黒百合 公演情報 世田谷パブリックシアター「黒百合」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    オープニングがカッコイイ。二人のスタッフがズルズルと一本の花の咲いたズタ袋を上手下手から引きずって来る。いつしか沢山の花が咲く舞台に。岡本夏美さんが現れ、その中の一本の花を摘む。するとズタ袋からは人間の手が突き出ている。また摘むと手、また摘むと手。人間の手が地べたから咲いている奇妙な絵。そこから役者達が這い出してオープニングに。美しい花を摘む行為の裏に潜む生命を殺す残酷さ。

    富山県知事の令嬢勇美子(土居志央梨さん)はフランスの帰国子女で植物収集愛好家。子爵・千破矢家の若き当主、千破矢滝太郎(木村達成氏)が屋敷にやって来て食虫植物のモウセンゴケをプレゼントする。それに魅入られる勇美子。

    富山には「白山の黒百合伝説」がある。織田信長の親衛隊であった佐々成政(さっさ・なりまさ)は越中国(現在の富山県)の富山城主。愛妾の早百合(さゆり)をことのほか愛していた。だが早百合が不義密通して別の男の子供を懐妊しているとの噂を耳にして激怒。神通川の畔の一本榎に吊るして惨殺した。それは全くの濡れ衣で早百合は「立山に黒百合咲かば、佐々の家は滅しよう。」と呪って死ぬ。その呪いの通り、後に佐々成政は黒百合にまつわる出来事から切腹に追い込まれる。

    勇美子はその呪われた黒百合が欲しくてたまらない。立山にある石滝(いわたき)の奥深くの蛍の名所に、黒百合が咲くという。神通川の支流の奥の奥の魔所で人が立ち入ると暴風雨が起きる言い伝え。屋敷に出入りする花売りのお雪(岡本夏美さん)に金は幾らでも出すから摘んで来るよう言いつける。お雪は町で評判の美人で狙う男は数多い。だが目の病を患った若山拓〈ひらく〉(白石隼也氏)の面倒を見て二人で暮らしていた。

    滝太郎は旅商売で行商をしている露店に行き合う。銀メッキ加工の商売をしているお兼(村岡希美さん)に自分の純金の指輪を加工するように頼む。実はこの指輪をくれたのはお兼で隠し刃が仕込まれている代物。それを見て滝太郎に気付くお兼。8年振りの再会。

    岡本夏美さんが可愛い。昔、西野未姫に似ていると思って覚えた。
    木村達成氏は大沢樹生に似ていてピカレスク顔。この役に嵌まる。
    白石隼也(しゅんや)氏は岩田剛典に似ている正統派ハンサム。凄く唾が飛ぶので共演者は大変そう。
    慶造役に外山誠二氏。
    女中の道役に大西多摩恵さん。
    荒物屋の婆さん役に白石加代子さん。

    ネタバレBOX

    白石加代子さんの台詞が飛んで岡本夏美さんがフォローするシーンがあった。

    若山拓(ひらく)の原作での設定。
    反社会的勢力組織(盗賊団?)の親分の一人息子。元海軍大佐?の親父が刑務所に収監されて娑婆にいない時を見計らい、家屋敷財産を勝手に処分し被害者への補償、賠償に当て全てを捨てて東京を離れた。理学士の学位を持つ。
    2年前、富山にやって来て旅館に泊まるも持ち物一切合切を泥棒に盗られ無一文に。面倒見の良い地方裁判所の検事が身柄を預かりその援助で私塾を開いた。順調に生徒も集まり軌道に乗ったが運悪く目の病を患う。授業もままならず無念の閉塾、無収入に。生徒の一人がお雪の兄で療養の為にと家で面倒を見てくれた。その兄も兵隊にとられ、今ではお雪一人が花売りで養っている。

    拓が夢で石滝の魔所での二人を見るのは原作通り。
    神通川の氾濫で辺りは大洪水に。滝太郎は拓とお雪を担いで逃げるが水に呑まれる。お雪は拓だけでも救けて貰う為に自ら水に飛び込み死んでいく。
    エピローグとしてその後、黒百合丸が出航し甲板に若山拓、千破矢滝太郎、慶造、お兼の姿。盗賊にでも出掛けるのか?

    テンポが悪くかったるい。演出家は芥川比呂志演出の『夜叉ヶ池』を意識して狙ったのではないか?もしそうならばまずそこが間違っていると思った。
    第一幕はしょぼいけれど自分的にはまあ有りだった。掛ける小屋を間違えた作品。新橋演舞場や明治座でやるべき演目。大衆芝居ということならまあ色々と許せる。だが第二幕は···。これだけ酷いのはなかなかない。もうこんなの全部夢オチで良かったと思う。客にとっては全てがどうでもいい話。脚本にも演出にも誰も突っ込まなかったのか?余りにホンが酷いので気になって原作もチェックした。だがほぼ原作通り。泉鏡花初期の失敗作。何の構想もなく行き当たりばったり適当に書き殴ったような話。相当弄らないとまともな作品には直らない。

    脚本オリジナルの部分も訳が分からない。
    お雪が拓とどうして出会って暮らしているのか全く記憶にないという設定。そこが何か意味有りげだが何もない。
    黒百合を採りに行くことを拒否するお雪に勇美子はモウセンゴケを凝視させる。「行くのよ、貴方は、行くの。」暗示にかけたようだがもう既に行動は決まっていると言わんばかり。勇美子は観客の知らない何かを知っているような思わせ振りなシーン。だがただそれだけで何もない。それでいて何故かお雪は石滝に向かう。
    ※好意的に解釈すると原作の『黒百合』がそうなっているのだから虚構の登場人物であるお前の行動は決まっているのだ、と脚本家はメタ的に告げたとも取れる。そこまで『黒百合』をメタとして弄るんなら泉鏡花も引っ繰り返るようなラストを用意せねば。

    フリンジのビニールで表現した滝もしょぼい。初め何なのか判らなかった位。唐突な洪水が禁忌の聖地で黒百合を摘んだ神罰だとしたら水の表現こそが重要。怒りに満ちた水が人間共を呑み込まないといけない。その全てが口先だけで安っぽい。

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    2026/02/16 21:16

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