谷健司みたいな大声。

    流石の寺十吾氏、会心の出来。鈴木清順っぽい品の良さ。

    ネタバレBOX

    堀越涼氏は原作をリスペクトし過ぎる余り、原作モノはイマイチというイメージがあった。だが今作では堀越涼氏のオリジナルであろう部分がぐんと光を放つ。
    『足りなくなることは死ぬこと。全てにおいて余るぐらいでなくてはいけない。そう教えた父親も早逝した。余る程蓄えていてもいけないのだな。』

    『人間失格』で一番記憶に残っているシーン。アパートの屋上で酒を飲む大庭葉蔵と堀切正雄。対義語(アントニム=アント)の当てっこゲームをする。ちなみに同義語=シノニム。「罪」のアントについて思い巡らす。ドストエフスキーは『罪と罰』をシノニムではなくアントニムとして配置したのでは?とはっと思い当たる。罪と罰とは全く真逆の相容れないものだとしたら?その時、階下の自分の部屋で妻が犯されている場面を目撃してしまう。これぞまさに自分のイメージ通りのシーンだった。

    ラストに陳内将氏が演じた作家は太宰治だったことが明かされる。山崎富栄との入水自殺。

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    2026/02/22 20:31

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