満足度★★★
不思議な面白さ
ギリシャ悲劇はあまり読んだり観たりしたことがないのですが、分かり易い演出で楽しめました。シリアスさと緩さの加減もちょうど良かったと思います。激しい展開で目を見張るようなシーンはないのですが、何か惹かれるところのある、不思議な面白さのある作品でした。
テーブルと椅子、壁には登場人物の相関図だけの素っ気ないセットに照明も音響の効果もなし、衣装も一人を除いて現代の若者の普段着というセッティングでしたが、熱過ぎず冷め過ぎずな温度感の演技とちょっとの小道具だけで、演劇としての空気感が醸し出されていました。
登場人物の共通する異なる年代の2つの物語が交互に演じられる形式で、出捌けなしで何の要素も変化しないで物語が切り替わってもちゃんとどちらの物語かわかる演出が見事でした。
若者言葉で喋る男性2人のキャラクターが妙に気弱な性格だったり、クリュタイメストラやその娘たちの普通の会話っぷりが、ギリシャ悲劇を身近なホームドラマ風にしていて親近感を持てました。
狂言回し役として演技されるときはもう少し登場人物としての演技とスタイルを変えるとメリハリがついて良くなったと思います。